岩のようなティム・チューがジェフ・ホーンさんの心と身体を分断する。コンスタンチンの遺伝子に長いリーチを上乗せしたジュニア【結果・感想】

岩のようなティム・チューがジェフ・ホーンさんの心と身体を分断する。コンスタンチンの遺伝子に長いリーチを上乗せしたジュニア【結果・感想】

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2020年8月26日、オーストラリア・タウンズビルで行われたIBF S・ウェルター級アジアオセアニア/WBO同級グローバルタイトルマッチ。同王者ティム・チューが元WBO世界ウェルター級王者ジェフ・ホーンと対戦し、8R終了TKOでチューが勝利。オーストラリアにおける新旧スター対決を制した一戦である。
 
 
戦績15戦全勝12KOのティム・チューは元S・ライト級統一王者コンスタンチン・チューの息子。ここまで目立った相手との対戦はないものの、2016年12月のデビュー以来順調に白星を重ねて今回の一戦にたどり着いた。
 
一方のジェフ・ホーンは2017年7月にフィリピンの英雄マニー・パッキャオに勝利しウェルター級王座を初戴冠。2018年6月にテレンス・クロフォードに敗れて陥落したが、その後は階級をアップして再起に成功している。
 
 
試合は開始直後からお互いがラフにぶつかり合う展開が続く。
遠い位置から思い切り距離を詰めるホーンをチューが真正面から受け止め、近場のもみ合いの中で的確なボディを突き刺す。
 
序盤こそ後頭部に近い打撃を繰り返すなど、持ち前のラフさを発揮していたホーンだが、パワーで上回るチューを抑えきれなくなり徐々に失速。3R以降はなかなか身体を寄せることができず、スペースができた瞬間を狙われボディ、顔面への被弾を重ねる。
 
ペースを掴んだチューはそれ以降もプレッシャーをかけ、3、6Rにダウンを奪うなどホーンに付け入るスキを与えない。深いダメージを負いながらも何とか粘るホーンだが、8R終了後についに棄権を申し出て試合終了。
 
「オーストラリアのベストを決めたい」とコメントし、この試合に臨んだチューの快勝となった。
 
モロニー(マロニー)がんがれ。井上尚弥相手にどこまで粘れるかの試合かなぁ。モロニー好きだし、井上の苦戦も観たいけど
 

ジェフ・ホーンvsティム・チュー戦をこっそり楽しみにしてました

前々から地味に楽しみにしていたジェフ・ホーンvsティム・チューの一戦。
 
ファンの間ではあまり評価の高くない? ジェフ・ホーンだが、僕自身は意外と好きだったりする。2017年7月のパッキャオ戦は普通によかったし、2018年6月のテレンス・クロフォード戦でもやろうとしていることは伝わってきた。
 
大きな身体とよく動く足が特徴の選手で、絶え間ない出入りと近場でのラフファイトでねじ伏せる流れが持ち味。
クロフォード戦での敗退後、いきなりミドル級で再起したときは「気は確かか? コイツ」と思ったものの、今回はS・ウェルター級なので何とかなるかもしれない。体格的なアドバンテージを発揮できれば、全勝のティム・チューにも勝てる可能性は十分ある。
 
黄昏時のサーマンが若き王者パッキャオ(40)に2-1で敗れる。肘も痛いし足も動かない。だから僕はサーマンに感動したんです
 
一方、IBF S・ウェルター級アジアオセアニア/WBO同級グローバル王者ティム・チューについては、2019年初旬頃からひそかに注目していた選手。
 
元S・ライト級統一王者コンスタンチン・チューの息子で、立ち姿やファイトスタイルも父親と似ている。
 
岩のような強フィジカルと強烈なパンチ。
スタンスをやや広げたがに股でノシノシと近づき、中間距離で硬い両拳を思い切り叩きつける。
 
強フィジカルがそのままプレッシャーになるタイプで、高く掲げた両手から打ち出す1発1発は殺傷能力がすこぶる高い。決してムキムキという身体つきではないが、とにかく分厚くてゴツい。“ナチュラルボーン”という言葉がめちゃくちゃしっくりくるクラッシャーな選手である。
 
その上、ややずんぐりむっくりな体型だった父親と違い、息子のティムには身長よりもはるかに長いリーチがある。
相手のパンチが届かない位置で対峙することが可能になるため、攻略のしにくさにかけては父親以上かもしれない。
 
もともと僕がコンスタンチン・チューのことが好き(リアルタイムでは観てないけど)だったこともあり、このティム・チューが今後どう成長していくかを楽しみにしていた次第である。
 

今回はティム・チューも苦戦する。ジェフ・ホーンは一筋縄ではいかない。と思っていた時期が僕にもありました

ただ、今回のジェフ・ホーンは一筋縄でいく相手ではない。
 
申し上げたようにティム・チューのファイトスタイルは父親のコンスタンチン・チューと比較的近い。
 
凄まじいフィジカルと岩のようなパンチがそのまま圧力になるティム・チューだが、全体的にそこまでスピードがあるわけではない。
またあの馬力は相手と正対してこそ発揮されるもので、ジェフ・ホーンのように前後左右に動くタイプを捕まえるのは多少手間取る可能性もある。
 
