吉成名高vsラック、KANAvsペッディージャー、野杁正明vsタワンチャイ。全身凶器の吉成さん、“ONE仕様”に作り上げたKANAと野杁。タワンチャイにKO勝ちは本当にすげえ【2025.3.23 ONE172感想】

吉成名高vsラック、KANAvsペッディージャー、野杁正明vsタワンチャイ。全身凶器の吉成さん、“ONE仕様”に作り上げたKANAと野杁。タワンチャイにKO勝ちは本当にすげえ【2025.3.23 ONE172感想】

2025年3月23日にさいたまスーパーアリーナで開催されたONE172。
メインイベント、武尊vsロッタン・ジットムアンノン戦の感想は下記で申し上げた通り。
 
武尊vsロッタン現地観戦。武尊の“終わり”を明確に感じたよ。ロッタンが絶好調だったとはいえ武尊がああいう負け方をするとは。やっぱりK-1に長く居すぎたよな
 
今回はそれ以外(の興味をひいた試合)についてである。
 
具体的には
・吉成名高vsラック・エラワン
・KANAvsペッディージャー・ルッカオポーロントン
・野杁正明vsタワンチャイ・PKセンチャイ
の3試合。
 
本当はここに海人vsマラット・グレゴリアン戦も加わるはずだったが、グレゴリアンの計量失敗により中止に。
これに関しては言いたいことは山ほどあるが、まあいいや。
 
 
なおこの日は花粉症が酷く鼻水がズルズルだったせいでいまいち観戦に集中しきれなかった。
会場が大盛り上がりの中でも無表情のままリングを眺めていたことをお伝えする笑
 

○吉成名高vsラック・エラワン×(3R2分40秒KO)

まずは第7試合の吉成名高vsラック・エラワン戦。
OFG2戦目の吉成名高がONE初戦を迎えたわけだが。
 
感想としては、「またしても気づいたら終わってた」
前回のバックチョー・シックンナ戦もそうだが、この人の試合は目を離した途端に終わる
 
笠原弘希vsジャック・ジャックムエタイ、吉成名高vsバックチョー・シックンナ、海人vsゲリック・ビレット。シーザー会長の健康が?
 
一つ一つの動きが稲妻のようなスピード、しかも全身が刃物でできているような切れ味を発揮する。
 
那須川天心のド派手なアクションとは少し違う。
殺傷に特化した鋭利さというヤツ。
 
 
全身凶器の吉成名高さん、ちっす。

 
何というか、すべての部位が尖ってるんですよね笑


 
この左でラックの鼻が折れたかも。

 
全身凶器さんのマトリックス避け。

 
 
ちなみに相手のラック・エラワンはかなり強かったと思う。
 
吉成名高のスピードに普通に対抗できていた上に顔面へのヒットも何発かあった。
“ムエタイの強豪”という触れ込み通りの実力者だったのではないか。


 
あと、笑顔がめっちゃ素敵

入場から笑顔を絶やさず、吉成のコールに拍手したりと陽キャ感が満載だった笑
 
などと言っているうちに……。

また一瞬で終わらせやがったよコイツ。
 
相変わらず何の前触れもなく結末が訪れやがる笑

 
僕の中での吉成名高の印象はただひたすらに強い人
今のままだと“ジャンルを超えたスター”にはなりにくい、幅広い支持を集めるにはプラスαが必要だが、本人はそっち方面にあまり興味なさそうなんですよね。
 
吉成名高vsプレーオプラーオ感想。キック界の至宝、ボクシングの井上尚弥と並ぶ才能等、賞賛が止まらない吉成も数年前まではトイレタイム要員だった
 

×KANAvsペッディージャー・ルッカオポーロントン○(5R判定)

続いてはKANAとペッディージャー・ルッカオポーロントンによる女子アトム級キックボクシング世界タイトルマッチ。
ONE2戦(1勝1敗)のKANAのタイトルマッチ出場には批判も聞こえたが、僕は日本開催の恩恵として普通に受け止めている。
 
 
もともとこの選手はまっすぐ出て打ち合う、馬力と精度でねじ伏せる剛腕タイプ。
K-1時代は“女子版武尊”と呼ばれるなどバッチバチのファイターなイメージである。
 
だがONE初戦でアニッサ・メクセンの連打とフットワークに歯が立たず、回転力、精度で上回られて判定負けを喫した。
 
それを受けてか、前回のモア・カールソン戦では横の動きと距離を意識した立ち回りで見事勝利。
 
野杁正明とKANAがONE初勝利&3月の日本大会(ONE 172)でのタイトルマッチ決定。野杁の相手は得意なタイプだった。KANAは前回の反省を踏まえた工夫が見られた
 
今回のペッディージャー戦も足を使ったアウトボクシングを展開している。
(ファイトスタイルが噛み合う)ペッディージャーとは真正面から打ち合うと思っていたのでこれはちょっと意外だった。
 
