デビッド・レミューvsハッサン・ヌダム・ヌジカムは今年のベストマッチに認定ってことで異論はないよな?
レミューvsヌジカムは間違いなく今年のベストマッチの1つと断言したいと思う。
2015年6月21日。カナダのモントリオールにあるベルセンターで行われたIBF世界ミドル級王座決定戦。同級1位のハッサン・ヌダム・ヌジカムと4位のビッド・レミューの試合は、4度のダウンを奪ったレミューが3-0の判定で勝利。王座を獲得した。
「サウル・“カネロ”・アルバレスが豪打のジェームス・カークランドをカウンター一閃」
デビッド・レミュー(33勝31KO2敗)
vs
ハッサン・ヌダム・ヌジカム(31勝18KO1敗)
レミューの圧力に圧されるヌジカム。これは早い決着もあるか?
1R開始早々、いきなりレミューが左のトリプル。積極的に前に出てヌジカムをコーナーに詰める。
サークリングでコーナーから脱出するヌジカム。左ジャブから右フックで反撃するが、かなり力みが見られる。パンチの軌道が大回り過ぎる。レミューのパンチがヌジカムのパンチの内側を通り、ガードの真ん中を突き抜ける。
前に出続けるレミュー。サークリングしながら力の入ったパンチを返すヌジカム。
残り15秒。レミューの左がヌジカムの右フックの内側からカウンターになる!! 一瞬動きが止まるヌジカム。畳み掛けるように前に出るレミュー。
ここでゴング。
いや〜、初回からこれはすごい。
レミューの突進力にヌジカムが圧されまくっていて、本来の柔らかい防御が失われている。突進を受け止めるためにかなり力んでしまっている。
「ゴロフキンが豪打のレミューに勝利!! 8ラウンドでデビッド・レミューをストップ」
2R。
距離をとって右回りにサークリングするヌジカム。1Rの正面衝突でやばいと思ったか、ややペース配分を変えてきている。
ジグザグにヌジカムを追うレミュー。明らかにアウトボクサーと戦い慣れている足取りだ。ヌジカムをロープに詰めて左右のフックを連打するレミュー。ヌジカムの反撃を何発か被弾するが、まったく意に返さない。
レミューの左フックがガードの外からヌジカムのこめかみを捉える。レミューにタックルするように倒れ込むヌジカム。スリップダウンとの判断だが、これは効いている!!
再びコーナーにヌジカムを詰めてラッシュをかけるレミュー。ヌジカムの大振りの右に左のフックでカウンター!! クリーンヒット!! ヌジカムが崩れるように倒れる!! ダウン!!
ヌジカム、すぐに立ち上がり試合再開。
しかし足に力が入らない。
ガードを固めて耐えるヌジカム。攻めるレミュー。必死に手を出すヌジカム。身体ごともたれるようなクリンチで時間を稼ぐ。
残り10秒。ヌジカム、大きく後退。レミューの右を何とかかわしたところでゴング。
キタキタ。レミューすげえ。この突進力は尋常じゃない。
ヌジカムは明らかに力み過ぎだが、何とか回復して反撃のチャンスを待ちたいところだ。
左フックが素晴らしいレミュー。ヌジカムもリズムを掴んで立て直す
まだ序盤2Rだが、、とにかくレミューの突進力は強烈だ。このボクサーは観ていて本当におもしろい。
しかも左の使い方がうまい。相手の右を左でガードして、打ち終わりにそのままガードした左をかぶせるのだ。相手は右がオンガードに戻る前に左が飛んでくるので、開いた顔面に無防備にもらってしまうのである。1Rのカウンター、そして2Rのダウンを奪ったカウンターの左。いずれもこのパンチだ。相手の右を左でガードして、その右が戻る前にガードした左でガラ空きの顔面にカウンターを打ち込む。これはなかなかすごい。レミュー、振り回すだけのボクサーではないぞ。
「ブラッドリーvsリオス予想!! 危険なインファイターを迎え撃つブラッドリー」
3Rに入ると、ヌジカムが足を使いながらもコンパクトな左でレミューの突進を迎撃し始める。
上体を柔らかく使ってうまくレミューのパンチの芯を外す。右を打ち、身体の位置を変える。そして軽やかなステップで相手の正面に立たないように意識する。パンチを出す瞬間、微妙に位置取りを変え、ロープに詰められても一発左を引っ掛けながらすぐに身体を入れ替える。
そうそう。これがヌジカムのボクシングだ。
相手の突進を正面から止めるよりも、本来はこうやって芯を外しながらコンパクトなパンチを打つタイプなのだ。2Rを終えて、ようやく少しずつレミューの突進力に慣れてきたようである。しかもダメージからの回復も観られる。さすが元王者だ。
「アブラハム、マーティン・マレーに判定勝利で防衛成功!! 攻防分離型のカウンターパンチャーは今日も健在だったぞ」
4R。
ヌジカムのシャープな左がレミューの顔面を捉える。レミューは意に返さず前に出るが、ヌジカムのステップが軽やかだ。ロープを背にしながら右のカウンターを入れる。そしてすぐに離れる。
レミュー、ややヌジカムの動きを見てしまっているのか、開始早々のような突進が見られない。
残り1分。レミューの左がヌジカムの顔面を捉える!! ヌジカムの動きが止まる!!
