僕がMLBを観なくなった理由。単純につまらないよね。熱量がなさすぎて。イチロー「データ偏重によって頭を使わなくてもできる野球になってる」

僕がMLBを観なくなった理由。単純につまらないよね。熱量がなさすぎて。イチロー「データ偏重によって頭を使わなくてもできる野球になってる」

2024年12月23日放送のドキュメンタリー番組「情熱大陸」。
イチローと松井秀喜がデータ偏重の野球界への危機感を訴える様子がO.Aされたわけだが。


イチローは以前からことあるごとにこれを口にしていて、2019年3月の引退会見でも多くの時間を割いていた。

「2001年に僕がアメリカに来てから、この2019年の現在の野球は全く別の違う野球になりました。まぁ、頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつあるような……。」

「日本の野球がアメリカの野球に追従する必要なんてまったくなくて、やっぱり日本の野球は頭を使う面白い野球であってほしいなと思います。」

「“イチロー節”全開、85分間の引退会見 一問一答ノーカット「孤独感は全くない」」
 
というわけで今回はこのネタを。
僕が近年の野球(スポーツ)観戦で感じることを含めてあれこれ言っていく。
 

最近のMLBをほとんど観ていない。なぜならおもしろくないから

まず僕は今のMLBをほとんど観ていない。
応援しているチームもないし、選手にも詳しくない。
さすがに2024年の大谷翔平とドジャースの結果くらいは知っているが、試合自体はほぼスルー。
気になる日本人選手の試合をピンポイントでチェックするのみである。
 
山本由伸復帰登板感想。まだまだこんなもんじゃないから。打者を絶望させるのが本来の山本由伸だから。大谷翔平、今永翔太、ダラス・カイケル
 
なぜならおもしろくないから
 
少し前に申し上げた覚えがあるが、近年のMLBの試合は絶対的に熱量が足りない
どの選手も決められた動作を淡々と“こなす”のみで平坦。極論、感情のないロボットが野球をやっている印象すら受ける。
 
これがイチローの言う「過度にデータを重視した」結果なのだと思うが、人間味がなさすぎて退屈というのが僕がMLBから離れた一番の理由である。
 

似たようなフォーム、スイング、球種、投球パターンばかり。レベルが上がりすぎたのもあるよね

何試合か観ればわかると思うが、今のMLBは尖った特徴を持った選手が少ない。
どの打者も似たフォーム、似たスイング。ピッチャーも同じような球種、投球パターンで淡々と打者を打ち取る。
 
データ解析、動作解析によって最適解が示され、全員がそこを目指す。イチローや松井が言うには指標に従わない選手はメンバーから外されてしまうとか。
 
松井秀喜「打順の意味がなくなっている」、イチロー「それぞれの役割が薄れている」というのはそういうことなのだろうと。
 
 
また、レベルが上がりすぎたせいで余計な動きを入れる余地がなくなっているのも大きい(と思う)。
 
「アベレージで155km、変化球は150km台で鋭く落ちる」みたいなピッチャーが増え、打者はそれに対応するために極力無駄を省く必要に迫られる。
 
バットを最短距離で出す+小さな動作で出力を上げるためにいかに効率よく身体を使うか。
人体の構造上、スピードとパワーの両立を突き詰めるとだいたい似た形に収束する。
 
しかも野球は再現性のスポーツである。
エース級のピッチャーは年間30登板前後、主力打者は500打席前後。
パフォーマンスを維持するにはどれだけ同じ動作を繰り返せるか、小さな力で大きな効果を生み出せるかが重要になる。
 
なおさら1回1回の動作はシンプルに、その分個性は失われていく。
 
上沢直之ソフトバンク入りってそこまでボロカス言われる? ソフトバンクの4年10億が破格だとも思わんけど。日ハムはどの程度本気だったの? 筒香を引き合いに出してクサすのも謎
 

効率を重視するあまり考える能力がないがしろに。わざと詰まらせる技術も野球の醍醐味

イチローによると今は“選手が自分で考える”“感じる”能力がないがしろにされているとのこと。
 
先日、イチローが母校愛工大名電で走塁の指導をした記事を読んだが、今回の「情熱大陸」でもそのシーンが使われていた。


打球判断の際の構え、立ち方、体重のかけ方。
進塁、帰塁時に1歩目をどちらの足で踏み出すか、速く走るにはどこを意識するか、などなど。
データに表れない部分の重要性を伝えていたわけだが、なるほど確かに。
 
また、もっともボールが飛ぶ打球角度は結構だが、わざと詰まらせて野手の間に落とす技術も存在する。それも野球の醍醐味であるとイチローは以前から言っていた。
 

誰と勝負してるのかわかれへん。手元のタブレットと戦ってるの?

