映画「オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」感想。ターゲットを絞った総集編。考察好き&白川さんファンには刺さる省エネ作品。予算もないっぽいね
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映画「オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」を観た。
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「オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」(2022年)
小戸川宏(セイウチ)の職業はタクシー運転手。
無口で皮肉屋な性格ながらもさまざまなお客さんを乗せて走る日々を過ごしている。
そんな小戸川の日常は飲み会帰りの大学生、樺沢太一(コビトカバ)を乗せたところから大きく動き出す。
車内で樺沢にツーショット写真を撮らされた小戸川だったが、その写真に偶然指名手配中のチンピラ、ドブ(ケラダヒヒ)の姿が写り込む。
樺沢がその写真をSNSにアップしたことで小戸川の存在がドブにも知られてしまうのだった。
周囲のきな臭さを感じつつもマイペースを崩さない小戸川。
原田タエ子(カンガルー)が経営する行きつけの飲み屋「やまびこ」で友人の剛力歩(ゴリラ)や柿花英二(シロテナガザル)らと他愛もない会話を交わし、いつも通りタクシーを運転する毎日。
だが、ある日拳銃を持ったドブが突然小戸川のタクシーに乗り込んできたところから自体は一変する……。
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「オッドタクシー劇場版」に脊髄反射して映画館に行ってきた。今になって思えば…
2021年4月〜6月にテレビ東京ほかで放映されたアニメ「オッドタクシー 」。
地上波では関東圏のみ、配信はAmazonプライム・ビデオ独占という限定的なO.A.ながらも「擬人化した動物たちによるミステリー&群像劇」のシュールさが話題になった作品である。
僕自身も「主人公はセイウチのタクシー運転手」という、一見お気楽なコメディっぽいビジュアルからは想像もつかない淡々とした雰囲気にのめり込んでしまった。
アニメ「オッドタクシー」が完全におもしろい。脚本の此元和津也が天才らしい
そして下記の記事で劇場版が公開されることを知り、先日映画館に足を運んできた次第である。
「オッドタクシー」映画化、22年4月1日公開 TVアニメ版を再構成&最終回のその後も描く #オッドタクシー #花江夏樹 #此元和津也 https://t.co/AfV5HNe5x0
— 映画.com (@eigacom) December 25, 2021
ちなみに内容に関する事前情報はいっさい仕入れていない。
上記の記事の「映画化」という文字に脊髄反射して映画館に行くことを即決したため、記事の中身はほぼ読んでいなかったことを報告しておく。
まあ、今思えばもう少し冷静に精査しておけばという話なのだが……。
「あのオッドタクシーが映画化!?」とテンションが上がったせいで“再構成”や“最終回のその後”などの文字がほとんど入ってこなかったのが何とも悔やまれる……。
わざわざ映画館で観るほどではなかった。ターゲットを限定した省エネ作品。総合評価2.7点もしっくりくる
まず映画の感想としては(だいたい想像はつくとは思うが)、わざわざ映画館に行く必要はなかったなと。
スタートから数分で
「あ〜、そうなっちゃいますか」
「相当な省エネパターンですね」
となってしまった。
上記の記事を読めばわかるが、今作はアニメ「オッドタクシー 」を再構成+加筆したもの。インタビュー形式になってはいるものの、要するに総集編である。
初見の人にはちんぷんかんぷん、アニメのファンにも賛否が分かれる内容。
新たな展開、オリジナル脚本を期待していた人(僕もこっち側)にとっては“そうじゃない”感満載の作品だったと想像する。
逆にミステリーの考察が好きな人や特定のキャラ推しの人にとっては結構刺さるものだったのではないか。
特にアルパカの白川美保さんのファンや主人公小戸川宏に思い入れがある人には格別だったかもしれない。
・アニメの素材を(半分くらい)そのまま流用できる
・新しい脚本がほぼ不要
・本編にはない隠し要素を散りばめることで考察好きの人の琴線に触れる
・特定のキャラ推しの人にはたまらない
つまり、今作は完全に「アニメ本編を視聴済みの人」向けの省エネ作品。
その中でも新展開に期待していたファンをバッサリと切り捨てた内容となっている。
ここまでの総評価が5点満点中2.7点(2022年4月29日時点)というのもマジでそんな感じ。
「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」
予算の関係、期間の短さが影響したかどうかは不明だが、省エネと引き換えに特定の人に深く刺さる方向に舵を切ったと言えるのではないか。
総集編しかやりようがなかった? あれだけ綺麗に終わった作品の新展開はめちゃくちゃ難しい
とは言え、あそこからどう展開させていくの? という話でもあったわけで。
アニメ最終回で(自分を含めた)人の顔が動物に見えていた小戸川の視界が正常に戻り、ヒロイン白川さんともいい感じになった。剛力や柿花との絆もより一層強固になった。
はっきり言って、あれだけ綺麗に終わったものをもう一度動かすのは相当無理がある。
動物だらけの世界に再び小戸川を放り込むの?
仮にそうだとして、きっかけはどうするの?
正常に戻ったときの記憶はそのままで?
それとも忘れさせるの?
あれこれ考えると、どこをどういじくり回してもいこじつけになりそうな気が……。
手っ取り早い方法としては、小戸川の少年時代を描くことだろうか。
パート「0」と冠して小戸川が今の境遇に至るまでの内容にすれば、それなりに関心を集められる可能性も?
