映画「ザ・ファイター」感想。ミッキー・ウォードと天才系クズ兄貴の爆笑ダークコメディ。注)アルツロ・ガッティは出てこないよ

映画「ザ・ファイター」感想。ミッキー・ウォードと天才系クズ兄貴の爆笑ダークコメディ。注)アルツロ・ガッティは出てこないよ


 
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映画「ザ・ファイター」を観た。
 
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「ザ・ファイター」(2010年)
 
マサチューセッツ州ローウェルで暮らすミッキー・ウォードの職業はプロボクサー。現在3連敗中とうだつの上がらない状態が続いているが、近い将来の成功を夢見ている。
 
一方、9歳上で腹違いの兄ディッキーはかつては才能に満ち溢れるボクサーだったが、今ではろくに働きもせずドラッグに溺れる怠惰な毎日を送っている。
 
ボクシング界のスーパースター、シュガー・レイ・レナードからダウンを奪ったことが彼の唯一の自慢であり、「ローウェルの誇り」と呼ばれた過去にしがみついたまま片手間で弟を指導する日々。
 
 
そんなある日、ミッキーは立ち寄ったバーで働く女の子に目を奪われてしまう。
だが、引っ込み思案の彼はなかなか自分から話しかけることができない。知り合いにうながされ何とか彼女の電話番号を手に入れることに成功し、次の試合が終わったらデートしようと約束をかわすのだった。
 
 
数日後、家族とともに試合会場のホテルに到着したミッキーだったが、そこで対戦相手が病気で欠場したことを知らされる。
しかも、急遽代役として用意されたのはミッキーよりも体重が9kgも重い相手とのこと。
 
試合は2日後。
階級違いの危険な相手。
 
ミッキーはそんな試合はできないと拒むのだが、兄ディッキーや母アリスにファイトマネーのためだと出場をうながされ……。
 
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「ザ・ファイター」おもしろかった。久しぶりにボクシング映画の“当たり”を引いた

実在のプロボクサー、ミッキー・ウォードをモデルとした映画「ザ・ファイター」。
2010年に公開され、兄ディッキー役のクリスチャン・ベールが助演男優賞、母アリス役のメリッサ・レオが助演女優賞を受賞した作品である。
 
先日クリスチャン・ベールとマット・デイモンがW主演を務めた「フォードvsフェラーリ」を観た流れで、評判がいいと言われている今作を鑑賞してみたところ……。
 
おもしろかった。
 
うん、おもしろかったですね。
 
映画「フォードvsフェラーリ」感想。ル・マンは大人の鬼ごっこ。バカでカッチョいいおっさんが企業の政治的都合に振り回される青春映画
 
ここ最近、僕が観たボクシング映画では断トツにNo.1。「負け犬の美学」や「サウスポー」が自分の中ではかなり微妙だったせいもあり、今作の出来のよさが余計に際立ったというか。
久しぶりにボクシング映画では“当たり”を引いた気がする。
 
ただ、思っていたものとは少し違ったことも確か。
「アカデミー賞W受賞!」や「ゴールデン・グローブ賞!!」「各界から絶賛の声が!!」という触れ込みを聞いていたので、もう少し万人ウケする王道のヒューマンドラマを想像していたのだが。
 
実際には“ど真ん中の感動作”というわけではなく、むしろ観る人間を選ぶ作品と言えるのではないか。
 

この作品は「ダークコメディ」という呼び方がしっくりくる。ヒューマンドラマの範疇には収まらない

今作は「リング上での葛藤や家族との絆を描いたヒューマンドラマ」などと言われているが、僕の中では「ダークコメディ」という呼び方がしっくりくる。
 
こういう場合、本来は「ブラックコメディ」と呼ぶのが適切かもしれないが、正直それでは少し弱い。“ブラック”と聞くと「ほどよく毒の効いたピリ辛スパイス」的な印象だが、今作はそんな生易しいものではない。
 
兄ディッキーのダメさ加減や母アリスの独裁っぷりを筆頭にウォード家族のぶっ飛びようは群を抜いており、“ほどよい毒”などという表現ではとてもじゃないが追いつかない。
 
それこそヒューマンドラマの範疇にはまったく収まらない破天荒さ、めちゃくちゃ加減に笑いが込み上げてくるレベル。ウォード家のダークネスさに爆笑が止まらない、まさしく「ダークコメディ」と呼ぶにふさわしい作品である。
 

