侍ジャパンがメキシコにサヨナラ勝ち。不調の村上宗隆が守護神を打ち崩す。終盤の逆転力、日本は世界一ドラマチックなチーム

侍ジャパンがメキシコにサヨナラ勝ち。不調の村上宗隆が守護神を打ち崩す。終盤の逆転力、日本は世界一ドラマチックなチーム

開催中のWBC(World Baseball Classic)2023大会。3月20日(日本時間21日)に米・フロリダ州で準決勝が行われ、日本代表がメキシコ代表と対戦。1点を追う9回に無死1、2塁のチャンスから5番村上宗隆が左中間に2塁打を放ってサヨナラ勝ち。翌日の決勝戦にコマを進めた試合である。


先発佐々木朗希が4回に先制3ランを浴びるなど、序盤から苦しい展開を強いられた侍ジャパン。
吉田正尚の3ランで一度は同点に追いついたものの、2番手山本由伸が次の回に2点を奪われ2点差に。
 
その裏に山川穂高の犠牲フライで日本が1点を返し最少失点差で迎えた9回。
メキシコの守護神ジョバンニ・ガエゴスから先頭の大谷翔平が2塁打を放つと、続く吉田正尚は四球を選んで無死1、2塁に。
 
続くバッターは今大会不振の村上。
 
場内の盛り上がりが最高潮の中、3球目のストレートを左中間にはじき返す。
1塁ランナーの周東右京は打った瞬間にスタートを切り、そのまま一気に3塁ベースを駆け抜けホームイン。侍ジャパンの劇的なサヨナラ勝ちが決定した。
 
トレバー・バウアーはDeNAベイスターズで活躍できる? めちゃくちゃいいと思うけどな。2021年のコンディションを維持できれば相当やりそう。サイヤング賞投手がピークアウト前に来日
 

世界一を目指す侍ジャパン。でもメキシコはこれまでとはレベルが違う。相当ヤバいんじゃ…

3大会ぶりの世界一を目指す侍ジャパンが迎えた準決勝戦。
 
対戦相手のメキシコには過去5戦5勝と勝ち越しているものの、今大会のメキシコはこれまでとはまったく別のチーム。現役メジャーリーガーを多数擁し、プールCでは優勝候補のアメリカを下すなど実力の高さを発揮している。
 
 
僕自身、メキシコチームの印象は元巨人のエドガー・ゴンザレスが監督を務めていた2015、2016年あたりで止まっているのだが、話を聞く限りその頃とは様相が変わっている。
スタメンを見ただけでも「あ、これはヤバい」と思うようなメンツで、なぜ日本が有利だと言われているのかが理解できなかったほど。
 
で、一応展望を考えてみるかということでプールCの試合をダイジェスト的に漁ってみたのだが……。
 
いや、やべえぞこれは
 
これまでの相手と比べて一段も二段も上。
冗談抜きで負けも十分あり得る。
 
報道では決勝戦の先発はダルビッシュか? などと言われていたが、そんなことをやっている場合じゃない。
栗山監督は山本由伸のリリーフ起用を示唆するなどスクランブル体制を予告していたが、マジで出し惜しみなしの総力戦で挑むべき相手。
 
正直、僕は4:6くらいでメキシコ有利ではないか? と思っていた次第である。
 
WBCの余韻がすげえw 「日本野球が世界最強」ってドヤるための大会。課題が山積みなのはわかってるし収益構造の歪さなんて10年以上前から承知してんだよ笑
 

メキシコ先発のパトリック・サンドバルはかなりやっかい。佐々木朗希先発はちょっと危ないかも?

