ナジーム・ハメドvsケビン・ケリー。伝説と言っても過言ではないハメドのベストバウト。両者合わせて7度のダウンの末の衝撃的な結末

ナジーム・ハメドvsケビン・ケリー。伝説と言っても過言ではないハメドのベストバウト。両者合わせて7度のダウンの末の衝撃的な結末

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新型コロナウイルス感染拡大によってボクシング界が冷温停止する中、先日から退屈しのぎで行なっている「レジェンドの試合漁り」。年代問わずに思いついた試合、選手をチョイスできる分、いつもの観戦よりも楽しいのではないか? とまで思っている次第である。

で、表題の件。
今回は「ナジーム・ハメドvsケビン・ケリー戦」について。

1997年12月に米・ニューヨーク州で行われたWBO世界フェザー級タイトルマッチで、王者ナジーム・ハメドが挑戦者ケビン・ケリーと対戦。ダウンの応酬の末にハメドが4RKOで勝利し、9度目の防衛に成功した一戦である。

そして、僕が知る限りこの試合はナジーム・ハメドのベストバウト。
「プリンス」「悪魔王子」の異名を持ち、並外れた身体能力と型にはまらないアンタッチャブルなスタイルで人気を博したハメドだが、中でもこのケビン・ケリーとの一戦は群を抜いておもしろかった。

 

僕もこの試合を観るのは本当に久しぶりだったのだが、いや、マジでおもしろい。
レジェンドのスーパーファイトと言えばことあるごとに1999年2月の「オスカー・デラホーヤvsアイク・クォーティ戦」を挙げているが、単純な盛り上がりだけならこちらの方が上かもしれない。

4Rという短さもいいし、お互いに倒し倒されという展開もいい。
先日「普段ボクシングを観ない人にボクシングを紹介するにはマイク・タイソンの試合が最適」だと申し上げたが、このナジーム・ハメドvsケビン・ケリー戦も同じ。誰が観てもわかりやすいおもしろさがハメドの最大の魅力と言える。

 

入場シーンがクッソかっこいい。ハメドの入場の中でもベスト

まずこの試合、最初の見どころはハメドの入場シーンである。

もともとナジーム・ハメドという選手はド派手な入場でも知られており、王様の椅子を模した神輿に乗ったりゴンドラで天井から降りたりと、様々な趣向を凝らして観客を楽しませてきた。

中には試合時間よりも入場の方が長くなるケースもあり、あまりの長さに対戦相手がイライラすることも。

今回のケビン・ケリー戦ではスクリーンの裏に陣取ったハメドがシルエット姿で踊るわけだが、これも試合と同様、ハメド史上最高の入場だったと思っている。

 

Men In Black
ウィル・スミス
ヒップホップ/ラップ
¥204

ウィル・スミスの「Men In Black」に合わせて踊り続けること5分以上。
しびれを切らしたケビン・ケリーがリング上から怒鳴りつける一幕があるなど、とにかく長い

シルエットのみで場内を盛り上げ、ようやく登場したと思ったら、今度は紙吹雪が舞う中花道を踊りながらゆっくり進む。

普段の僕なら「さっさとせいよ」「長えよ」と思うところだが、ハメドに関してはまったくそんなことはなく。それどころか、あまりのカッコよさに失禁しそうになったくらい。

元WBA世界L・フライ級王者山口圭司やMMA格闘家の山本“KID”徳郁もハメドを意識していたらしいが、確かにこれはマネしたくなるのもわかる。
ハメド本人が豪語していた「俺はモハメド・アリを超える伝説になる」という言葉も、この華やかさを見せられればあながち冗談とも思えなくなる。

それくらい、この試合でのハメドの輝きは飛び抜けていた気がする。

ケビン・ケリーの強さが際立った試合。右リードにハメドの上体反らしが間に合わない

実際の試合についてだが、申し上げたようにクッソおもしろい
と同時に、ケビン・ケリーの強さが際立った試合でもあった。

まず、何より目を引くのがケビン・ケリーの右リード。
サウスポー同士の両者が開始直後から右回りで対峙するのだが、ケリーの右の鋭さ、精度の高さにはめちゃくちゃ驚かされる。

やや腰を落とした広いスタンスで小刻みに両腕を動かし、そこからさらに腰を落としてスパッと右を打ち出す。この右が信じられないスピードで伸び、ハメドの顔面を跳ね上げる。

もちろんハメドの動きも速いのだが、ケリーの右はそれを上回る。

 
ナジーム・ハメドvsマルコ・アントニオ・バレラ戦感想。バレラがハメドを完全に攻略した試合
 

中間距離よりもやや遠い位置は、恐らくハメドにとっても得意な間合い。

バネのような上半身を目いっぱい使った上体反らしからのカウンターで相手の出足を挫き、一足飛びで距離を詰めてパンチを打ち込む。これがハメドの典型的な勝ちパターンである。

