ダニー・ガルシアがロバート・ゲレロに完勝して2階級制覇達成!! ウェルター級のガルシアはホントに強いわ【結果】
2016年1月23日(日本時間24日)に米.カリフォルニア州でWBC世界ウェルター級タイトルマッチが行われ、同級2位のダニー・ガルシアが6位のロバート・ゲレロを判定で下し、空位の王座を獲得した。
116-112、116-112、116-112の3-0の判定でゲレロを下したガルシアはこれでS・ライト級に続いて二階級制覇を達成。
いまだ無敗を継続する新王者は群雄割拠のウェルター級で中心人物となることができるか。今後の動向からも目が離せない。
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ダニー・ガルシアの強みは対応力の高さ。そのクオリティは内山以上
ダニー・ガルシアがロバート・ゲレロに完勝!!
しかし、ウェルター級のガルシアは本当にいい動きをする。
あのまま無理をしてS・ライト級にとどまっていれば、間違いなくビクトル・ポストルに敗れていたはずだ。
死ぬほど微妙な判定でレイモント・ピーターソンに勝った試合を見たときは「ああ、こいつも無敗にこだわり過ぎて自分を見失うタイプかな?」と思っていたのだが、単純に減量苦で身体に力が入らなかっただけだった。
前回のポール・マリナッジ戦もそうだが、階級アップがここまで成功するとは思わなかった。
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試合開始直後はゲレロに打ち終わりを狙われていたガルシアだが、2Rに入ると早くもゲレロとの距離感と動きに対応を見せる。そして3Rには、逆にゲレロの打ち終わりを狙い始める。
毎度思うのだが、ダニー・ガルシアの対応の早さというのは本当に抜きん出ている。
1Rを終えたところでは、これはもしかしたらゲレロが勝つぞ?
会場全体がそういう雰囲気に包まれたのだが、残念ながらすべては錯覚だった。
ガルシアといえば、2012年のアミール・カーン戦の衝撃的なKO勝ちが印象に残っている方も多いと思う。
開始直後はカーンのスピードに手を焼いていたガルシアが3Rに凄まじいフックでダウンを奪うわけだが、あれもまさしくガルシアの類いまれなる対応力である。
闇雲に出したフックがたまたま当たったようにも見えるが、決してそうではない。ガルシアはそれまでカーンのスピードに圧倒されているように見えて、きっちりとタイミングと距離を測っていたのである。
先日の記事で内山の対応力はすばらしいと申し上げたが、ガルシアのそれは内山をも上回っているのではないだろうか。
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踏み込みのスピードがあるわけでもない。
手数がある方でもない。
フットワークがいいとも思わない。
ウェルター級としてはそこまで強い身体を持っているわけでもない。
だけど当たる。
これこそ相手の動きをいち早くインプットする対応力というヤツである。
ゲレロは自分の右に回られると何もできなくなること、そして相手の踏み込みと自分のカウンターのタイミング。これを数ラウンドのうちに肌感覚で掴んでしまうのだからさすがとしか言いようがない。
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ゲレロが攻めてるように見えるだろ? 違うんだよ。ガルシアが微調整の最中なんだわな
4Rに入るとゲレロがボディを打ちながら前に出てくるのだが、ここでもガルシアは抜群の対応を見せる。
打ち終わりを狙っていた前のラウンドからさらに進化し、同時に手を出して相打ちを狙い始めるのだ。そのせいでやや被弾するシーンが見られたが、あんなものはピンチでも何でもない。ガルシアがゲレロを圧倒するための途中過程にすぎないのである。
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5Rの開始直後にゲレロが積極的に前に出てガルシアを攻めたてる。
ここで一瞬「おっ?」と思わせるのだが、ラウンド後半にはガルシアがきっちりカウンターで迎撃する。
ゲレロが踏み込んできた瞬間に前に一歩出てカウンターのボディ。左にステップして距離をとる。
ゲレロの右をダッキングでかわし、得意の左フックをカウンターで軽くヒット。そして左に回って再び対峙。
まあ、そういうことだ。
そして6R。
ガルシアのカウンターが立て続けにゲレロの顔面にヒットする。
ゲレロも右を出しながら前進するが、ガルシアはバックステップでかわし、逆に踏み込んでの右でゲレロの前進を寸断する。
ラウンド終了間際、渾身の左右のフックがゲレロを捉える。
パンチの炸裂音に会場が沸く。
ガルシアのインプットが完了したラウンドである。
インプット完了。後は淡々とカウンターをヒットしていく簡単な作業だ
7R以降は見ての通りだ。
ゲレロが右を出しながら前進するが、ガルシアが下がりながらカウンターを的確に当てる。特にコーナーに詰まった状態でゲレロの左をかわしながら打ち返す右のカウンター。あれには痺れた。あの躊躇のなさこそガルシアの最大の持ち味である。
ガルシアのカウンター地獄にどっぷり足を突っ込んだゲレロはなす術がない。
前に出ているのはゲレロ。だが顔が徐々に腫れていくのもゲレロ。
異様な光景である。
9Rに入ると、ゲレロが身体を密着させるように前進する。もみ合いからのガチャガチャの打ち合い。
もはやゲレロができるのはこのスタイルしかないわけだが、試合後半のこの局面で事態を打開するだけの体力が残っているだろうか。
と思っているうちにカウンターを被弾して押し返されるゲレロ。
ああ、厳しい。
これは厳しい。
最終12R残り10秒。
両者がノーガード状態で激しく打ち合う。
前に出るゲレロ。
下がりながらカウンターで迎撃するガルシア。
会場が沸く。
今日一番の盛り上がり。
コーナー付近で足を止めての打ち合い。
両者の拳が交錯したまま試合終了のゴング。
判定の結果は116-112、116-112、116-112の3-0でダニー・ガルシア勝利!!
