負けて「すみません」と謝罪するスポーツ選手に「謝るべきではない」と指摘することについて

オリンピックなど、スポーツの試合後に負けた選手が会見やインタビューで「すみません」「自分が足を引っ張ってしまいました」と涙ながらに語る光景をよく目にする。
これは恐らくあらゆる場面で起きていることで、試合の大小に関わらず敗北を喫したスポーツ選手は全国的に謝り倒していると想像する。
そして、この謝罪に対して「謝るべきではない」「絶対に頭を下げるな」と指摘する声も多い。
下記の記事にもあるように、“負けた際の謝罪”は「日本人選手特有のもの」でもあるらしい。
「なぜ日本人選手は謝るのか? 社会学者の論考にみる『選手はもはや「個人」ではない』責任と呪縛」
以前、MLBのボストン・レッドソックスに所属していた松坂大輔が打たれて降板した際、監督に「すみません」と謝ったところ、「絶対に謝ってはダメだ」と釘を刺されたことが話題になっていた記憶がある。
上記の記事内にもレンジャーズ時代のダルビッシュが会見で謝罪コメントを出したことを監督に注意された旨の記述があるが、要はそういうことなのだと思う。
日本人選手特有かどうかはともかく、アメリカでは「プロは絶対に謝ってはいけない」のが常識。自らのプレーに対する誇り、プロとしての誇りを守るために、簡単に頭を下げることをよしとしない。
正直、僕はそこまでキツキツにするほどでもないと思っているのだが、まあそういうことらしい。
というわけで表題の件。
「負けたスポーツ選手は謝罪するべきではない」「謝る必要はない」という声は本当によく耳にするが、実際はどうなのよ?
負けた選手が視聴者や観客に対して「すみません」と口にするのはそんなにダメか?
卑屈になる必要はないけど、むしろ自然発生的に出た言葉なら全然OKじゃないの?
超個人的な意見なのだが、適当に考えてみようと思う。
不調の井上浩樹が負けたんじゃなくて絶好調の永田大士が王者を攻略したんだろ。覚悟を決めて試合に臨んだ永田大士に感動
負けた選手の謝罪が悪いとは思わない。わざわざ釘を刺したり指摘するほどのことかね?
まず大前提として。
僕は負けたスポーツ選手が「すみません」とコメントすることが悪いとはまったく思っていない。
上記の記事のように、選手個人に「○○の代表」としての意識はどうしても芽生える。
競技レベルの高さや応援する人の数はあまり関係がない。身内数人の応援だろうがクラスや職場の応援だろうが、東京ドームに集まる万単位の応援だろうが同じ。人前に立つ人間であれば、「彼らの期待に応えたい」という思いは間違いなく存在する。
そして、競技レベルが上がれば上がるほど、試合の規模が大きくなればなるほど「期待に応えたい」思いは強くなり、それがいつしかプレッシャーに変わる。
「期待に応えたい」が「期待に応えなくてはならない」となり、これから向かう舞台が「絶対に負けられない場所」となる。で、結果が出なかった際に「すみません」という言葉が思わず口をつく。
特におかしな話ではないと思うのだが。
もちろん悪いことをしたわけでもないので謝る必要はどこにもない。視聴者や観客側も、多くの方が「いやいや、謝ることなんてないでしょ」と思っているはず。
それを踏まえた上で、わざわざ「謝る必要はない」と指摘するほどの話か? と。
“敗者の謝罪”が日本人選手特有かどうかは知らんが、ややこしい理屈をこねて「それは違うぞ」と釘を刺す必要性を感じないのが本音である。
うん、まあ。
申し訳ないけど、あまりいい記事には思えなかったかな。
昨夜、自分の書いた記事がなぜ、駄目か分かった。選手が謝る、謝らせるのを国民性みたいなところに着地させていたからだ。
なぜ日本人選手は謝るのか? 社会学者の論考にみる『選手はもはや「個人」ではない』責任と呪縛 – Victory https://t.co/nTwgfoe1kN #Victory— 谷口輝世子KiyokoTaniguchi (@zankatei) January 3, 2019
なぜ謝罪するか? 結局「ふがいない」からじゃない? 自分の実力を発揮できなかったショックの大きさ
「負けたスポーツ選手がなぜ謝罪するか」についてだが、僕なりの結論としては「ふがいなさ」によるものだと思っている。
当たり前だが、負けようと思ってフィールドに立つ選手はいない。どの選手(チーム)も少しでも“勝利”に近づくために日々鍛錬し、本番に備える。
自分の長所を伸ばし足りない部分を補い、決められた時間内にいかに成長できるかを考える。と同時に相手を研究し、自分の持ち駒と比較しながらどう戦えば勝てるのかの作戦を練る。
これはプロであろうがアマであろうが、試合の規模やレベルがどうだろうが同じ。“勝利”の二文字のために自分を追い込み、チームと相談しながら歩んだ日々は間違いなく重い。