破壊力抜群のカウンターを警戒するあまり、ハメドの射程に立ち入れる選手はこれまで皆無だったと言っても過言ではない。

だが、ケリーの右はハメドの危険地帯をあっさりと超えていく。
リラックスした状態から踏み込み、フリッカー気味に打つ右にハメドは上体反らしが間に合わない。大きくバックステップして距離をとるものの、まったく余裕は感じられない。

 

そして、1R残り1分を切ったところでケリーをコーナーに詰め、連打を浴びせるハメド。だが、打ち終わりにケリーが放った右がハメドの顔面を捉え、後頭部から豪快にダウン!!

いや〜、とんでもねえなオイww
ハメドの上体反らしがあれだけ間に合わないのも初めだし、射程内にゴンゴン立ち入るケリーの勇気もすごい。

それ以降もケリーの右が再三ハメドの顔面を捉えるのだが、上体反らしで身体が伸び切った瞬間に当たるせいでそのつどハメドが大きくバランスを崩される。

マンガ「はじめの一歩」の鷹村守vsブライアン・ホーク戦でそんな描写があった気がするが、なるほど。あれはこの試合を参考にしてたわけね。

距離を詰めたケリーと、強引にダウンを奪ってペースを引き寄せたハメド。3度目のダウンで勝負あり

両者ともに2度のダウンを喫して迎えた3R。

このラウンドも序盤からケリーが得意の右を出しながら前進するが、これまでよりも若干当たりが浅い。
サイドに動いて正面を外すハメドに追いつけず、逆に遠い位置からハメドのアッパーが顔面をかすめるシーンも。

ハメドが慎重に戦った分、このラウンドはややハメドペースで終了する。

続く4R。
開始直後からケリーが距離を詰め、近場での打ち合いを挑んでいく。
これまでよりも半歩ほど間合いが近づき、両者ともに出したパンチがそのまま当たる距離に。

ああ、なるほどね。
確かに前のラウンドでハメドが間合いを支配し始めてたからな。
このままだとズルズルいくかも知れないと感じたケリーが自分から前に出たってことか。

そして、実際この判断は間違いではなかった気がする。
ハメドの射程に踏み込み、近い位置で無遠慮に腕を振るケリー。ハメドもガードを上げて打ち返すが、ケリーの圧力を止めきれない。上体反らしの不安定な姿勢のまま後退させられ、ロープを背負わされてもみ合いに巻き込まれてしまう。

だが、そこからハメドが無理やりケリーを押し返してロープ際から脱出。次の瞬間、低いダッキングから伸び上がるような左でケリーを吹っ飛ばす。

これでケリーが横倒しにダウン!!
すぐに立ち上がって続行をアピールするが、見るからにダメージは深く表情からはいっさい余裕が感じられない。

正直、この試合はこのダウンで決まったと言えるのではないか。

直後にケリーが右のカウンターで再びダウンを奪うものの、本人もダメージから回復しているとは言えず。それ以降もグイグイ前に出て腕を振るが、ラウンド序盤に比べて勢いは明らかに落ちている。

で、コーナーでわずかなスペースができた瞬間、ショートの右を被弾し4度目のダウンを喫して勝負あり。
両者合わせて計7度というダウンの応酬の末、激しい乱打戦に決着がついた瞬間である。

粟生隆寛引退。ビタリ・タイベルト戦おもしろ過ぎワロタw 確かに内山高志に勝てる日本人だったかもしれんね

“伝説”と言ってもいい試合。批評? 知らん。「クッソおもしろかった」で十分やねん

繰り返しになるが、本当におもしろい試合だった。

入場から最後の結末まで目を離せる場面は皆無。
最後のハメドの右フックには思わず声が出たほどで、個人的にここまでエキサイティングな試合はちょっと記憶にない。

右の精度と突進力でハメドの上体反らしを上回ってみせたケビン・ケリー。
上体反らしの態勢のままでも威力を失わず、スペースのない位置からKOパンチが出せるハメドの柔軟性や身体能力。

ケビン・ケリーが自分のスタイルを見失っていたとか、ハメドの弱点が見えたとか。あれこれと辛口な批評が聞こえた試合でもあったが、そんなことは知ったこっちゃない。

お互いが持ち味を山ほど発揮した結果、多くの人の記憶に残る一戦となった。これはもはや“伝説”と呼んでもいいくらいすごい試合だったと思う。

 

勢いで買っちゃったじゃねえかww
いったいどうしてくれんだよ(何が?)

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