大谷翔平が日ハムの足を引っ張っている? 相手を勢いづけたのは覚醒した投手大谷だった? 短期決戦での大谷の起用法が難しい
2016年10月14日、プロ野球CSファイナルステージ第三戦が行われ、パリーグ覇者の日本ハムが2位ソフトバンクを4-1で敗った。これで対戦成績を3勝1敗(アドバンテージ1勝)とし、日本シリーズ進出へ王手をかけた。
第一戦でエース大谷翔平を立てて先勝した日ハムだが、第二戦は1点リードの最終回に守護神マーティンが崩れて4-6で逆転負けを喫する。
流れが変わるかと思われた第三戦、先発を任された有原が7回1失点の好投を見せての勝利で王手をかける。
レギュラーシーズンで11.5ゲーム差をひっくり返して優勝を決めた日ハム。果たして2015年覇者のソフトバンクにこのまま引導を渡すことができるだろうか。
「DeNAがフィル・クレイン(クライン)獲得発表。3Aで無双の2メートルはベイスターズでも成功できるか?」
大谷がすごすぎる。王者ソフトバンクに手も足も出させないピッチング
日ハム王手!!
昨シーズンの覇者ソフトバンクを追いつめる!!
日ハムがすごい。
レギュラーシーズンの逆転劇もすごかったが、CSファイナルステージでもその強さを遺憾なく発揮している。
特に大谷・増井・有原の先発3本柱の盤石ぶりは突出していて、他チームの追随を許さない。
レギュラーシーズンでソフトバンクの息の根を止めたのも、ある意味この3人の圧倒的なピッチングによるものと言っても過言ではない。
中でも160kmのストレートを誇る大谷翔平のすごさは群を抜いている。
これまでももちろんすごかったのだが、今シーズンはそこからさらに一段レベルアップを果たしている感が強い。
「大谷翔平2016!! 二刀流に大賛成の僕が今さらだけどその理由を語ってみる」
省エネピッチングを身につけた大谷は手がつけられない。1人別次元のモンスター
以前の記事でも申し上げたように、ピッチャー大谷の課題は高い安定感と省エネ。
いかに少ない球数で長いイニングを投げられるか。全力投球はここぞの場面のみに限定し、7、8割の力でどれだけ打者を打ちとれるかという部分である。
「大谷翔平さんが今すぐにメジャー移籍しないといけない3つの理由」
確かに160km超のストレートと140kmのフォークはすごい。本気の大谷を打てる打者などこの世に存在しないと断言できるほどで、投げている球だけを見れば間違いなく世界一である。
ただ、あのピッチングは正直燃費が悪過ぎる。
160kmオーバーのストレートをバンバン投げても、球数が5、6回で100球に近づく状況では、シーズンを通しての活躍は難しくなる。
「代わったところに打球が行くには根拠がある。2016年4勝2敗で広島を下して日本ハム優勝!!」
近い将来、メジャーへの移籍を考えているならなおさらである。
中四日、160試合の日程に対応するために、いかに1人の打者への球数を減らせるか。その部分の課題を克服する必要があると申し上げた次第である。
はい、克服しちゃいました。
大谷翔平さん、燃費と安定感を両立した省エネピッチングを身につけちゃいました。
大谷翔平が1安打15奪三振で完封!日本ハムファイターズは2012年ぶりの優勝を決めた!二刀流として今季大活躍の大谷は、投手として10勝、本塁打は22本を記録している。
https://t.co/SceyF6RqUs via @PacificleagueTV— MLB Japan (@MLBJapan) 2016年9月29日
130km後半のスライダーでカウントを稼ぎ、150km後半のストレートで空振りを奪う。
これまでのように力み返った全力投球ではなく、リラックスしたフォームからリリースの瞬間だけ力を込めたストレート。いわゆる省エネの脱力投球というヤツである。
7、8割の力で150km後半のストレートを投げ込み、スライダーとの緩急で打者を翻弄する。試合後半から少しずつフォークを織り交ぜ、三振を狙う場面ではきっちり160kmをオーバーしてみせる。
その結果が9回被安打1、15奪三振125球完封。
完璧過ぎる。
「躍動する大谷翔平。「動く球を覚えるべき」でも「メジャー仕様にモデルチェンジしたから勝てた」んでもないと思うよ」
CSファイナルステージ初戦のソフトバンク戦も同様である。
試合中盤まではスライダーと8割程度のストレートを主体に少ない球数でイニングを稼ぐ。5、6回からフォークを解禁し、徐々にペースアップ。
常に2、3球で追い込むために、三振を取るにしても1人に費やす球数が少なくて済む。
手元での伸びを意識した150km後半のストレートを中心に7回被安打1、6奪三振102球無失点。
完璧過ぎる。
7回を投げて被安打1、無失点に封じる完ぺきな投球。ストレートも、スライダーも、フォークも、すべてがすごい、北海道日本ハム(@FightersPR)・大谷選手の投球まとめ!https://t.co/y8Iuesa1bO #大谷翔平
— パ・リーグTV公式 (@PacificleagueTV) 2016年10月12日
「7、8割の力で150km後半のストレートを投げ込み~」←自分で書いていて笑ってしまうのだが、冗談でも何でもなく激マジである。今の大谷は安定感と省エネを両立したピッチングを完全に自分のものにしている。
翌日以降にも影響を与えるピッチング。それがスーパーエース
「翌日以降も相手打線にダメージを与える絶対的な投球をしたい」
2008年、当時日ハムの絶対的エースだったダルビッシュが言った言葉である。
翌日以降に残るダメージを相手に与える。
具体的には、セリーグのファイナルステージ初戦で完封勝利を挙げた広島ジョンソンのようなピッチングである。
150kmのストレートと140kmを超えるスラッターで凡打の山を築き、DeNA打線を完全に沈黙させる。鋭く沈むスラッターで左打者を腰砕けにし、右打者には膝元に落としてまともなスイングをさせない。主力打者の筒香の調子を狂わせ、完璧な形で二戦目の野村祐輔につなぐピッチング。
「CSは不要。あんなの何がおもしろいんだ? クライマックスシリーズだ? 敗者同士の傷のなめ合い」
ジョンソンからバトンを受けた野村祐輔は、ジョンソンのスラッターに調子を狂わされたDeNA打線を相手に6回3安打無失点の好投。そして7回からは今村、ジャクソン、中崎の勝ちパターンを惜しげもなく投入する余裕の完封勝ちである。
初戦のジョンソンがDeNA打線を沈黙させたことが野村の好投を呼び込んだことは言うまでもなく、7回から躊躇なく勝ちパターンをつぎ込めたのもジョンソンの完封があったからに他ならない。
翌日の試合にまで相手に影響を及ぼす圧倒的な支配力。これこそダルビッシュの言う「翌日以降に残るダメージ」というヤツである。
「田中マー君覚醒!! スライダーの高速化、スラッター化でレベルアップ。悪いなメジャー」
大谷のすご過ぎるピッチングが却って日ハムの勝利を手間取らせる?
