中村優也vsレイマート・ガバリョ戦に感動した話。あの舞台で初回から勝負をかけられるって、めちゃくちゃすごいことだと思った【結果・感想】

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フィリピンマニライメージ
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2019年2月9日、フィリピンのマニラで行われたバンタム級ノンタイトル10回戦。同級暫定王者レイマート・ガバリョに日本の中村優也が挑んだ一戦は、2R1分44秒TKOでガバリョが勝利。戦績を21戦全勝18KOに伸ばした試合である。


初回から積極的に腕を振って前に出るガバリョ。
対する中村もアウェーのリングにも臆さず真正面から受けて立つ。
だが、王者の圧力と迫力満点の連打を抑えきれない。開始30秒過ぎに一度目のダウンを奪われると、1分30秒過ぎにも左フックで再び尻餅をつくようにダウン。このラウンドだけで計3度のダウンを喫する苦しい展開を強いられる。
 
2Rに入ってもガバリョの勢いは衰えず。豪快な左フックから右のボディストレートをヒット。中村も懸命にカウンターを狙うが、ガバリョの剛腕に身体ごと揺さぶられる。
 
そして、1分30秒過ぎ。
コーナーで左フックを被弾した中村が頭から崩れ落ちるようにダウン。一度は立ち上がるものの、コーナーでふらつく姿を見たレフェリーが試合をストップ。
敵地で果敢に攻めた中村だったが、残念ながら無敗王者の圧力に屈してしまった。
 
「JBCはフリーランスボクサー中村優也選手を大至急海外担当のマネージャーとして招聘するんだ。そして豪快に断られろ」
 

中村優也が無敗のレイマート・ガバリョと真っ向勝負。あの思い切りのよさには驚かされた

フリーランス・ボクサーの中村優也が無敗のWBA暫定王者レイマート・ガバリョに挑むということで、ボクシングファンの間で注目を集めたこの試合。
 
結果は中村がガバリョの剛腕に屈し、残念ながら2RTKO負け。
だが、完全アウェーの中、無敗の暫定王者に真正面から向かっていく姿は胸を打つものがあった。
 
 
僕自身、これまで中村優也という選手のことはまったく知らず、JBCの管轄下ではない場所での活動がどれだけ大変なのかもよくわかっていない。
 
ただ、あの舞台で初回から勝負をかける思い切りのよさは普通にすごかったと思う。
 
恐らく本人にとって、この試合はキャリアの中で一度あるかないかの大チャンス。相手は調整試合のつもりで声をかけたのだとは思うが、仮に勝てば一気に視界が開ける大一番となる。当然勝ちにいくのみである。
 
「僕の2019年ベストバウト6選完結編。“僕の”印象に残った試合第2、1位を発表する。いや、ホントに感動したんだってw」
 
とはいえ、場所は完全に相手のホーム。
「立ち上がりは慎重に~」「相手の出方を見てから~」と考えてもまったく不思議ではない。
2011年にジェームス・カークランドを初回KOで下した石田順裕を参考にしての真っ向勝負だったらしいが、だからといって……。
あれだけ躊躇なく腕を振れるメンタルにはマジで驚かされた。
 

アレで正解だろうな。戦力が上の相手と真正面から打ち合い、勝利の可能性を無理やり引っ張り出した

そして、個人的にあの選択は大正解だったと思う。
 
暫定王者レイマート・ガバリョの持ち味は、何と言ってもいっさい遠慮のないフルスイング。
長いリーチを活かしたリードで相手を突き離し、スペースができたところで渾身の力で腕を振り回す。
柔らかい上半身で相手のパンチをかわし、その反動でさらに勢いが増す。
 
正直、打ち終わりに身体が流れたりとディフェンス面はやや心もとない。だが、暴風雨のような両フックがすべてをチャラにする。
パッと見の印象だが、割合的には攻撃8、防御2くらいの剛腕ファイターかなと。
 
この勢いをどうにかするには、やはり真正面から受けて立つのが一番。
開始直後のノーダメージな状態で目いっぱいカウンターを合わせまくって何とか1発当てる。抜群のタイミングでヒットできれば、必ず突破口は開ける(はず)。
 
結果的には不発に終わってしまったが、あの思い切りのよさとそれを決断した勇気は文句なしにすばらしい。
 
「大健闘の井上岳志。ハイメ・ムンギアに3-0の判定負け。でもめちゃくちゃカッチョよかったよな。採点は…118-110かな?」
 
というか、実際に2Rに左のタイミングが合い始めてたんだよな。
初回にいきなり3度倒されて甚大なダメージを負ってしまったが、あのダウンを一度でも減らせていれば……。もう少し試合が続けば、マジで可能性はあった(と思う)。
 
もともとの勝機が10%もなかったものを、自らの覚悟と度胸で強引に20%付近まで引き上げた感じ。
あっという間に終わった試合ではあったが、残した爪跡は間違いなくデカい。
 
中村優也、サイコーだった。
 

相手をリスペクトし過ぎないのが大事。フリーランスという立場が土壇場での強さを引き出した?


まあ、それもこれも、フリーランス・ボクサーという立場でいろいろな困難を乗り越えてきた結果なのかな? とは思った。
守りに入りそうになる場面で吹っ切る強さというか、いい意味での開き直りというか。
 
相手をリスペクトすることは大事だが、リスペクトし過ぎるのはよくない。
たとえ強大な相手でも同じ舞台に立てば対等。過剰に警戒する必要もないし、変に守りに入って縮こまる必要もない。
アウェーのリングであれば、むしろ見下すぐらいがちょうどいい。
 
常に逆境に立ち向かってきたおかげで、それが肌感覚で身についたのかなと。
違うかもしれないけど。
 
一応言っておくと、JBCの管轄でがんばる大多数の選手をどうこう言うつもりはない。
「体制に不満があるなら自分で新たなコミッションを立ち上げればいいじゃない」などという暴論にはさらさら興味がない。
当たり前だが、実際に新たにコミッションを立ち上げた人を貶すつもりもない。
 
ここ最近「雇われない生き方」「雇われない働き方」等々、やたらとサラリーマンに対してマウントをとる論調が聞こえてくるが、個人的にはだいぶしょーもないと思っている。
誰かに雇われない生活力は間違いなくすごいが、それは別にサラリーマンを否定する理由にはならん。
 
 
そもそも論として、1国1コミッションが健全なんてのは誰の目にも明らかだからな。
新しいコミッション等はあくまで最終手段であって、気に入らないからといってボコボコ団体を乱立させていたらあっという間に収拾がつかなくなる。
 
ある程度の自由は必須だが、何ごともバランスが大事。
JBCがアカンという話は僕のようなパンピーの耳にもしょっちゅう聞こえてくるが、それでも組織に守られる恩恵というのは絶対にあるはずで。
 
「井岡完敗やな。ニエテスが凄すぎた。個人的には111-117かな。インファイトで歯が立たないのは予想外だった」
 
それを踏まえた上で、今回の中村優也からは逆境で物怖じしない強さが感じられたよねと申し上げている。
もしかしたら、JBCに守られない、縛られないフリーランス・ボクサーという立場が強く影響したのかな? と思った次第である。
 
繰り返しになるが、それが正解かどうかは別の話。完全に人それぞれとしか言いようがない。
 
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