ディッキーとかいうダメ人間代表。ウォード家のめちゃくちゃっぷりに笑いが止まらないww

しかし今作を観ると、ディッキーのようなダメ人間ってガチでおるんやなぁと改めて思わされる。
 
「ローウェルの誇り」という大昔の栄光にいつまでもしがみつき、地元の“顔”である自分に得意満面。
だがその実態はまともに働きもせず難民コミュニティに入り浸り、麻薬でラリって遊び呆けるフリーター。
 
弟が家族の元を離れて独り立ちすると宣言した際も「金は俺が作る」と宣言して引き止めたまではよかったが、やっていることと言えばねずみ講と美人局という。
 
いやいや嘘だろww
 
お前の信用度でねずみ講なんか持ちかけたって100%成立しねえし、美人局ってそんなバカなww
クスリのやり過ぎで脳みそがトロけてるのかは知らんが、秒でバレる浅知恵っぷりが小物感をさらに増幅してくれる。
 
豪傑で自分勝手/自己中、過保護な割に金には汚い母親はびっくりするくらいヘビースモーカーだし、ミッキーとディッキー以外の7人姉妹はもはやひな壇芸人にしか見えない。
 
映画「サウスポー」感想。リアリティじゃない。アクションは迫力と臨場感。ロッキーシリーズの秀逸さに改めて気づかされる。まさかのあだち充方式かよw
 
主人公ミッキーも人格者として扱われてはいるが、兄や母親への依存体質は見ていて呆れるほど。
それがほどよくシャーリーンの母性を刺激したのかもしれないが、あそこまでイライラさせられる男によく最後まで愛想を尽かさなかったと思う。
 
って、ガキがおんのかい!!
 
ミッキーよ。
お前もか。
お前もなのか。
 
父親は妻アリスにボロカスに言われまくって威厳ゼロだし、ディッキーの息子は誰が母親なのかも判然としない。
 
もうめちゃくちゃである。
 
“複雑な家族”のひと言で終わらせるにはあまりに手に余るというか。時代背景や周囲の環境も大きく影響しているのだとは思うが、ここまで突き抜けると逆におもしろくなってくる。
 
 
そもそも論として、試合の2日前に体重差9kgの相手をあてがうなど正気の沙汰ではない。家族としてもマネージャーとしても失格である。
 
「大丈夫だ。相手はまったく練習していないから」「ブヨブヨのデブだから心配するな」と散々言っておきながら、本番では全盛期のゲイリー・グッドリッジみたいな筋骨隆々マンが出てきたときはさすがに笑ってしまった。
 
 
そんな感じで、最初は「おいおい、いい加減にしろよお前ら」と思わされるものの、中盤からは爆笑が止まらなくなるのが今作の持ち味と言えるww
 

才能に溢れていたが精神が未熟だったディッキーと、努力と忍耐でコツコツのし上がったミッキー。ディッキーは見る目だけは確かだったね

僕自身、ボクサーとしてのミッキー・ウォードはうっすら知っている程度。アルツロ・ガッティとの3連戦がこの選手を有名にしたよねくらいの知識しかない。
 
当然、兄のディッキー・エクランドのことなど知らず、レナードをダウンさせた選手と聞いてもまったくピンとこない。
 
なので、念のためにディッキー・エクランドの試合を漁ってみたところ、ああ、なるほど。確かにいい選手だったっぽい。
 
超絶ハンドスピードと華麗なステップで相手を翻弄するのが僕の中でのシュガー・レイ・レナードの印象だったが、そのレナードがディッキー戦では完全に足が止まっている。
フットワークと当て勘に優れた才能豊かな選手だったのだろうと。
 
だが最終戦績が19勝10敗4KO、キャリア後半は勝ったり負けたりを繰り返していることを鑑みると、気分屋でポテンシャルに依存するタイプだったことも間違いなさそう。
 
恐らくディッキーは「速く走る。高く飛ぶ」といった身体能力は図抜けていたのだと思う。ただ、絶望的なまでに「自分を律する」ことができず、結果的に平凡な成績で終わってしまった。
 
優れたスポーツ選手になるには純粋な才能だけではない、プラスアルファの要素も必要なのだと改めて思わされる。
 
映画「負け犬の美学」何か違う。「敗者にも物語がある」に超違和感。“物語”って言葉が嫌いなのもあるけど、勝者こそすべてのリアルが最優先であってほしい
 
その点、弟ミッキーは兄とは真逆。
突出した才能はなかったかもしれないが、人の話を聞く素直さや地味な練習を愚直に継続する忍耐を持ち合わせていた。
 
ファイトスタイルも足を使って華麗に戦う兄とは違う、被弾前提で前に出まくる猪突猛進型。最終戦績38勝13敗28KOと負けも多かったものの、その分アルツロ・ガッティとの3連戦を筆頭に印象的な試合や劇的なKO勝利を量産した。
 
