大健闘の井上岳志。ハイメ・ムンギアに3-0の判定負け。でもめちゃくちゃカッチョよかったよな。採点は…118-110かな?【結果・感想】

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ヒューストンイメージ
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2019年1月26日(日本時間27日)、米・テキサス州で行われたWBO世界S・ウェルター級タイトルマッチ。同級王者ハイメ・ムンギアに同級3位の井上岳志が挑んだ一戦は、3-0(120-108、120-108、119-109)の判定でムンギアが勝利。ジャッジ2人がフルマークをつける大差でムンギアが3度目の防衛を果たした試合である。
 
 
開始のゴングとともに、高いガードと強靭なフィジカルで前に出る井上岳志。
対するムンギアはジャブを出しながら足を使い、リングを回るように距離をとる。
 
井上は被弾も気にせず前に出続け、ムンギアの左に合わせて大振りの右を打ち込む。そのまま体重を預けるようにコーナーに押し込み、至近距離で連打を浴びせる展開。
 
井上の前進に押され気味のムンギア。
だが、要所でボディ、ワンツーをガードの間から通し、各ラウンドで確実にポイントを重ねていく。
10R終了間際には井上の側頭部にフルスイングのフックをヒット。ダウン寸前まで追いつめるシーンも。
 
 
そして、両者ダウンがないまま12R終了のゴングが鳴り、試合終了。
ポイントでは大差がついたが、ムンギアにとっては戴冠以来もっとも苦しい試合となった。
 
「ムンギアvsホーガン感想。ホーガン大健闘! まさかの展開にビックリした。苦戦と聞いたのでてっきりインファイトかと…」
 

井上岳志に期待感。ムンギア相手に「フィジカル負けしていない」と豪語するのはすごいよね

先日DAZNでO.A.されたハイメ・ムンギアと井上岳志によるWBO世界S・ウェルター級タイトルマッチを観たので、今回はその感想を。
 
まず前回申し上げたように、僕はこれまで井上岳志の試合を一度も観たことがなかった。
 
「ハイメ・ムンギアに勝つ方法を誰か教えてください。井上岳志が米国で挑戦。世界王者は化け物だらけ?」
 
過去の記事を漁ると、どうやら至近距離での打ち合いが得意なインファイターとのこと。
また、この階級では規格外の上背とパンチ力を誇るムンギアを相手に「フィジカル負けはしない」と豪語する強気の持ち主。
 
へえ、マジか。
サダム・アリをフルボッコにして、リアム・スミスをパワーでねじ伏せ、ブランドン・クックをデコピンで倒したムンギアに負けないフィジカル?
 
そりゃすげえなおい。
これはちょっと期待してもいいのか?
「とてもじゃないが敵うわけがない」という声がそこら中から聞こえてくるけど、実はそうでもないのか?
 
陣営が口にした作戦も、
「まとわりついて体力を削る」
「近場でのカウンター」
の2つ。
 
うん、確かにその通り。
リアム・スミス以上のフィジカルとカウンター、根気のよさが井上岳志に備わっていれば、そこそこいい勝負になるかもしれない。
 
一度も試合を観たことないけど。
 
 
そんな感じで、井上岳志に謎の期待感を持っていた次第である。
 

いい選手でしたね井上岳志。パワフルなインファイターで、フライ級の木村翔っぽかった?

そして、結果的には期待通りの選手だったなと。
 
上背はないが筋骨隆々で、凄まじいパワーをみなぎらせる上半身。
ムンギアの強烈なパンチにもビクともせず、どんどん前に出続ける頑丈さを併せ持ち、野球のピッチャーのように身体を倒して振り回す右は迫力満点。この圧力で、ムンギアを何度も後退させる。
 
躊躇のないフルスイング。
強靭なフィジカル。
固いガード。
 
なるほど。
何となくのイメージでは村田諒太やフライ級のモルティ・ムザラネのようなタイプを想像していたのだが、ちょっと違った。
 
「すっげえ…! ウィリアムスがハードに勝利。Mr.まあまあの人が怪物王者を攻略。クリンチの少ないクリーンなボクシングって?」
 
どちらかと言えば、中量級の木村翔と呼んだ方がしっくりくる? のかな?
しかも、距離の詰め方や至近距離での連打は恐らく木村よりも上。
 
ムンギアの左に合わせて豪快に右を振り、そのままの勢いで身体を寄せる。
ムンギアの進行方向を塞ぎ、コーナーに押しつけ至近距離でさらに顔面へのフック。
 
もう少しボディが出ればよかったとも思うが、リアム・スミスの見せたムンギア対策を自分仕様に進化させた感じか。
 
ハイメ・ムンギアをパワーで圧倒したのも驚きだし、言っちゃ悪いがビッグマッチに向けての調整試合として呼ばれた立場でそれをやったのもすごい。
 
常々「日本人は貧弱で体格では勝てないなんて嘘」「むしろパワー面を前面に出して勝負する選手の方が活躍している」などと喚き散らしているが、今回の井上岳志はそれをさらにもう一歩上回っていた(僕の中では)。
 
