映画「殿、利息でござる!」感想。ハードルを上げ過ぎて失敗した典型例。最初に余計な知識を詰め込むのも考えものだな。羽生結弦の演技はいいけど、若殿様って無能だよね?
- 2020.07.13
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映画「殿、利息でござる!」を観た。
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「殿、利息でござる!」(2016年)
仙台藩領内の宿場町・吉岡宿の生活は困窮していた。
財政難の仙台藩からは容赦なく重税が課され、町人の破産と夜逃げは後を絶たない。
京都から帰ってきたばかりの茶師・菅原屋篤平治はそんな町の窮状を見かね、吉岡宿の有志で銭を出し合い藩に貸し付けることを思いつく。藩に銭を貸し付け、その利息で町の税を賄うという突拍子もないアイディアである。
ただ、百姓の身分でお上に金を貸すなどあまりに現実味に欠ける。しかも庶民が千両(約3億円)という大金を作ること自体が夢物語であると、篤平治は半ば冗談のように笑い飛ばすのだった。
ところが、それを聞いた造り酒屋の当主・穀田屋十三郎は俄然目を輝かせる。彼は命の危険をとして代官に訴状を渡そうとするなど、篤平治以上に町の窮状を憂い思い悩んでいたのである。
十三郎の突然のやる気に戸惑う篤平治だが、それを尻目に十三郎は同志集めと銭集めに奔走する。
吉岡宿の肝煎・遠藤幾右衛門や大肝煎・千坂仲内を巻き込み、私財を投げ打ってまで銭をかき集める十三郎。だが、そこまでしても目標の千両までには一歩届かない。
そんな中、十三郎の弟で造り酒屋浅野屋を継いだ浅野屋甚内が出資の協力を申し出るのだが、なぜか十三郎はこれに強く反対する。
十三郎は長年実家とのわだかまりを抱えており、弟の甚内が出資することを快く思わない。弟が絡むと聞いた途端、自分はこの件から降りるとまで言い出すのであった……。
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視聴前に余計な知識を入れたせいでストーリーに没頭できなかった。自分の中で無駄にハードルを上げちゃったよね
仙台藩の宿場町の窮状を救った町人達の史実をもとにした映画「殿、利息でござる!」。
レビュー記事や世間の評判がよく以前から気になっていたのだが、Amazonで配信されているものを見つけて先日ようやく視聴した次第である。
表題の通りなのだが、この作品は(自分の中での)ハードルを上げ過ぎて失敗した典型例だと思っている。
申し上げたようにレビュー記事などを読むと今作の評価はかなり高い。
・ジャケット(ポスター)のデザインからコメディ作品だと思って観始めたところ、思わぬ感動作で驚いた。
・出演陣が豪華で贅沢。それぞれ個性のある演技を見せてくれている。
・損得抜きで銭集めに奔走する彼らの姿に心が洗われる。
・羽生結弦選手の演技が思った以上によかった。
などなど。
好意的な意見を多く目にしたことで、自分の中で無駄にハードルが上がってしまった感が強い。
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確かにジャケット(ポスター)のデザインはコメディチックで、実際のストーリーとは若干の乖離がある。だが、それを踏まえた上で“心が洗われるほどの感動作”とまではいかなかったのが正直なところである。
いや、もうね。
余計な知識を入れずに普通に観ればもっと楽しめたのだろうとは思う。
恐らくゴリゴリのコメディ作品「超高速!参勤交代」とキャストが被っていたことも影響したとは思うが、「感動する」という言葉が先走りして最後までストーリーに没頭できなかったのは本当に悔やまれる。
早々にオチが読めたのが…。優秀な弟に対するコンプレックス→それって誤解なんだろ? 知ってたよ()
具体的には、早々にオチが読めてしまったことが大きい。
守銭奴と呼ばれた悪名高き先代・浅野屋甚内。
冒頭、夜逃げする家族に「どこへ行く?」「確かお主らに金を貸していたな」と声をかけるシーンから今作はスタートするのだが、この時点では家族のその後が描かれることはない。
それ以降、阿部サダヲ演じる穀田屋十三郎が優秀な弟に対するコンプレックスを抱えながら銭集めに奔走するわけだが、ああ、なるほどと。
