レイモント・ピーターソンの強さが微妙。そりゃルーカス・マティセにも吹っ飛ばされるしブラッドリーにも負けるしディアスにも苦戦しますわ

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2015年10月17日(日本時間18日)に、米国バージニア州フェアファックスで前IBF世界S・ライト級王者のレイモント・ピーターソンの復帰戦が12回戦で行われた。

前回の試合でダニー・ガルシアに僅差判定で敗れたピーターソンの復帰戦となったこの試合。対戦相手は北京五輪金メダリストのフェリックス・ディアスである。

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結果は2-0の判定でレイモント・ピーターソンの勝利。微妙な判定ながら復帰戦を勝利で飾った。

レイモント・ピーターソン
1984年アメリカ生まれのボクサーで、元WBO世界S・ライト級暫定王者。元WBA世界S・ライト級スーパー王者。前IBF世界S・ライト級王者のボクサーファイターである。

アウトボクシングとインファイトを対戦相手によって自由自在に使い分けることができる万能型のスタイルが特徴で、上下の打ち分けや左ジャブから始まるコンビネーションを得意としている。

また幼いころに弟と2人で路上生活をしていた経験もあり、持ち前のハングリーさと折れないハートで強敵に立ち向かうたくましい一面も持つ。

パッと見強そうなピーターソンだけど、実は微妙だぞ?

このピーターソン。コンビネーションもスムーズで、一見すると確かに触れ込み通りの万能型の器用なボクサーに思える。
だが打ちこまれた際に防御一辺倒になるなど、実はかなりの攻防分離タイプなのではないかと思っている。

特にディフェンス時の足の使い方には難がある。
防御姿勢に入ると足が揃って身体が硬直するのだ。そして動きのない状態のまま、相手のパンチを防ごうとするのである。
相手の連打を足を揃えた状態でガード。または足を揃えたまま上半身の動きのみでパンチをかわす。これだと当然被弾する数は増え、致命的なダメージを負うことも少なくない。
足が揃った体勢のまま、相手に押し込まれてロープ際でもがく姿をよく見るのは恐らくこのせいである。

そして臨機応変にアウトボクシングができるという触れ込み。だが実際はそこまで上手ではない。
今回の試合でも、フットワークの最中にディアスに正面に立たれてしまうシーンが目立った。もちろんディアスがうまかったのもあると思うのだが、これはルーカス・マティセ戦でも同じような光景が見られたことを覚えている。

何となくだが、ピーターソンはハッサン・ナダム・ヌジカムと同タイプなのではないかと思う。スピードもあり大きく動いて派手によけるボクシングを展開するのだが、パンチ力のあるインファイターには苦戦するタイプである。

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ティモシー・ブラッドリー戦の大差判定負けでもわかるように、ピーターソンはフットワークのある相手には翻弄される。一定以上のスペックを持った相手には敵わないという中途半端な位置にいるボクサーなのだ。

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あの試合では、ブラッドリーが開始直後から自信を持って前進し、どんどんカウンターを狙っていく姿が印象的だった。右サイドに回りこんだブラッドリーが打ち下ろしの右でピーターソンの側頭部を捉えるシーンが目立ったのもよく覚えている。
スピードで上回るブラッドリーとしては、防御姿勢で足が止まるピーターソンは比較的やりやすい相手だったのではないかと思う。3Rに耳の後ろを打たれたピーターソンがダウンを喫するのだが、あれなどまさにピーターソンの弱点を突いたダウンである。

相手の左をバックステップでかわし、すぐさま踏み込んでの左のカウンター。ブラッドリーが再三見せた動きだが、ピーターソンにはこれができるだけのバネがないのだ。
インファイトとアウトボクシングを自在に使い分ける万能型というのも、自分に突出したものがないゆえの苦肉の策なのだろう。ブラッドリーはきっと「普通にやれば勝てる」と踏んでいたはずだ。そして、そのとおりの結末を迎えた試合だったのだ。

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直線的な動きのアミール・カーンや追い足のないダニー・ガルシアには通用した。だがスピードとフットワークを兼ね備えたブラッドリーにはつかまり、インファイトが得意なマティセからは逃げ切れなかった。そういうことなのである。

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ガラ空きの顔面に、ディアスのカウンターを被弾する

対戦相手のフェリックス・ディアス。
低身長で身体の線が太く、突進力もスピードもそこそこで不器用なタイプのサウスポー。北京五輪金メダリストとのことだが、僕にはやや強めのかませ犬という印象が強かった。ピーターソンが復帰戦に選ぶにはちょうどいい相手ではないだろうか。

