第9地区は予備知識ゼロで観る映画。出会いに感謝したくなるほど最高。グロテスクなトランスフォーマーで度肝抜かれた【映画・感想】
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映画「第9地区」(2009年8月)を観た。
通常、映画の感想記事を書くときは、最初に簡単なあらすじを紹介するのが王道である。
僕もこれまでそのようにしてきたし、興味を持ってもらうためにはそれが最適なのだと思う。
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ただ、今回の「第9地区」については、あらすじを紹介するのを止めておく。
理由は表題の通りで、この映画は予備知識なしで観るべきだと思うから。
HIPHOPグループ「RHYMESTER」の宇多丸が「第9地区」について、「まだこの映画に出会っていない人が羨ましい」旨のコメントをしていた記憶があるが、まさにその通り。
何も知らず、まっさらな状態で観てこそぶっ飛ぶ映画。
それが映画「第9地区」である。
なので、今回はなるべくストーリーの本筋には触れずにこの映画の魅力を語っていきたい。
うまくいくかはわからないが、おつき合いいただければ幸いである。
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映画「第9地区」を観るべきシチュエーション。というか、僕がこの映画を観た状況
では僕がこの映画「第9地区」を観た状況から。
まず、僕はこの映画のことを数日前までまったく知らなかった。
2009年公開(日本では2010年)当時、かなり話題になったとのことだが、個人的にはいっさい記憶がない。
恐らく僕の映画アンテナが低かったのだと思うが、「第9地区」という映画の存在すら認識していなかった。
なので、ストーリーも登場人物も俳優も知らず、「おもしろい」という評判だけを手がかりに観た結果、ケツからゲロがはみ出すほどぶっ飛んだ次第である。
また、時間帯も深夜2:00〜スタートということで、これもいい方向に作用したのかもしれない。
布団に入る頃には外がうっすら明るくなり始めていたのだが、適度に脳みそがスパークしていたおかげでよりインパクトが強調された感がある。
つまり、この映画を観る個人的なお薦めは金曜日の深夜。
明日は仕事が休みで、なおかつ一週間がクソ忙しかった週末。ここに狙いを定めると、効果てきめんではないだろうか。
「第9地区 (字幕版)」
主人公がクズ。しかもバカ
そして僕がこの「第9地区」をお薦めする最初の理由がコレ。
主人公がクズ。
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基本的に僕はひねくれ者なので、主人公に感情移入できない映画というのが大好きである。
もちろん主人公がいいヤツという設定も最高で、いつも言っているように、シロクロのはっきりしたわかりやすさこそ映画の最上級である。何も考えず、思いっきりシロを応援できる安心感はすばらしい。
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だがそれはそれとして、まったく感情移入できない主人公というのも別の意味で魅力的である。
性格は最悪。
見た目もブサイク。
周りの人間も薄っぺらで気持ち悪い。
「コイツだけは」と思っていたヤツも、平気でひっくり返る。
そういう下劣な人間どものグロテスクな巣窟を安全圏から眺める爽快感。
僕はこんな映画も大好きであるww
そして、この映画の主人公ヴィカスのクズっぷり。
エイリアンが一生懸命育てた卵を笑いながら燃やして「ポップコーンの弾ける音だ」と喜んだり、エイリアンを罵倒して立ち退き合意書を叩き落させ、「今ので拇印だな」とほくそ笑んだり。
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相棒になったはずのエイリアン(クリストファー)が、宇宙船の修理に3年かかると言った途端に逆上して後ろからぶん殴ったり。
基本的に自分のことしか考えない安定のクズ。
なのに、奥さんや家族に対する思いは人一倍強い。
自分がどんな状況に陥っても、奥さんからの電話を待ち続ける一途な男。
徐々にエイリアン化する身体を見つめながら、幸せだった日々に思いをはせる。
てか、クズのくせに生意気なんだよww
クズのくせにww
しかも、極度のバカというのもまたいい。
冒頭で「エイリアン立ち退き計画」のリーダーに任命されてクソほど喜ぶヴィカスの描写があるのだが、どう見ても汚れ仕事を押し付けられただけ。
それにまったく気づかず意気に感じてはりきるのだが、この時点でヴィカスのバカは確定。クズの描写はそのあとなので、むしろ作者としてはバカ>クズを強調したかったのではないか。
つまりこの映画の主人公は、救いようのないほどバカで、吐き気を催すレベルのクズ。
もう最高であるww
「第9地区 (字幕版)」
清々しいくらいにグロテスク
2番目のお薦めポイントとしては、とにかくグロいこと。
表題の通りなのだが、この映画をひと言で表現するなら「グロテスクなトランスフォーマー」。
グロテスクなエイリアンとグロテスクなヴィカスが、近代兵器を使いこなして人類と戦争をおっ始めるSFクソ超大作。それがこの映画の見どころの一つである。