守銭奴呼ばわりされた先代には実は本当の目的があり、弟もそれを理解している。養子に出された十三郎だけが父親と弟に対するわだかまりを抱えたまま生活していて、銭集めに奔走する過程でようやく誤解が解けて一家が一つになる流れ。
多くの方がこの大どんでん返し? に感動したとのことだが、残念ながら僕は割と早い段階でこのオチに気づいてしまった。
別に僕の洞察力が鋭いとかではなく、今作の出来云々の話でもない。
単純に視聴前に余計な知識を詰め込んだことが原因というヤツで、「ジャケット(ポスター)デザインからは想像できない感動作」の触れ込みによって図らずも感動ポイントを先回りしてしまった典型的な失敗パティーンである。
阿部サダヲが主役? いやいや、むしろ 瑛太ちゃうか? アイツめっちゃ主人公しとったやんけ
また、阿部サダヲの役どころがどうにもこうにも主人公っぽくなかったというのも要因ではある。
出演者のクレジットや舞台挨拶など、物語の中心にいるのは常に阿部サダヲ。どこのサイトを見ても「主演:阿部サダヲ」とあるので、今作の主人公が阿部サダヲ演じる穀田屋十三郎であることに疑いの余地はない。
だが、全体的にはどうも“主人公っぽさ”が足りなかった気がする。
コンプレックス満載の性格や“やもめ”という立場もあるとは思うが、それ以上に役回り自体が。
そもそものアイディアは瑛太演じる菅原屋篤平治のものだし、決め手となる出資をしたのは妻夫木聡演じる浅野屋甚内。志がバラバラの町人連中がまとまったのは寺脇康文演じる肝煎・遠藤幾右衛門や千葉雄大演じる大肝煎・千坂仲内のリーダーシップによるもの。
十三郎は彼らのそばでオロオロしているだけ(言い過ぎ?)で、主人公らしさはほぼ皆無である。
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というより、むしろ瑛太演じる菅原屋篤平治の方がよっぽど主人公感に満ちていたと思う。
・命がけで訴状を出そうとする穀田屋十三郎を寸前で静止し、
・お上に金を貸し付け、その利息で宿場を潤すというアイディアを出し、
・テンションの高い面々を横目に常に冷静さを保ち、
・私財を投げ打って銭を絞り出し、
・ヘタレの大肝煎にハッパをかけて再度交渉に向かわせ、
・想定以上に出資しようとする浅野屋甚内をたしなめ、
・新婚の女房の尻に敷かれながらも“当事者”としての結束を図る
ストーリーを動かす先導役としても全体を俯瞰するナビゲーターとしても優秀で、ヘタレた大肝煎を立ち直らせるシーンではここぞの勝負強さも見せつけた。
どこからどう見ても今作の主人公は穀田屋十三郎ではなく、菅原屋篤平治の方が適任である。
仙台藩の藩主チョロ過ぎワロタw どれだけ影響されやすいんだよお前。吉と出たからよかったものの
あとはまあ、 仙台藩の藩主様ってクッソ無能ですよね。
若殿様役の羽生結弦は確かにそこそこ違和感のない演技をしていたと思うが、それ以前にこのキャラクター自体がアカンやろと。
松田龍平演じる萱場杢の課す重税を何の疑問もなく受け入れ、町人の苦しみにはいっさい気づかない。
ところが実際に宿場の町人が金を用意した暁には、浅野屋の教訓に思いっきり影響されるという。
「人は万物の霊長であるがゆえに、牛馬を苦しめ、その背中に乗るようなことをしてはならぬ」
「ましてや同じ人間の肩を苦しめる駕籠に乗るなど、言語道断」
この教訓にいたく感銘を受け、馬も駕籠も拒否して徒歩で登場するのだが、もう若殿様チョロ過ぎワロタww
いやアナタ、どれだけ影響されやすい性格しとんねん。
羽生結弦の演技どうこうはともかく、あまりに自分がなさ過ぎだろうと。
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まあ、実際にはそんな単純な話ではないのだと思うが、とにかく今作からは「お飾りのような若殿様」という印象しか受けない。藩の財政を司る萱場杢にとってはめちゃくちゃ扱いやすい上司だったのではないか。
それが急に自我に目覚めるどころか、浅野屋の酒の名前まで命名し始めるというね。
結果的にこれが吉と出て吉岡宿は幕末まで栄えたのだが、一歩間違えれば破滅に突き進む可能性すらあったわけで。
この「殿、利息でござる!」は単純な感動話だけではない、運の要素も大きく味方した上でのどんでん返しだったのかな? などと思ったり。
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