“カネロ”・アルバレスがリアム・スミス挑戦にファン失望? ゴロフキンとの一騎打ちを回避し、S・ウェルター級のタイトルマッチへ【予想】
2016年9月17日(日本時間18日)、“カネロ”ことサウル・アルバレスがWBO世界S・ウェルター級王者であるリアム・スミスに挑戦する。
この試合はHBOがPPVで配信する予定で、会場は未定だが候補地としてラスベガスやニューヨークが挙がっているとのこと。
「恐れ入りましたカネロ。リアム・スミスにあんな勝ち方するか」
この発表に対し、ミドル級統一王者ゲンナジー・ゴロフキンとの一騎打ちを期待していたファンからは失望の声が挙がっている。
ゴロフキン、カネロ両陣営は現在も対戦に向けて交渉中であるとし、2017年秋の実現が大筋で定まっているとのこと。だが、今回カネロがS・ウェルター級での試合を発表したことによって、実現自体に疑問を呈する声も多く聞かれている。
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メイウェザー、パッキャオの後を担うボクシング界の主役候補である“カネロ”アルバレス。「ゴロフキンから逃げた臆病者」との評価を覆すためにも一騎打ちを避けて通ることはできない。メキシコの若きスーパースターの今後に注目である。
まさかのS・ウェルター級リアム・スミス戦に失望? どうなるゴロフキンとの一騎打ち
カネロがS・ウェルター級でリアム・スミスに挑戦!!
この試合の決定を聞いたファンの反応は一様にして冷やかなものだった。
「やっぱりカネロは逃げた」
「妙な時間稼ぎをしてしょーもない」
「ゴロフキンの劣化待ちか」
「あれだけ大口叩いておいてダサい」
こんな感じだろうか。
「何やってんだカネロ!!」と憤るというより、「ああ、やっぱりな」という諦めというか、どちらかと言えば呆れたといった感想が多いようである。
むしろ、5月7日(日本時間8日)に行われたアミール・カーン戦の数日後にベルトを返上したときの方が非難は大きかったように思える。
「カーン仰向けにバッタリ。“カネロ”・アルバレスが壮絶カウンター一発でカーンを失神KO!!」
リング上にわざわざゴロフキンを呼んで「今からグローブをつけて戦ってもいい」と叫び、公式会見の場で「ミドル級正式ウェイトでゴロフキンと戦う」と宣言しておいてからのタイトル返上。
あれは確かに「何のギャグだよw」という感じはしたが、今回のリアム・スミス戦発表に関しては、ファンの怒りはそこまでではないようである。
まあ、怒りというより「知ってたよ」という諦めに近い感情なのだろうが。
GBPの稼ぎ頭であり、最後の砦であるカネロにとってゴロフキンは完全に目の上のたんこぶである。逆にゴロフキンにとってもさら地状態の周辺階級において唯一ライバルになり得るのがカネロである。
双方にとって避けられない相手であり、近年ではメイウェザーvsパッキャオに次ぐ一大イベント。今後の交渉がどうなるのかはわからないが、ボクシング界の人気のためにも何とか実現にこぎつけてもらいたいところである。
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実はめちゃくちゃ楽しみなカネロvsリアム・スミス。よくこんな面倒な相手を選んだな
上述のように、今回の“カネロ”アルバレスvsリアム・スミス戦はファンの期待していたカードとはほど遠く、概ね評判はよろしくないようである。
だが、僕個人の意見を言うのであれば非常に楽しみな試合だ。
というより、この試合の決定を聞いたときは「マジかよカネロ。よりによってそんな難しい相手を選ぶか?」と思ってしまった。
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カネロがタイトルを返上したと聞いた際、実を言うと9月の試合はミドル級出身の手ごろな相手とキャッチウェイトで行うのだろうと思っていた。手ごろな相手が具体的に誰だというのもないのだが、ミドル級の体格に慣れるための調整試合なのだろうと。
そして、2017年5月に挑戦者決定戦と称してウィリー・モンロー・ジュニアあたりと正規のミドルウェイトで調整試合を行う。そこをクリアすればいよいよ2017年9月にゴロフキン戦。そんな青写真を勝手に描いていたのだが、見事に外れてしまった。
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まさかのS・ウェルター級での試合、それも周辺階級で一番難しそうなリアム・スミスである。正直、S・ウェルターの王者の中ならチャーロ弟あたりに適当に挑戦しておけばいいと思っていたのだが。
エリスランディ・ララやミゲール・コット、シェーン・モズリー。その他フロイド・メイウェザーにオースティン・トラウト。
加えて今回のリアム・スミスである。
相手を選ばず実力者にどんどん挑んでいくマッチメークには脱帽するというか、さすがとしか言いようがない。