そして、この作戦はちゃんと機能していた。
 
距離を取ってローや前蹴り、ジャブを駆使。
ペッディージャーに近場の強さを発揮させず、中に入る際は必ずガードを固めて潜り込む。
真正面からの打ち合いでは分が悪いと判断したのだと思うが、K-1王者のプライドを捨てて勝利を目指す姿勢はなかなかよかった。
 
ただ、2R後半あたりから足が止まったのが……。
あえて打ち合いに切り替えたのか、慣れないファイトで疲れが出たのかは不明だが、どちらにしてもあの時間帯から近距離で打ち合うシーンが増えた。
 
で、その位置ではやはりペッディージャーが一枚上手。
特に蹴りの精度とディフェンスにはかなりの差があった。
 
 
それでも打ち合い上等のK-1から“ONE仕様のファイト”へスムーズに移行したのは文句なしにすごい。
今回は残念ながら負けてしまったが、今後もこの調子でがんばってもらいたい。
 
主役を義務付けられた武尊と違って勝ったり負けたりが許される立場だろうしね。
 


 

○野杁正明vsタワンチャイ・PKセンチャイ×(3R1分55秒TKO)

ラストはこれ。
前回のシャーキル・タクレティ戦でONE初勝利を挙げた野杁正明がタワンチャイ・PKセンチャイとの暫定王座戦に挑んだ試合である。
 
表題の通り結果は3R1分55秒TKOで野杁が勝利。
レフェリーが試合を止めた瞬間はこの日のMAXの盛り上がりだった(僕は花粉症で死んでたけど笑)。
 
 
野杁はこの階級ではやや小柄で、ONE参戦以降は持ち味の重厚なプレスをいまいち発揮できていない。
2戦目のリウ・メンヤン戦では長身のリウに上からのしかかられて糞詰まりを起こし判定負け。
3戦目はカーフとローを駆使して勝利したものの、さすがにタイトルマッチは厳しいのではないか。
 
対策がバレている中でどう勝負するかに注目していた。
 
野杁正明、KANAともに完敗。メクセンに実力負けのKANAと野杁対策を徹底したリウ・メンヤン。野杁は今後厳しそう…
 
だが、リング上で対峙した両者を観て思ったのが、上背や身体の厚みにそこまで差がないこと。
野杁が勝つのは難しいと思っていたが、この時点で「もしかしたら……」となった。
 
 
試合が始まると案の定タワンチャイは遠間からの蹴りで野杁を突き放しにかかる。
 
前蹴り、

 
ハイキック、

 
インローと多彩な蹴りで野杁の前進を止める。


 
僕もこれを観て「まあ、そうなるよな」と思ったし、このままダラダラと3Rまでいく可能性が高いと感じた。
 
 
ところが1R後半から2Rにかけて野杁が距離を掌握し始める。
タワンチャイの蹴りをガードするとともに中に入り、そこから強引に身体を寄せて自分のターンを引き寄せる。
 
半歩ほど距離が詰まったことによって野杁の攻撃が届く。

 
逆にタワンチャイは動きが窮屈になり容易に中に入られる展開に。


 
ミドルをガード、

 
左フックを避け、

 
タワンチャイの正面を捉える。

野杁と正対する恐怖、威圧感は想像を絶する笑
 
 
3Rに入るといよいよ野杁の流れで試合が進む。
 
タワンチャイは長い距離が作れず、やむを得ずパンチで対抗。

 
そこに野杁のボディがカウンターで突き刺さり、

 
ミドルは近場で威力を殺され、

 
逆に顔面にパンチをもらう。

 
ロープ際でショートの左フックを豪快に被弾し、

 
ついにダウン!!(前の人が立ったので影が入った笑)

 
どうにか立ち上がったタワンチャイだが、すでに反撃の力はなく。
最後は野杁のラッシュを浴びて

ついにレフェリーストップ!!!

 
うおおおおおお!!!!
野杁勝ったあああああああ!!!!
すげええええ!!!!


 
上述の通り野杁が勝利した瞬間はこの日一番の盛り上がり。
場内総立ちで叫びまくりでございます。
 
なお僕も一応立ち上がってみたものの、花粉症がキツくて相変わらず無表情のままでした笑
 
 
 
しかし野杁のKO勝ちはすごい。本当にすごい。
 
KANAは打ち合い上等のK-1スタイルからフットワーク重視のアウトボクシングを選択したが、野杁は身体の大きな相手に自分の得意分野を押し付ける方法を模索した。
 
恐らく野杁にはKANAほどの機動力はない。
足を使って撹乱するのは難しいと判断したと想像する。
 
自分のできること、持っているネタを最大限活かす方法を考えわずか2試合でそれを実現する。
技術的なことは僕にはわからないが、この対応力はマジでお見事である。
 
野杁正明vsシッティチャイ。「野杁ですらこうなっちゃうのか」とオモタ。キックボクサーとしての奥深さ、経験値の違いを感じたよ
 
恐らくK-1で積み上げたキャリア、プライドもあったはず。
その中でこれまでのスタイルからの方向転換を図る胆力、柔軟性には心から感服する。
 
改めてすごい試合だった。
 

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