だが、覚醒した大谷翔平はさらにすごい。
ダルビッシュの言う「翌日以降に残るダメージを与える投球」すらも超えようとしているのである。
何というか、とにかく大谷のピッチングは暴力的過ぎる。
一縷の希望もないほど力の差を見せつけ、反撃の芽を徹底的に摘み取る。相手を完膚なきまでに叩きのめし、自信やプライドを根こそぎ奪いとり、草木一本生えないさら地状態にしてしまう。
あまりに次元が違い過ぎるせいで、相手に「悔しい」「やり返したい」という気すら起こさせないのである。
「小久保が侍JAPAN史上最高の有能監督な件について。WBCで世界一を目指す日本野球にふさわしい采配の数々を語る」
そして、それが逆にフレッシュな状況を作り出している気がする。一周回って希望が沸いてくるというか。「ここまで落ちたんだから、後は上がるだけでしょ」という開き直り。
「大谷165kmキター!! 大谷のストレートの質が悪い? ファールされる160kmより空振りが取れる140kmの方が上?」
要は1人だけ異世界のモンスターと化した大谷翔平が逆に日ハムの足を引っ張るという皮肉な状況を生んでいるのである。
もちろん「足を引っ張る」というのは言い過ぎだが、大谷がすご過ぎるせいで二戦目以降ソフトバンクの選手がのびのびとプレーをしている印象を受けるのだが、どうだろうか。
絶好調の先発増井から先制点を奪う。
1点ビハインドの最終回にダブルスチールを敢行する。
不振を極めていた柳田が決勝タイムリーを放つ。
「2016年日本シリーズ、三戦目以降展望。優勝目指してがんばれ広島カープ!!」
第二戦の逆転劇は、守護神マーティンの不調が一番の要因であることは間違いない。
だが、負ければシリーズ敗退が決定的となる局面で、ダブルスチールの決断などそうそうできるものではない。昨年の覇者のプライドもへったくれもない、どこからどう見ても挑戦者の姿そのものである。
そしてその決断をさせたのも、元を正せば第一戦の大谷のピッチングだったのではと思うのである。
すご過ぎるが故に相手の開き直りを生む。「大谷以外なら何とかなるかも」という気を起こさせてしまう。
スーパーエースという範疇すらも超えたモンスター大谷の意味不明な弊害であるww
「マジで予想困難な日本シリーズ2016!! 広島カープvs日本ハム。黒田も大谷もドラマチック過ぎ」
短期決戦での大谷を第三戦に先発させるというのはどうよ?
必勝を期して第一戦の先発を任せても、次戦以降で相手にのびのびとプレーをさせてしまう。しかも二戦目以降に投げるピッチャーは大谷に比べて力が落ちるために「何とかなる」と思わせてしまう。
「広島がライアン・ブレイザー(ブレイジア)獲得? バース(元日ハム)っぽいのかな?」
第二戦で先発した増井も147、8kmのストレートをバンバン投げていたが、脱力投球で150km後半を出す大谷と比べれば実に10km近い球速差がある。
そう考えると、短期決戦での大谷翔平の使いどころは意外と難しい。
むしろ短期決戦では、大谷を第三戦に持ってくるのも一つの手なのではないだろうか。
大谷の存在をチラつかせることで「アイツが出てくる前に一つでも多く勝っておかなくては」という焦りを誘うことができるし、先発三番手vs大谷というマッチアップによって確実な勝利を見込めるのも大きい。
もちろん増井、有原といった相手のエースとも互角に渡り合える先発を揃えていることが絶対条件になるのだが。
「ベイスターズCS初進出に際して愚将中畑清を語る。まあCS進出は1年遅かったよな」
とはいえ、それをやるとシリーズで大谷を使えるのが最大二試合までという弊害が生まれるのだが。
スーパーエースとして最大三試合の先発を考えるか、ここぞの切り札として温存するか。どちらにしても、1人だけ別次元の存在というのも考えものである。
うん、やっぱり大谷は少しでも早くメジャーに行った方がいいな。
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