リナレス負けとるやん。アブドゥラエフになら普通に勝つと思ったけどな。足が動いてなかったし反応も悪い? 圧迫感のある会場だったのも【結果・感想】

リナレス負けとるやん。アブドゥラエフになら普通に勝つと思ったけどな。足が動いてなかったし反応も悪い? 圧迫感のある会場だったのも【結果・感想】

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2022年2月19日、ロシア・エカテリンブルグで行われたライト級12回戦。WBC同級シルバー王者ザウル・アブドゥラエフとWBC6位ホルヘ・リナレスの一戦は、12R2分28秒TKOでアブドゥラエフが勝利。王座防衛に成功するとともに挑戦者決定戦に駒を進めた試合である。
 
 
RCCプロモーションとの複数試合契約締結後、最初の試合を迎えたリナレス。
相手のザウル・アブドゥラエフは14勝1敗8KOの戦績を持つオーソドックス。2019年9月に現WBC正規王者デビン・ヘイニーに敗れて以降3連勝と波に乗る。
 
 
開始直後からガードを高く上げてプレッシャーをアブドゥラエフに対し、リナレスは連打と前後のステップで対抗する。
アブドゥラエフのジャブがリナレスの顔面にヒットすると、リナレスも得意の連打や入り際のアッパーで迎撃。前半は両者譲らぬ一進一退の展開が続く。
 
だが、7Rからアブドゥラエフが一気にペースをアップ。
リナレスが押し込まれるシーンが増え、ロープ際でアブドゥラエフが連打を浴びせる流れに。
 
リナレスも足を使ってピンチを逃れるものの、アブドゥラエフの圧力をかわし切れず。12Rに左フックを被弾して最初のダウンを喫し、直後に再び左フックをもらって2度目のダウン。最後はロープを背負ったまま打たれっぱなしになったところでレフェリーが試合を止める。
この瞬間、ザウル・アブドゥラエフの王座防衛が決定した。
 
なお、敗れたリナレスは2021年5月のデビン・ヘイニー戦に続く連敗となった。
 
リナレスvsヘイニー感想。ヘイニーは若さが出たけど経験を積めたんじゃない?
 

リナレスが負けたのはちょっと意外だった。アブドゥラエフには普通に勝つと思っていただけに

ホルヘ・リナレスvsザウル・アブドゥラエフ。
 
リナレスの初めてのロシア上陸+WBC元正規王者デビン・ヘイニーに敗れた同士の対戦ということでぼちぼち注目していたこの試合。
 
だが、先日初めて視聴した北京オリンッピック女子フィギュアスケートのインパクトがあまりに強く、試合の存在を完全に忘れていた。
 
悲痛のワリエワ4位。女子フィギュアの尋常じゃないレベルアップ。10代半ばでピークを迎えて2度目の全盛期を待ってくれないロシアの構造?
 
で、ようやく思い出したので観てみたところ……。
 
リナレス負けとるやん。
 
しかも12RTKO負け?
 
いや、マジか。
今回は普通に勝つと思っていたのに。
 
デビン・ヘイニーはさすがにキツかったが、ザウル・アブドゥラエフなら何とかなるだろ。
アウェイ&初めてのロシアという懸念材料はあるが、53戦のキャリアを考えればどうってことはない。ここでいい勝ち方をして再びトップ戦線に食い込んでもらえれば。
などなど。
 
アブドゥラエフには非常に申し訳ないのだが、リナレスにとっては完全な踏み台だと思っていた。
 

狭いリングに圧迫感のある会場。そのせいかは知らないが、リナレスの足がいまいち動かない

まず開始直後に思ったのが、会場の圧迫感がすごいということ。
 
普段、日本や北米の試合で観るよりもリングが一回り小さく(目視)、会場(RCCボクシングアカデミー)自体もこじんまりしている。色合いも黒を基調としていて照明も若干暗め。
全体的に「ギュッと凝縮された息苦しい舞台」というのが率直な印象である。
 
 
そして、いまいち足が動かないリナレスのパフォーマンスにも「おや?」と思わされた。
 
もともとリナレスは階級屈指のハンドスピードと瞬時に間合いを詰めるダッシュ力が持ち味の選手。
反撃の余裕をいっさい与えない高速コンビネーションに一瞬で射程に入る踏み込みの鋭さ、相手が強引に詰めてきた際のカウンター、などなど。
スピード&パワーで圧倒するスタイルはド派手ですこぶる見栄えがいい。
 
今回もアブドゥラエフとのスピード差は歴然。前後の出入りとハンドスピードで置いてきぼりにするだろうと思っていたのだが……。
 
ホルヘ・リナレスvsザウル・アブドゥラエフ。リナレス行けるでしょ。だって顔面がカッコいいもん。アブドゥラエフはアンソニー・クローラと同格くらいじゃない?
 

