アミール・カーン レペゼンイングランドがクロフォードに歯が立たず。なるほど、ダメだったか。ヤバい倒れ方したな【結果・感想】
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2019年4月20日(日本時間21日)、米・ニューヨーク州で行われたWBO世界ウェルター級タイトルマッチ。同級王者テレンス・クロフォードがランキング2位アミール・カーンと対戦し、6R棄権TKOで勝利。2度目の防衛に成功した試合である。
開始直後、軽快な動きでタイミングをうかがうカーン。
対するクロフォードは長いリーチと広いスタンスを活かしてカーンの素早い動きに落ち着いて対処する。
そしてラウンド中盤。
カーンの踏み込みをバックステップで避けたクロフォードが右のカウンターを顔面にヒット。一瞬カーンの動きが止まったところに追撃の左を浴びせる。これでカーンが膝から崩れ落ちるようにダウン。試合の流れが一気にクロフォードに傾く。
それ以降はクロフォードがボディ、顔面と自在に打ち分けカーンを圧倒。
6Rに入ると、さらに圧力を強めるクロフォード。意を決して踏み込むカーンに対し、左アッパーのカウンターで迎撃する。ところが、そのパンチがカーンの下腹部を捉えてしまう。痛みのあまりカーンが背を向け、そのまま試合が中断される。
結局カーンは陣営に説得される形で棄権を承諾。ブーイングの中、クロフォードの防衛が決定した。
カネロに勝てる可能性があるのって誰? 確かアミール・カーンがいい線行ってたような…。デカいカーンさんはどこかにいないかね
この試合は楽しみにしてたんですけどね。あっけない幕切れに絶望しちゃいました
PFP No.2テレンス・クロフォードが迎えた2度目の防衛戦。挑戦者はハンドスピードを活かした連打を得意とするアミール・カーン。
2019年上旬屈指の好カードと期待された試合だったが、結果はカーンの棄権TKOというあっけない幕切れに。
以前に申し上げた通り、僕はこの試合に大いに期待していた。
それこそテレンス・クロフォードに勝てるとすればアミール・カーンじゃないの? アップセットもあるかもよ? とまで豪語し、ワクワクしながらこの日を待ち望んでいた次第である。
「カーン様がクロフォードに勝つ日がやってきたぞw アミール・カーンは打倒クロフォードの可能性を持った数少ない1人」
ところが、待っていたのはカーンの棄権によるクロフォード勝利というまさかの結末。
この日は午前中に用事があって外出しており、午後からはRIZIN15の現地観戦。合間の時間で無理やりこの試合を観たのだが、あまりの消化不良っぷりに絶望してしまった。
正直、もう一度観直すのも億劫になるくらい。
このままスルーしてもいいかな? とも思ったのだが、我慢して惰性で観直してみたという。
「RIZINの現地観戦が楽し過ぎてマイッタ。堀口恭司も那須川天心もパッキャオもよかったけど、一番はヤスティナ・ハバかな」
クロフォードすげえわ。アミール・カーンの長所をすべて刈り取り、圧倒した
改めて試合を観た感想としては、
「なるほど」と。
「クロフォード、さすがッス」と。
あまりの盤石さにぐうの音も出ない。
アミール・カーンには期待したが、これは負けても仕方ない。
まず、1Rにリング中央で対峙した両者を観て思ったのが、クロフォードがデカい。
2018年6月のジェフ・ホーン戦では若干線の細さを感じたが、今回は身体も分厚くなって力強さも増した。
試合後にエロール・スペンスJr.との統一戦実現を希望していたが、確かにそこに向けて準備を進めている印象。
「最強スペンスがマイキーに大差判定防衛。ど正面からのどつき合いは見応えあったな。策士マイキーは黒星の代わりに評価を得たか?」
そして、アミール・カーンをよく研究してきたのもめちゃくちゃ伝わってきた。
何度か申し上げているが、アミール・カーンの最大の持ち味はダッシュ力と速射砲のような連打。
遠い位置から一気に距離を詰め、ハンドスピードを活かした連打を浴びせる。反撃の余裕を与えないほどの連打で相手を圧倒するスタイル。
