映画「チャッピー」感想。最高で最低なおススメの1本。予定調和の最悪なラストの土俵際で踏みとどまった。ムキムキヒュー・ジャックマンゴルァ
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映画「チャッピー」を観た。
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「チャッピー」(2015年)
南アメリカ政府はヨハネスブルグにおける犯罪発生率を下げるため、兵器メーカー「Tetravaal社」から人工知能を搭載した警備ロボットを購入。生身の警官隊に代わるロボット警官隊の配備を進めていた。
「Tetravaal社」の設計者であるディオン・ウィルソンは、独自に進めていた人間の知能を模倣した人工知能ソフトウェアの開発に成功する。そして、試作の許可を求めに上司であるミシェル・ブラッドリーのオフィスを訪れる。
人間並みの感情を持ち、自分で考え意見するロボットの有用性を懸命に訴えるディオン。だが、ブラッドリーは頑として首を縦に振らない。現状、クライアントの満足度は高く、人間並みの感情などは必要ないとディオンの提案をあっさりと却下してしまう。
どうしても人工知能ソフトウェアを諦めることができないディオンは、廃棄寸前のロボットとソフトウェアのアップデート用USBドングルを無断で持ち出し、大急ぎで自宅へ向かう。
ところがその道中、突然3人のギャングが前に現れ、ディオンを誘拐する。
彼らは7日以内に借金を返済するため大規模な強盗を計画しており、それには邪魔な警備ロボット部隊を壊滅させなくてはならない。そのために開発者であるディオンに狙いを定めたのだった……。
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おもしろいに決まってる。だって「第9地区」と同じ監督でしょ? 冒頭の回想インタビューを観ただけでわかったよね
映画「チャッピー」。
2015年に公開された米映画で、「第9地区(2009年)」のニール・ブロムカンプが監督を務めた作品である。
感想としては「いや、そりゃおもしろいでしょ」としか言いようがない。
「第9地区」と同じ監督で舞台はヨハネスブルグ。この時点でつまらないものになるわけがない。
凄まじい安心感というか、おもしろいけどめちゃくちゃしんどいんだろうなという感じ。そして、まさしくその通りの作品だった次第である。
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まず関係者が事件を回想するインタビュー映像からスタートするのだが、この時点でだいたい察しはつく。
なぜなら「第9地区」とまったく同じだから。
「とんでもない出来事だった」
「だけど、よくよく考えれば決しておかしなことではない」
「信じられないかもしれないが、これは十分起こりうることなんだ」
関係者らしき人物がカメラの前で過去を振り返ることで、視聴者にこれから起こる事件の重大さを想起させる。
前回の「第9地区」は、はみ出し者の人間と知能指数の高いエイリアンがひょんなことから手を組み、奇妙なコンビプレーで事態を引っ掻き回すというドキュメンタリー風SF映画だったが、今回の「チャッピー」も基本的には同じ。
人工知能を諦めきれない科学者ディオンと、後がないギャング3人が利害の一致により手を組み、感情を持ったロボットの成長を通じて奇妙な友情を深めていく。
スポンジのように知識を吸収し、加速度的に成長を遂げるチャッピーを「創造主」の眼差しで見守るディオン。
純真無垢で疑うことを知らないチャッピーに母性を刺激されるヨーランディ。
最初はチャッピーを道具としてしか見ていなかったが、恋人のヨーランディになつき、懸命に生きようとする姿に徐々に愛情が芽生えるニンジャ。
ニンジャと同様、チャッピーをただの道具と見ているものの、心のどこかで愛しさも感じているアメリカ。
科学者1人とギャング3人、そしてチャッピー。
刻一刻と迫るタイムリミットを前に、彼らは最後の戦いに向けて命の灯火を燃やす。
そして、胸が締め付けられるようなラストへ……。
もうね。
冒頭のインタビューだけでこの流れはだいたい予想がついたよね。
「ああ、これな」
「このパターンだろ?」
「知ってるよ。胸が苦しくなるヤツだろ?」
みたいな。
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チャッピーの人間臭さが最大の魅力。たったの5日間だけど、誰よりも濃い5日だった
この映画の魅力は何と言ってもチャッピーの人間臭さ。これに尽きると思う。
初期は赤子同然の状態で、好奇心旺盛だがとにかく臆病。