ちなみに今作ではアルツロ・ガッティ戦については最後に軽く触れられるのみで、試合シーンなどはいっさい出てこない。WBUというマイナー団体のタイトルマッチで無敗のシア・ニアリーと戦う試合がクライマックスとなっている。
 
 
また、作中で兄ディッキーが盛んに「ヘッド、ボディ」を連呼するのだが、これはミッキーが得意とした顔面からボディへつなぐコンビネーションを指すもの。ラストのニアリー戦でも兄の指示によって逆転KOで勝利を飾るわけだが、実際の試合でもこのパンチでKOしていたことにはめちゃくちゃ驚かされた。
 
救いようのないクズな上に持って生まれた才能も無駄遣いしたディッキーだが、ボクシングを見る目だけは確かだったようである。
 

エイミー・アダムスはいいよね。特別美人というわけではないけど、肉感的でエロいんだよなww

そして、僕が今作をいいと思ったもう一つの理由が、ミッキーの恋人シャーリーン・フレミングを演じたエイミー・アダムスである。
 
僕がこの映画を観る気になったのもカメレオン俳優と呼ばれるクリスチャン・ベールに興味があったことに加え、単純にエイミー・アダムスが好きだからというのがある。
 
いや〜、やっぱりいいっすねエイミー・アダムス。
 
気の強そうな表情に肉感的な身体つき。
とびきり美人というわけではないが、全身から醸し出す空気感がたまらないww
 
自宅に押しかけてきた豪傑ママ+7人姉妹に一歩も引かずつかみかかっていったシーンなどは、失礼を承知で言えば少しだけエロさを感じてしまったほど。
 
エイミー・アダムスは今作の2年後に「人生の特等席」でクリント・イーストウッドの娘役を演じるわけだが、ああいう芯の強い女性役をやらせた際の彼女は無敵であるww
 
人生の特等席感想。データvs感覚じゃないんだよ。両方「ほどよく」取り入れるんだよ。でも映画自体はよかった。隙のない女が心を開くところにグッとくる
 
日本の女優だと誰が近いだろうか。
パッと思いついたところでは、鈴木砂羽とか?
今後の伸び代を考えると高畑充希あたりもその域に達する可能性がありそう?
 
 
エイミー・アダムスにめっちゃ怒られたいww

 

一つ不満を言うなら、クズはクズのままでいてほしかった。家族が一枚岩になるとか、ウォード家には似合わないでしょ

長々と今作「ザ・ファイター」の魅力? を語ってきたが、一つ不満を言うのであればウォード家が最後の最後で一枚岩になったことか。
 
 
出所を果たした兄ディッキーはミッキーのタイトルマッチに向けて心を入れ替えることを誓う。ソリの合わないシャーリーンにもミッキーのそばにいてくれるように頼み込み、自身はクスリを絶って過去と決別。ミッキーをサポートするトレーナー業に専念する。
 
それをきっかけに母アリスも父親と和解し、しだいにウォード家に絆が生まれていくわけだが……。
 
いや、ちょっと違うんだよな。
僕が求めているのはそういうのじゃない。
 
できればディッキーにはクズを貫いてほしかったし、ミッキーに理解を示す母親のしおらしい姿など見たくなかった。
 
家族が崩壊したままミッキーは孤独なタイトルマッチのリングに上がり、兄の言葉を思い出して勝利!! みたいな話の方が個人的にはよっぽどテンションが上がる。
 
映画「BLUE」感想。後楽園ホールの試合シーンがリアル過ぎて最高に不愉快。あと、やっぱり俳優のスキャンダルってマイナスだよな
 
ヤク中のカンボジア人に「ローウェルの誇り」と書かれた誕生日ケーキを渡し、「兄貴は俺のヒーローだ」という弟の言葉に「“だった”だろ?」と答えて過去の自分から脱却……。
 
いらんいらん。
お前はそのままでいいんだよ。
クズが立ち直ってどうする。
 
「レナードをダウンさせた」とかいう真偽不明の実績にすがり続けて、周囲に迷惑をかけまくったまま果てしなく落ちていくダメ人間でいればよかったんだよ。
 
で、最後の最後にほんの少しだけ救いがあればそれで十分。
クズはクズのままでいてこそ物語は洗練されるわけで、ああいう感動的なラストは正直興ざめである()
 
と、史実に勝手極まりない文句をつけてみる。
 
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