出来がいまいちなエストラーダが足の動かないクアドラスを持て余しながらも11RTKO。メキシコシティはボクシングをやる場所じゃないんだろうな【結果・感想】

出来がいまいちなエストラーダが足の動かないクアドラスを持て余しながらも11RTKO。メキシコシティはボクシングをやる場所じゃないんだろうな【結果・感想】

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2020年10月23日(日本時間24日)、メキシコシティのTVアステカ・スタジオで行われたWBC世界S・フライ級タイトルマッチ。同級王者ファン・フランシスコ・エストラーダvs同級3位カルロス・クアドラスの一戦は、11R2分22秒でエストラーダがTKO勝利。2度目の防衛を果たした試合である。
 
 
2019年8月以来1年2ヶ月ぶりのリングとなった王者エストラーダ。挑戦者カルロス・クアドラスとは2017年9月のSuperFlyで対戦。大接戦の末に12R判定勝利を挙げており、今回は約3年越しの再戦となる。
 
 
試合は序盤からクアドラスがハンドスピードを活かした連打を浴びせ、エストラーダに反撃の余裕を与えない。3Rには右アッパーからの左フックでエストラーダに尻餅をつかせるなど、序盤はクアドラスがスピード差を発揮して試合を優位に進める。
 
ところが4、5Rあたりからクアドラスが失速。
打ち終わりにカウンターのフックを被弾するシーンが目立ち始め、徐々にエストラーダにペースを奪われていく。
 
中盤以降も激しく打ち合う両者だが、パンチの的確さと1発1発の威力でそのつどエストラーダが打ち勝つ。クアドラスも疲労困憊ながらも反撃を見せるものの、終盤11Rに計3度のダウンを奪われ万事休す。
 
連打でクアドラスが棒立ちになったところでレフェリーが試合をストップし、11R2分22秒で王者エストラーダの2度目の防衛が決定した。
 
ロマゴンvsエストラーダ114-114かな。ロマゴンはやっぱりフライまでの選手。軽量級で重量級っぽい試合をするのが井上尚弥
 

第1戦以上のエキサイティングな試合。エストラーダがここまで顔面をボコボコにされるとは…

S・フライ級の有力選手が勢揃いしたDAZN興行。
メインイベントにはWBC王者ファン・フランシスコ・エストラーダが登場し、同級3位のカルロス・クアドラスと約3年ぶりの再戦に臨んだわけだが……。
 
なお1戦目ではエストラーダが判定勝利を挙げたものの、ポイントは3者ともの114-113をつける大接戦。一部からクアドラスが逃げ切ったのでは? という意見も聞かれるなど、 とにかく一進一退の好試合だった。
 
 
そして、今回もまた……。
3Rにダウンを奪うなど、クアドラスが前半から飛ばして優位に立つと、中盤からエストラーダがカウンターを中心にペースを奪い返して試合をコントロール。……したかに思えたものの、8Rからクアドラスが再びスパートをかけて強引に流れを引き戻す。
 
だが、再三カウンターやボディを被弾し続けて体力を削られ、11Rにダメージが噴き出してのTKO負け。
 
前半はクアドラス、中盤から後半にかけてエストラーダという流れは前回と同様だが、エキサイティングさという意味では今回の方が第1戦目を上回ったのではないか。
 
 
実際、エストラーダがここまで顔面をボコボコにされた試合というのはこれまでなかった気がする。

 

試合勘の戻らないエストラーダと、足が動かず前半勝負を仕掛けるしかなかったクアドラス

これは完全に僕の意見なのだが、今回のエストラーダは出来自体はあまりよくなかったと思う。
前回から1年2か月のブランクに加え、慢性化? しつつある拳の怪我や新型コロナウイルスの影響なども重なり、試合勘はまったく戻っていない印象。
上半身と下半身のバランスが悪く、持ち味であるコンビネーションのスムーズさはだいぶ失われていた。
 
中盤から後半にかけてある程度戻してきたようだが、それまでは下半身に力が入らずフワフワしたままラウンドを重ねていた。
 
やっぱりエストラーダとビーモンじゃ実力差があり過ぎたよな。相手を挑発したりおちょくったりはエストラーダには似合わんけどな
 
一方、敗れたカルロス・クアドラスについては、全盛期の力が失われた中でのMAXを見せてくれたのではないか。
 
もともとこの選手はハンドスピードと縦横無尽に動き回る足が持ち味で、2014年5月のシーサケット・ソー・ルンビサイ戦や2015年4月のルイス・コンセプション戦などでは12Rに渡って足を止めずにポイントアウトで勝利している。
 
2015年11月の江藤光喜戦を始め、ボディを効かされて失速するケースが目立つものの、そこから足を使って逃げ切る流れが一つの定番となっていた。
 
 
その後、2018年2月のマックウィリアムス・アローヨ戦あたりからフットワークがガクッと落ち、ドラッグ問題? などもあって現在は全盛期のコンディションとまではいかない。
 