絵本やスケッチが趣味で争いごとは大嫌い。ニンジャに無理やり持たされた拳銃に怯え、ディオンの「暴力はいけない」という教えに素直に頷く。
不良少年のたまり場に置き去りにされた際は「ママ(ヨーランディ)」を呼びながら街をさまよい、ボロボロの状態で家(アジト)にたどり着く。
ニンジャから自分の運命を知らされて以降は「生きたい」という自我に目覚め、彼らから社会で生き抜く術を学ぶ。目的を果たすためにはディオンの教えよりも彼らの方が正しいと気づき、徐々に「その道」に染まっていく。
ディオンに説教された際の拗ねたようなしぐさはまさに反抗期のそれ。“親”の言うことに反発し、仲間との絆を優先するチャッピー。なぜならそこには「共通の未来」があるから。
そしてクライマックス。
「ママ(ヨーランディ)」が凶弾に倒れ、父(ニンジャ)は怒りに我を忘れてしまう。
「創造主(ディオン)」の命も自らのタイムリミットもあとわずかで、助かる可能性があるのは1人だけ。この状況の中、チャッピーは自分ではなくディオンを助けることを選択する。
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自分を生み、生きる意味を与えてくれたのがディオン。
自分を愛し、帰る場所をくれたのがヨーランディ。
自分を必要とし、生き抜く術を教えてくれたのがニンジャとアメリカ。
多くのものを与えてくれた彼らに対し、チャッピーができる恩返しはただ一つ。
自らの命よりも彼らを助けること。この先も元気でいてもらうこと。
見た目などは関係ない。
人の手によって生み出された嘘の感情だろうがどうでもいい。
これが人間でなくて何だっていうのよ?
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実験体として生み出され、人間以上に人間臭く成長したチャッピー。
わずか5日間ではあるが、彼らと過ごした時間はチャッピーの「人生」そのもの。
この5日間で一生分の成長を遂げ、そして“命を賭して”守りたいと思うものを見つけた。
こんなもん、感情移入しないわけがないww
最悪の一歩手前、土俵際で踏みとどまった。こういう救いがある結末はいいよね
ただまあ、ラストは最悪の一歩手前で踏みとどまった感はある。
僕はてっきり「第9地区」のように「あ〜あ、やっぱりこうなっちゃいますよね」というラストが待ち構えていると思っていたのだが、少し違った。
表題の通りなのだが、予定調和の中において土俵際ギリギリの救いがあった。
胸が締め付けられるような結末には違いないが、彼らにはちゃんと未来が用意されていた。「第9地区」における絶望感満載の未来ではなく、2人で歩む未来というヤツ。
そうそう。
ここがすげえ大事。
孤独ではなく、2人というのが。
姿形がどうあれ、彼らはこの先も手を取り合って生きていける。
恐らくだが、異形となった彼らが世間に受け入れられることはない。この先「人間」としての生活を送れる可能性はゼロに近い。意志を持つ存在であることを隠し、ひっそりと生きていくことになるのではないか。
だが、彼らは1人じゃない。
生み出した者と救った者。他の誰よりも強い絆で結ばれた者同士、その命が尽きるまでたくましく生き抜いていけるはず。
などなど。
こういう「その後」を想像できるのがバッドエンドではない作品の強みでもある。そして、僕がわかりやすくてハッピーな作品を好む理由の一つだったりする。
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ヒュー・ジャックマンとかいう憑依系俳優。ムカつくムキムキ嫉妬おじさんは親日家
あとはアレだ。
やっぱりヒュー・ジャックマンはいいよね。
今回はチャッピーたちの行く手を阻むムキムキ嫉妬丸出しおじさんとして君臨するわけだが、そのムカつき具合と言ったら……。
最初はディオンへの腹いせに過ぎなかったはずが、徐々にエスカレート。最終的には自分のサディスティックな欲望を満たすサイコパスに成り下がるという。
正直、終盤でチャッピーにボコられ、ズタボロにされたシーンはかなりスカッとしたし、チャッピーの「それでも、僕はお前を許す」というセリフには大いに笑わせてもらった。
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あるときはヒーローとして獅子奮迅の活躍を見せるヒュー・ジャックマン。だが、今回のような果てしなくムカつく役どころもすばらしい。今後も注目していきたい俳優の1人である。親日家だしね。
コイツ、本当に寿司好きだよなww
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