まあ、ミドル級でのアミール・カーン戦だけは意外過ぎてビックリしたが。
「カネロ・アルバレスとカーンがまさかのミドル級タイトルマッチ!? 斜め上のマッチメークに業界騒然!!」
確かにゴロフキンといきなり激突しろというのは無理があるとは思っていたが、準備期間としてのリアム・スミスであれば必要十分な相手といえるのではないだろうか。
「ゴロフキンがウェイドを子ども扱い!! もう相手おらんなこりゃ」
リアム・スミスはクレバーで堅実な実力者。英国人ボクサーに多いタイプのバランス型の選手
WBO王者のリアム・スミスについてだが、初めてこの選手の試合を観たのはWOWOWエキサイトマッチでO.A.されたジョシュ・トンプソン戦だったと思う。そして次戦のジミー・ケリー戦、ラドセビッチ戦の順で視聴した次第である。
ごく最近知ったばかりでアレなのだが、このリアム・スミスは本当にいい選手ではないだろうか。
手数は少ないし、リング上を激しく動き回る身体能力があるわけでもない。ガードを高く上げたのぞき見スタイルでジリジリとにじり寄り、自分の腕を思い切り振れる位置まで近づいたところで攻撃を開始する。
正直、動き自体にビックリするような要素は皆無である。スタイル的にもかなり地味なので、恐らく人気面でも他団体の王者に比べて見劣りする部分は多いのではないだろうか。
「正気か? ケル・ブルックがゴロフキンに挑戦? しかもミドル級正規のウェイトで?」
だが、シフトウェイトやパンチのつなぎ、コンビネーションの種類などを見ていると、この選手の頭のよさやクレバーさがひしひしと伝わってくる。
相手の攻撃パターンと戦力をすばやく把握し、危険地帯では防御に徹する。攻撃の際は極力相手の反撃を回避できるバランスを保ち、決して危険地帯に踏み込まない。シフトウェイトと細かいポジショニングによって、必要最小限の動きで攻撃を回避するのでバランスを崩すことがほとんどない。どんな状況においても、自分の射程内であればパンチが打てる姿勢を保ち続けられる抜群の安定感。
「村田1Rで圧勝!! 廃棄処分するようにタドニッパをKOする。100点満点じゃないか?」
いわゆる勝ち方を知っているというか、勝利への近道を探し当てる嗅覚に優れた選手。うまい表現が見つからないが、そんな感じの選手ではないかと思う。
どことなくライト級のアンソニー・クロラと近いのだろうか。もしくはS・フライ級のポール・バトラーとか。
というか、どちらも英国の選手か。
何となく、英国のボクサーにはこの手のタイプが多いような気がする。
シフトウェイトのうまい堅実なスタイルの選手。少しロマゴン的と言えばいいだろうか。
まあ、ロマゴンはシフトウェイトしながら手が6本あるんじゃないかというコンビネーションを打つので、完全に別次元の怪物なのだが。
「ロマゴン、アローヨを大差判定で退ける!! 半病人のゴンサレスにアローヨは歯が立たず」
ちなみに、9月にアンソニー・クロラvsホルヘ・リナレスの統一戦が英国で開催されると聞いた。なるほど。この試合はリナレスにとって相当難しいものになるだろう。
「スペンスがブンドゥをKO!! アカン、こりゃぁガチだ。絶対キース・サーマンより上でしょ?」
今回の試合はゾラニ・テテvsポール・バトラーの試合が参考になるんじゃないだろうか
カネロvsリアム・スミス。
今回の試合でカネロが勝つには、いかにスミスに懐に入らせないか、どれだけ自分の距離で対峙し続けられるかだと思う。
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両者のスタイルを比較すると、射程距離の長さでは断然カネロである。
つまり、カネロが試合を有利に進めるには、どれだけ自分の距離をキープできるか。いかにスミスの手の届かない位置で戦うことができるかにかかっている。
そのためにカギとなるのはやはりフィジカル。
いかにカネロがスミスをパワーで圧倒できるかである。
そして、スミスの出足をどれだけコンビネーションで止められるか。ガードの固いスミスに、カネロのパシャパシャコンビネーションがどれだけ通用するか。
要は、ミゲール・コット戦のように相手を遠い距離でくぎ付けにできるか。自分の周りを回るように仕向けられるか。そういうことなのではないだろうか。
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僕が思うに、一番参考になるのが2015年3月に行われたポール・バトラーvsゾラニ・テテ戦である。
あの試合は至近距離で打ち合いたいバトラーに対し、テテの作戦がガッツリはまった試合である。何度もアタックを仕掛けるバトラーの侵入を許さず、テテが終始有利な展開に持ち込んだ。ある意味、テテにとっては理想的な試合である。
あの試合のテテはとにかくサウスポーの特性を活かしまくっていた。
とりあえずリング中央では前手の右を細かく動かし続ける。当てるというより牽制するためのジャブを出し続けるのである。
