比嘉大吾、勅使河原弘晶、中谷正義が移籍。有力選手の首都圏への一極集中? 選手の移籍自由化で苦戦する? 後楽園ホールの存在はデカいよね【長文】

比嘉大吾、勅使河原弘晶、中谷正義が移籍。有力選手の首都圏への一極集中? 選手の移籍自由化で苦戦する? 後楽園ホールの存在はデカいよね【長文】

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先日、米・ネバダ州で行われた中谷正義vsフェリックス・ベルデホ戦での中谷のKO勝利には顎が外れるほど喚き散らしたわけだが……。


スピードもパワーもセンスもベルデホの方が上だけど、勝ったのは中谷正義なんですよ。やっぱり中量級以上の日本人には気持ちが入るよね
 
その試合の少し前にちょろっと話題になったのが、中谷正義の所属が帝拳ジムとなったこと。
 
2019年10月にボクサーの移籍ルールが明文化され、最大3年間の契約期間を満了すれば選手は所属ジムの会長の承諾なしに移籍することが可能になり、移籍金も発生しないシステムが構築された。
 
これにより、元世界王者の比嘉大吾やOPBF王者の勅使河原弘晶といった大物選手が移籍するなど、現役選手の意思が尊重される環境が整いつつある。


だが、同時に看板選手を失う側の損失は大きく、比嘉大吾が去った白井・具志堅スポーツジムは2020年7月で閉鎖。新型コロナウイルスの影響もあり、今後は首都圏への一極集中がさらに進むことが考えられる。
 
移籍の自由化によって選手個人の意思が尊重されることは素晴らしいが、地方や中小のジムにとっては厳しい状況が待っているのでは? という話も聞こえてきたり……。
 

選手の移籍自由化は首都圏への一極集中を生みやすい。ものごとにはバランスってのがあってだな…

選手の移籍自由化に伴い首都圏への一極集中、地方や中小のジムが厳しくなるというのは前から思っていて、以前にも「あまり一気にやり過ぎるとかえってヤバくなる可能性もあるんじゃないの?」と申し上げたこともある。
 
ボクシングジムのプロ加盟金が必要だと思う理由と、参入障壁をさらに高くしてもいいと思う理由(部外者のクソ勝手な戯言)
 
OPBF王者勅使河原弘晶の移籍が発表された際にもちょろっと言ったが、戦績やランキングによって移籍金の額を設定して選手の売り買いができるシステムを作ればお互いWIN-WINになるのでは? というのが部外者の勝手な意見だったりする。


3年間で自動FAになる以外に、
 
・一定以上の戦績の選手にFA権
・移籍先から移籍元に移籍金が支払われる制度
 
があれば、出ていかれる側もそれなりに潤う上に感情的なもめ事も起きずに済む。
 
いわゆるサッカーと同様、中堅クラブがビッグクラブに選手を売る代わりに多額の移籍金を得る流れ。
制裁的な移籍金ではなく明文化された決まりごとに従って移籍金が支払われれば、中小のジムが存続できる可能性も増えるし市場も活性化する(はず)。
 
今の“契約期間3年間”以外に何の制限もない状況だと、首都圏や有力ジムに強豪選手が集中してしまうことは容易に想像がつく。
そこに新型コロナウイルスの影響が加わり、今後は首都圏への一極集中がさらに加速するのではないか。
 