ホーンの機動力+ラフファイトvsチューの圧力とパンチ力。
予想の難しい組み合わせというか、ホーンが勝つパターンも割とあり得るのではないか。


などと思っていた時期が僕にもありました
 

まさかのチューの圧勝。ホーンのラフなファイトにまったく動じず

繰り返しになるが、今回のジェフ・ホーンvsティム・チュー戦は対戦が発表された当初からこっそり楽しみにしていた試合である。
 
そして、両者の特徴を踏まえるとジェフ・ホーンの勝利も十分あり得る。ティム・チューにとっては難しい試合になると思っていたわけだが、蓋を開けてみればチューの圧勝でしたという。
 
苦戦と呼べるようなシーンはほとんど皆無で、ジェフ・ホーンがここまで力負けする展開というのは僕的にはかなり意外だった。
 
 
とは言え、序盤1、2Rはジェフ・ホーンの作戦もそれなりに機能していたと思う。
 
前後左右に動きながらタイミングを測り、頭から突っ込むように距離を詰める。
左リードを打つと同時に首に腕を絡めて身体を密着。相手の動きを封じたまま、もう片方の腕で後頭部付近を殴りつける。
初戴冠を果たしたマニー・パッキャオ戦でも見せたジェフ・ホーンの得意なラフファイトである。何度となくレフェリーから注意を受けていたが、これも本人的には想定内だったはず。
 
ザブ・ジュダー名試合ベスト3を決める。3R限定の最強脳筋野郎。怒りの沸点の低さもスピードスターな着火マン
 
だが、このホーンのラフさにもチューはまったく動じない。
 
ホーンの突進を真正面から受け止め、左肘で首のあたりを押して突き放すと同時にボディをねじ込む。
さらに身体を無理やり寄せてくるホーンを逆に押し返し、要所で強烈な右をヒット。
 
近場でも威力を失わない強打と身体の強さで徐々にホーンの出足を鈍らせていく。
 
3Rの終了間際に奪ったダウンももみ合いの中で出した左のショート。
長いリーチの割にインファイトがスムーズで、この部分は父親のコンスタンチン・チューを大きく上回る。
 
ホーンも懸命に正面を外しながら頭から突っ込んではいたが、どれだけラフにぶつかってもチューはビクともしない。
 
数値上はホーンの方が上背があるようだが、リング上で対峙した両者を見るとチューの方が一回り大きく感じる。胸板の厚さや肩回りのゴツさなど、ミドル級でもそれなりに勝負してきたホーンをはるかに上回るフィジカルというのはマジですごい。


 

ホーンは疲弊させられまくり、足取りもおかしくなってのギブアップ。チューは今すぐにでも世界戦できるんじゃない?

そして、接近戦でたっぷり疲弊させられたホーンは4Rあたりから足取りがおかしくなる。
 
遠い位置から強引に踏み込むもののなかなか足がついてこない。身体を寄せきれずにチューに突き放され、スペースができたところでボディと顔面に被弾を重ねる。
 
6Rにはもみ合いの中で強烈な左ボディをもらって後退し、コーナーに追い詰められてやむを得ず膝をつくシーンも。
 
僕のポストル…。ホセ・カルロス・ラミレスは強化版ルーカス・マティセだったな。統一戦が実現しないならvsパッキャオが観たい
 
ホーンは基本、相手との体格差を活かして上から圧し潰すスタイルの選手なので、階級を上げればどうしても試合運びは苦しくなる。
今回のようにフィジカル面、接近戦の精度で大きく上回られると、できることがなくなってしまうのが苦しいところである。
 
ただ、ミドル級でもぼちぼちやれていたことを考慮すると、今回も普通に機能すると予想していたのだが……。
それがまさか、ここまでわかりやすく力負けするとはね。
 
 
いや、ホントにすごかったなティム・チュー。
この試合に関してはそこまでコンスタンチン・チューっぽさは見られなかったが、自分の得意なスタイルが機能しにくい相手にもしっかり勝てることも証明した。
 
これなら今すぐタイトル戦線に絡んでも十分やれるのではないか。
幸い現在のS・ウェルター級は一時期の巨人化路線が一段落しているので、ティム・チューにも付け入るスキは大いにある。
 
僕の勝手な希望を言うなら、vsケル・ブルックとかもいいかな。
 
今こそ拳四朗vs京口紘人の統一戦実現を。井岡一翔vs田中恒成はいまいち乗れないけど、こっちの統一戦は大歓迎っス
 
まあでも、アレか。
ケル・ブルックもすでにキャリアの最終章に差し掛かっており、完全にビッグマッチ思考の可能性が高い。それこそティム・チューのような地味強若手の相手をしている暇はないかもしれない。
 
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