デービスの一点突破の野獣性。サンタ・クルスをアッパーで失神KO。左のブローナーは穴も多いけど、負ける姿が想像つかんよね【結果・感想】

デービスの一点突破の野獣性。サンタ・クルスをアッパーで失神KO。左のブローナーは穴も多いけど、負ける姿が想像つかんよね【結果・感想】

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2020年10月31日(日本時間11月1日)、米・テキサス州で行われたWBA世界S・フェザー級&ライト級タイトルマッチ。WBAフェザー級/S・フェザー級スーパー王者レオ・サンタ・クルスとWBAライト級正規王者ジャーボンティ・デービスの一戦は6R2分40秒KOでデービスが勝利。見事2階級同時戴冠を果たした一戦である。
 
 
もともとバンタム級スタートでフィジカル的にはフェザー級が限度じゃないの? という中、無理やり上げたS・フェザー級でアブネル・マレスやカール・フランプトンとイチャイチャを続けてきたレオ・サンタ・クルス。
 
対するジャーボンティ・デービスも階級下のウーゴ・ルイスを小突き回したり、大ベテランのユリオルキス・ガンボア相手に微妙な試合を披露したりとデビュー当時の期待値に比べれば伸び悩んでいる感が強い。
 
どちらの選手も「お前が行くべきなのはそっちじゃねえだろ」という相手が多く、特にデービスに関してはワシル・ロマチェンコに勝利したテオフィモ・ロペスに比べると微妙なキャリアを送っている印象は否めない。
 
ロマチェンコvsテオフィモ・ロペス感想。115-113ロペスかな。ロペスの対策が素晴らしかったしやっぱりスピード&パワー大正義
 
スター同士の激突ということで注目度は高いものの、何のために組まれたのかが判然としないマッチメークだったわけだが……。
 
サンタ・クルスのがんばりとデービスの壮絶なアッパーにより、当初の期待をはるかに超える熱戦が展開された次第である。
 

サンタ・クルスがなかなかよかった。というか、何でこの選手は日本でこんなに嫌われてるんだ?

まず今回の試合、サンタ・クルスがなかなかよかったと思う。
 
もともと僕はこの選手に対する悪感情はなく、日本のファンからやたらと嫌われている理由もよくわかっていない。確かに相手選びが微妙な上に盛り上がりに欠ける試合も多いが、そこまでカリカリするほどか? と。
 
そもそも嫌悪感を覚えるほど日本になじみのある選手だったっけ?
以前、元バンタム級王者の山中慎介が現役時代に名前を出したくらいで、それ以外にピリつくようなネタもないと思うのだが……。
 
まあでも、2015年5月のフェザー級初戦、メイウェザーvsパッキャオ戦のアンダーで出場した試合などはパワーレス過ぎてフラストレーションが尋常じゃなかったですけどねw
 
パッキャオvsメイウェザーの世紀の一戦から5年だって。WOWOWがパッキャオ特集やるらしいけど、あの試合に総額300億の価値はあった?
 
そんな感じで僕はレオ・サンタ・クルスに何の感情もないわけだが、その僕からしてもこの試合のパフォーマンスはよかった(と思う)。
 

カウンター使いのデービス。獰猛さと1発の威力はすごいが穴も目立つ

一方、ジャーボンティ・デービスについてだが、この選手は基本的にはカウンター使い。
 
鋭いリードで相手の出足を奪い、超人的な反応速度でカウンターをねじ込む。
その反面、追い足やバックギアがなく、相手に先に打たせてからリターンを返す“待ち”のスタイルのために手数自体も多くない。
 
ここ一番のラッシュで相手を制圧する獰猛さは目を見張るものがるが、同時にそれなりに穴も目立つ。
2017年1月のホセ・ペドラサ戦では手数の少なさが影響してペドラサのハンドスピードを持て余し、直近のユリオルキス・ガンボア戦では射程の外からパンチを打ち込むガンボアに追いつけないままラウンドを重ねた。
 
さらに手数の少なさに加えて身長166cmとライト級としてはやや小柄でもある。正直、この階級のデービスにそこまで絶望感はないというか、今のままではWBCライト級王者のデビン・ヘイニーには判定負けを食うのではないかと思っている。
 

開始直後から手数勝負でペースをつかむサンタ・クルス。デービスとの相性をうまく利用していた感じか

そして、今回のサンタ・クルスが実行したのも体格差を活かした手数勝負。
 
いつものようにガードを高く掲げてデービスの射程の1歩外で対峙。相手に先に手を出させて左リードをカウンターで被せ、そのままの勢いで連打を浴びせる。
また、デービスが得意とする入り際の左のショートアッパーには細心の注意を払い、打ち終わりに必ずガードを上げて決定打を許さない。
 
常にデービスの射程の外側で対峙。
相手に先に手を出させて連打を返す。
パンチを打つ際は単発で終わらず必ず連打。
打ち終わりのケアは絶対に怠らない。
 
とにかく手数を集めてカウンターの余裕を与えず、フィジカル差、1発の威力の差を相殺する。
サンタ・クルスにはホセ・ペドラサほどのハンドスピード、フットワークはないが、高いガードと根気強さがある。
 