そして、スタンスを広げて斜に構えることで極力的を小さくする。大きく前に出した右足をバトラーの身体の中心に置いて侵入経路を封じる。
的の小ささ、リーチの長さ。さらに前に出した右手と右足。これでバトラーの突進を封じ込め、懐に入りたいバトラーの焦りを誘う。冷静さを失ってバトラーが身体の正面を晒したところでドカン。
最後のバトラーをストップしたアッパーはもうさすがとしか言いようがない。見えない角度からの見えないパンチ。あのパンチ自体もすごかったし、そこまでの過程も素晴らしかった。何もかもテテのプランどおりに進んだ試合だったと言えるのではないだろうか。
実際、あの試合のテテは本当に見事だったと思う。
自分の持ち味と相手の戦力を細かく分析し、勝利への近道をぶれることなく走り抜ける。これまで僕が観た中でも随一の組み立てと、テテの性格の悪さが滲み出た試合である。
カネロが勝つには、いかに自分の距離で対峙するか。リアム・スミスを下がらせることができるか
話をカネロvsリアム・スミス戦に戻そう。
今回の試合をカネロが有利に進めるには、あの試合のゾラニ・テテのような戦法を実践できるかどうか。オーソドックスであり、リーチもそこまで長くないカネロが手持ちの武器でどう代用するか。そういうことではないだろうか。
これはやはり、いかにパワー差とパンチの強弱を使えるかだろう。
リアム・スミスが懐に入りにくいようにいつもより若干斜に構え、スタンスも広めにとる。もちろんリアム・スミスの踏み込みに押されないようにという意味も含めてである。
そして、いつも以上に左を出してスミスの突進を寸断する。これまでのような見せかけの軽いジャブではなく、ある程度強めに力を込めて打ち込むのである。
ボディを見せてからの顔面、左を途中で止めてからの右というフェイント。こういうカネロ得意の手先の小細工を駆使するより、1発1発に力を込めてスミスを後退させるのだ。
「これをまともにもらったらまずいな」
スミスにそう思わせるのである。
パワー差でスミスの出足を抑えることに成功したら、次は得意のコンビネーションである。コットを上回るテクニカルなコンビネーションをスミスのガードの間からねじ込み、じわじわとダメージを与える。スピードとパワーに変化をつけて、攻防分離型のスミスを遠い位置にくぎ付けにする。
正直、それだけやってもどこかで懐に入られるシーンは出てくるはずである。その際、中に入られたカネロがプライドを捨ててクリンチにいけるかどうか。これもまた重要な要素になると思う。無駄にカッコつけず、謙虚な姿勢を貫くカネロに期待である。
恐らくハンドスピードや一瞬の身体の動きだけならカネロはリアム・スミスを上回っている。曲がりなりにもミドルで試合をこなしていた分、フィジカル面での優位性もあるだろう。
リアム・スミスがグイグイ前に出る展開にさえさせなければ、カネロのパワーとテクニックがあれば恐らく何とかなるのではないだろうか。タイミングさえ合えば、もしかしたらダウンも奪えるかもしれない。
何となくだが、カネロの右フックがスミスのテンプルに当たりそうな気がする。
勝敗予想はカネロの12R判定勝ち。スピードとパワーの差を見せてカネロが大差で勝つと予想
勝敗予想だが、今回はカネロの大差判定勝ちでいきたいと思う。ダウンを含めて、何だかんだで無難にカネロが勝ちきるのではないかと予想する。置きにいった予想と言われてしまえばそれまでだが。
繰り返しになるが、リアム・スミスは非常にいい選手。それは間違いない。だが、残念ながらパワー面での強さをあまり感じないのも確かである。
なので、フィジカルやスピードで勝るカネロと対峙した場合、距離を詰めることができずにポイントアウトされる。そんな結果を予想しているのだが、どうだろうか。
ちなみにだが、僕もカネロvsゴロフキン戦の実現を願っている人間である。そのため、今回の試合はどうしてもカネロ寄りの目線で見てしまう部分がある。
ただ、リアム・スミスのアップセットを期待しないわけではない。
万一カネロが負けるようなことがあればテンション爆上げ間違いなしである。
フォルトゥナvsソーサ、内山vsコラレスどころじゃない。
ここ数年でも最大の番狂わせと呼ばれること請け合いである。
「フォルトゥナ陥落!! イキった末にソーサの左フックを被弾してKO負け」
まあ、実際「ファンは強いボクサーに挑む姿を求めてるんだ。だからカネロはゴロフキンとやれ!!」ってのはすごい理屈だよな。
そんな理想だけ追い求めて壊れたって誰も責任とってくれないわけだし、プロが儲けの多い方向に進むことの何が悪いの? とは思うかな。
しかも、それをファンが言うだけならまだしも、業界関係者が言ってるからタチ悪いよな。青木真也に「UFCに挑戦しないヘタレ」って業界関係者が言ってるのを見たりするけど、マジでゾッとするからね。
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