田中恒成vs橋詰将義感想。田中が人気ある理由がよくわかる試合。相手に力を発揮させた上でスピード&パワーでゴリ押し→ストップ勝ち【結果・感想】

田中恒成vs橋詰将義感想。田中が人気ある理由がよくわかる試合。相手に力を発揮させた上でスピード&パワーでゴリ押し→ストップ勝ち【結果・感想】

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2022年6月29日に東京・後楽園ホールで行われたWBOアジア・パシフィックS・フライ級タイトルマッチ。同級王者橋詰将義に元3階級制覇王者田中恒成が挑戦し、5R2分52秒TKOで田中が勝利。2021年12月の石田匠戦に続く再起戦2連勝を飾った一戦である。
 
 
1Rからリング中央で前手のジャブでの差し合いを繰り広げる両者。
前後左右に動きながら距離を詰める機会をうかがう田中に対し、王者橋詰は鋭い右リードで田中の前進を寸断する。
遠間からいきなりの左を顔面にヒットするなど1Rは橋詰がペースを掴んだまま終了のゴングが鳴る。
 
2Rに入ると田中がややペースアップ。
橋詰もサイドステップとジャブで対抗するが、田中の圧力に徐々に手が出せなくなる。
 
3R以降、出入りのタイミングを掴んだ田中が橋詰を圧倒。橋詰にロープを背負わせ左右フックを顔面にヒット、持ち前のスピードでどんどん追い詰めていく。
 
試合は田中のペースで5Rへ。ラウンド後半に橋詰の出血によるドクターチェックが入るなど、田中は橋詰に付け入る隙を与えない。
そしてラウンド終了間際に再び田中がコーナーでラッシュを浴びせたところでレフェリーが試合をストップ。5R2分52秒、田中のTKO勝利が決定した。
 
中谷正義が復帰戦でハルモニート・デラ・トーレを1RKO。左ジャブ→右打ち下ろし→左ボディでフィニッシュ。短い時間で持ち味が全部出た完璧な勝利っすね
 

復帰2戦目の田中恒成。長身サウスポーの橋詰は前半型?

2020年12月の井岡一翔戦での敗戦以来、復帰2戦目を迎えた田中恒成。
 
前回の石田匠戦は大接戦の末の2-1(96-94、96-95、94-96)の判定勝利。長身の石田のジャブに苦しめられながらも辛くも復帰戦を飾っている(僕は石田の勝ちだと思った)。
 
田中恒成vs石田匠。田中の勝ちか〜。石田が逃げ切った感じもしたけどな。両者の差は勝負どころでの凄みかな
 
今回の相手は同じく長身(身長170cm)&サウスポーの橋詰将義ということで、S・フライ級への適応も含めて注目が集まったわけだが。
 
 
ただ、僕はこれまで橋詰将義の試合を観たことがなく。
上背のある無敗サウスポーということは知っていたが、情報はそれだけ。どんな試合になるかがまったく想像がつかずにいた。
 
数日前にちらっと過去の試合を漁ってみたところ、出てきたのは今回と同じPXB興行でのハイライトのみ。
 
その際は開始直後は長くキレのある左を打ち込んでいたものの、終盤は別人のようなグダグダ泥仕合っぷり。
ハイライトだけだったので何とも言えないが、どちらかと言えば前半型なのかなぁと思った次第である。
 

田中はやっぱり強かった。“打たせながら打つ”ゴリ押しのファイトスタイル

実際の試合の感想だが、やっぱり田中恒成は強えなぁと。
 
序盤は多少劣勢を強いられたが関係ない。そこから盛り返す余力は十分にある。根本的な性能の違いというか、スピード&パワーのゴリ押しで相手の作戦を机ごとひっくり返してしまうイメージ。
 
もともとこの選手はディフェンス面にヌルさがあり、この試合でも1Rは橋詰の左を被弾するシーンも見られた。
 
だが、踏み込みのタイミングを覚えてからはほぼ一方的な展開。
 
グイグイ前に出ることで橋詰の手数を封じ、左の戻り際に一気に距離を詰める。
橋詰がサイドに逃げれば素早く左にステップを踏んで逃げ道を塞ぎ、そのままフック気味の左をズドン。
時おり橋詰の鋭い右が顔面をかすめるものの、前後の距離感であっさりと処理。
橋詰がまっすぐ後退してロープを背にしたところでさらに距離を詰め、今度は右のフルスイングを顔面に。
 