おお、これはチャンス!!
だが、レミューが行かない。
ん? どうした?
どうやらレミュー、効いたことに気づいていない。
すぐに回復して反撃を見せるヌジカム。ヌジカムのこの回復力はすごい。
コーナーに詰まったヌジカムがレミューの右をかわしたところでゴング。3R終了。
徐々に盛り返してきたヌジカム。いい流れになってきたか。ポイント的には何とも言えないが、このラウンドの流れ的にはヌジカムだろうか。ただ、レミューには瞬間的に試合の流れを逆転できる突進力がある。依然として目が離せない試合だ。
立て続けにダウンを奪われるヌジカム。レミューの突進にどう対抗する?
5R。
ラウンド序盤は4Rと同じような展開が続く。
レミューが前に出て、ヌジカムがコンパクトなパンチで迎撃しつつ、足を使ってサークリングする。レミューがコーナーに詰めるのだが、さらっとヌジカムが身体を入れ替える。どちらのパンチが当たっているわけではないが、ヌジカムのリズムはいい。
ヌジカムの細かい左がレミューの顔面を数発捉える。
遠い距離だとやや手が出なくなるレミュー。2人の距離がかなり違うので、どうしてもレミューは懐に入って攻めなくてはならない。
ロープを背に、レミューの大振りの左右フックをガードするヌジカム。
やばい。足を止めるとレミューのラッシュがくる。
レミューが身体をヌジカムの左側に入れて左ボディ。そして顔面に左をもう一発!! ヌジカムのガードのど真ん中からクリーンヒット!! ヌジカムがダウン!!
すぐに立ち上がるヌジカム。しかし効いている。足取りがおかしい。
残り1分。ぐいぐいと前に出るレミュー。左を出しながら足を使って逃げるヌジカム。細かい左をもらいながら前に出るレミュー。ヌジカムが足を止めると同時にラッシュ。すごいプレッシャーだ。
ロープ際。ややヌジカムの左側の位置に身体を入れて右のボディを突き刺す。そこから返しの左!! またしてもヌジカムのガードの真ん中を突き抜ける!! ダウン!! このラウンド2度目のダウン!!
立ち上がるヌジカム。だが目が虚ろだ。
レミューのラッシュ。必死に反撃するヌジカム。
すぐにヌジカムのパンチに力が戻る。こいつのこの回復力は本当にすげえ。
客席からはレミューのKOを期待する声援が飛び交う。いやいや、ヌジカムもすごいぞ。
何とか足を使って逃げるヌジカム。ここでラウンド終了のゴング。
おもしろい。何だこの試合。マジでおもしれえぞ。
6R開始。
ヌジカムの足取り、パンチのキレが戻っている。ややバタバタしているのでダメージはあるだろうが、驚異的な回復力。きっと身体の柔軟性がケタ違いなのだ。
レミューも積極的に前に出るが、ヌジカムがよく動くので捕まえきれない。時折ロープに詰めてラッシュをかけるが、うまくヌジカムが脱出する。しかもこのラウンドのレミューは若干パンチが大振り過ぎる。前のラウンドでのダウンが影響しているのだろう。
残り1分10秒。
レミューが左を出しながら飛び込む。やや距離が遠いか。その瞬間、ヌジカムが右を合わせる!! レミューの側頭部を捉える!!
レミューがヌジカムに背中を向けるようにたたらを踏んでロープにつかまる。
お、これは効いたか?
これを見たヌジカムがコーナーに詰めてラッシュ!! ガードの真ん中に左をねじ込み、外側からの右フック!!
そしてレミューの左フックに左のカウンター!!
うおおおお!!!
さっきダウンをとられたこのフックにカウンター!! すげえすげえ。どっちもすげえ!!
レミューの動きが止まる。
長い腕を鞭のようにしならせてフックを放つヌジカム。
ロープを背にしてガードを固めるレミュー。足取りがおかしい。
ここでなんと!!
レミューがガードを下げて前に出る。
ものすごい威圧感。気圧されたヌジカムが下がる!!
いや、これはすごい。
「お前のパンチは効いていない」。気迫でそう思わせたのだ。
下がるヌジカム。追うレミュー。だが足取りは重い。ヌジカムのチャンスなのだが、レミューの気迫に完全に気圧されている。
終了間際、苦し紛れに出したヌジカムの右にレミューが左カウンターを合わせる!!
よろけるヌジカム。追うレミュー。しかし足が動かない。効いている。お互いに効いている。
レミューがヌジカムをコーナーに詰めて右を出したところでゴング。
何というラウンドだ。
7R。
ヌジカムが足を使いながらコンパクトなパンチを出すが、やや力感がない。足取りも少しおかしい。さすがにダメージが残ってきたか。
対するレミューも追い足に陰りが見える。だが、パンチは十分な力が残っている。大きな左でヌジカムの身体が吹き飛ぶようにのけぞる。このパワーはやはり脅威だ。
残り30秒。
ヌジカムの左にレミューが左を合わせる!!
