粟生隆寛引退。ビタリ・タイベルト戦おもしろ過ぎワロタw 確かに内山高志に勝てる日本人だったかもしれんね
2020年4月6日、元2階級制覇王者粟生隆寛が36歳の誕生日を区切りとし、現役から退くことを自身のSNS上で発表した。
また新型コロナウイルス感染拡大の影響によってジムの閉鎖が続いているため、記者会見を行わないことも併せて明言したとのこと。
元世界2階級王者・粟生隆寛、36歳誕生日に涙の引退発表 ベストバウト振り返る https://t.co/W5epeYBeY0 #スポーツ #sports #ニュース
— スポーツ報知 (@SportsHochi) April 6, 2020
2003年9月にデビューした粟生隆寛は順調に勝利を重ね、無敗のまま2007年3月に日本フェザー級王座を獲得。同タイトルを3度防衛後、2008年10月にWBC世界同級王者オスカー・ラリオスに挑戦するも1-2の判定で敗れて王座獲得に失敗。5ヶ月後の再戦で3-0の判定で勝利を収め、見事初戴冠を果たす。
初防衛戦での陥落後は階級を上げて再起。2010年11月にWBC世界S・フェザー級王者ビタリ・タイベルトと対戦し、3-0の判定で快勝して2階級制覇を達成する。
2015年5月には3階級制覇を目指してWBO世界ライト級王者レイムンド・ベルトランに挑戦するも2RKO負け。だが、試合後にベルトランの禁止薬物陽性が判明し、急遽無効試合に変更される。
2018年3月にはガマリエル・ディアスと約7年半ぶりに再戦して3-0で判定勝利を挙げるが、それ以降試合が組まれることはなく。2020年4月6日に引退を発表した。
もともと粟生隆寛のことをよく知らず、あまり好きな選手でもなかった
最初に申し上げておくと、僕は粟生隆寛のことをよく知らない。
「高校6冠」の実績を引っさげて2003年9月にデビューし、日本王座を獲得したのが2007年3月。「西の亀田、東の粟生」などと呼ばれて注目を集める中、当時の日本王者梅津宏治に3-0の判定勝利を挙げる。
僕もこの試合を観ていたのだが、正直あまり粟生にはピンとこず。というより、王者の梅津宏治を応援していたせいで粟生のことが憎たらしくて仕方なかった記憶がある。
世界線戦に絡むようになって以降もそれほど注視していたわけではなく、長谷川穂積や山中慎介の陰に隠れていた印象。露出面で言えば、亀田興毅とはだいぶ差がついたなぁなどと漠然と思っていた。
那須川天心が亀田興毅を圧倒。だからRIZINは那須川天心のボクシングデビュー戦の相手を調達しろと
当然、試合もそこまでちゃんと観たことがない。
左カウンターのセンスは抜群だが、言われているほどディフェンスマスターではない。手数が少なく微妙に消極的で、グイグイ距離を詰められるとタジタジになるシーンも目立つ。
本人的には長谷川穂積リスペクトらしいが、あまり似ているようには思えない。佇まいから「1発で倒してやろう」「華麗に捌ききってやろう」精神がにじみ出てい(るように見え)て、はっきり言ってあまり好きな選手ではなかった。
ビタリ・タイベルト戦おもしれえw 粟生がこんなにいい選手だったなんて聞いてねえぞ
だがフェザー級、S・フェザー級の2階級制覇を果たした実績は文句なしにすばらしい。3階級目のレイムンド・ベルトラン戦ではケチがついたが、粟生隆寛が名選手であることに疑いの余地はない。
そんな感じで2010年11月のWBC世界S・フェザー級タイトルマッチ、ビタリ・タイベルト戦を観たのだが……。
何これ、クッソおもしれえww
いや、ちょっと待て。
何だこの試合。超おもしれえじゃねえか。
手数は多いし得意の左カウンターもキレッキレ。自ら前に出て腕を振る積極性もある。
後半になっても動きは落ちず、中盤から一気に失速したタイベルトとは対照的。王者を何度もKO寸前まで追い詰めた末の文句なしの判定勝利である。
おいおいすげえな粟生隆寛。
