バージル・オルティスはウェルター級王者クラス? モーリス・フッカーの限界値が示された。それでもオルティスがデラホーヤになれない理由【結果・感想】

バージル・オルティスはウェルター級王者クラス? モーリス・フッカーの限界値が示された。それでもオルティスがデラホーヤになれない理由【結果・感想】

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2021年3月20日(日本時間21日)、米・テキサス州で行われたWBOウェルター級インターナショナル王座決定戦。同級2位のバージル・オルティスJr.が同級8位で元WBO世界S・ライト級王者モーリス・フッカーと対戦し、7R36秒TKOでオルティスが勝利した一戦である。
 
 
ウェルター級のトッププロスペクト、バージル・オルティスJr.が元王者のモーリス・フッカーを迎え撃ったこの試合。
序盤から馬力を活かして前に出るオルティスに対し、フッカーは鋭い左リードの連打で応戦。硬いガードの上からヒットを重ねるものの、オルティスのパワフルな前進を止めるまでには至らず。
たびたびオルティスの左リードで顔面を跳ね上げられ、左にカウンター気味の右を被せられる苦しい展開を強いられてしまう。
 
一方、ペースを掴んだオルティスは中盤5Rに強烈なボディでフッカーの動きを鈍らせ、続く6Rに打ち終わりを狙ってコンビネーションを炸裂。この日最初のダウンを奪う。
 
そして迎えた7R。
序盤にリング中央で両者の拳が交錯した瞬間、フッカーが右腕を抑えてキャンバスに膝をつく。
 
フッカーの状態を確認したレフェリーがすぐさま両腕を交差して試合をストップ。オルティスの負傷TKO勝利が決定した。
 
バージル・オルティスvsカバロウスカスのThis is boxingな一戦。オルティスの若さとカバロウスカスの失速癖で大盛り上がり
 

見応え十分な試合だった。各局面でわずかずつ上回ったオルティスがフッカーを押し切る

ウェルター級のトッププロスペクト、無敗の倒し屋バージル・オルティスJr.が元WBO世界S・ライト級王者モーリス・フッカーとのサバイバルマッチ? に臨んだ今回。
 
相手のフッカーは2019年7月にホセ・カルロス・ラミレスとの2団体統一戦に敗れて初黒星を喫したものの、2018年1月には当時無敗のアレックス・サウセドを劇的な7RTKOで下した実績を持つ実力者である。
 
近い将来、王座挑戦を目指すオルティスとしてもこの相手にいい勝ち方をしてアピールしたいところだったが……。
 
すごい試合だった。
 
うん、めちゃくちゃ見応えのある一戦でしたね。
 
結果はオルティスの7RTKOとなったが、内容的にはどちらも一歩も引かない好試合。各ラウンドでわずかずつ上回ったオルティスが押し切ったと言えるのではないか。
 
敗れたフッカーも今回はかなりコンディションがよかった(と思う)。
ホセ・カルロス・ラミレス戦を観る限り相当厳しい試合になると思っていたが、持ち味を目いっぱい発揮したナイスファイトと言っていい(と思う)。
 

モーリス・フッカーの印象は“ジャブが得意な長い人”。でも、フィジカル面がやや心もとない…

僕個人のモーリス・フッカーの印象は“ジャブと右打ち下ろしが得意な長い人”
身長180cmに対してリーチが203cmと腕が異様に長い体型。全体的に痩躯で手足が長く顔が小さいスラッとした印象の選手である。
 
その長い腕を鞭のようにしならせ、スナップの利いたジャブを最大の持ち味とする。
 
ジャブの連打で相手の前進をストップし、射程内に入ってくれば打ち下ろし気味の右で迎撃する。
 
2018年11月のアレックス・サウセド戦はモーリス・フッカーにとってのベストバウトだと思っているのだが、勝負を決めた7Rの右はまさにそれ。
 
再三のジャブで動きの落ちたサウセドが不用意に近づいてきたところに上から右をズドン。ロープ際の連打でレフェリーストップを呼び込むまでの流れはパーフェクトとしか言いようがない。
 
 
一方、フィジカル面はやや心もとなく、突進力のある相手にタジタジにされるシーンが目立つ。
6RTKO負けを喫した2019年7月のホセ・カルロス・ラミレス戦では、左の連打をかいくぐられて以降はラミレスの馬力に太刀打ちできず。
ジャブの連打→右の打ち下ろしという勝ちパターン以外にこれといった手がないのがこの選手の弱点かなと。
 
今回もホセ・ラミレス戦同様、中盤あたりでオルティスの圧力を抑えきれなくなるのでは? と思っていたが、だいたいそんな感じだった気がする。
 
オスカー・デラホーヤvsフリオ・セサール・チャベス第1戦。デラホーヤ強すぎワロタw S・ライト級時代のデラホーヤがキャリア最強説はガチだよね
 

フッカーの動きはよかった。と同時に、耐久力の限界を改めて見せられた試合だった

とは言え、申し上げたようにこの試合のモーリス・フッカーはかなりいい動きをしていた。
左リードのしなり具合や右の打ち下ろしのタイミングその他。階級アップが功を奏したのか、ホセ・ラミレス戦よりも一段キレが上がっていたような気がしている。
 