この試合、ピーターソンは長い腕をしならせて遠い位置からアウトボクシングに徹するかと思っていた。だが、実際は頭を密着させての打ち合いを選択していた。

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恐らく今後の課題を考えた上でインファイトに徹したと思うが、ピーターソンは生粋のインファイターに比べて明らかに身体の力が足りない。身長差を活かしてプレッシャーをかけてはいるが、至近距離での打ち合いでディアスに打ち負けるシーン、左フックに身体が流れるシーンが随所に見られる。
パンチのヒット数や攻勢を見れば優位に試合を進めていることはわかるが、どこか危なっかしい。
カウンターの得意なサウスポーが相手なら、左フックを出した瞬間に左を合わせられて豪快にマットに転がるシーンが目に浮かぶ。今日のディアスなら大丈夫だとは思うが。

と思った途端、4Rの後半に盛大にディアスの左カウンターをもらうピーターソン。

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このボクサーの悪癖として、左ジャブを出した瞬間に右のガードが開くというのがある。パワーのなさを補うための予備動作なのだろう。左の腕が伸びた瞬間に右のガードが下がり、顔面がガラ空きになるのだ。サウスポーのカウンター使いにとって、この瞬間はどう考えてもKOチャンスにしか見えない。
素早くガードポジションに戻すことを意識しているのはわかるが、パンチが伸びきった瞬間のガラ空き具合は恐怖以外の何物でもない。

攻めに回ったときは強い。もう少し連打が出せればもっといいが……

防御に難が多いピーターソンだが、相変わらず攻めているときの動きはいい。
左ボディを打って左にサイドステップ。ディアスの左をバックステップでかわして右のフックをカウンターで軽くヒット。後ろ足から前の足への体重移動もスムーズですばらしい。
適度なスタンスの広さで身体のバランスも抜群だ。もう少し肩の力を抜いてリラックスすれば、さらに連打を続けられるのではないかと思うが、どうだろうか。
相手の右サイドへ回り、右ボディ。返しの左を反対側のボディ。本当にすばらしい。攻めているときは

ただ、左ボディのあとにダブルで顔面を打てればという場面が随所に見られる。
これができないのは、一発一発に相当な遠心力を使って打っているせいだろう。身体を目いっぱい捻って打つので、同じ腕での連打がきかないのだ。

基本的に右、左、右、左と左右のパンチが順番に飛んでくるので、ピーターソンの攻撃は対戦相手にしてみればかなり読みやすいと思う。危険なタイミングでカウンターを食いやすいのもその辺りに原因があるのだろう。

というよりも、対戦相手のディアスが普通に強い。
体型やファイトスタイルから不器用なタイプかと思っていたが、かなりカウンターのタイミングがいい。10Rにはほぼピーターソンの左のタイミングを掴んでいたし、絶妙なカウンターでピーターソン陣営を慌てさせていた。後半は足を使ってうまく翻弄していたし、この時間帯でペースを握っていたのは間違いなくディアスだった。
最初は不器用なファイタータイプのかませ犬だと思っていたが、見た目の印象だけで侮ったことを全力で謝罪したいと思う。

すべてのスペックが少しずつ足りないピーターソンはトップ戦線には残れない?

試合は114-114、116-112、117-111の2-0でピーターソンの勝利。

結局ピーターソンは今回の試合ではインファイトに終始し、アウトボクシングをする場面はあまり見られなかった。試合前からインファイトに徹することに決めていたのは明白だ。足を使って距離をとれば、もう少しポイントは開いたのではないだろうか。

ピーターソンが課題を持って臨んだ試合だったことを差し引いても、今後この選手がトップの位置に上り詰めることは恐らくないだろう。
アウトボクシングをするにはフットワークが足りず、インファイトをするには身体の強さと至近距離での連打が不足している。防御の穴も多い。すべての部分が少しずつ足りないのだ。

再びタイトルに挑戦することはあるかも知れないが、テレンス・クロフォードやエイドリアン・ブローナーなどのトップファイターにはまず勝てない。僕が推しているバルテレミーにも勝てないだろう。残念ながら、レイモント・ピーターソンというボクサーはスーパースターの器ではないのだ。

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ホルヘ・リナレスが相手であればいい勝負ができそうだが、果たしてこの2人が遭遇する機会があるだろうか。

穴だらけのランカー。ピーターソンが好きだったりする

ピーターソンのことをこれだけこき下ろしておいて言うのもなんだが、僕はレイモント・ピーターソンというボクサーが好きである。ピーターソンやデボン・アレクサンダー、ハッサン・ナダム・ヌジカムのように、いわゆるちょっと足りない惜しいボクサーが個人的に好きなのだ。

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うまく言えないのだが、「見守らなくてはならない」という義務感をくすぐられるのである。
目を見張るような活躍はできないと思うが、今後ともがんばってもらいたい。何かの間違いでスター街道に躍り出てくれないかと、今後も淡い期待を持ち続ける次第である。

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