 
要は、何ごともバランスよくやらないと逆効果になるかもね? という話。アスリートファーストはもちろん大事だけど、そればっかり訴えるのはよろしくないよねってことで。
 
 
なお、2020年の移籍一覧が下記。
 
「JBCジム移籍」
 
ざっと数えたところ50件。
2019年以前の情報がないので何とも言えないが、これはかなり多い気がする。
 
ゴタゴタがあった青木ジムが消滅してDANGAN AOKIジムが誕生したこともあり、よくも悪くも選手の移籍は今までにないほど活発になっていると思われる。
 

主要4団体の世界戦、日本王座を含む地域王座戦の国内開催地。後楽園ホールの存在はめちゃくちゃデカい

とまあ、部外者の勝手な意見はともかく。
 
実際にはどうなっているのか? というのにも興味があり、「ボクシングモバイル」のサイトを参考にデータをピックアップしてみた次第である。
 
具体的には「主要4団体の世界戦、日本王座やOPBFを含む地域王座戦が日本のどこで行われているのか」と、「各ジムの年間試合数とその勝率」について。
 
 
まず主要4団体の世界戦、日本・地域王座戦の開催地(都道府県)を調べた結果が下記。
 
なお例によって僕が目視でピックアップしているため、正確性にはあまり自信がないことをお伝えしておきます。
 
●2017年
【世界戦】
東京:18
大阪:6
京都:3
神奈川:2
熊本:2
愛知:1
福岡:1
 
【日本・地域王座戦】
東京:54
大阪:17
石川:11
沖縄:2
兵庫:2
京都:2
神奈川:1
広島:1
愛知:1
福岡:1
 
 
●2018年
【世界戦】
東京:17
神奈川:4
兵庫:4
沖縄:2
京都:1
愛知:1
 
【日本・地域王座戦】
東京:67
大阪:20
兵庫:3
神奈川:2
福岡:2
静岡:1
和歌山:1
鹿児島:1
沖縄:1
山口:1
愛知:1
 
 
●2019年
【世界戦】
東京:8
大阪:4
神奈川:3
千葉:3
埼玉:2
岐阜:1
兵庫:1
愛知:1
鹿児島:1
 
【日本・地域王座戦】
東京:49
大阪:18
兵庫:3
広島:2
神奈川:2
京都:2
熊本:1
岡山:1
山口:1
愛知:1
 
 
●2020年
【世界戦】
東京:6
大阪:1
兵庫:1
 
【日本・地域王座戦】
東京:32
兵庫:5
大阪:2
愛知:2
岡山:1
 
これを見て思うのが、日本王座を含む地域王座戦の東京への偏りが凄まじいということ。
 
世界タイトルマッチは数が少ないこともあってぼちぼちバラけているが、日本やアジア王座戦は全体の6、7割が東京での開催となっている(2019年は海外でのタイトルマッチが増えたために東京開催が減少)。
 

 
まあ、要するに「東京=後楽園ホール」と言っても過言ではないのだが、実際後楽園ホールでの興行開催率はえげつないことになっている。
 
JBCのHPを見ても一目瞭然で、たとえば2020年12月は全16興行のうち半分の8興行が後楽園ホールで開催されている。
 
「JBC大会スケジュール」
 

 
また下記のページで過去の試合結果が閲覧できるのだが、
「JBC公式試合結果」
 
試しに2018年を見ると、
1月:7興行中4興行
2月:14興行中6興行
3月:22興行中7興行
4月:28興行中9興行
5月:24興行中8興行
6月:12興行中6興行
7月:27興行中11興行
8月:23興行中7興行
9月:29興行中10興行
10月:20興行中7興行
11月:18興行中10興行
12月:27興行中7興行
全251興行(海外を含む)中92興行が後楽園ホールで行われており、全体の4割近くを占めている。
 
 
マジな話、後楽園ホールの存在は現役選手にとって相当デカいのだと思う。
 
海外を含む年間興行の4割近くが開催され、そのつど日本王座戦や地域王座戦が行われる。しかもデビューから日本/地域王座戦までずーっと同じ会場というケースも多く、必然的に“地の利”も得られる。
 
たとえば元WBCバンタム級王者の山中慎介は2011年3月の岩佐亮佑戦までの16試合のうち、実に14試合が後楽園ホールでのもの。
 
チャンスの数や豊富な練習相手はもちろんだが、この圧倒的な場数、2000人規模の会場でデビューから経験を積めるというのは東京を拠点とする上での絶対的なアドバンテージなのだろうと。
 
 
若手のための漫才コンテスト「M-1グランプリ」の優勝者が吉本興業ばかりなのも、所属芸人の多さと自前の劇場の多さが密接に関係していると聞いたことがある。
 
似たような境遇の同業者が周りに多くいること、場数を踏む場所が近くにあることは才能を開花させる上でめちゃくちゃ重要なのは間違いなさそうである。
 
 
ちなみに僕はゲロを吐くほど後楽園ホールが嫌いですww
 
WBOアジアパシフィック王座とOPBF王座、どちらがチャンスを得やすいの? WBOとWBCの歴代日本人王者数。WBO-APには価値がないって本当?
 