またしてもガードの真ん中を突き抜けてヒット!!
ヌジカムダウン!!
今回のフックはやや内側を通る軌道のパンチだ。ヌジカムの慣れていない軌道。すごい。すごすぎる。
ここでもすぐに立ち上がるヌジカム。レミューのラッシュ。これを何とか防ぎきったところでゴング。
8Rに入ると、俄然レミューの突進力が戻る。
ダウンをとると調子が戻る。こういうところがボクシングのおもしろさだ。
ヌジカムも必死にパンチを返す。この回復力には何度も驚かされる。しかしさすがに足取りが重い。レミューの突進から逃れきれない。意を決して打ち合うヌジカム。しかし正面衝突では圧倒的にレミューだ。
圧力と思い切りのよいフックに吹き飛ばされるヌジカム。前に出るレミュー。コンパクトな左でレミューの突進を何とか寸断するヌジカム。この左のキレがある限り、レミューはヌジカムに決定的なダメージを与えられずにいるのだ。
そして、ガードをした左でそのままカウンターを打つレミューのパンチがあまり出なくなっている。完全な攻防分離のボクシング。疲れもあるのだろうが、もう少しその辺りを意識したいところだ。
気力と気力の勝負。お互い疲れた。疲れても手を出し続ける
9R。
攻めるレミュー、サークリングするヌジカム。相変わらずの構図が続く。
ヌジカムには疲れが見えるが、レミューの突進にもやや力がなくなっている。コーナーに詰めてもラッシュが続かない。
ヌジカムも苦しい。レミューも疲れた。
レミューの突進が弱まったところで、ヌジカムの長いワンツーがレミューの顔面を捉える。
ポイント的にはどちらだろう。ちょっと微妙なラウンドだ。
10R。
ラウンドの序盤はレミューが積極的に前に出る。ヌジカムは大きく動きながら迎撃。
すぐにレミューの追い足が鈍る。
ヌジカムの左がレミューの顔面を捉える。レミューの顔面が弾ける。本当にこのボクサーの回復力はすごい。
今度はレミューの左がヌジカムの顔面を捉える。やや浅いか。
ヌジカムが右を出す。そこにレミューが左フックを合わせる。かすっただけでヌジカムが吹っ飛ぶ!! レミューのパワー、ヌジカムのフットワーク。この終盤にきても見所満載だ。
11R。
ここまでのポイントは明らかにレミュー。ヌジカムとしては勝つにはKOするしかない。
だが、相変わらず左を出しながらのサークリングを続けるヌジカム。
ヌジカムが右を出す。これにレミューが左フックを合わせる!! ヌジカムの動きが止まる。
レミューのこの左フックも本当にすごい。大きく外を回る軌道のヌジカムの右にバッチリ合うのだ。
リング中央で打ち合う両者。レミューの左がヌジカムの顔面を捉える!!
ヌジカムもひるまずに打ち返す。2人の拳が交錯したところでゴング。
レミューのいいパンチもあったが、全体的にはヌジカムのラウンドだろうか。
観客席に手を挙げて盛り上げるヌジカム。確かにそういう試合である。
12R。
前に出るレミュー。
下がるヌジカム。倒すしかないヌジカムだが、ラストラウンドで突破口はあるか。
ヌジカムの左がカウンターでレミューの側頭部を捉える!! 反則打をアピールするレミュー。だがレフェリーは流す。
ヌジカムの左右フックがレミューを捉える!! やや動きが止まるレミュー。しかしすぐに打ち返す。
フリッカー気味の左が2発、レミューの顔面にカウンターでヒット!!
よろけるレミュー。効いた!! 効いた!!
ここしかない。ここしかないぞヌジカム!!
右のアッパーから返しの左!! レミューが下がる。効いてる効いてる!!
チャンスだヌジカム。本当にここしかない!!
だが、レミューも頭を振って的を絞らせない。前に出ながら手も出し続けている。すげえすげえ。
レミューの前進に手が出せなくなるヌジカム。
あ〜、これは無理か〜。
と思った途端、ヌジカムのフリッカージャブがレミューを捉える!!
まだだ!! まだいけるぞヌジカム!!
レミューが反撃する!!
ヌジカムが手を出す!!
もみ合いからヌジカムがコーナーに詰まったところで試合終了のゴング。
ナイスファイト!!
最高だ。
最高の試合だった。
リング上で何度も抱き合う2人。
まさしくエキサイト・ボクシング。
どちらも出し切った試合だった。
判定は115-109、115-109、114-110の3-0でレミュー。文句なしにレミューの勝利だ。
だがヌジカムもすごかった。
本当に感動した。こんな試合が観られるのだからボクシングはたまらない。
間違いなく今年のベストマッチの一つだろう。こういう試合を観るたびに、格闘技における「レベルの高い試合」という議論が不毛だと再認識する。おもしろければ、それがすべてにおいて正義なのだ。
このレミュー、10月17日にゴロフキンとの試合が決定したが、ぜひとも今回のようにエキサイティングな姿勢を見せていただきたいものである。本当に楽しみだ。まあ、十中八九ゴロフキンのKO勝ちだろうが。
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