山崎秀晃vs安保瑠輝也感想。敗戦を糧に覚悟を持って挑んだ山崎が怒りの鉄拳で安保をKO。ああいう“怒り”ってマジでバカにならないんだよな【2020.9.22K-1】

山崎秀晃vs安保瑠輝也感想。敗戦を糧に覚悟を持って挑んだ山崎が怒りの鉄拳で安保をKO。ああいう“怒り”ってマジでバカにならないんだよな【2020.9.22K-1】

2020年9月22日、エディオンアリーナ大阪で「K-1 WORLD GP 2020 JAPAN~K-1秋の大阪決戦~」が行われ、メインイベントでK-1 WORLD GPスーパー・ライト級王者安保瑠輝也と山崎秀晃が対戦。1R1分19秒KOで山崎が勝利し、初の戴冠を果たした一戦である。
 
 
約半年ぶりのK-1大箱開催となった今回。
 
ただ、個人的な注目度はそこまで高かったわけではなく。
 
安保瑠輝也と山崎秀晃によるタイトルマッチやシュートボクシングから移籍したMIOがスーパーファイトに登場することは知っていたが、これといった目玉がある感じもしない。そのおかげでいまいち食指が動かなかった。
 
当日も19:30前後に帰宅し、あれこれ用事をこなしながら野球と交互にボーっと観ていた次第である。
 
安保、山崎ともにファンでも何でもないのだが、一応メインくらいは観ておくかと思い……。
 
何じゃこりゃ!!
 
おおう、マジか。
山崎秀晃、なんつー勝ち方すんねん。
 
安保瑠輝也は確か「この試合は通過点」「さっさと倒して木村“フィリップ”ミノルのいるスーパーウェルター級に階級アップする」など、ことあるごとに強気な発言を繰り返していた気がするが……。
 
見事にフラグを回収してしまったわけか。
 
 
そんな感じで、今回は突然のアップセットにめちゃくちゃ驚かされたK-1のメインイベントについての感想を適当に述べてみたい。
 
安保瑠輝也vsマニー・パッキャオ感想。「ボクシングは甘くない」風に言うなら「いくらレジェンドでもちょろっと練習したくらいで勝てるほどキックのトップ選手は甘くない」
 

すごい試合だった。思わず声が出るほどのKO劇。両選手ともよく知らなかったけど

まず申し上げたように僕はどちらの選手のファンでもなく、試合もあまり観たことがない。
 
安保瑠輝也は長身で蹴り足が長く、スペースのある位置ではめっぽう強い選手というイメージ。
ゲーオ・ウィラサクレックとの2戦はいずれも中間距離でのハイレベルな差し合いが展開され、どちらにポイントが流れてもおかしくない試合に。特に初戦などはゲーオの勝ちじゃないの? と思った記憶がある。
 
ただ2018年12月の山崎秀晃戦以降、佐々木大蔵、ゲーオ×2、不可思と強豪相手に連勝を続けており、その分自信もつけていると思われる。
 
 
一方挑戦者の山崎秀晃については、申し訳ないことに安保瑠輝也以上に知らぬ存ぜぬ状態である。
 
過去に観た試合と言えば2019年11月の瑠久戦、2020年1月の堀井翼戦くらいで、何となくパンチの貫通力があって右クロスが強い? 程度の認識でしかなかった。
安保瑠輝也とは2018年に一度対戦経験があり、今回が再戦というのも直前で知ったくらいのクソニワカw である。
 
 
とまあ、こんなゴミ知識で観戦をスタートしたのだが……。
 
すごかった。
 
開始直後から前後にステップを踏みながら徐々に距離を詰める山崎に対し、左構えで受けて立つ安保はテーピングをグルグルに巻いた山崎の左足めがけて鋭いローを放っていく。
 
だが、山崎はローキックを受けてもまったく怯まない。
遠い位置からのサイドキックで安保の姿勢を崩し、渾身の右フックをクロスで打ち込む。さらにバックハンドブローで安保にロープを背負わせる流れ。
 
安保のミドルにいったんは後退させられたものの、そこから距離を詰めて右クロスの連打を浴びせ、あっという間に最初のダウンを奪う!!
 
立ち上がった安保の飛び膝をガードで回避し、渾身の左フックを同時打ちでねじ込み安保を仰向けに!!
 
誰が見ても「あ、終わった」と確信する失神KOでの瞬殺劇。歓声が規制された場内からも思わずどよめきが起きるほどの衝撃的な光景である。
 
武尊vsレオナ・ペタス感想。武尊の主人公属性がすべての予想をひっくり返す。K-1のすごさと未成熟さが絶妙なバランスで噛み合った
 

敗戦を乗り越えて経験を積み、この試合に挑んだ山崎が安保の弱点を突いての勝利

恐らく安保瑠輝也という選手は自分の間合いで勝負できているうちは強さを発揮するが、強引に来られるとタジタジになるタイプなのだと思う。
 
今回の試合後に大急ぎで両者の過去の試合を漁ったのだが、確かにそんな感じ。
 
ゲーオとの2戦や不可思戦では懐の広さと前蹴りでうまくスペースを作り、自分の得意な位置での差し合いを展開していた。
 身体を伸ばすようにして打つパンチも含め、相手を懐に入れさせない流れに持ち込むのが大前提のスタイルなのだろうと。
 