こんなにいい選手だったのかよ。聞いてねえぞ()
恐らくだが、2010〜2012年前後は粟生隆寛にとっての全盛期。フェザー級から階級アップしたことでパワーも上がり、身長167cmとやや小柄なタイベルトをどんどん押し込んでいく。
上記の記事でも「ベストバウトはタイベルトかターサク戦」と言っているし、心身ともにもっとも充実していた時期なのだと思う。
山中慎介はトマス・ロハス戦までが好き。岩佐亮佑戦はいまだに忘れられない。「神の左」を連呼され出してから「ん?」となった
相手のタイベルトがいい選手なのも一目でわかる。
ちょろっと調べたらドイツ出身の元オリンピアンとのことで、なかなか珍しい経歴の持ち主。
左フックの精度が高く、1発入れたあとに畳み掛ける連打もある。妙な当て勘とスピードを活かして腕を振り、ガードの低い粟生の顔面を何度も揺らしてみせた。
外旋回の左フックにドンピシャで左カウンターを合わせられてしまったが、序盤から中盤までは完全に互角の勝負だったと言っていい。
内山高志にも勝てたかも? サウスポーのカウンター使いは内山の苦手なタイプ
マジな話、粟生隆寛は当時の内山高志に勝てる可能性のあった唯一の日本人かもしれない(他を知らないだけ?)。
左リードが生命線の内山は総じてサウスポーが苦手で、2連敗を喫したジェスレル・コラレス戦ではカウンターへの弱さを露呈した。また、2011年1月の三浦隆司戦では左ストレートでダウンを喫しているし、2012年7月のマイケル・ファレナス戦ではファレナスの突進力にタジタジになっていた。
極端なカウンター使いor極端なファイター。どちらかに振り切ったサウスポーに左リードを封じられると一気に苦しくなるのが内山高志の特徴なのだと思う。
そう考えると、全盛期の粟生隆寛なら普通にチャンスはある。タイベルト戦のコンディションのままリングに上がれば十分勝てる相手だった気がする。
三浦隆司はやっぱり天才だよな。理解不能なボンバーレフトと圧倒的な詰めの甘さが激闘を演出する
まあ、1発の威力のないタイベルトだったからこそ、顔面を晒したままゴンゴン前に出られたというのはあるとは思う。
2015年12月のオリバー・フローレス戦での左ボディなどを見れば、タイベルトと内山では破壊力の桁が違うのは明白。
1発KOの危険と隣り合わせの中、どこまで積極的に出入りができるか。タイミングさえ合えばぜひとも実現してほしい組み合わせだった。
ファンマ・ロペス戦が実現していれば熱かったよね。勝つチャンスもあったと思うし
また実現性を無視して言うのであれば、ファンマ・ロペスとの一戦もめちゃくちゃ興味深い。
粟生がタイベルトに勝利したのが2011年11月で、ファンマ・ロペスがWBOフェザー級タイトルマッチでオルランド・サリドにKO負けを喫したのが2011年4月。それ以降、ファンマは強打者タイプを相手に負けが込んでいくわけだが、仮にサリドに負けた時点で階級をアップしていれば? と思わないでもない。
フェザー級でも大柄とは言えず、ディフェンスの緩さを露呈しつつあったファンマ。
それに対し、今がまさに全盛期で最終的にはライト級タイトルマッチまでこぎつけた粟生。
ファンマの1発で粟生が大の字になる可能性もあるが、粟生がターサク・ゴーキャットジム戦と同様、パワーとスピードでねじ伏せるパティーンも十分あり得た気がする。
それくらいビタリ・タイベルト戦でのパフォーマンスはインパクトがあったし、瞬間最大風速だけなら長谷川穂積や山中慎介にも匹敵する選手だった(と思う)。
畑山隆則vs崔龍洙(チェ・ヨンス)再戦感想。僕の中での元祖日本人チャンピオンはやっぱり畑山隆則なんだよな
今さらこんなことを言うのもアレだが、粟生隆寛ナイスファイト。
現役生活お疲れさまでした。
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