手数が少なくカウンターが得意、なおかつバックギアがないデービスをパワーレスなサンタ・クルスが攻略するには最適な方法と言えるのではないか。
 
ラウンド後半のスリップダウンを含め、立ち上がりの1Rは完全にサンタ・クルスのペースだった。
 
平岡アンディいいね~w エドワーズを4RTKOで沈めてラスベガス2連勝。今のところ変なしがらみがないのがいいよな
 

中間距離で上回り、近場の連打でカウンターの余裕を与えない。何気にボディも効いてたよね

2Rに入ると、デービスは自分から手を出さずにガードを上げた状態で待ち構える。
恐らく1Rの段階で打ち終わりを狙われていることに気づいたのだと思うが、この判断はなかなかよかったと思う。
 
ただ、それでもサンタ・クルスは怯まない。
前手の差し合いでデービスを上回り、ショートアッパーに気を配りながらじりじり前進して射程に入る。
そのままデービスにコーナーを背負わせた状態から打ち下ろしの連打を浴びせて反撃を許さない。
 
マジな話、中間距離での差し合いでは普通にサンタ・クルスがデービスを凌駕していたように見える。
身体を伸ばして打ち込むデービスの左にはいまいち力が乗らず、逆にサンタ・クルスは左腕を伸ばした位置にちょうどデービスの頭がある印象。
あの位置関係をキープできている限り、試合はサンタ・クルスのペースで進むのでは? という流れだった。
 
 
また4Rあたりから徐々に両者の距離が近づいたものの、サンタ・クルスはそこからボディ攻撃を織り交ぜて対抗する。
強引に前に出るデービスの右腕に左腕を巻き付け、右腕でアッパー気味のボディを打ち込む。身体を斜めに倒して下から突き上げるような角度でねじ込み、さらに左上から対角線上にフックを打ち下ろす。
ローブロー気味でも気にせずボディを打ち続け、近場で勝負したいデービスをそのつど突き放す。
 
実際、あのボディはそこそこ効いていたと思う。
4R終了間際にデービスがベルトラインを気にするそぶりも見せていたし、試合の流れを渡さないという意味でもかなり有効な攻撃だった。
 

デービスの野獣性にサンタ・クルスが飲み込まれる。今のところ負ける姿が想像できないし、あの爆発力はブローナーにはないものだよね

だが6Rに入ると、開始直後からデービスがガードを上げてグイグイ前に出る。
サンタ・クルスの連打を浴びながらも前進を続け、ガードの上からでもお構いなし得意のアッパーを叩き込む。
1発打てばその3倍打ち返し続けたサンタ・クルスだが、このラウンドはデービスの圧力に押されて後退を余儀なくされる。
 
そして、サンタ・クルスが後ろ体重になったところでさらに回転力を上げて攻め込むデービス。
 
サンタ・クルスもローブローによる休憩をはさみつつ真正面からの打ち合いに応じるが、被弾覚悟で腕を振るデービスを抑えきれず。
最後はラウンド終了間際に左アッパーを顔面に被弾して空中で失神。そのままコーナーで仰向けにダウンした瞬間、レフェリーが両手を交差して試合をストップする。
 
 
おおう……。
マジか。
 
今回のサンタ・クルスは間違いなくがんばったが、やはり結末はこういう感じか。
 
開始直後からあのアッパーには細心の注意を払っていたが、前のラウンドあたりからデービスが同じ軌道でボディを打ち込んでいたことや、瞬間的なスイッチで角度が変わったことを含めて最後の最後で決壊してしまった。
 
本気になったデービスに飲まれたというか、自力の違いを見せつけられたというか。
 
あのスイッチからの左アッパーが意識してのものか、反射で出たものかはわからないが、さすがにあれだけ押し込まれた状態からアレを食えばどうしようもない。
 
 
申し上げたようにデービスは穴も多くライト級では若干小柄。
ただ、そういった諸々を一気にひっくり返す野獣性はすごい。マジですごい。
 
被弾を気にせずゴンゴン前に出てカウンターを浴びせるスタイルは左構えのエイドリアン・ブローナーっぽくもあるのだが、この試合の6Rに見せたような人外的な野獣性や1発で試合を終わらせる爆発力はブローナーにはないもの。
 
内容的には同日にラスベガスで開催された井上尚弥vsジェイソン・モロニー( マロニー )戦の方がおもしろかったが、最後のインパクトでデービスがすべてを持っていった感じ。
 
尚弥きゅん。井上尚弥がモロニー(マロニー)を7RKO。モロニーはいい選手だったし井上の試合で過去一番好きかもしれない
 
相手選びも物足りずに期待したキャリアを送れているとは言い難いが、今のところこの選手が負ける姿は想像がつかないのもまた事実なのかなと。
 
 
とにかく両者ともにナイスファイト。
リングサイドにいたメイウェザーの試合後の喜びようからも、かなり厳しい試合だったことがうかがえる。
 
でも、デービスは減量をがんばってS・フェザー級に留まった方がいいと思うけどね。
 
 
デービスのKO勝利の報を聞いたブローナーさん。

アナタ、完全にご隠居したお師匠さまポジションになっとるやんけww
 
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