ラッセルvsポストル感想。伊藤雅雪vs三代大訓戦みたいだった。伊藤は三代にさばき切られたけど、ラッセルはスピードと馬力でポストルをねじ伏せた【結果・感想】
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2022年2月26日(日本時間27日)、米・ネバダ州で行われたS・ライト級10回戦。元WBC同級王者ビクトル・ポストルとゲイリー・アントワン・ラッセルが対戦し、10R2分31秒TKOでラッセルが勝利。戦績を15戦全勝15KOとした一戦である。
ラッセル兄弟の三男、ゲイリー・アントワン・ラッセルが迎えたキャリア15戦目。
対戦相手のビクトル・ポストルは38歳のベテランながらもテレンス・クロフォードやジョシュ・テイラー、ホセ・カルロス・ラミレスなどの強豪に肉薄した実力者。ラッセルにとっては王座挑戦前の最大の難関となる。
ジョシュ・テイラーvsジャック・カテラルどんだけ注意されんねんオマイラw 8Rにダウンを喫するも2-1の僅差判定勝利。僕はカテラル勝ったとオモタ
と言いつつ、僕は今回完全にポストルを応援していた。
理由はめちゃくちゃはっきりしていて、この選手がウクライナ出身だから。
現在進行形で起きている戦争の原因やどちらに非があるか? といった話は僕の拙い知識で語るには恐れ多いのだが、とりあえず両国の軍事力に大きな差があることくらいは知っている。
家族や友人が暮らす場所に強大な他国の軍隊が攻めてくる状況の中、遠く離れた地で仕事をしなければならないポストルの心情は想像を絶する。
単なるパンピーの僕にできることなど皆無に等しいのだが、せめて勝利してリングを降りてほしい。
難しい試合になることは間違いなさそうだが、とにかくがんばれポストル。
だいたいそんな感じである。
アントワン・ラッセルvsランセス・バルテレミーとかいうPBC丸出しの激シブマッチ。トラメイン・ウィリアムズvsパブスタン、ファーマーvsミッキー・ベイも楽しみだぞ
身体能力の高いラッセルと長身ジャブ使いのポストル。伊藤雅雪vs三代大訓戦っぽい試合だったね
ゲイリー・アントワン・ラッセルvsビクトル・ポストル。
この試合はセミセミのジェルウィン・アンカハスvsフェルナンド・マルティネス戦とともに楽しみにしていた試合で、実際メインのクリス・コルバートvsヘクトル・ガルシア戦よりもはるかに盛り上がった。
感想としては、2020年12月の伊藤雅雪vs三代大訓戦みたいだったなぁと。
身体能力が高く直線的なワンツーパンチャーがゴリゴリ前進して腕を振り、長身アウトボクサーがジャブとフットワークを駆使して応戦する。
伊藤雅雪vs三代大訓戦は長身ジャブ使いの三代が伊藤を捌ききったが、今回はラッセルの馬力がポストルの技巧をねじ伏せてみせた。
伊藤雅雪vs三代大訓、佐々木尽vs石脇麻生、坂井祥紀vs小畑武尊、千葉開vs石川春樹感想。満腹の虎がまさかの僅差判定負け
遠間から飛び込み目いっぱい腕を振るラッセルに対し、動き出しと打ち終わりにカウンターを返すポストル。
この選手は動き出しの一瞬の硬直を察知する能力に長けており、ラッセルのように比較的直線的なタイプにはそれが大いに機能する。
また、微妙にアングルを変えつつ遠い間合いで勝負するアウトボクシングもポストルの真骨頂。スピーディな出入りとハンドスピードで対戦相手を圧倒してきたラッセルだが、この距離の差を埋めるには多少強引にならざるを得ない。
正直、ポストルにとってはかなり厳しい試合になると思っていたが、序盤に限って言えば「あれ? これはもしかしたら……」というくらいの展開だった。
身体能力に依存した(若干IQ低めの)直線的なファイターを距離感に優れた長身アウトボクサーがジャブとフットワークでかき乱す。
申し上げたように2020年12月の伊藤雅雪vs三代大訓戦と流れはほぼ同じだった。
選び放題のカネロが渦中のビボルとの対戦を選択。ビボルのジャブがカネロの圧力にどこまで対抗できるかかだろうな
後半失速して勝負どころで粘れないのがポストルの弱点。カウンターを狙うために集中力を維持するのも大変なんだろうな
