超速ラグビーの現在地。イングランドとの2試合で何が変わったか。スタッツを見ると少しだけ希望が出る? エディー・ジョーンズのコメントも納得できるよね
ラグビー日本代表、2024年の全テストマッチが終了したわけだが。
結果は11戦で4勝7敗。格上相手に大敗を繰り返す厳しい内容で、復帰1年目のエディー・ジョーンズHCに早くも解任論が聞かれ始めている。
なお僕は以前からエディー・ジョーンズの再任には懐疑的だった。
「この人のラグビーは格下に強く格上に弱い」と言い続け、実際その通りになっている。
エディー・ジョーンズ再び日本代表HCに? エディーのラグビーは古い。世界の主流はディフェンス重視のロースコア。トレンドに即した人選をだな…
だが、実を言うと先日のイングランド戦は少しだけ希望が見えたと思っている(世間の評価と逆行して)。
というわけで今回はそれについて。
各試合のスタッツを眺めつつ、僕が思う“超速ラグビー”の現在地? を語っていく。
燃費の悪い超速ラグビー。あれだけ大慌てで走り回ればそりゃバテるでしょ
まず先日のイングランド戦はまあまあの出来だった(僕の中では)。
14-59というスコアだけ見ると「うわぁ……」となるが、内容自体はそこまでではない。
むしろ「ようやく“超速ラグビー”がスタートに立った」印象である。
具体的には
・SHがバタバタしなかった
・後半まで足が動いた
この2点がよかった(と思う)。
それまでの日本はとにかく燃費が悪く、非効率な試合運びが目立っていた。
SHが動き回ってパスを出す、自分でスペースに走り込むのは結構だが、絶望的に成功率が低い。
敵陣まで攻め込んでもハンドリングエラーやパスミスでチャンスを潰し、陣地を戻されてやり直し。
“超速”を意識するあまり確実性がないがしろにされていた。
しかも全員が大慌てで走り回るせいですぐにHPが尽きてしまう。
前半20分までは鋭いオフェンスを見せる(トライにはつながらない)ものの、それ以降は足が止まって防戦一方に。
集散の遅れがディフェンスにも影響してどんどん差を広げられる悪循環。
「フィジカルバトルで負けている」「ディフェンスがよくないのが原因」という評価はよく聞くが、オフェンスにあれだけ力を使えば足が止まるのは当然である。
アメフトのように攻守で選手が入れ替わるわけではないのだから、むしろ問題はペース配分にある。
いや、あれだけ無茶なペースで走り回ったらバテるに決まってるでしょ。
日本が怖いのは最初の20分だけって相手にバレてるやんけ。
その割にミスばかりでちっともトライは取れないし。
正直、この戦術はどこかであきらめた方がいいのではないか。
80分間ぶっ続けで“超速”をやり切るなどと夢のような理想を追いかけるうちに時間はどんどん過ぎていく。
苦戦続きのラグビー日本代表。今の「超速ラグビー」をあと3年弱で成熟させる? 若手を見出す期間? 散々連呼してた「にわかファン」は置いてきぼりっすか?笑
前回のイングランド戦はこれまでと少し違った。スタッツからも方針の転換があったことがわかる
ところがこの前のイングランド戦は今までと少し様子が違った。
SHは無理に走り回らず、焦ってパスを出すこともない。
しっかりとラインを確認してからボールを放る。
後ろのプレイヤーは深めのポジショニングから勢いをつけて走り込む。
絡まれても強引に前に出ることはせず球出しに切り替える。
“超速”にとらわれて「大慌てでボールを離す→パスミス、ハンドリングエラーを連発→無駄に体力を消耗する」悪循環が解消されていた。
スタッツを見てもそれがわかる。
「ワラビーズのHP」から引用させていただくが、
下記が2024年6月のイングランドとの初戦、
「2024.6.22日本17-52イングランド」
そして下記が2024年11月(先日)のイングランド戦のスタッツである。
「2024.11.24日本14-59イングランド」
注目は日本チームの「Metres」(ゲインした距離)、「Carries」(ボールを持って走った回数)、「Passes」(パスの総数)の3つ。
6月の1試合目は
Metres:348
Carries:119
Passes:168
だったのに対し、
11月の再戦では
Metres:371
Carries:105
Passes:134
1試合目に比べてパス数、キャリー数ともに減っているのに総距離(Metres)は増えている。
大慌てのパスと無駄走りが減少、オフェンスの効率が上がったことがわかる。
恐らくどこかの段階(フランス戦後?)で方針の転換があったのだと思うが、これははっきり言って悪くない。
後半20分過ぎの細かいパス回しからのトライはまさしく“超速”ラグビー。今までは足が止まっていた時間帯にあの動きができたのはペース配分の成功と言っていい。
最初に申し上げた通り日本代表はようやく「“超速ラグビー”のスタートに立った」のかもしれない。
ディフェンスは組織的な動きが固まっていない。でも「疲れて足が動かない」よりはマシ?
またディフェンス面は根本的に組織練習が不足している印象である。
上記のスタッツによると、
1試合目は
Tackles:123
Missed Tackles:22
2試合目は
Tackles:90
Missed Tackles:27
総タックル数は減っているのにタックルミスが増えている。
実際の抜かれ方、走られ方を観ると状況ごとの動きが固まっていない感じがした。
これを解消するには練習と場数しかない。
フィジカルの強化はもちろん、チーム内での連携を深めて精度を上げていけばいずれ向上するはず。
極論、1試合目の「疲れて集散が遅れて追いつけない」に比べればポジティブですらある(言い過ぎか?)。
だからブリン・ガットランドはいいって言っただろw コベルコ神戸スティーラーズ2023-24シーズン振り返り。もうオフェンスに振り切る方向でええんちゃう?