そして、結果が出なかったときの落胆は想像を絶するものがある。
4年に1度のオリンピックはもちろん、入念な準備を重ねて迎えた本番で思った結果が出なかった場合、言いようのない落胆とふがいなさで頭がいっぱいになる。
「僕が「アスリートファースト」という言葉が好きではない理由。それをまさかセルジオ越後が言語化してくれるとは」
「負け」という結果が出た場合、自分の思った動きができなかったケースがほとんどである。
当初のプラン通り、理想のプレーができれば負けることはまずない。それが自分のコンディションによるものなのか、相手の作戦に封じ込められたのかは不明だが、いわゆる「実力を出し切ったけど及ばなかった」というのはまずあり得ないと思っている。
僕が敗戦後に爽やかに負けを認めるコメントをするより、「俺は負けてない!!」と喚き散らす選手の方が人間味があっていいと思うのはそういう理由もあったりする。
爽やかな笑顔でアンディ・ルイスを讃えるアンソニー・ジョシュアより、「俺が勝ってただろ!」って駄々をこねるブローナーさんの方が敗者の振る舞いとしては好きだったりする。
ネタ扱いされてたけど、ああいうのは嫌いじゃない。
同意してくれとは言いませんが。— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) June 3, 2019
まあ、ブローナーさんに関しては私生活がアウト過ぎてアレですがww
スポーツ選手は基本的に目立ちたがり屋。ふがいなさを表現するための言葉が「すみません」
繰り返しになるが、この「自分の思った動きができなかった」「何もできずに負けた」ふがいなさは本当に凄まじい。穴があったら入りたいというか、あまりの情けなさで立ち直れなくなるレベル。
僕は別にプロでも何でもない人間だが、自分がしょーもないプレーをした帰り道に悔し過ぎて車のハンドルを叩き、盛大にクラクションを鳴らしてしまったこともあるww
スポーツ選手(個人競技は特に)は基本、ええかっこしいの目立ちたがり屋である。
クラスの人気者になりたい、観客にキャーキャー言われたい。規模の違いはあるが、人前でいいプレーを見せてカッコつけるために日々努力を重ねていると言っても過言ではない。
「強さの証明」「アイデンティティの確立」等々、それっぽい信念もあるのかもしれないが、結局は「自分が活躍してカッコいいと言われる」ことが最大の目標だと思っている(たぶん)。
逆に言うと、それがかなわなかった際のショックは筆舌に尽くし難い。
常日頃から「カッコつけたい」「期待に応えたい」と思っている人間が、自分が求めていたものとは真逆の結果を出してしまった。
自分へのふがいなさ、情けなさに落ち込むのも当然である。
そして、恐らくこの「ふがいなさ」を相手に伝えるための適当な言葉が見当たらないので、代替として「すみません」が多用されているのだと思う。
「小泉進次郎が「男は顔」であることをセクシーに証明した件。この世は顔面偏差値が高ければだいたいのことが許される」
以前から申し上げているように、僕は「素人がプロに口出しするな」「自分でできないヤツがプロを語るな」「選手へのリスペクトがあれば批判などできない」論が大嫌いである。素人とプロを同じ土俵で語っている時点でお話にならないし、「リスペクト」という言葉を軽々しく使い過ぎ。
ただ、実際に経験した人間しかわからないことは確実にあって、今回の「負けた際の謝罪」もその一つだと思っている。
本番までの努力が大きければ大きいほど、競技、試合にかける思いが真剣であればあるほど、負けたときの「すみません」も重さを増す。そこは外部の人間が立ち入ってはいけない部分だと思う。
たまにファンが「自分たちは選手のプレーを観て感動をもらっている」「だから負けた選手は謝るべきではない」などとそれっぽいことを言っているのを見かけるが、それはフィールドに立っていない人間が言ってはいけないというのが僕の意見である。
だからアレだ。
これまで通り今後も続けていけばいいんじゃないの?
「負けてすみません」
「僕が足を引っ張りました」
「気にするなよ」
「すごかった」
「謝る必要なんてないから」
この件を毎回繰り返すのがベターだと思いますけどね。ベストとは言わないけど。
「負けた選手は謝るべきではない」と言うと、手軽に“言ったった感”が得られるってのもあるけどww
ついでに言うと、ふがいなさのあまりに「すみません」が出るうちは、競技を続けるモチベーションも保っていられると思いますよ。結局、フィールドで味わった悔しさはフィールドで返すしかないからね。

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