物議を醸したカネロvsゴロフキンVol.1から3年。改めて観てみたけどおもしろい試合。ゴロフキンのジャブのすごさとド派手なカネロのカウンター
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2017年9月16日(日本時間17日)に米・ネバダ州ラスベガスのT-モバイルアリーナで行われたゲンナジー・ゴロフキンとサウル・“カネロ”・アルバレスによる世界ミドル級3団体統一戦からちょうど3年が経ったとのこと。
#OnThisDay…September 16, 2017@Canelo ? GGG ??
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— Golden Boy (@GoldenBoyBoxing) September 17, 2020
この試合は1-1(110-118、115-113、114-114)の判定でドローとなったわけだが、ゴロフキンの勝利というのが大方の見方。主役扱いだったはずのカネロが試合後のインタビューでブーイングを浴びるなど、各所で物議を醸す結果となっている。
中でも110-118をつけたジャッジには批判が集中し、その技量を疑う声も大きかったとか。
下記の記事にもあるように、もっとも多い意見が116-112でゴロフキン勝利だったらしい。
【#ボクシング】ゴロフキン対カネロは痛み分けドロー 内容は“年間最高試合”も判定に疑問符(写真:Getty Images)https://t.co/RilslPaqJ1
— スポーツナビ (@sportsnavi) September 17, 2017
そのいわくつきの試合からちょうど3年ということで、久しぶりに観直してみたわけだが……。
もう、めちゃくちゃおもしろい。
当時もウッキウキで観戦した記憶があるが、改めて観てもやっぱりいい試合。
衰えたと言われていたゴロフキンがここまで仕上げてきたのはさすがだったし、そのゴロフキンのプレッシャーをあれだけ受けながらもカウンターを返しまくったカネロもすごい。
上記の記事の通り、2017年の年間最高試合と言っても過言ではないほどの大試合だった(と思う)。
それだけに試合後に判定ばかりに話題が集中してしまったのは何とももったいない。後日、カネロから禁止薬物陽性反応が出たことを含め、素直な目線でこの試合を評価できなくなるのは本当に残念である。
まあ、それでも118-110はホラーとしか言いようがないですけどね。暗がりから稲川淳二が懐中電灯片手に現れないと辻褄が合わないレベルで。
なお、久しぶりに観た僕のクソ採点では114-114のドロー。
んなバカなw と怒られるかもしれないが、今さらあれこれ言っても仕方ないので大目に見ていただければと思う。
カネロvsゴロフキン3展望。ゴロフキンが案外がんばると思うねんな。技巧満載の初戦、両者の意地がぶつかり合った2戦目を受けてどんな試合展開になるかが楽しみっす
最強王者ゲンナジー・ゴロフキンすごかった。下降線に入ったとは言われていたけど、やはり歴代トップレベルのミドル級ですね
まずゲンナジー・ゴロフキンについてだが、これぞ最強王者というパフォーマンスだった。
この選手がすごいと思うのは、何と言っても圧力の強さと左リード。
カネロのクネクネディフェンスとカウンターを前にしてもいっさい躊躇なく前に出続け、絶えずプレッシャーをかけて先手を取りまくる。しかも、それを12R通して継続するスタミナも兼ね備える。
試合前のゴロフキンは前戦のダニエル・ジェイコブス戦で連続KO防衛がストップしたこともあり、やや下降線に入ったと言われていた。
確かに2014~2016年前後の絶対的な強さは目減りし、ここぞとばかりに対戦に名乗りを上げる選手も増えていた。
だが、それでも超一流であることは間違いなく。
スムーズな足運びで前後左右に動くカネロを追い回し、コーナーでスルスルと距離を詰める。
力みのない左リードで距離を測り、よどみないコンビネーションにつなぐ。
さらにカネロのフルスイングを被弾してもケロッと打ち返す強靭なフィジカルもあり、あまりのタフさにカネロがうんざりした表情を見せるシーンも。
2016年9月のケル・ブルック戦での強引なファイトによって微妙にボクシングが崩れ、ひたすら足を使うダニエル・ジェイコブスを追い切れずに際どい判定勝利で連続KOがストップ。
全盛期に比べて力が落ちていたのは間違いないと思うが、カネロをここまでキリキリにさせる試合運びは文句なしに凄まじい。
この試合とか、激ヤバですからね。
やや広いスタンスで腰を落としてどっしり構え、ほとんど上下動がない足運びで滑るように移動。相手との間合いを自由自在に支配する。
強靭な下半身から予備動作なしで放つ左リードはとんでもない威力を発し、相手をまったく近寄らせない。
ワシル・ロマチェンコに匹敵する足運びと、攻撃の意思がいっさい感じられない構えから唐突にすっ飛んでくる左。
ゴロフキンの左リードのすごさを考える。“意識の外から飛んでくるパンチ”が無造作過ぎて準備がちっとも間に合わない
カネロ戦でのゴロフキンはほんの少し動きがカクカクしており、終盤には連打の最中につんのめるシーンも見られた。
だが、この試合でのゴロフキンに付け入る隙はいっさい見当たらない。
相手のデビッド・レミューが何もできず、ひたすらゴロフキンの周りをウロウロする光景が8Rにわたって展開される試合。
レミューのぴっちり横分けツーブロックがラウンドを追うごとに乱れていく様子を観るだけの地獄絵図である。
正直、この時期のゴロフキンならカネロどころか歴代ミドル級でもトップ3に入るのではないか。それくらい全盛期のゴロフキンは他を寄せ付けない強さがあった。