打たせずに打つではなく“打たせながら打つ”いつものファイト。スピード&パワーのゴリ押しでねじ伏せる田中の真骨頂を発揮した上でのTKO勝利である。
 
 
ああ、なるほど。
アジア王者では田中の馬力は抑えきれないか。
 
2020年大晦日の井岡一翔戦ではスピード&パワーを凌駕する技巧で井岡に宣言通りの“格の違い”を見せつけられたが、そんな芸当ができるのはトップ中のトップに限られるということか。
 
井岡一翔vs田中恒成。井岡の重ねてきたものの重さが桁違い。ホントに勝ってよかった。黙して語らぬ視聴率大正義時代の最後の生き残り
 

橋詰は立ち上がりはよかったけどね。未体験ゾーンに完全にテンパっていた気がするよ

一方の橋詰将義だが、こちらはちょっと厳しかった。
 
申し上げたように1Rは右リードの連打と左ストレートでペースを掴みかけたものの、2R後半あたりから田中の圧力に押されて徐々に手が出なくなる。
その後もラウンドが変わるごとに仕切り直そうとしていたが、サイドに動きながらガツガツ攻める田中についていけず。コーナーで亀になる苦しいパターンに陥ってしまった。
 
いや、マジで立ち上がりはよかったんですよね。
ナイフのような右リードと軌道が読みにくそうな左ストレート。
若干身体のバランスが悪いのかな? とも思ったが、それがかえってタイミングをとりにくくしているというか。
 
左ボディで田中が一瞬動きを止めるなど、「これはひょっとしたら?」と思わせる一幕もあった。
 
ところが2Rから田中がペースを上げると迂闊にガードを下ろせなくなる→手数が減り以下同文。
攻撃を受けるたびに面食らった表情を浮かべていたが、要するに田中の圧力、スピードが想定を大きく超えていたのだろうと。
 
「あそこであれがきたらこうする」「こうきたらこう受ける」というプランはあったが、田中がそのつど想定を超えてくる。
いわゆる世界王者レベルと初めて遭遇したというか、想像以上の未体験ゾーンに完全にテンパっていた気がする。


 
田中恒成vsヤンガ・シッキボ。田中は4階級制覇の準備完了かな。シッキボは“惜しい”選手だった。アムナットになれそうなポテンシャルなのに素直過ぎた
 

田中が人気がある理由がよくわかる試合だった。スリリングな激闘型は終了直前が一番盛り上がる

相変わらずの激闘ボクシングで見事なTKO勝利を挙げた田中恒成。
 
前回の石田匠戦ではやや迫力が足りず階級の壁的なものも感じたが、今回はそういった懸念を一気に吹き飛ばしてみせた。
 
相手の力を全部出させた上でそれを強引にねじ伏せるゴリ押しファイトは危なっかしさもあるが、その分めちゃくちゃおもしろい。
表題の通りなのだが、この選手が人気がある理由がよくわかる試合だった。
 
何というか、試合の喜怒哀楽が激しいんですよね笑
劣勢気味の立ち上がりから徐々にエンジンをふかして無理やりペースを引き寄せ、逆に相手をタジタジにさせる。で、そのままハイカロリーな連打でストップを呼び込み「よっしゃー!!」。
 
試合が進むにつれてどんどんボルテージが上がり、終了直前がもっともハイテンションで最高に盛り上がるという。
 
井岡一翔vsドニー・ニエテス再戦。地味強で苦手なニエテスと地獄の防衛戦。鋭い左リード&懐が深いタイプが不得手なんだろうな。がんがれ井岡。何でもいいから勝て
 
以前、井岡一翔戦実現に向けて外堀を一つ一つ埋めていくやり方が好きじゃないと申し上げたところ、「そんなことはない」「田中vs井岡戦はみんなが望んでいる」と青筋立てて突っかかってきた老害がいたが、今回のような試合を観るとああいう謎老害信者が沸くのもわからんでもない。
中部出身という要素も相まって“おらが町のヒーロー”的なアレがあるのだろうと。
 
まあ、それでも好き嫌いの話をしている人間に“正しいか間違っているか”の謎理論で突っかかる精神構造はガチで意味不明だったが笑
 
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