超絶ハンドスピードとダッシュ力がリナレスの持ち味…だったのに、そのダッシュ力が。反応速度も落ちたかな?

だが、この試合のリナレスにはかつてのダッシュ力が見られない。
 
アブドゥラエフの射程内に長く留まり、左リードで再三顔面を跳ね上げられる。
得意の超絶ハンドスピードを活かした連打は健在だが、アブドゥラエフの圧力を真正面から受けるせいで毎回動きを寸断されてしまう。
 
前回申し上げたように僕はザウル・アブドゥラエフの強さは元WBAライト級王者アンソニー・クローラと同じくらいだと思っていて、この試合を観ても意見は変わっていない。
リナレスがクローラを2度下していることもリナレス勝利を推した要因の一つとなっている。
 
あの試合のリナレスはクローラの前進を連打とバックステップで寸断、極力危険地帯に踏み込ませずにいなし続けた。
その原動力となっていたのが持ち前のダッシュ力なわけだが、今回はそこの部分での低下が著しかった(気がする)。
 
全盛期のリナレスならロープに詰められてもパパッと連打を当ててサイドにスルッと回り込んでいたのに。あそこまで上体の動きに頼りきったリナレスというのは……。
 
また、あれだけ顔面を跳ね上げられまくったのも結構意外。
 
狭いリングや圧迫感のある会場の影響もあったとは思うが、それ以上に。純粋な反応速度も落ちているのかもしれない。
 
恐らく年々フルスロットルで動ける時間が短くなっているのだと思うが、どちらにしてもリナレスがはっきりと下降線に入っているのは間違いなさそう。今回に関してはちょっとヤバい負け方だった気がする。
 
井上vsタパレス締結間近? でもタパレスじゃ厳しい? シャクールの相手のサントスは結構よさげ。リナレスが英国でジャック・カテラルと12回戦。諸々レビュー
 

アブドゥラエフのパフォーマンスは素晴らしかった。被弾前提の勤勉なスタイルに加えてリナレスを相当研究してきたっぽい

逆にザウル・アブドゥラエフのパフォーマンスは素晴らしかった。
 
高いガードと力強い前進。
覗き見ガードのど真ん中からノーモーションの左を打ち出し、さらにもう一歩踏み込んで左ボディ、顔面に追撃を浴びせる。
 
パンチを食っても臆することなく、再度リング中央からやり直し。
微妙に角度を変えつつひたすら前に出て腕を振る勤勉さはさすがである。
 
で、7Rに一段ギアを上げてロープ際でのクロスや左ボディでリナレスを追い詰める。
リナレスも足を使いながら鋭い左で対抗するものの、アブドゥラエフは気にするそぶりすら見せずに前進を続ける。
 
 
恐らくだが、この選手は基本打たれ慣れているのだと思う。スタイル的にある程度の被弾は想定内。自分の間合いで打ち合うことさえできれば何とかなると考えているのだろうと。
 
 
また、リナレスの左にカウンターを合わせるタイミングも相当練習してきたのではないか。
申し上げたように動き出しを狙った左リードで何度も顔を跳ね上げていたし、それを1試合通してやり続けたのもすごい。
 
正規王者デビン・ヘイニーは後半にややグダる傾向があるが、それとは真逆。決して器用なタイプではないが、それを補う根気強さがこの選手にはある。
 
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挑戦者決定戦に進むアブドゥラエフ。相手はライアン・ガルシアvsイサック・クルス戦の勝者か?

これでアブドゥラエフはデビン・ヘイニー戦での敗北から4連勝。しかも前回はデジャン・ズラティカニン、今回はホルヘ・リナレスとベテラン元王者に2連勝である。
 
 
この勝利で挑戦者決定戦に進めるとのことだが、じゃあ相手は誰になるの? という話で。
 
普通に考えれば4月に開催予定のライアン・ガルシアvsイサック・クルス戦の勝者?
 
てか、その前にライアン・ガルシアはちゃんと復帰できるの?
何かカネロチームを離れたとか言ってた覚えがあるけど。
 
露骨にグラつくアミール・カーンの姿にキャリアの終焉を感じた。でも、やっぱりカーンの試合はおもしれえ。ケル・ブルックの作戦がどハマり
 
相変わらず不確定要素だらけのボクシングだが、ザウル・アブドゥラエフの再浮上にはちょっと注目している。
 
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