各ジムごとの勝率ランキング、試合数ランキング。場数を踏むには首都圏(東京、神奈川、大阪)が最適

そして「ボクシングモバイル データマニア」のページから引用した各ジムごとの勝率ランキング、試合数ランキングが下記。
 
●勝率ランキング(25戦以上)
【2015年】
1.大橋ジム(神奈川)
→79.55%
2.帝拳ジム(東京)
→75.49%
3.グリーンツダジム(大阪)
→70%
4.大阪帝拳ジム(大阪)
→69.23%
5.真正ジム(兵庫)
→65%
6.姫路木下ジム(兵庫)
→64.52%
7.六島ジム(大阪)
→63.41%
8.宮田ジム(東京)
→57.14%
9.KG大和ジム(神奈川)
→56%
10.花形ジム(神奈川)
→55.88%
 
 
【2016年】
1.井岡ジム(大阪)
→82.76%
2.横浜光ジム(神奈川)
→80.49%
3.帝拳ジム(東京)
→78.31%
4.大橋ジム(神奈川)
→68.09%
5.千里馬神戸ジム(兵庫)
→68%
6.角海老宝石ジム(東京)
→64.29%
7.KO大和ジム(神奈川)
→63.89%
8.真正ジム(兵庫)
→61.04%
9.宮田ジム(東京)
→60%
10.八王子中屋ジム(東京)
→58.62%
 
 
【2017年】
1.大橋ジム(神奈川)
→82.93%
2.井岡ジム(大阪)
→79.31%
3.グリーンツダジム(大阪)
→68.75%
4.帝拳ジム(東京)
→67.12%
5.六島ジム(大阪)
→66.67%
6.ワタナベジム(東京)
→66.42%
7.KG大和ジム(神奈川)
→62.86%
8.三迫ジム(東京)
→60.66%
9.真正ジム(兵庫)
→60.29%
10.角海老宝石ジム(東京)
→58.89%
 
 
【2018年】
1.井岡ジム(大阪)
→78.57%
2.大橋ジム(神奈川)
→76.19%
3.千里馬神戸ジム(兵庫)
→76%
4.帝拳ジム(東京)
→72.46%
5.平仲ボクシングスクール(沖縄)
→69.23%
6.寝屋川石田ボクシングクラブ(大阪)
→67.86%
7.真正ジム(兵庫)
→63.27%
8.角海老宝石ジム(東京)
→62.86%
9.三迫ジム(東京)
→61.40%
10.横浜光ジム(神奈川)
→60%
 
 
【2019年】
1.帝拳ジム(東京)
→81.54%
2.大橋ジム(神奈川)
→69.23%
3.三迫ジム(東京)
→64.18%
4.グリーンツダジム(大阪)
→62.79%
5.八王子中屋ジム(東京)
→60%
5.横浜光ジム(神奈川)
→60%
5.セレススポーツジム(千葉)
→60%
8.角海老宝石ジム(東京)
→57.45%
9.T&Tスポーツジム(神奈川)
→56.67%
10.RK蒲田ボクシングファミリー(東京)
→53.33%
 
 
【2020年】
1.帝拳ジム(東京)
→68%
2.三迫ジム(東京)
→61.70%
3.角海老宝石ジム(東京)
→61.36%
 
 
●試合数ランキング
【2015年】
1.帝拳ジム(東京)
→102戦
2.ワタナベジム(東京)
→98戦
3.角海老宝石ジム(東京)
→87戦
4.真正ジム(兵庫)
→80戦
5.グリーンツダジム(大阪)
→60戦
6.三迫ジム(東京)
→56戦
7.大橋ジム(神奈川)
→44戦
8.宮田ジム(東京)
→42戦
8.横浜光ジム(神奈川)
→42戦
8.川崎新田ジム(神奈川)
→42戦
計653試合
 
 
【2016年】
1.ワタナベジム(東京)
→117戦
2.帝拳ジム(東京)
→83戦
3.真正ジム(兵庫)
→77戦
4.角海老宝石ジム(東京)
→70戦
5.グリーンツダジム(大阪)
→51戦
6三迫ジム(東京)
→49戦
7.大橋ジム(神奈川)
→47戦
8.横浜光ジム(神奈川)
→41戦
9.宮田ジム(東京)
→40戦
10.川崎新田ジム(神奈川)
→38戦
計613試合
 
 
【2017年】
1.ワタナベジム(東京)
→137戦
2.角海老宝石ジム(東京)
→90戦
3.帝拳ジム(東京)
→73戦
4.真正ジム(兵庫)
→68戦
5.三迫ジム(東京)
→61戦
6.グリーンツダジム(大阪)
→48戦
7.川崎新田ジム(神奈川)
→43戦
8.大橋ジム(神奈川)
→41戦
9.横浜光ジム(神奈川)
→36戦
10.KG大和ジム(神奈川)
→35戦
計632試合
 
 
【2018年】
1.ワタナベジム(東京)
→172戦
2.角海老宝石ジム(東京)
→70戦
3.帝拳ジム(東京)
→69戦
4.三迫ジム(東京)
→57戦
5.真正ジム(兵庫)
→49戦
6.大橋ジム(神奈川)
→42戦
7.横浜光ジム(神奈川)
→40戦
7.グリーンツダジム(大阪)
→40戦
9.KG大和ジム(神奈川)
→38戦
10.川崎新田ジム(神奈川)
→37戦
計614試合
 