これでS・ライト級と合わせて2階級制覇達成である。
いい試合だった。
いい試合ではあったが、終始試合をコントロールしたガルシアの完勝といっていいだろう。
ロバート・ゲレロもウェルター級の登竜門としての役割を十分に果たしてくれた。本当にお疲れさまだ。
試合後のコメントを聞くと判定にやや不満があるようだが、残念ながら今回はガルシアの勝ちだ。再戦は必要ない。
ガルシア最大の持ち味は躊躇のないカウンター、そして強靭なメンタル
ガルシアの最大の持ち味は躊躇しないカウンターであると申し上げたのだが、これは本当にすごい武器であると思う。
なぜあんな大振りのパンチが当たるのか。大したスピードもないのに。そう思っている方もいるのではないだろうか。
僕が思うに、これはガルシアのメンタルの部分が大きいような気がする。
格闘技に限らず、1対1の攻防が発生する競技(サッカー、バスケ、ラグビーなど)では間合いをとるスキルというものが非常に重要になる。
ボクシングで言うとパンチを打ち込む側、ラグビーやサッカーで言うとタックルするディフェンス側である。
通常、タックルを仕掛ける(パンチを打ち込む)際の動作として、
1.相手との間合いを詰める(アップ)
2.タックルを仕掛ける(パンチを出す)タイミングを測る(ウォッチ)
3.実際にタックル(パンチを打つ)にいく(ヒット)
アップ、ウォッチ、ヒットの3つの過程がある。
相手との間合いを詰める(アップ)動作を怠れば、単純に距離が遠すぎて届かない。タイミングを測る(ウォッチ)動作がなければワンステップでかわされて終わり。タイミングを見つけても、打ち込む瞬間(ヒット)に躊躇してしまえば当たらない。
要するに、どの過程が欠けてもタックル(パンチ)は成功しないのである。
そして、この3つの動作をいかに速くスムーズに行えるかがタックル(パンチをヒット)成功のカギになるわけである。
ちなみに3つの動作のうちどれかに突出した能力を持っていると、それがその選手の特徴になる。たとえば踏み込みの鋭さが持ち味であったパッキャオは、1の「アップ」の能力に優れた選手といえるのである。
ガルシアのすごさは2の「ウォッチ」から3の「ヒット」へ移行する部分。この瞬間の躊躇のなさがあの全力のフックを生み出しているのだと思う。
相手との間合いを詰め(アップ)、パンチを出すタイミングを見つけた瞬間に思いきり腕を振る。つまり、2の「ウォッチ」と3の「ヒット」までの動作がほぼ同時に発動しているのだ。
先ほども言ったようにウォッチからヒットへの移行の段階で少しでも躊躇が入れば相手には対処する余裕ができてしまう。この部分でどれだけ躊躇なく踏み出せるかが成功のポイントなのだが、ダニー・ガルシアはそこでの躊躇をいっさいなしにパンチを出せるのだと思う。
そして、これはパンチ力や瞬発力といった話ではなく、メンタルの強さによるところが大きいのだ。
ガルシアの強さはメンタルと言ったのは、つまりはそういうことである。
ん〜、うまく伝わっているだろうか。
感覚的な部分を活字にするのは非常に難しくて、自分の語彙のなさがもどかしいのだが。
無敗のダニー・ガルシアに勝つのは誰だ?
ガルシアに勝つには、今日のゲレロのように自分が追いかける展開にしてはダメだ。あの程度の踏み込みで前進しても、得意のカウンターの餌食になるだけである。もしガルシアを追いかけて倒すのであれば、パッキャオ並みの突進力が必要になる。
それができないのであれば、ガルシアに追いかけさせる展開に持ち込むこと。そしてガルシアを超えるリーチとサイズがあること。ガルシア攻略にはその条件に合致した選手が適しているのではないだろうか。
というわけで、僕の思うガルシア打倒の一番手はクリス・アルジェリ。
彼ならやってくれると思うのだが、いかがだろうか。
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