チケット手売り、ノルマシステムがエグいくらいによくできてると思った件。おいおい天才か。こんなにいいシステムがなくなるわけがない

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チケットイメージ
格闘技界では常識と言われる「チケットの手売り」
 
試合に出場する選手がチケットを自分で売り、その売り上げからマネジメント料を引いた金額が自分の取り分(ファイトマネー)となる。
 
つまり、手持ちのチケットが売れればそれだけ取り分が多くなるが、売れない場合は手元に残る金額も減る。中にはチケットをさばくのが苦手で、試合を組むたびに赤字が出て生活が圧迫される選手もいると聞く。
 
また、選手がファンと直接金銭のやり取りをするためトラブルも発生しやすい。
「試合当日に無断でバックレてお金も払わない」「本番数日前にドタキャンされて、売り上げの目途が立たなくなった」といった話はSNSなどでもたびたび目にする。
 
さらに選手個人がチケットをさばく慣習の是非について論じた記事が出るなど、システム自体の見直しが必要なのかな? と思わせる動きもある。
 
「「チケット手売り」は是か非か、SNSで変わるプロボクサーたちの慣習」
 
そして表題の件。
改めてチケット手売りはよくできたシステムだなぁと。
 
格闘技以外では劇団やアマチュアバンドなど、出演者が自らチケットを売ることが常識となっている業界はいくつも存在するが、考えれば考えるほどすばらしいシステムとしか言いようがない。
 
否定的な意見も多く聞かれるが、正直ここまでよくできたシステムがすぐになくなるとは思えない。多少の拡縮や形態の変化はあっても、この先もしぶとく残っていくのではないかと予想する。
 

チケット手売り、ノルマは要するに商品流通の小さい形かな。CDや書籍の流通を見るとイメージできる

出演者が自らチケットをさばき、収入に変えるシステム。
チケット手売り、ノルマその他。呼び名は何でもいいが、要するにこれは商品流通のもっとも小さい形だと思う。
 
パッと思いつくところでは、CDや書籍の流通だろうか。
 
一般的に音楽業界では、レコード会社(キングレコードやAvexなど)が発売したCDをCDショップが直接注文し、店頭に並べる。もしくは「ディストリビューター」と呼ばれる卸売業者が注文を一手に取りまとめて各ショップに届けるという2種類の流れがある。
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書籍の流通で言うと、出版社が本を発売する際、店頭に並ぶ前にいったん「取次」と呼ばれる卸売業者を通す必要がある。この取次が出版社から商品を受け取り、全国の書店に配本するという流れである。
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当然だが、どちらの流通も小売店(CDショップ、書店)は定価の○%で商品を仕入れ、売れた分から儲けを出すことになる。
また、メーカー(レコード会社、出版社)との間を取り持つ卸売業者(ディストリビューター、取次)は、小売店からの注文を一手に引き受ける代わりに値段に応じた中間マージンを受け取る。
 
つまり、ここで言う「小売店」がチケットを手売りする選手、出演者にあたる。
 
「メイウェザークズ過ぎワロタw 那須川天心のしくじり先生がクソおもしろかった件。ジャンルを引き上げるって大変よね」
 

書籍業界には売れ残りを返品できる「委託制度」が存在する。メーカーと小売店双方にリスクを分散する制度

そして、上記のCDや書籍の流通とチケット手売り、ノルマシステムの一番の違いが、返品が効かないことだと思う(違ったらすみません)。
 
CDでも書籍でもそうだが、商品によって売れるものとそうでないものがある。
小売店側は売れ筋商品を多く仕入れ、できるだけ店頭でさばきたい。だが、どれだけ売れるかは事前にはわからないので、予測を立てる必要がある。
 
CDであれば前作の売れ行きやアーティストの露出。小説であれば、連載時の評価や作家本人の知名度など。
「在庫を抱える=借金」を意味するので、売り上げ予測は小売店にとってはめちゃくちゃ重要な要素となる。
多く仕入れすぎれば在庫(借金)がかさみ、仕入れが少なければビジネスチャンスを失う。リスクとリターンを天秤にかけながら慎重に仕入数を決めなくてはならない。
 