 
2019年
1.ワタナベジム(東京)
→135戦
2.角海老宝石ジム(東京)
→94戦
3.三迫ジム(東京)
→67戦
4.帝拳ジム(東京)
→65戦
5.グリーンツダジム(大阪)
→43戦
6.大橋ジム(神奈川)
→39戦
6.寝屋川石田ボクシングクラブ(大阪)
→39戦
6.真正ジム(兵庫)
→39戦
9.川崎新田ジム(神奈川)
→36戦
10.八王子中屋ジム(東京)
→35戦
計592試合
 
 
【2020年】
1.ワタナベジム(東京)
→57戦
2.三迫ジム(東京)
→47戦
3.角海老宝石ジム(東京)
→44戦
4.帝拳ジム(東京)
→25戦
5.ワールドスポーツジム(東京)
→19戦
6.グリーンツダジム(大阪)
→18戦
6.寝屋川石田ボクシングクラブ(大阪)
→18戦
9.大橋ジム(神奈川)
→17戦
9.花形ジム(神奈川)
→17戦
計262試合
 
 
改めて場数を踏む/チャンスを掴むには首都圏(東京、大阪、神奈川)が有利なのは一目瞭然である。
 
特に試合数に関して言えば東京の大手ジムがダントツで強い。中でも2018年に172試合を開催したワタナベジムの弾数の多さは群を抜いている。
 
病的に動きの悪いウォーリントン、平然と体重超過のジョジョ・ディアス、ずんぐりむっくりのブンブン丸カスターニョ。先週末振り返り
 

主要なジムの勝率/試合数の推移。関西のジムが苦戦中か

上記を踏まえて主要なジムをピックアップして勝率/試合数の推移を見てみると、
 
●大橋ジム
勝率70~80%前後と概ね高く、年間試合数も40試合程度を確保しておりかなりバランスがいいように思える。
 

 
●帝拳ジム
大橋ジムと同様、高水準の勝率をキープしているが、試合数が減少フェーズに入っているのが気になる。
 

 
●ワタナベジム
凄まじい試合数を誇るジムで、勝率は低いが場数を踏むには最適な場所。だが2018年の172試合をピークに試合数が減少に転じているのを見ると、内山高志、田口良一、河野公平の三枚看板の神通力が切れかかっているか?
 

 
●グリーンツダジム
勝率は60%前後とぼちぼちだが、試合数が徐々に減少中。
 

 
●真正ジム
2019年以外はまあまあの勝率を残しているものの、試合数の減少が著しい。2016年12月の長谷川穂積の引退が影響している?
 

 
●井岡ジム
試合数自体は少ないものの高い勝率をキープ(2020年はランク外)。井岡パパのマッチメーク力の高さがうかがえる。2019年から勝率、試合数ともにガクッと落ちているのは……。
 

 
●角海老宝石ジム
勝率、試合数ともに上昇中。2019年の94試合はワタナベジムの135試合に次ぐ2位。試合数を絞った年に勝率が上がり、増やした年に勝率が下がっているのは、育成重視と勝敗重視を年ごとに切り替えている可能性も?
 

 
●三迫ジム
角海老宝石ジムとともに勝率、試合数を順調に上昇させているジム。特に勝率はコロナの影響があった2020年以外は下降した年がなく、所属選手の成長+有力選手の移籍の両輪がうまく回っていることを感じさせる。
 

 
 
これらを見てわかるのが、近年関西の有力ジムがかなり苦戦しているということ。
グリーンツダジムも真正ジムも2019年の移籍自由化前から試合数を減らしているので、恐らく選手の数自体が減少していると思われる。
 
また、試合数トップ10の合計が
2015年:653
2016年:613
2017年:632
2018年:614
2019年:592
と、そこまで減っていないことを考えると、やはり東京への一極集中が着実に進んでいる可能性も高い。
 
ロマチェンコ「復帰戦の相手はナカタニでどうだい?」←いつまでAサイドのつもりだよお前w これは中谷正義が“相手をしてやる”試合だぞ? ナメンナヨ
 
 
はい。
以上でございます。
 
あれこれデータを並べて長々と語ってみたが、何かを批判するとかではなく「現状はこんな感じなんだなぁ」というのを知りたかっただけなので、気楽に読み飛ばしていただければ幸いです。
 
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