 
ただまあ、それでも中盤には捕まってしまうのが……。
 
恐らくだが、モーリス・フッカーはホセ・ラミレスやバージル・オルティスのようなタイプとモロに噛み合ってしまうのだと思う。
 
強フィジカル+ガードが高く前傾姿勢の連打型。さらにバージル・オルティスの左リードは最短距離を一直線に通って相手の顔面を跳ね上げる。アップライト気味の構えで相手の正面に立ってパンチを打ち込むフッカーにとっては非常に避けにくい軌道である。
 
この試合も初回は左リードを中心にオルティスの突進をいなしていたフッカーだったが、徐々に抑えきれなくなり6Rに決壊してしまった。
 
左で遠い位置に釘付けにし、右の打ち下ろしを叩き込みたいフッカーと、近い距離で連打を浴びせたいオルティス。
両者の攻防は見応え十分だったが、ホセ・ラミレス戦に続いてフッカーのスタミナ、耐久力の限界値を見せられた試合でもあったなぁと。
 
 
一応言っておくと、モーリス・フッカーはめちゃくちゃ強い選手だと思っている。
S・ライト級王座3度防衛は文句なしに素晴らしいし、この試合のパフォーマンスも普通によかった。
 
だが、残念ながらトップ中のトップと比べるとやや落ちるのも確かなのかもしれない。何となくだが、元S・ライト級王者のビクトル・ポストルと似た立ち位置という感じ。
 
僕のポストル…。ホセ・カルロス・ラミレスは強化版ルーカス・マティセだったな。統一戦が実現しないならvsパッキャオが観たい
 
てか、この選手はすぐに顔に出ちゃうんですよね。
今回も2R以降はしんどそうな表情が丸出しだったし、淡々と“任務を遂行する”オルティスとは対照的な人間臭さであるww
 

オルティスは現時点でも王者に匹敵する実力がありそう。上体の動きと左リード、パリング、硬いガード

逆にバージル・オルティスJr.はすでに王者に匹敵する実力者であることを示したのではないか。
 
上体を振りながらパリングで芯を外し、打ち終わりにジャブを被せつつ距離を詰める。さらに射程に入ればボディ、顔面へのコンビネーションを駆使してぐいぐい追い詰めていく。
 
 
オルティスのスイングにまったく躊躇がないためか、フッカーは至近距離でガードを下げることができず。
 
タイミングよく下から突き上げれば前進を止められるのでは? とも思ったが、当のフッカーはどうしてもアッパーの態勢に入れない。
圧力が強すぎて顔面を晒す余裕がなかったのだと思うが、近い位置での攻防であれだけフルパワーを発動した上で押し込まれてしまうのはやっぱりキツい。
 
 
また、左だけでは止まらないと判断したフッカーが3R以降、遠間からのジャブに右を織り交ぜてきたが、そこでもペースを乱さず前進を続けたオルティスはさすがだった。
 
4Rなどはフッカーの右打ち下ろしを警戒して若干左が減ったものの、要所でガードの間からワンツーを通すなどペースを渡すことはなく。
 
続く5R中盤にボディを突き刺してフッカーの足を止め、一気に6Rのラッシュになだれ込む。
 
結果的に7Rのフッカーの負傷によってオルティスのTKO勝利となったわけだが、仮にあのアクシデントがなくてもあそこからフッカーが逆転する可能性は相当低かった気がする。6Rまでの流れを観る限り、遠からずフッカーの耐久力は決壊していた? のかな?
 
 
繰り返しになるが、今回は本当に見応えのある一戦だった。
何とも言えないところだが、現段階でもバージル・オルティスJr.はダニー・ガルシアよりも強く見える。
 
エロール・スペンスがうまかったなオイ。ダニー・ガルシアにカウンターのチャンスを最後まで与えず。なお、おもしろい試合ではない
 

オルティスがデラホーヤになれない理由? 試合はおもしろいし顔面偏差値も高いのに

なおバージル・オルティスJr.がオスカー・デラホーヤと似ているという意見は僕もちょいちょい耳にしていて、高いガードから最短距離を通過する左リード、ボディ→顔面へつなぐコンビネーションなどは確かにデラホーヤっぽさを醸し出している。
 
だが、この選手からはあまりスター性を感じないというか、この先勝ち続けたとしてもデラホーヤの後継者には至らない気がしている。
 
 
動きがデラホーヤに似ている上に試合もおもしろい。若干デラホーヤとは系統が違うが顔もカッコいい。
 
これだけ好条件が揃っているのにいまいちスター性が足りない、華がないのである。
 
 
それはなぜか。
 
要は、両者のファイトスタイルの違いが大きいのだと思う。
 
デラホーヤはもともとアウトボクサーから中間距離での差し合い中心のスタイルにチェンジした選手。ド派手な試合運びで観客を惹きつけるためだと思うが、結果としてそれがデラホーヤをスターに押し上げる要因となった。
 
鷹村守vsデビッド・イーグルって要するにデラホーヤvsチャベスだよな。デラホーヤの初戦の最強っぷりと再戦での主人公感
 
一方、オルティスはどちらかと言えばインファイター寄り。相手を突き放すためにジャブを打つデラホーヤと違い、追い詰めるために左を駆使する。同じ強ジャブでも微妙に目的と間合いが異なる。
 
両者の違いは半歩程度だとは思うが、観客に与えるイメージはまったくの別物。前傾姿勢でグイグイ前に出るオルティスは華麗なコンビネーションで相手を翻弄するデラホーヤに比べて無骨で地味な印象を与えやすい。
 
 
つまり、わずか半歩の差が彼らの運命の分岐点となるのである(うるせえよw)。
 
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