ゲイリー・ラッセルがロマチェンコに熱烈片思い? ハイランド戦を2RTKOで圧勝防衛!! 今後のビッグマッチを強く望む【結果】

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コネチカット州
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2016年4月16日(日本時間17日)に米・コネチカット州で行われたWBC世界フェザー級タイトルマッチ。王者ゲイリー・ラッセルJrが同級15位のパトリック・ハイランドを2R1分33秒TKOで下し、防衛に成功した。

「ゲイリー・ラッセルvsエスカンドンが楽しみすぐる。両方めちゃくちゃいい選手ですよねこれ?」

負傷などで約1年ぶりの試合となったラッセルだったが、15位の挑戦者をまったく寄せ付けずに勝利を飾る。試合後のインタビューではサンタクルスやロマチェンコの名前を出すなど、今後のビッグマッチを強く希望している。
中でも2014年に敗れたロマチェンコに対する思いは強く「たとえ彼がウェルター級に上げたとしても追いかけていくつもりだ」と宣言。

「ロマチェンコがゴロフキン化? マルティネスに手も足も出させず完勝!! アカンわこりゃww」

ハイスピード型サウスポー同士の再戦はあるのか。
ロマチェンコvsローマン・マルティネス、フランプトンvsサンタクルスなど、にわかに活気づくS・フェザー級戦線にゲイリー・ラッセルが殴り込みをかける?

「サンタクルスがキコ・マルティネスにKO勝利!!」

ラッセル圧勝の中にも数々の駆け引きがあった試合

ラッセル強し!!

久しぶりの試合となったゲイリー・ラッセルだったが、そんなことはまったく関係なかった。さすがのハンドスピードと圧力で挑戦者ハイランドを圧倒してみせたという試合である。
ハイランドとしては、ラッセルのスピードに面食らっているうちに一気にもっていかれた。そんなイメージだったのではないだろうか。

この試合はラッセルの圧勝であることは間違いない。だが挑戦者のハイランドもかなりいい選手だったと思う。
そして、そのハイランドを圧倒してみせたラッセルのスピードスターっぷり。これはすばらしいとしか言いようがない。

試合開始直後から両者が真正面から打ち合う。ハイランドのシャープなジャブと大きく踏み込んでの右が抜群の切れ味でラッセルを襲う。
ラッセルは前手の右を高く上げ、細かいパーリングでこれを弾き落とす。さらにハイランドをはるかにしのぐハンドスピードで襲いかかる。

スピードではラッセルにかなわないと判断したハイランドが1Rの中盤から打ち終わりを狙い始める。ハイランドのカウンターが危ないタイミングで何度かラッセルの顔面をかすめる。

「ゾンビか!! サリドがバルガスを追いつめ惜しくもドロー!!」

ラウンド終了間際に連打でハイランドを押し込むラッセル。
ハイランドはいくつか被弾を許したものの、堅いガードでラッセルの攻撃を防ぎきる。

自分からは手を出さず、頭を振りながらじわりじわりとプレッシャ―をかけるハイランド。
コーナーを背負ったラッセルが連打で迎撃。
打ち終わりにハイランドが右を返す。これがラッセルの顔をかすめる。
ここで1R終了のゴング。

「クロフォードvsポストル予想!! 虚弱クリチコ・ポストルがソリッドスター・クロフォードに挑む!!」

2Rに入ると、これまで積極的に打ち込んでいたラッセルが自分から手を出さなくなる。打ち終わりを狙われていることに気づいたのだろう。ハイランドに先に手を出させる作戦である。

両者がリング中央で対峙したままフェイントをかけ合う。交互に連打を打ち込むものの、相手のパンチを警戒しながらのパンチなので踏み込みが弱い。

「最強巨神兵コバレフの攻略法判明? チレンベ(チレンバ)の大健闘で大差判定ながら不安を残す」

焦れたハイランドがにじり寄るように距離を詰める。
自分の距離でパンチを出すタイミングを測ろうとしたその瞬間。
待ってましたとばかりにラッセルが左右のワンツーから得意の右フックを放つ!!

バシュッ!!

ガードの外側から右フックを被弾したハイランドが崩れるようにダウン!!

すぐに立ち上がるが、足がいうことを効かない。
見るからに深刻なダメージを負ったハイランド。

間髪入れずにラッセルが襲いかかる。
ハイランドをコーナーに追い込み、超絶ハンドスピードでの猛攻。

ロープにもたれるように2度目のダウンを喫するハイランド。
またしても立ち上がるが、すでに限界が近いのは明らかだ。

左右のフックを被弾し、吹き飛ばされるように3度目のダウン。
ここでレフェリーがストップをかける。

2R1分33秒TKOでラッセル勝利!!
ゲイリー・ラッセルの圧勝である。

スピード勝負で敵わないと判断したハイランドがすぐに打ち終わりを狙う作戦に切り替える。それに気づいたラッセルが先に相手に打たせる作戦を選択する。焦れたハイランドが距離を詰めてきたところにハイスピードの右フックをドカン。

結果的にはラッセルの圧勝だったが、短い時間の中に両者の駆け引きが見られた濃厚な試合だった。
パトリック・ハイランドという選手はランキングこそ15位ではあるが、そんなことは関係ないくらいいい選手だったと思う。そして、そのハイランドに何もさせずにKO勝利を飾ったラッセルはやはりトップレベルにふさわしい選手である。