だが、その中でも今回は相当気合いを入れて仕上げてきていたと思う。
 
全盛期ほど足が動かないために従来の“当てては離れる”のスタイルで逃げ切るのは難しい。
とはいえ、ハンドスピードと身体の大きさは健在なので、S・フライ級ではやや小柄なエストラーダが相手なら前半からフルスロットルで飛ばせば十分勝ち目はある。
 
エストラーダが怪我明けだったことも踏まえたのだと思うが、序盤から一気に攻めた結果があの3Rのダウンにつながったのだろうと。
 
試合勘がまったく戻らずコンディションの上がらないエストラーダと、“これしかない”やり方で前半勝負を仕掛けたクアドラス。
序盤はエストラーダが完全にスピード負けしていたことを鑑みても、両者の状態がそのまま出た序盤3Rだった。


 
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前半型でボディの弱いクアドラス。カウンターが当たりそうな感じがプンプンしたよね

ただ、申し上げたようにクアドラスは基本的には前半型の選手。中でもボディの弱さは致命的と言えるほどで、毎回近場でのボディブローで身体を丸めて後退する姿が印象深い。
 
この試合でも前半3Rまでは凄まじい馬力とラッシュで優位に立ったものの、4Rからは早くも失速を見せる。
連打の回転が落ちてエストラーダのコンビネーションを抑えきれなくなり、足が利かないせいで打ち終わりにバランスを崩してカウンターを被弾する。
さらに動きを止めたところでボディをもらい、ガードが下がったタイミングで再び顔面にフックをドカン。
 
開始直後から「連打の迫力はすごいけど、打ち終わりがおっかない」「フックがめちゃくちゃ当たりそう」などと思いながら観ていたところ……。
 
この日のエストラーダは明らかにバランスがおかしく今にも左フックが当たりそうな雰囲気だったが、クアドラスはそれ以上。4、5Rにはクアドラスがバテバテだったこともあり、中盤以降はことごとくエストラーダが打ち勝つ流れに。
 
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クアドラスのがんばりには心打たれるものがあった。ここぞの局面で折れないさすがのメンタル

それでも8Rから無理やりエンジンを吹かしてペースを引き戻したクアドラスは文句なしに素晴らしかった。
 
一応言っておくと、直前のラウンドまでは完全にエストラーダの流れ。
 
近場での打ち合いでそのつど打ち負け、強引に前に出ればガードの間からアッパーをかち上げられる。
はっきり言って、バテバテのクアドラスがあそこから勝機を見出すことはほぼ不可能に思えた。
 
ところが8Rに入ると、クアドラスが一段ギアを入れ替え猛ラッシュを浴びせる。1発の精度、威力のエストラーダを再びクアドラスが手数で抑え込みにかかる展開に。
 
対するエストラーダも足を踏ん張り腕を振り回して応戦。疲労困憊の中、激しく打ち合う両者に無観客のスタンドからも関係者の声援が飛ぶ。
 
いや、そうなんだよな。
あの局面でガタガタと崩れずに持ちこたえるのがクアドラスという選手。どれだけボディを効かされても足を止めずにポイントを拾いまくった全盛期と同様、ここぞの場面で折れない強靭なメンタルがあるからこそ、三たびこの舞台に舞い戻ってきたのだろうと。
 
11Rにダメージが噴出して力尽きたものの、中盤から後半にかけてのがんばりには心打たれるものがあった。
 
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標高2240mのメキシコシティはボクシングの世界戦をやるような場所じゃない。井岡一翔もこの面々に入れればと思ったけど、こんな場所でやらされるくらいなら…

あとはまあ、正直メキシコシティってのはボクシングの世界戦をやるような場所じゃないんでしょうね。
 
前回このリングに上がったS・フェザー級王者のミゲール・ベルチェルトが「標高が影響してバテてしまった」とコメントしていたが、それこそ標高2240mという高地で10R、12Rのボクシングなど正気の沙汰ではないのだと思う。
 
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地元球団が本拠地とする野球場もあるが、ガチでピンポン球みたいに打球が飛ぶらしい。
世界最大級のサッカースタジアムと呼ばれる“エスタディオ・アステカ”の名は僕も聞いたことがあるが、そんなところでサッカーをやるのはどうなのよ? という気もしないでもない。
 
 
今回のようなS・フライ級のトップが集まる場所に本来は井岡一翔もいたかっただろうなとも思ったが、案外そんなことはないのかもしれない。
 
欠陥だらけのリングで実力を出しきれずにフラストレーションを溜めるくらいなら、慣れ親しんだ日本で田中恒成の相手をしていた方が幾分マシなんじゃねえの? みたいな。
 
 
ついでに言うと、世界タイトル再戴冠を目指す比嘉大吾は減量をがんばってS・フライ級のトップ戦線を目指した方がいい気もする。
バンタム級10回戦で堤聖也と引き分けたらしいが、先日の復帰戦を観て以降、バンタム級の比嘉大吾にはちっとも興味がわかないので。


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