圧倒的にグロテスクで、わけのわからん清々しさを併せ持つ。
人類に「エビ」という蔑称で呼ばれるエイリアン。その造形がとにかく気持ち悪い。まるで「唾棄すべきもの」を具現化したような。
映画「エイリアン」をモチーフにしたかどうかは定かではないが、直視できないレベルでグロい。しかも、それが毎回どアップで映し出されるからたまらない。
うまく表現できないのだが、ゴキブリやコオロギやバッタを人間の大きさにしたようなイメージとでも言えばいいか。
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しかも、そいつらが遊び半分でどんどん殺されていくという地獄絵図。
殺され方も千差万別で、ナイフをブッ刺されて苦しみながら息絶えることもあれば、レーザーで「ドッパーン!!」と破裂することもある。
エイリアンの顔も2つとして同じものがなく、どこが口でどこが目かを判別する暇もなく破裂するので目移りしてしょうがない。
正直、僕は最重要人物(エイリアン)であるクリストファーの顔すら覚えていない有様である。
中でも最上級に気持ち悪いのが、やっぱり主人公のヴィカス。
クリストファーが20年かけて集めたという液体を偶然浴びて、徐々に身体がエイリアン化していくわけだが、その過程が激しく気持ち悪い。
我ながら語彙が少なくもどかしいのだが、「気持ち悪い」の最上の表現があれば教えてもらいたいww
液体を浴びたヴィカスの右手がエイリアン化し、人間の身体と同化して痛覚を持ち始める。
何とか進行を止めたいヴィカスは斧で自分の指を切り落とすのだが、何のこっちゃない。ただ痛いだけで終わる。
そして、映画を観ている側には嫌悪感と吐き気だけが残るというクソ映像。
また、ヴィカスの右手を使えば、エイリアンの近代兵器が使えることに気づいた人間たちは、意気揚々とヴィカスを捕らえる。そして、無理やりヴィカスに兵器を握らせエイリアンを試し撃ちさせる。
状況がつかめないまま、レーザーを浴びて弾け飛ぶエイリアンたち。
望まぬ殺戮を無理やりさせられ、発狂寸前のヴィカス。
右腕の効果を十分に確認した研究者たちは、ヴィカスを手術台に縛り付けて右腕を切り落としにかかる。
もう最悪であるww
描写もグロければ人間性もグロい。
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しかも、あれだけ殺戮を嫌がっていたヴィカスが、数十分後には平気な顔で人間を撃ち殺しまくるというね。
ドッパンドッパン破裂する同僚を尻目に、自らが元に戻るためだけに邁進するヴィカスの姿は醜悪そのもの。
へえ〜、人間って、あんなに爽やかに破裂するんだねww
「第9地区 (字幕版)」
単純にストーリーがわかりやすくておもしろい
僕がこの映画をお薦めする最後の理由は「ストーリーがわかりやすくておもしろい」。
主人公がクズ、映像がグロいなどと申し上げてきたが、それらはすべてはストーリーありきである。
何だかんだで、映画としておもしろくなければ話にならない。そしてこの映画「第9地区」はダントツにおもしろい。
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あらすじは伏せると申し上げておいてアレだか、ストーリーをざっと説明すると、
・故障した宇宙船が地球の上空に漂着
・中には、リーダーを失い統率のとれなくなった大勢の難民エイリアン
・地球で保護(保護区はいずれ「第9地区」と呼ばれるようになる)
・「第9地区」を解体し、エイリアンを別の区域に移す計画が進められる
・任務中のヴィカスが謎の液体を浴び、徐々に身体がエイリアン化する
・元の身体に戻りたいヴィカスはエイリアンと協力し、奪われた液体を取り返そうとする
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つまり、
液体を取り返して宇宙船で手術を受けるのが先か、身体が完全にエイリアン化するのが先か。追っ手から逃れて宇宙船を動かすことができるか、それとも特殊部隊の手によって殺されてしまうか。
というのがおおまかなストーリーである。
もちろん「人間専用」の標識を始め、「アパルトヘイト」を連想させる数々の描写から、この映画のテーマが「差別」だというのは僕でもわかる。
また、別の方の感想記事を読むと「クリストファー」という名前や、宇宙船が雲の間に消えていくシーンなど、キリスト教を題材にしている箇所も多いという。
ただ、そういったややこしい話はともかく、何よりお薦めなのがこの映画の疾走感溢れる展開。自らのアイデンティティを賭けたヴィカスの逃避行に、手に汗握ること請け合いである。
「考えさせられる」とか「世の中に溢れる不平等、不公平が〜」という問題提起もいいが、それよりも、僕はこの映画を純粋に楽しんだ方がいいと思っている。
だって本当におもしろいから。
出会いに感謝したくなるくらいにグロいからww
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「第9地区 (字幕版)」
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