カネロも文句なしに素晴らしい。ド派手なアクションには華がある。周到な準備を重ね、ゴロフキンと初めて真正面から打ち合った
お次はサウル・“カネロ”・アルバレスについて。
申し上げたようにこちらもとんでもなく素晴らしい。
ゴロフキンのプレッシャーをあれだけ受けながらも、巧みなボディワークとカウンターを駆使して決定打は絶対に許さない。要所での打ち合いではハンドスピードと正確性でゴロフキンを上回るシーンすらも。
立ち上がりの1、2Rなどは特に軽快で、ゴロフキンの圧力をバックステップでいなしながらカウンターを返す動きは惚れ惚れするほど。
あれだけ大きく動きながらも1発の威力を両立できるのはこの選手の特徴だと思うが、あそこまでタジタジになるゴロフキンというのもあまり観た記憶がない。
カネロに勝てる可能性があるのって誰? 確かアミール・カーンがいい線行ってたような…。デカいカーンさんはどこかにいないかね
3Rからゴロフキンが圧力を強めるわけだが、そこでもカネロは真正面から受けて立つ。
これまでゴロフキンとまともに打ち合って無事だった選手は皆無で、前戦のダニエル・ジェイコブスは過剰なリバウンド+足を使いまくる作戦でどうにかKOを拒否している。
一方、カネロはあの時点のゴロフキンと真正面から打ち合い、局面によっては打ち勝ってみせた。S・ライト級からキャリアをスタートした選手が歴代トップクラスのミドル級王者の突進を止めたという事実はもはや感動的ですらある。
そして、何よりカネロの試合はおもしろい。
力感のないゴロフキンの連打をボディワークで外し、抜群のタイミングでカウンターを返す。
上体反らしでゴロフキンのジャブを見切り、反動をつけて右をヒット。素早くダッキングしてスルスルっとサイドに逃げてロープ際から脱出する。
一つ一つのアクションがド派手で見栄えがよく、観るものを惹きつける。持って生まれた華というか、選ばれし者のスター性()というヤツ。
正直、ゴロフキンのリードをボディワークだけで防ぎきるのは至難の業で、さすがのカネロも被弾は避けられない。だが、この試合ではある程度の被弾を覚悟で印象的な1発を返し続け、綱渡りながらも何とかドロー判定まで持ち込んだ。
物議を醸す判定結果ではあったが、個人的には大満足の内容である。
また、この試合に至るまでの周到さも印象深い。
仮想ゴロフキンに見立てたリアム・スミスをボディでKOに下し、二回りほど体格差のあるフリオ・セサール・チャベスJr.との対戦で階級への適応を図る。
対戦を期待されながらも約2年かけてじっくり準備を重ね、満を持してゴロフキンとの大一番に挑む。
この選手の用意周到さと計算高さに対しては批判も多いが、個人的には「よくやったよね」と思う。
と同時に、カネロほどの実力者がここまで策を弄してようやくドローということを考えると、ゲンナジー・ゴロフキンがいかに偉大な王者だったかを改めて思い知らされる。
まあ、ゴロフキン戦に向けての総仕上げとなるはずだった一戦は、減量苦でカッスカスのチャベスJr.が単なるキャスター付きの冷蔵庫と化していたわけだが。
ついでに言うと、やはりゴロフキン戦のカネロは試合中に右膝をおかしくしていたと思う。
4Rからガクッと動きが落ちて以降、わずかに足を引きずるシーンが散見されるのだが、恐らく3Rのどこかで「あれ?」となったのだろうと。
負傷まではいかないが、無視できない程度の違和感とか、そんな感じのヤツ。
やっぱりカネロを金儲け目的の異種格闘技に駆り出すのは違うと思うの。だって本人が望んでないもん()
そして、DAZNとGBPを相手取ってカネロが起こした訴訟については、先日も申し上げたようにあまりにカネロがかわいそうである。
カネロカワイソスw 金儲けマッチを否定はせんけど今回は度を超えてるかな。DAZNにスポーツを育てる長期的視野なんかないからね
今がまさに全盛期で、なおかつこれだけのパフォーマンスを見せる選手を話題作りの異種格闘技マッチに駆り出すのはやはり違う。
ダニエル・ジェイコブスやセルゲイ・コバレフがDAZNにとって“プレミアムな相手”であろうがなかろうが、本人が望まない試合を無理やりやらせてもいいことはない。
基本、僕は話題作りの異種格闘技戦自体は嫌いではないが、それはあくまで両選手が合意した上でのこと。
過去にはフロイド・メイウェザーvsコナー・マクレガー戦、フロイド・メイウェザーvs那須川天心戦と賛否を巻き起こした試合が行われたが、どちらの試合も両陣営が望んで実現した経緯がある。
ところが今回は当のカネロが望んでいないだけでなく、訴訟に発展するほどの不信感を募らせてしまった。
カネロ自身、これまで散々優遇されてきたし、それなりに傍若無人な振る舞いもあったと思われる。今まで大目に見てきた分、こんな時期だから多少は協力してくれよというのも理解できる。
ただ、それでもUFCファイターのハビブ・ヌルマゴメドフやホルヘ・マスヴィダルとのボクシングマッチは違うよねという話。
カネロvsゴロフキン2戦目を久しぶりに視聴。両者が憎悪とプライドをバッチバチにぶつけ合った白熱の試合。全3戦に流れがあっておもしろいよね
そもそも、こういうときこそGBPはカネロを守ってやれよとは思うかな。
現状、オスカー・デラホーヤとカネロの関係がどの程度冷え切っているのかは知らんが、な~にをノリノリで現役復帰宣言しちゃってんだよと。
メイウェザーがカネロvsゴロフキン戦の真裏にマクレガーとのボクシングマッチをぶつけてきた際、「こちらはリアルファイトだから」と息巻いてたじゃねえかと。
あの頃のイケメンなお前はどこに行ったんだよww
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