ただ、その分攻撃パターンは単調で、基本はまっすぐ突っ込んで腕を振るのみ。ダッシュ力、身体能力は凄まじいが、それを発揮するにはある程度のスペースが必要になる。
逆に言うと、あらかじめスペースさえ潰してしまえばこの選手は勝手に糞詰まりを起こして攻め手を失う。
今回のクロフォードが実行したのがまさにこれ。
カーンが持ち前のダッシュ力を発揮できない間合いで対峙し、あえて先に手を出させる。小さなバックステップで初弾を避け、リターンのフルスイング。これによって、1R後半にいきなりダウンを奪ってみせた。
カウンターを合わせながら前に出るいつものスタイル。カーンにできることは左右に動き回るのみ
それ以降はもう、クロフォードの独壇場としか言いようがない。
ダウンを奪われたことで、踏み込みに躊躇が見られるカーン。
それを確認したクロフォードは自分からプレッシャーをかけ始める。意を決したカーンが踏み込むと同時に自分も前に出て腕を振り、連打の発動を抑え込む。そして、要所で的確なボディをヒットしダメージを蓄積させていく。
3Rからはサウスポーにスイッチし、カウンターを合わせながら前に出るいつものスタイルでグイグイ押していく。
踏み込みを封じられ、得意の連打を出すタイミングもないカーンはただただ左右に動き続けるのみ。徐々に逃げ場を封じられ、コーナーに追い詰められていく。
「JBCはフリーランスボクサー中村優也選手を大至急海外担当のマネージャーとして招聘するんだ。そして豪快に断られろ」
いや、すげえわクロフォード。
カーンの突進への対処が可能で、なおかつトップスピードに乗らせないギリギリの間合いをキープし続け、どんな局面でもバランスを崩さず強いパンチを打つ。
「カーンの踏み込みスピードなら、もしかしたらクロフォードを棒立ちにできるかも?」という僕の期待をことごとく打ち砕いていくww
正直、この試合は2Rの初めで「こりゃあ、カーンは勝てんわ」と思ってしまった。
「ダニエル・ローマンがTJ・ドヘニーから2度ダウンを奪い王座統一! ドヘニーもナイスファイトな好試合に大満足です」
テレンス・クロフォードが沢村竜平に見えるんだが。また、アミール・カーンがリアル速水龍一になりつつあるのが…
これは余談だが、ここ最近(というか、結構前から?)テレンス・クロフォードがマンガ「はじめの一歩」の沢村竜平に見えて仕方がない。
以前、村田諒太→幕之内一歩、井上尚弥→鷹村守っぽいと申し上げた記憶があるが、それと同じノリで。
ニヤニヤしながら相手を小突いたり、計量で挑発してきた相手に躊躇なくフルスイングをカマしたり。しかも、発端は基本的に自分というDQNっぷり。
今回の試合でもたびたびカーンの連打が顔面を捉えていたが、1発KOの威力がない分まったく意に介さない。それどころか、貰ってもいいパンチとダメなパンチを瞬時に区別しながらカウンターのチャンスをうかがっているように見えた。
また、ラストのローブローも恐らくわざとだと思っているのだが、どうだろうか。
あそこまでモロに入れるつもりはなかったかもしれないが、少なくとも「減点されてもリードしてるからいいや」と考えていたことは確かだと思う。それほど遠慮のない一撃だった。
「成り上がれステフォン・ヤング。コイツがドネアを翻弄するからよく見とけ。やけくそで井上尚弥vsヤング戦実現に期待してっからな」
そして、アミール・カーンがリアル速水龍一になりつつあるのが……。
軽く掠めたパンチで動きが止まり、追撃の左でクシャッと崩れるように足腰が落ちる。
よくわからないのだが、あの倒れ方は普通のことなのか? スローでもそこまでヒットしているようには見えなかったのだが。
また、前回辺りから単純に動きも落ちているような……。
個人的にアミール・カーンのベストバウトは2014年のデボン・アレクサンダー戦だと思っているのだが、その試合と比べても一つ一つの動作が鈍重になった気がする。
クロフォードがすごかったのもあるとは思うが、カーンさんもそろそろなのかなぁと。
いや、お気に入りの選手なのでがんばってもらいたいですが。
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