だが、無理やり前に来られると一気に厳しくなる感が強い。
ゲーオ戦でもたびたび間合いを詰められてコーナーを背負うなど、ゴリゴリ前に出られた場合にガードを固めて亀になる様子が散見される。
 
それを踏まえて2018年12月の第1戦を観てみたところ……。

ほほう、なるほど。
思った以上の大激闘に釘付けになってしまったw
 
ハイキックとローキックを駆使してコツコツダメージを与えていく安保に対し、山崎はサイドキックと鋭い踏み込みで距離を詰める。中間距離から右クロスを浴びせ、そのままの勢いで近場の連打につなぐ。
 
おいおい何だコレ。
すげえいい試合じゃねえか。
 
安保瑠輝也「山崎秀晃戦は通過点」
↑いや、嘘つけww
どう考えても激闘必至だろ。
 
 
そして今回、山崎はこの試合での反省を見事に生かし切ったと言えるのではないか。
 
サイドキックで相手の体勢を崩して中に入り、亀になった安保のガードの外側から得意の右クロスを浴びせて最初のダウンを奪う。
焦った安保の飛び膝を落ち着いてガードし、最後は至近距離での左フック一閃。
 
長身で距離が遠い安保とは離れて勝負しても敵わない。
逆に間合いを詰めればハンドスピードと1発の威力で優位に立てる。
その上、安保は打ち合いの最中に相手から顔を背けて目を切る癖があるので、懐に入りさえすればおのずと1発を当てるチャンスが生まれる。
 
逆に試合が長引けば体格差で押し切られてしまう可能性が高い。
 
諸々を加味した上で、確信を持って短期決戦を選んだのだろうと。
 
白鳥大珠vsゴンナパー、山田洸誓vs安保瑠輝也予想。THE MATCHで意外とおもしろそうな組み合わせなので展望を考えてみた。でも地上波はいらんけどね笑
 
安保瑠輝也がゲーオや不可思、佐々木大蔵など、ゴリゴリのパンチャーとは言えないタイプを相手にしている頃、山崎秀晃は堀井翼や寺島輝といった長身選手+サウスポーとの対戦を重ねてきた。
 
中でも堀井翼を沈めた左フックは今回のKOパンチとまったく同じもの。長身選手の懐に入り、同時打ちで先に当てるタイミングを掴んだという意味でも過去の経験が生きたと言えそうである。
 

両者の覚悟の違いはあったと思う。先を見据えていた安保と引退をかけて挑んだ山崎。“怒り”ってホントにバカにならんのですよ

あとはまあ、多くの方がおっしゃっているように両者の覚悟の違いが出た試合でもあったと思う。
 
戦前から「通過点」「この試合を最後に階級を上げる」「木村“フィリップ”ミノルに挑戦する」と強気の発言を繰り返していた安保瑠輝也に対し、負けたら引退と決めてリングに上がった山崎秀晃。
 
一度勝利した相手を「通過点」呼ばわりして先ばかり見ていた分、やや脇が甘くなった部分はあるのかもしれない。
それこそ第1戦目を観れば、楽な試合にならないことは明白なのだが。
 
感想・解説に定評のある(と勝手に僕が思っている)砂辺光久パイセンも「両者の覚悟が違ったのでは?」とおっしゃっておる。

 
別に安保瑠輝也がYouTubeの撮影にかまけて練習を疎かにしたとは思わないが、ことあるごとに「今回の試合は通過点」と連呼したせいで山崎の怒りを買ったというのはあると思う。
 
いやもう、こういうのってマジでバカにならないんだよな。


以前にもちょろっと申し上げたが、相手への“怒り”には意味不明な集中力や覚悟を生み出す要素がある。
 
京口紘人vsタノンサック・シムシー戦を京口紘人本人が自分のYouTubeチャンネルで生配信←僕がこれを「ない」と思う理由
 

戦前から強気な発言が目立った安保については「選手としてリスペクトしています」としながらも、内心はフツフツとこみ上げる怒りを抑えていたと心境を告白。

うん、だよな。
自分の特性と相手の攻略法がはっきりしていたとはいえ、開始直後からあそこまで思い切った攻めに出るには相当の覚悟がないと難しい気がする。
 
マイケル・“ヴェノム”・ペイジ(MVP)の塩&塩な判定勝利。カウンター狙いのヒューストンを攻めあぐねてブーイングまみれに
 
ついでに言うと、格闘家がYouTubeで素人をボテくり回す企画は個人的に好きじゃない。


格闘技界の長期的視野や王者らしい振る舞い、格闘家の誇りどうこうははっきり言ってどうでもいい。
 
単に自分より弱い人間相手に己の力を誇示しようとするメンタルが嫌い。
 
あんなもん、不良校の生徒が他校相手にイキり散らすようなもんですからね。そういう田舎のヤンキー的なダサい考えは18歳で卒業しとけよという話ではある。
 

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