だが、序盤のペースを最後までキープできないのがポストルの弱点でもある。
ジョシュ・テイラー戦でもホセ・カルロス・ラミレス戦でも中盤までは互角以上の展開を作れていた。テイラー戦に関しては「これ、普通に勝つんじゃね?」と思ったほど。
僕のポストル…。ホセ・カルロス・ラミレスは強化版ルーカス・マティセだったな。統一戦が実現しないならvsパッキャオが観たい
ところが後半になるにつれて決壊するというか、勝負どころで失速→ペースアップした相手を抑えきれずにズルズルいくのがこの選手の定番となっている。
前に掲げた左を小刻みに上下させ、相手の動き出しを狙って左をヒット。
そこから強引に入ってくればバックステップしながら側頭部に打ち下ろし気味の右を当て、近場ではショートのアッパー、ワンツーで迎撃する。
動き出しと打ち終わりを狙う分、相当な集中力を要するのだと思うが、試合後半になると紙一重のタイミングでこのカウンターが間に合わなくなる。
今回も7、8Rあたりから左ストレートで顔を跳ね上げられるシーンが目立ち始め、近場の打ち合いで打ち負けそのつど後退させられた。
あの局面で一段ギアを上げたラッセルがすごかったのはもちろんだが、勝負どころで流れを手放してしまうポストルはマジで惜しい。
長身で動けるジャブ使いというのがビクトル・ポストルの強みだが、その反面フィジカルは心もとない。
今回も強引にペースアップして腕を振りまくったラッセルに押し切られたし、激戦区のS・ライト級で勝ちきるには若干火力が足りないのかもしれない。
苦労しながら勝ち切ったラッセル。この経験で一段成熟度が増せば
一方勝利したアントワン・ラッセルについては、苦労しながらよく勝ち切ったなという印象。
長男のアレン・ラッセル同様、踏み込みスピードと凄まじい回転力が持ち味のアントワンだが、今回はポストルの懐の深さと的確なジャブを大いに持て余した。
右リードの鋭さも兼ね備えるラッセルだが、前手の差し合いではポストルに後れを取っていた(と思う)。
そこで敵わないと理解して以降はガードを上げて近づいたり身体を傾けて左を打ち込んだりと工夫が見られたものの、基本は遠間から「せーの」で飛び込むだけ。絶えずアングルを変えるポストルを攻略するまでにはいかない。
それでも何だかんだで勝ち切ったのはさすがである。
カウンターを被弾しつつ、強引に近づき連打でアドバンテージを確保する。
スピード&パワーを全面に出した真っ正直なファイトではあるが、同じ身体能力依存型でも三代大訓に抑え込まれた伊藤雅雪とはひと味違う。
ラッセルvsバルテレミー、こりゃブチ切れるわw 「早すぎるストップは存在しない(キリッ」じゃねえんだよ笑 消耗戦の末に6RTKOでラッセルが勝利
そして次戦はいよいよタイトルマッチorそれに準ずる試合になると思うが、今回はいい経験になったのではないか。
前回「アントワン・ラッセルはロマチェンコに負ける前のイケイケだった頃の長男ラッセルっぽい」と申し上げたが、この試合を経て一段成熟できれば。
ジョシュ・テイラーが王座返上? この階級が一気に混とんとする。テオフィモ・ロペスの動向に注目
同日、英・グラスゴーでジャック・カテラルに勝利した統一王者ジョシュ・テイラーが階級アップを示唆しているとか。
もしテイラーがタイトルを返上すれば4団体すべてが空位になるわけだが、アントワン・ラッセルも次戦かその次あたりでいずれかの決定戦に出場できればと思う。
下町俊貴がジョー・サンティシマを危なげなく完封。危なかったのは接近戦に巻き込まれた5Rだけかな。もしかしたら下町はホームで力を発揮するタイプ?
てか、テイラーがウェルター級に進出するとS・ライト級が一気に混とんとしてきますよね。
先日ジョージ・カンボソスに敗れたテオフィモ・ロペスの動向にも注目だし、僕が勝手に期待している日本の平岡アンディもいる。PBC系列で言えばプロスペクトのブランダン・リーとか?
ウェルター級とライト級に挟まれた谷間の階級ながらもハイレベルな選手が多いS・ライト級。個人的にはL・ヘビー級の次に好みだったりする。
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