ただ、小戸川の生い立ちがまあまあ重い上にベタ過ぎるのがね。
浮気性で酔っ払いの親父とそれに苦しむ母親。
最終的に耐え切れなくなった母親が一家無理心中を図る→小戸川だけが助かる。
正直、こんなものをアニメ化して楽しいか? という話である。
映画「THE FIRST SLAM DUNK」を人生で初めて映画館リピートした。ダークヒロインの宮城カオル(母親)に感情移入。バスケだけが生きる支え
人気アニメを映画化してもう一山狙うというのは当然あるべき流れだが、今作に関しては果たしてどうなのか。
さらにこれは僕の想像だが、予算も時間も限られている&脚本担当の此元和津也氏が偏屈な人間なせいでオリジナル脚本の線が閉ざされたのではないか。
製作陣の手が回るギリギリの範囲というか、どうにか絞り出した結果がこの「総集編にほんの少し新要素を入れる」方法だったのかもしれない。
「イン・ザ・ウッズ」(芥川龍之介作品からインスパイアされているらしい)などとイキっているが、要は不景気の煽りとタイミングの悪さをモロに受けた結果なのだろうと。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」が似たような感じだったっけ? でも、今作は新要素が5%もなかったのがね
アニメの総集編+新要素の組み合わせで劇場版を乗り切った? 作品といえば、ぱっと思いつくところでは「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」だろうか。
劇場版「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」感想。蛇足でもあり感動再び! でもある。観る人、観るタイミングによって評価がまったく異なる作品じゃないか?
長井龍雪、岡田麿里、田中将賀を中心としたアニメーション制作チーム「超平和バスターズ」によるアニメからの派生映画。
だがこの作品の場合総集編は中盤までで、後半からはしっかりオリジナル作品として作られていた。
一方、今作「オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」はほぼ全編にわたって総集編+インタビューで埋め尽くされている。
小戸川と白川さんの後日談やタクシーでの和田垣さくらとのやり取りが出てくるのはラスト10〜15分くらい。新要素と呼べるのは5%にも満たなかった印象で、それが今作が賛否分かれる要因と言えそう。
いや、そう言われましても……。
『映画 オッドタクシー』“謎の3人組”場面写真到着https://t.co/nxkish5VyS#オッドタクシー #ODDTAXI
— シネマカフェ/cinemacafe.net (@cinema_cafe) April 28, 2022
冗談でも何でもなく、この3人ってマジで大したことないですからね。
“謎の3人組”などとそれっぽい呼び方をなさってますが笑
当時疑問に思っていた部分を思い出せた。新鮮な気持ちでアニメを再視聴できそう
今作が微妙だった理由を長々と述べてきたわけだが、ではここから先はよかった部分を。
僕が今作でよかったと思ったのは、アニメ本編の内容を思い出せたこと。
申し上げたように今作は「擬人化した動物たちによるミステリー&群像劇」と呼べるもので、関係ないと思っていた要素が複雑に絡み合い、最後に小戸川のもとで収束する流れとなっている。
各キャラの個性はもちろん、伏線の張り方から回収までの鮮やかさが僕が今作にハマった最大の要因である。
ただその中でも「あれ?」と思う部分はあり、それを劇場版で思い出させてくれたのはよかった。
具体的には、
・白川美保はなぜ工事現場に現れたのか
・和田垣さくらはなぜ事務所に先回りできたのか
の2つ。
SLAM DUNK(スラムダンク)新作映画の声優交代にファンが激怒? アニメ再放送での陵南戦直後の発表は完全にマズったよな。キャラのイメージが定着したところだったし
ミステリーキッスのマネージャー・山本を乗せた小戸川のタクシーが工事現場に到着→山本が小戸川を殺そうとしているところに白川さんが登場して得意のカポエラで山本をKOするわけだが、僕にはなぜ白川さんがタクシーの居場所を突き止められたのかがよくわかっていない。
ちょろっと調べたところ
・どこかで発信機を仕掛けた
・笑風亭呑楽の消しゴムにGPSが内蔵されていた
等の考察があったが、なるほど確かに。
また、二階堂ルイが三矢ユキを事務所に呼び出したことはマネージャーの山本しか知らないはずなのに、なぜ和田垣さくらが先回りできたのかも謎。
これも調べてみたところ、
・山本と和田垣さくらが裏で繋がっていた
・「幸せのボールペン」なる盗聴機付きの隠しグッズがある
とのこと。
そして、これらを知るには本編ではなく公式YouTubeチャンネル内「オーディオドラマ」を聴く必要がある。
おおおお……。
そうだったのかぁぁぁああああ……。
公式YouTubeチャンネルが本編と連動していたのは知っていたが、そこまで重要なネタがあったとは。完全にスルーしていた当時の僕を殴りたい笑
劇場版を鑑賞したことで疑問に思った(けどストーリーを追うので手一杯だった)要素を振り返り、より新鮮な気持ちでアニメ「オッドタクシー 」を再視聴できる。
当時とは違う心情というか、俯瞰した状態でアニメを観られるというのはマジで悪くない。
あれだけ楽しませてくれたアニメをもう一度視聴するきっかけになったという意味で今作「オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」は貴重である。
そこに入場料1900円(TOHOシネマズなので)と自分の時間を費やす価値があるかどうかは知らん。
映画館とかいうポテンシャルの塊。今はシネコン最強で座席占有率15%が損益分岐点なんだってさ
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