メキシコチームの試合をざっと眺めた印象は下記。
 
・先発のパトリック・サンドバルは相当打ちにくい
・恐らく韓国のキム・グァンヒョンよりも上。左打者には無理ゲーっぽい
・日本の左打者で合うとすれば近藤健介と吉田正尚あたりか
・村上宗隆の打順は下げた方がいいのでは?
・攻撃陣はローボールヒッターが多くどこからでも1発が出る
・タイプ的に先発は佐々木朗希よりも山本由伸の方がいい気がするけど…
・しかも時差ボケのある日本に対してメキシコはずっと同じ球場
・難しい試合になるだろうけどがんばってほしい
 
 
メキシコ先発のパトリック・サンドバルははっきり言ってかなりいい。
横滑りするスライダーと140km弱で沈むチェンジアップが武器のピッチャーで、特に左打者にはすこぶる強い。
 
日本の左打者で合うとすれば恐らくコンタクト力の高い近藤健介と外に逃げる球に強い吉田正尚あたり。
 
近藤の後ろには大谷がいるので、大事なのは吉田の後ろを打つ打者になりそう。
そこを任せるのは左の村上宗隆よりも右の岡本和真の方がいい気が……。
 
イタリア戦から状態が落ちているヌートバーはやや心配だが、今さら代える選択肢はない。
 
ヌートバーが阪神戦で2安打1打点。誰だヌートバー不要論を唱えてたヤツw 外の球への対応、ボールの見逃し方が完全にメジャーリーガーだった件
 
またメキシコの打者はローボールヒッターが多く、フワッと浮いてきた変化球を見逃さずにスタンドインする力強さがある。
そう考えると、先発は長身の佐々木朗希よりも投げミスが少ない山本由伸の方がいいのではないか。
 
特に1番のランディ・アロサレーナは要注意(守備よりも打撃力が怖かった)。あの打者を乗せると一気に持っていかれる可能性もある。
 
その上準々決勝の直後に現地入りした日本に対してメキシコチームはずーっとこの球場で試合をしている。
 
諸々を加味すると侍ジャパンにとっては4:6くらいで不利かもしれない。
 
だいたいこんな感じである。


なお散々酷評されていた村上宗隆だが、僕は外すべきとまでは思わなかった。
 
前回のイタリア戦で復調の兆しを見せていたし、スタメン落ちするほどの状態ではなさそう。
この試合でもパトリック・サンドバル相手に三振しまくっていたが、あれはサンドバルがすごかったのも大いにあるわけで。
 
それでもあのサヨナラ2塁打には心底驚いたけど笑
 

サンドバルは思った通りいいピッチャーだった。左打者は初見では厳しい。吉田正尚の後ろを打つのは岡本和真の方が…

試合の感想だが、まず先発パトリック・サンドバルは思った通りのいいピッチャーだった。
 
フロントドアのスライダーで先頭打者ヌートバーを三振に取ると、続く近藤健介は150km超えのストレートとスライダーでこれまた三振に。
 
さらに3番大谷翔平には外側のチェンジアップを中心に最後は再びスライダーで見逃し三振。
日本の攻撃の要とも言える3人を連続三振に打ち取る完璧な立ち上がり。
 
この時点でサンドバルが相当ヤバいことははっきりしたし、簡単に失点するわけにはいかないという緊張感も漂った。
 
その後も日本打線はサクサクと凡打を重ねて3回まで3人ずつで攻撃を終える。4回表に3点を先制されたこともあり、その裏に近藤健介のヒットが出るまでは「マジでヤバいかも?」と思わせる流れだった。
 
 
いや、そうなんですよね。
 
このピッチャーを初見で打つのはなかなか厳しいというか、これだけのスライダーとチェンジアップを操るサウスポーを攻略するのは並大抵じゃない。
 
中でも状態が下降気味のヌートバー、初めて対戦する村上宗隆にはどう考えても荷が重い。
 
なので、やはり右の岡本和真を吉田正尚の後ろに置くべきだったのではないか。
イタリア戦から状態を上げている山田哲人の1番起用もアリだったかもしれないが、さすがにそこまでの冒険はできないよな……。
 
