ナバレッテ2階級制覇!! って言うほど勝ってるか? これ。ルーベン・ビラの五十嵐俊幸っぽさ。持たざる者の辛さというか【結果・感想】

ナバレッテ2階級制覇!! って言うほど勝ってるか? これ。ルーベン・ビラの五十嵐俊幸っぽさ。持たざる者の辛さというか【結果・感想】

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2020年10月9日(日本時間10日)、米・ネバダ州ラスベガスで行われたWBO世界フェザー級王座決定戦。同級1位で前WBO世界S・バンタム級王者エマヌエル・ナバレッテと同級2位ルーベン・ビラが対戦し、3-0(115-111、114-112、114-112)の判定でナバレッテが勝利。見事2階級制覇を達成するとともに、戦績を32勝1敗27KOとした一戦である。
 
 
前戦から階級をアップしたナバレッテがフェザー級2戦目で迎えた王座決定戦。
相手のルーベン・ビラは18戦全勝5KOの強豪で、アマチュア時代に前WBOフェザー級王者シャクール・スティーブンソンとも対戦経験のある元トップアマである。
 
 
試合は初回からナバレッテが腕を振り回して攻め、そこにビラがカウンターを合わせる展開。
 
躊躇のないスイングでナバレッテがビラを追い詰め、1R中盤に早くも1度目のダウンを奪う。
波に乗るナバレッテは4Rにも左フックで再びダウンを奪うなど、前半はナバレッテ優位で試合が進む。
 
ところが中盤からナバレッテが失速。踏み込みが弱まったのを受けて、ビラがサイドへの動きと右リードを駆使してヒットを重ねる。
 
後半に入っても流れをつかみきれないナバレッテに対し、的確なパンチと見切りでポイントを奪取するビラ。決定機を作れず3-0の判定で敗れたものの、後半からはビラの能力の高さが発揮された一戦となった。
 
ライアン・ガルシアvsルーク・キャンベル予想。前半でガルシア、後半でキャンベルでええんちゃう? ブリブリのガルシアの苦戦が観たいぞ
 

言うほどナバレッテの勝ちか? よく観たらめちゃくちゃ僅差じゃん。まあ「THE ANSWER」の記事だからアレだけど

2020年6月にフェザー級でのテストマッチを終えたエマヌエル・ナバレッテが迎えた王座決定戦。
 
正直、前回のウリエル・ロペス戦はナバレッテの出来が悪過ぎて語るに値しなかったのだが、まあブランク明けだししゃーないかということで。


そして、今回の相手であるルーベン・ビラは無敗のプロスペクトで元トップアマ。
現在、周辺階級でもっともやっかいなのでは? と言われているシャクール・スティーブンソンにもアマ時代に勝利した経験を持つとのことで、それなりに期待していたわけだが。
 
 
感想としては、「これって言うほどナバレッテの勝ちか?」
 
今回は試合を観る前に下記の記事が目に入り、先に結果を知ってしまった経緯がある。


見出しや写真からは「階級アップによってパワーアップを果たしたナバレッテの圧勝」という印象を受ける。
 
実際の記事を読んでも「中盤から勢いを失って仕留め損なったが、全体を通して見れば無難に勝利した」イメージ。決して苦戦を強いられた的な内容ではない気がする。
 
なので、「ああ、ナバレッテがパワー差を発揮して勝ったのね」という感じで試合を観始めたところ……。
 
いや、すげえ接戦じゃん。
普通にナバレッテ、危なかったんちゃうの?
てか、前半の2度のダウンがなければポイントも1-0だし。
 
思った以上に僅差だったことに驚いた次第である。
 
 
まあ、元記事が「THE ANSWER」なのであまり真に受けても仕方ないという噂もあるのですがww
 

ナバレッテはフェザー級でも通用する。長身、長リーチという自分の特徴をよく理解したスタイル

今回の一戦で思ったのが、ナバレッテはフェザー級でも通用するということ。と同時に階級アップによる影響も感じられた試合だった。
 
圧倒的な上背とパワー、長いリーチを活かした打ち下ろしで勝利を重ねてきたナバレッテだが、今回は体格的な優位性が目減りした部分もあったのではないか。
 
リング上で対峙した両者にそこまでの体格差はなく、肩周りのゴツさや身体の厚さだけならむしろルーベン・ビラの方が上。恐らくこれまでのようなペース配分は二の次のゴリ押しスタイルのままだと、どこかでつまづくこともある気がする。
 
みんな大好きルイス・ネリがアラメダに勝利して二階級制覇。でもパワフルさと回転力が目減りしたかな。次戦はローマン? フィゲロア?
 