「格闘技イベントの入場で使われたらテンション爆上がり曲Best5。すでに使用してる選手がいたら一瞬でファンになります」
 
そして、小売店のリスクを軽減する措置として、書籍業界には「委託制度」というものが存在する。
 
ひと言で言うと、売れ残りを返品できる制度
たとえば2000円の書籍を1500円で仕入れた場合、商品が売れれば500円の儲けが出るが、売れ残ったときは1500円の赤字となる。
これを1800円で仕入れることで儲けを200円に減らす。その代わりに売れ残った際には返品をOKにしてもらう。これが「委託制度」である。
 
返品が許されるのであれば小売店はある程度強気の仕入れが可能になり、その分ビジネスチャンスも広がる。逆にメーカー側は在庫を抱えるリスクが高まるため、売れ行きを見極めて出荷量を調整する必要性が増す。
 
小売店だけに在庫を丸投げするのではなく、双方にリスクを分散させるための措置である。
 

チケット手売り、ノルマシステムはやっぱりすごい。主催者側がノーリスクでいいとこどりできる天才的にすばらしいシステム

で、格闘家や劇団員、アマチュアバンドのチケット手売り、ノルマシステムにはこの「委託制度」がない(違ったらすみません)。
 
支給したチケットの数に応じたマネジメント料? は変わらないので、売れようが売れまいがメーカー(主催者)側にはまったく影響を及ぼさない。
 
しかも小売店(出演者)は儲けがほしいので、あらゆる手を使ってチケットを売ろうとする。これにより、メーカー(主催者)側がいっさい宣伝活動をしなくても勝手にイベントの告知が進み、さらなる顧客拡大にもつながる。
 
顧客からのクレームや支払いトラブルがあろうが関係ない。すべて小売店(出演者)に個別対応させておけばいいし、チケットによる支払いは完了しているので取りっぱぐれなどは起きようがない。
 
「武尊と皇治の乱闘騒ぎの件。殴ったら対等になるかは知らんが、武尊はローカルヒーロー止まりかな」
 
何よりこのシステムがすごいのは、事前に売り上げがわかるところ。
CDや書籍を含め、市場の動きを見ながら売り上げの予測を立てるのが流通の常識だが、チケット手売り、ノルマシステムではこの部分が必要なくなる。
 
イベントにかかる経費を計算し、損益分岐点さえ出せばOK。
支給するチケットの数を調整することで、たとえ大きく儲かることはなくても存続の危機を招くような大打撃は回避できる。
 
そして、あとは損益分岐点にだけ注意して残りをプレイガイドでちょろちょろっと売れば、その分儲けも増える。
 
 
・固定の売り上げが必ず見込める
・宣伝は出演者が勝手にしてくれる
・トラブル対応も出演者が勝手にしてくれる
 
まさしくノーリスクのいいとこどり。
批判でも否定でも皮肉でもなく、天才的にすばらしいシステムだと思う。
 

このシステムがなくなることはないと思う。それだけ(主催者側にとって)優れたシステムだから


そう考えると、やはりチケット手売り、ノルマシステムがなくなることはない気がする。
 
だってアレだろ?
劇団員やバンドマンの「チケットが売れない話」は山ほど聞こえてくるけど、主催者側からの声ってほとんどないからね。
それが(主催者側にとって)優れたシステムであることの何よりの証拠でしょ。
 
「客席の9割超は知人で、大半は他劇団の俳優!? ノルマを内輪で消費し疲弊する、小劇場の俳優たち」
 

 
一応言っておくと、CDショップはCDを売ること、本屋は書籍を売ることが仕事だけど、格闘家は試合で勝つこと、劇団員は舞台で魅せることが仕事だよね。
しかも近年CDや書籍はオワコン化して、デジタルが主流になりつつあるよね。
 
これまでは理不尽なシステムでふるいにかけて残った人間だけを優遇してればよかったけど、分母自体が減ってくればそうも言ってられないよね。
 
 
いや、だから何? という話ではありますが。
 
 

 

 

 
 
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