今後どうするかは不明だが、この内容なら再び米国から声がかかるのではないか。
 
前回も申し上げたように、井上岳志は国内でできることはすべてやり尽くしている感が強い。なので、残るは世界タイトル奪取のみ。何とかもう一度チャンスがくればと思う。
 
「ロブ・ブラントがバイサングロフに11RTKO勝利。思ったよりずっと厄介な選手じゃない? つまらないし対戦する意味もないけど」
 

判定結果は仕方ないかな。個人的には118-110でムンギア。上半身がクネクネ動いて面倒なヤツでした

判定結果についてだが、個人的なガバガバ採点では118-110。もしかしたら117-111もあるかな? といった感じ。
フルマークが2人もいたのはちょっと意外だったが、ムンギアの明確な勝利には違いない。
 
そして、この結果は仕方ないかな? という気もしている。
井上岳志のスタイルはどうしてもポイント負けしやすく、なおかつムンギアと比べてパンチの種類も少な過ぎた。
 
DAZNの解説も言っていたが、リードの左をもう少し出すor身体を振りながら前進するなどの工夫があってもよかったのかもしれない。
 
「中村優也vsレイマート・ガバリョ戦に感動した話。あの舞台で初回から勝負をかけられるって、めちゃくちゃすごい」
 
これまでで一番ムンギアを苦しめた選手であることは間違いない。
だが、ムンギアのように身体が大きく手数の出る相手だと、KOしない限り勝つのは難しい。
 
あとはまあ、改めてハイメ・ムンギアが面倒なヤツだなぁというのも感じた。
 
この選手を攻略するには接近戦というのは恐らく正解なのだが、それ以上に粘り強いのがうっとうしい。
 
上半身をクネクネ動かして衝撃を逃がし、長い腕が邪魔にならず近場で連打も打てる。
しかも上半身を振り子のように左右に振って勢いをつけるので、スペースがない位置でも強烈なパンチが飛んでくる。
 
今回もガードの上から身体を揺らされ、そのつど井上が攻撃を寸断されるシーンが何度も見られた。
試合後のムンギアの顔がほぼ無傷だったのを見ても、恐らく明確なダメージを与えたパンチはなかったのだろうと。
 
これを“幅”と呼んでいいのかは不明だが、単にパワフルなだけではない、負けにくい選手なのかな? という印象である。
 

ジャッジなんてやるもんじゃねえな。あれだけ尊厳を傷つけられる職業なのに、どう見ても割に合わない


なお、これは余談+完全に僕個人の意見なのだが、「ホントにジャッジなんてやるもんじゃねえな」と。
 
今回のフルマーク2人に対する批判も含め、ボクシングのジャッジってクッソしんどそうだよねという話。
 
少しでもおかしいと思われれば、その瞬間から「無能」認定され、強烈な批判の対象になる。
たとえ本人にそのつもりがなくても「人気選手に対する忖度」「買収」と風評被害を受けてしまう。
 
試合の規模が大きくなればなるほどその声も肥大化し、本人のアイデンティティを否定されることすら……。
 
「プロボクシングのレフェリー、ジャッジ、立会人の報酬ってどのくらい?」
 
ビッグマッチのジャッジを務めることが本人にとってどこまで名誉なのかは不明だが、明らかにリスクに見合っていない気も……。
 
 
もちろん割に合わないのはボクシングだけではない。
 
2018年のテニスの全米オープン決勝では、判定を不服としたセリーナ・ウィリアムズが「人種によってジャッジに差をつけるのは止めてくれ」と主審に詰め寄るシーンがあった。
 
「大坂なおみのグランドスラム優勝がいかにすごいかを語ってみる。全米オープンでセリーナに勝ったって、とんでもない」
 
要は、あの主審は「あなたは人種差別主義者です」と罵られる姿を全世界に生中継されたということ。
 
その他、判定結果やジャッジに対する不満を「政治を持ち込むな」「人種で区別するな」といった言葉で表現する選手は後を絶たない。
 
本来、スポーツは「政治や人種等、諸々の問題はあるけど、今はチャラにしようや」というスタンスのはずなのだが、なぜかジャッジに関してはその境界線をあっさり踏み越える謎。
 
 
また、そういうデリケートな話以外でも、審判、ジャッジが尊厳を傷つけられる光景はしょっちゅう目にする。
 
フットサルのFリーグでは、審判に対する暴言は当たり前。
「どう見ても触ってるでしょ!!」
「お願いだからちゃんと見て!!」
「どこに目つけてんだよ!!」
正直、僕には罰ゲームにしか見えなかったし、「その競技が好き」という気持ちだけではとてもじゃないがやってられない(やらないけど)ほどの仕打ちに思えた。
 
「フットサル「Fリーグ」を初観戦した結果、楽しかったのでその感想を。フットサル観戦がエキサイティング」
 
日本のプロスポーツにおいて、審判、ジャッジで生計を立てられる競技はほんの一握りだと聞く。それ以外は基本的にボランティアに近い状態で、本人の情熱に依存する部分が大きいとのこと。
 
だったらなおさら一人一人を大事にするべきだと思うんですけどね。
それこそ運営の根幹に関わる可能性もあるわけだし。
 
 
もう一度言うけど、ホントにやるもんじゃねえな(やらないけど)。
 
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