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無敗を守ろうとすると選手の魅力が一気に半減するのよね……

2015年のジョニゴン戦ではジョニゴンのフックにしっかりと対応し、左右の動きでかく乱するなど飛躍的な成長が見られたラッセル。
2014年のロマチェンコ戦ではハンドスピードを活かした直線的な動きのみの選手だったが、ここ2戦の動きは本当にすばらしい。恐らくあの敗戦がいいきっかけになったのだろう。超絶スピードに加えてボクシングの幅も出てきているこの選手はまさしく今が全盛期である。

僕の個人的な考えとして「無敗を守ろうとすると一気に魅力がなくなる」というのがある。
無敗のままキャリアを重ねるうちに、どうも「黒星をつけたくない」という気持ちからか、消極的になる選手が多い気がするのである。

試合運びもそうだが、特にマッチメークでの消極的な姿勢はその選手の魅力を一気に失わせる。
ジェイコブスに負ける前のピーター・クイリン然り、ロマチェンコとの対戦が破談になったニコラス・ウォータース然りである。

「ジェイコブス、クイリンを瞬殺!! 初回の壮絶ラッシュでTKOに下し、見事防衛成功」

内山との対戦に乗り気ではなかったフォルトゥナにも若干その傾向が見られる。コラレスとの対戦を拒否してジェイソン・ソーサ戦に進んだのが何よりの証拠といっていいのではないだろうか。

「内山がフォルトゥナに勝てるかを予想する」

特にロマチェンコとの対戦に破格のファイトマネーを要求したウォータースはその典型的な例である。
これは僕の想像だが、恐らくウォータースはロマチェンコに勝てる気がしないのだ。
ロマチェンコ戦は確かに魅力だが、あれほど強い相手とやるのであればそれなりの見返りも欲しい。これまで守ってきた無敗というキャリアを失うのだから、目一杯稼がないと損をする。
この思いが、真摯にビッグマッチを求めるロマチェンコの気持ちを上回ってしまった。つまりはそういうことだ。
ロマチェンコが別途ポケットマネーを出すと持ちかけたという話もあるが、正式なファイトマネーが約束されない限りウォータースは首を縦に振るわけにはいかなかったのである。

「ロマチェンコにウォータースは勝てるか? 無理だろうなぁ。勝って欲しいけどなぁ」

無敗を守りたい。自分の価値を高めたい。
この気持ちはわからなくはないが、マッチメークでの消極的な姿勢はどうしても選手の魅力を半減させる。
僕はウォータースvs内山戦が実現したらウォータースに勝ってほしいと思うほどのウォータースファンではあるが、このロマチェンコ戦の破談はちょっと残念だった。

「内山vsウォータース予想!! 実現なるか? 日本のKOダイナマイト内山高志とニコラス・ウォータース」

開き直ったラッセルはいいぞ。今後のさらなる飛躍に期待だ

逆にラッセルのように、強敵に敗れたことで魅力が増すという例も数多くあると思う。ロマチェンコもサリドに負けたことで経験値を大幅にアップできたし、強豪選手がキャリアの途中で敗戦を喫することはそこまで悪いことではないと思うのである。

「チャーロ兄ジャーマルがトラウトを撃破!! フィジカルモンスターがテクニシャンをねじ伏せる」

よく「あの負けがきっかけで得たものが大きい」という言葉を聞くが、これはむしろ逆ではないだろうか。敗戦で何かを得るというより、敗戦を経験したことで失うものがなくなるのだ。
原点に立ち返ることで新たな景色が見えた。守るのではなく、前のめりに攻めることでいろいろなものを吸収できた。つまり、いったん膝を曲げることでより高くジャンプすることができるようになるのである。

「サンタクルスとフランプトン予想!! 身長と体格のサンタクルスに高速コンビネーションのフランプトンか?」

特にラッセルの「ロマチェンコをどこまでも追いかけてやる宣言」は、ロマチェンコに敗れて失うものがなくなったおかげであることは間違いない。
何だかんだで、ラッセルはこれまでロマチェンコが対戦した唯一のビッグネームである。自分の立場を失うことも辞さない姿勢は大いに評価されるべきではないだろうか。

「クロフォードがポストルに大差判定勝利!! ん? クロフォード圧勝? むしろポストル勝てたんじゃないのか?」

ん? サリド?
アイツがビッグネーム? 笑わせんなよ。

日本でいうと、次戦で世界戦が濃厚と言われる和氣慎吾だろうか。あの選手もキャリア序盤で敗戦を経験したことで覚醒したいい例ではないかと思う。
最近でこそ微妙な格下相手との試合が増えているが、OPBFタイトルをとるまでの厳しいマッチメークは雑草魂そのものといっていい。

「和氣慎吾がワルド・サブを5回KOで世界前哨戦勝利!! 後楽園ホールに行ってきたぞ」

確かに「無敗」という言葉は聞こえがいい。
だが、それはメイウェザーやロマゴン、ゴロフキンのような限られた超人だけに許された特権であり、躍起になって守るものではないということを理解するべきなのだろう。
その他大勢の凡人は勝ったり負けたりを繰り返して壁にぶつかりながら成長する。それこそが最も大事なことなのではないか。
月並みではあるが、今回のラッセルの試合を観てそんなことを考えてしまった。
 
「はあ、ラッセルたん…。エスカンドンを接近戦で圧倒して勝利!! この試合好き過ぎて、もう5回くらい観てるw」
 
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