などなど。
言っても仕方ない“タラレバ”を妄想しながら観戦していた。
 
侍ジャパン4連勝で準々決勝進出。プールB東京ラウンド感想。弱者の兵法の中国、打撃のチェコ。ヌートバー、大谷翔平、ダルビッシュその他
 

2ピッチ気味の佐々木朗希はごまかしが利かない。メキシコ打線はストレートにも強かったしね

ピッチャー陣に関しては、先発佐々木朗希のバタバタっぷりが……。
 
このピッチャーは基本的にストレートとフォークの二択。ダルビッシュに習ったスライダーを練習中のようだが、今回の試合ではほぼ投げていない(と思う)。
 
で、ストレートとフォークの2ピッチの場合、どちらか一方の調子が悪いと途端に潰しが利かなくなる。
佐々木の場合はストレートの制球が乱れることが多いのだが、今回はフォークの扱いに苦労していた印象。
 
しかもメキシコ打線は速いまっすぐに強くカウント球のストレートを余裕で打ち返してくる。
 
ストレートをフィールド内に落とされフォークは暴れ気味。
そして4回にランナーが溜まったところでフワッと浮いたフォークをレフトスタンドにドカン。
 
 
以前にもちょろっと申し上げたが、佐々木朗希は今の球種にスライダー系の中間球が加われば間違いなくもう一段上に行ける。


逆にストレートとフォークのみの現状だと調子が上がらない日のごまかしが難しい。
 
調子のいい日は無双できるが、そうでない日は球数もかさんでモタモタする。特に今回のような強力打線を相手にするならなおさら。それが佐々木朗希の現在地なのだろうと。
 
そういう意味でも完成度の高い山本由伸を先に投げさせた方がよかったのかな? と思っている。
 
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メキシコの投手陣は全員よかった。唯一狙い目だったのが守護神G.ガエゴズ

またメキシコの投手陣は先発のサンドバルを始め、リリーフ陣にも力の落ちる選手は見当たらなかった。
 
7回に吉田正尚にホームランを喫したJ.ロメロも投げてる球自体はめちゃくちゃよかったし、アレは打った吉田を褒めるべき。
 
前の打者の大谷にはスライダー中心で組み立て、続く吉田にはストレートとチェンジアップで攻める。
恐らく吉田が左ピッチャーのスライダーに強いというデータがあったのだと思うが、まだ見せていないチェンジアップで攻めるやり方は正解だったと思う。
 
最後の低めのスライダーも悪い球ではなかったし、あんなもんは打った方がすごかったとでも言っておけばいい。
 
 
8回のピンチで近藤健介を見逃し三振に切って取ったG.レイエスもこれまた凄まじい。
ヌートバーにはひたすら膝もとへのカッター攻め、続く近藤には打って変わって外高めのストレートでのごり押し。150km半ばを超えると差し込まれる日本の打者の特徴をよく掴んだ配球だった。
 
そして日本にとって唯一の狙いどころだったのが守護神のG.ガエゴス。
 
先頭の大谷翔平に右中間の2塁打を打たれ、続く吉田正尚にはカウント3-1から四球を与える。
この時点で「あれ? 球遅くね?」と思ったのだが、案の定5番村上宗隆にサヨナラヒットを許すという。
 
一番の難敵だと思われていたピッチャーの不調は幸運だったとしか言いようがない。
 
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日本チームの終盤力の凄まじさ。甲子園の一発勝負で根付いた勝負強さが日本を世界一ドラマチックなチームにしている

今回もそうだが、日本チームの終盤の逆転力、ここぞの集中力の高さはマジでとんでもない。
 
守護神ガエゴズの調子が悪かったのはもちろんだが、それ以上に日本チームの集中力が……。
 
「普通は打てないでしょ」というスライダーをスタンドインした吉田正尚、ヘルメットを投げ捨てて激走した大谷翔平、戦犯扱いから一足飛びで伝説()となった村上宗隆。
 
さらに村上が打った瞬間にスタートを切り、大谷を追い越さんばかりの俊足でホームインした周東右京や山川の犠牲フライを呼び込んだ源田壮亮のスリーバント。
 
決して調子が悪くない村上を信じ、代走周東で勝負をかけた栗山采配を含めて甲子園の一発勝負で根付いた日本の勝負強さは本当にすごい。
 
この部分に関してはどの国よりもドラマチックなチームと言えるのではないか。
 

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