たとえば昔、キャッチャーが地面をならす仕草を見た解説者が「次にカーブがくるって見え見えじゃないですか」「キャッチャーがあんなことをやったらダメですよ」と憤っていたが、もしかしたら今のMLBは「○○球目に××がくる確率が何%」「誰々は××の打率が何割」というデータの方が優先されるのかもしれない。
 
キャッチャーの仕草でカーブがくるとわかっても、
「データ上は次がカーブである確率は低い」
「誰々はカーブよりもまっすぐの打率が高い」
「よって、次の球には手を出すべきではない」
みたいな。
 
 
投球の合間に酒の席での失敗や女性関係の話題を振って打者の動揺を誘うキャッチャーがいたという話もよく聞く。
 
そこまで極端でなくてもキャッチャーは打席での仕草や雰囲気を見て球種、コースを決める、打者側はキャッチャー心理を読んで対応するといった駆け引きは常に行われていたはず。
 
そういう生身の人間同士のやり取り、駆け引きを排除して確率ばかりを追い求めるのはどうなのよ?
 
もはや何と勝負しているのかすらわからない。
あなたは目の前にいる相手じゃなくて手元のタブレットと戦ってるの?
そんな野球、本当に楽しいか?
 
最初に申し上げた「今のMLBは熱量を感じない」「人間味がなさすぎて退屈」の正体はこの辺にあるのだろうと。
 
侍ジャパン(日本)の敗因。油断、緩い空気。飛ばないボールと左投手の横変化。NPBのガラパゴス化。井端辞めろなんて冗談じゃない
 

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「サッカーの背番号10=野球の4番打者」。フィジカル偏重のサッカーは以前とは別競技なんだって

番組内でイチローが「日本は流されやすい、アメリカは個性を尊重する文化だと思ってたけど全然違うよね」と言っていたが、野球に関してはマジでそんな感じ。
 
上述の通り今のMLBはどの打者も似たようなフォーム、ピッチャーは似たような球種構成、投球パターンを淡々と繰り返す“作業ゲー”と化している。
 
個性で言えば日本の打者の方がよっぽど残っているし、高校野球ではさらに変な打ち方の選手に遭遇する。
 
なぜなら(球が遅い、変化球もトロい)高校野球ならそれでも何とかなるから。
上の舞台にいくにつれて余計な動きを入れる余裕はなくなり、レベルがカンストした今のMLBではすべての動作をシンプルにしなくては生き残れない。
 
 
少し前にサッカーの中田英寿とフランチェスコ・トッティも似たようなことを言っていた。

 
・今のサッカーはテクニックではなくフィジカル
・走るコース、距離をすべて機械で測って判断する
・「走る」こととサッカーは別ものなのに
・ファンタージのあるプレーはもう見られない
 
中でも
「今10番の選手を見つけるのは難しい」
「誰でも10番をつけることができる」
「以前は10番には意味があった」
というトッティの言葉はおもしろい。


 
これは松井秀喜の「打順の意味がなくなっている」に通じるものがある。
「サッカーの背番号10=野球の4番打者」と考えればしっくりくるのではないか。
 
 
サッカーに詳しくないのでわからないが、町田ゼルビアのカウンターサッカーが従来のポゼッションサッカーを凌駕したのも近年のフィジカル偏重の影響なのかもしれない。
 
FC町田ゼルビアvsFC東京現地観戦。本日も正義を執行!! 俺たちのスター黒田剛はリアリストであり軍曹でもある笑
 

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効率は大事だけどそれだけじゃない。データでは測れないノスタルジーがスポーツにはある

どんな競技でもそうだが、レベルが上がれば上がるほど効率を重視せざるを得なくなる。
動作解析、データ解析によって(フォーム、戦術の)最適解が示され、選手はそれに従うことが“正”とされる。
 
 
また、優れた選手をより多く輩出するには確立されたシステムに放り込んで数年熟成→完成品の中から高性能の個体をピックアップするのがもっとも効率的。
そこに個人の思想、主張が入る余地はないし入れる必要もない。
 
だけど、それの何がおもしろいの?
一部の金持ちと高学歴のアナリストに支配される業界は本当に健全なの?
熱量と繊細さとロマンがあってこそのプロスポーツじゃないの?
 
2013年の日本シリーズ、前日に160球完投した田中将大が翌日にリリーフ登板した試合は今でも語られているが、そういう馬鹿げた采配もスポーツの醍醐味。


人間が理解不能な力を発揮する瞬間、データでは測れないノスタルジーがスポーツにはある。
それらをすべて「無駄なもの」として排除するのは絶対に違う。
 
ところが今のMLBは完全にそっち側に突き進んでいる。そして恐らく何年か遅れで日本の野球も追随する。
この流れはめちゃくちゃ危険だとイチローは繰り返し訴えている。
 
と同時に僕がMLBを観なくなった要因でもある。
 
 
そりゃあなた。
あんな熱量のない試合をダラダラ垂れ流してれば人気も低下しますよ。
 
「「2番目に低い数字だ」大谷翔平がいてもMLB人気が衝撃的に落ちている!? 米メディアが示唆「昨年より…」」
 
その中でようやく出てきたスターが大谷翔平なわけで。
アジア戦略のためにもリーグを挙げてゴリ押しするのは当然ですよね。
 

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