セットプレーは間違いなく悪化した。ラインアウトをもう少し取れていれば…
悪かった面はセットプレー。ここは間違いなく1試合目よりも悪化している。
スタッツ上もLineouts Success Rate(ラインアウト成功率)は94%から58%と大幅ダウン、Scrums Success Rate(スクラム成功率)も100%から80%とダダ下がりしている。
試合後のエディー・ジョーンズのコメント通りである。
「1つがうまくいけば、もう1つの部品が壊れてしまう。ラインアウト、スクラムのどちらもうまく運べなかった」
日本59失点完敗「部品が壊れてしまう」エディーHC イングランドに13戦全敗
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今季最終戦を迎えた日本(世界ランク13位)が、イングランド(同7位)に完敗した。「新しい車に乗っているような感じだ。1つがうまくいけば、もう1つの部品が壊れてしまう」#rugbyjp https://t.co/lQgt0t6ICH
— 日刊スポーツ・ラグビー担当 (@nikkan_rugby) November 24, 2024
特にラインアウト成功率58%は擁護のしようがない。
ここをもう少し改善できればあと1、2本トライが取れるor失点を減らせるのではないか。
仮にトライをもう1本増やして失点を2トライ分減らせれば……。
同じ敗戦でも21-45ならギリギリ及第点と言える? 言えない?
諸々を踏まえてディー・ジョーンズのコメントを読むと納得できる。ここから上がっていくんじゃない?
エディー・ジョーンズの考える超速ラグビーは恐らくSHの動きが重要になる。
最終形態はポジション関係なく全員が起点になれる縦横無尽なラグビーだと思うが、前段階として当面はSHに裁量を与えているのだろうと。
そして、前回のイングランド戦でその形がうっすらと見えた。
次は局面ごとのメリハリ、ペース配分を考えながら攻撃のバリエーションを増やしていく段階に入る。
オフェンスの効率アップによって体力に余裕ができれば自然とディフェンスの出足もよくなる(はず)。
諸々を踏まえてエディーの会見を振り返ると、
「アタックが良くなれば、自ずとディフェンスも良くなると思っている。ただハンドリングエラーが多いので、自ずと相手にチャンスを与えてしまっているので、改善は必要」
第2次エディー・ジャパン1年目は痛みを伴うも、ジョーンズHCはRWC2027に自信あり! #ぴあアプリ #ぴあスポーツhttps://t.co/eKHO5DgfB6
— ぴあ(エンタメ情報アプリ) (@app_pia) November 27, 2024
割と納得のいくことを言っていると思うのだが、どうだろうか。
セットプレーの改善は急務。
中盤でのキッキングゲームは必須要素だが、今は適性のあるSH、SOを探している最中。来年の今ごろにはチームの中心となるSOを3人揃えたい。
だいたいこんな感じかなぁと。
より詳しい文字起こしは下記。
26日行われた #ラグビー日本代表 総括会見。#エディー・ジョーンズHC が語ったコメントを余す所なくお伝えする「これはチームが成長するために通過する『通常の過程』」「異常なこととは思わないでほしい」 https://t.co/gJU7w0sTwG pic.twitter.com/NoP830hNfL
— ラグビージャパン365編集部 (@rugjpn365) November 26, 2024
ニュージーランド戦、フランス戦の絶望感はヤバかった。アレに比べれば全然ポジティブですよ笑
繰り返しになるが、先日のイングランド戦は言うほど悪くない。わずかに希望が見えたとすら思っている(僕は)。
それこそニュージーランド戦、フランス戦は絶望しかなかったので。
ニュージーランド戦の日本のスタッツは
Metres:553
Carries:172
Passes:220
でトライは3。
対するニュージーランドは
Metres:618
Carries:121
Passes:216
でトライは10。
キャリー数、パスともにニュージーランドは日本より少なく総距離では上回る。トライも多く取っている。
日本のオフェンスがいかに非効率だったか、ニュージーランドに楽に攻められていたかがわかる。
「2024.10.26日本19-64ニュージーランド」
またフランス戦では
Metres:791
Carries:167
Passes:233
トライ数は安定の2。
一方のフランスは
Metres:593
Carries:137
Passes:161
でトライ数は8。
日本はキャリー数、パス数、総距離でフランスを圧倒しながらこれだけの大敗を喫している。
「2024.11.10日本12-52フランス」
さらにヤバかったのがタックル数。
ニュージーランドの総タックル数は188、フランスに至っては233である。
日本の“超速ラグビー”を封じるには前で止めること、ボールを持ったプレイヤーがスピードに乗る前に潰すことが大事。
逆にそこさえ防げば日本は怖くない上に後半に入れば勝手に失速してくれる。
ニュージーランド、フランスは明らかに“前”で止めにきていたし、スタッツからも日本対策がバレていたことは間違いない。
あの絶望に比べれば先日のイングランド戦ははるかにマシ。
チーム状態もここから上がっていくと予想している。
まあ、その前にエディー・ジョーンズが更迭されるパティーンもありそうですが。
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