ただ、それでもこの選手のリーチは驚異でしかない。
大きく足を踏み出し、身体を目いっぱい伸ばして放つストレートやフックは見た目以上に長く、なおかつ若干しなり気味にワンテンポ遅れて飛んでくるので非常に軌道が読みにくい。
 
1R目に奪ったダウンはストレートと同じタイミングで放ったいきなりのアッパー、4R目のダウンは完全に死角から飛んできた左フック。相手にとっては想定以上に長く変なタイミングですっ飛んでくるパンチなのだろうと。
 
 
全体的にバランスが悪く打ち終わりにも身体が大きく流れる。
特別スピードがあるわけでもなく、一見すると「そこまでの選手か?」と思わないでもない。
 
だがS・バンタム級で無双していたアイザック・ドグボエを2度にわたって退け、計5度の防衛戦をすべてKOでクリアした実力は並ではない。
以前、この選手のことを“強化版天笠尚”などと申し上げた覚えがあるが、長身で腕が長いという自分の特性を本当によく理解している選手なのだろうと。
 

ナバレッテは基本、前半型なんだろうね。体格的な優位性が失われる相手にどうなるかは注目かな

その反面、ナバレッテという選手は基本的に前半型で、申し上げたようにこの階級では決して盤石ではない印象。
 
打ち終わりに大きくバランスを崩すほど1発1発を全力でぶん回す躊躇のなさに加え、空振りも気にせずどんどん前に出るスタイル。
妙なタイミングで伸びてくるパンチは確かに驚異だが、その分体力消費も激しい。
 
現にこの試合でも5Rあたりから足が前に出なくなっていたし、後半などはパンチがほぼ単発で連打が続かず。それに伴い、ルーベン・ビラのリードを被弾するシーンも目立つなど、やりようによっては攻略の糸口は十分ありそうに思える。
 
アイザック・ドグボエのように自分から前に出るタイプと真正面から打ち合う分にはめっぽう強いが、今回のルービン・ベラや2020年2月のジェオ・サンティシマのように離れた位置で対峙する相手を攻めあぐねるタイプなのだろうと。
 
この先、体格的な優位が完全に失われるようなフィジカル強者、もしくはサイドへの動きとパンチの威力を両立できる相手と対峙した場合、ナバレッテがどんな試合を見せるかには割と注目かもしれない。
 
久しぶりのエロール・スペンスJr.がダニー・ガルシア相手の防衛戦。ダニガルさんも結構がんばると思うけど、スペンスのコンディション次第ですかね
 

ルーベン・ビラの「持たざる者」感。すべてが高次元で能力も高いが、尖ったものがない

一方敗れたルーベン・ビラだが、こちらは典型的な「持たざる者」だったなと。
 
恐らくこの選手は元トップアマなだけあり基本的な能力はめちゃくちゃ高いのだと思う。
右リードの多彩さや見切り、当て勘もよく、サイドへ動きながら相手の芯を外すポジションどりもうまい。
サウスポーのテクニシャンという意味では相当ハイレベルな選手と言えるのではないか。
 
ただ、すべてが“そこそこ”でいまいち尖ったものがない。
特に18戦して5KOと決してパンチがある方ではなく、各局面でナバレッテに脅威を感じさせられなかったのが痛かった。
 
4Rのダウンなどは「このままでは押し切られる」と感じて自ら前に出たところに同時打ちでカウンターを被弾したのだと思うが、ナバレッテがあれだけ躊躇なく腕を振れるというのはこの選手のパンチがそれなりという証左なの? かも?
 
もしかしたら、アマチュアではナバレッテのような長身かつ意味不明なタイミングと長さを兼ね備えたタイプに遭遇することは少ないのかもしれない。
それこそプロの洗礼というか、高次元にまとまった元トップアマがプロのリングでわけのわからん叩き上げにねじ伏せられたというか。
 
 
もう少しボディを打てればよかったとも思うが、ナバレッテのフルスイングを前にするとなかなか顔から腕を離せなくなるのかな? という気もする。
過去の試合を観る限り、まあまあのヘッドハンターでもあるようだが。
 
バランスのいいジャロン・エニスと器用なホセ・ペドラサ、五輪連覇のロベイシ・ラミレス。平岡アンディはこんなヤツらを相手にせないかんのか…
 
今後はビルドアップしてフィジカル面の強化を図るのか、とことん動き回る方向にシフトするのか。どちらにしろ、何か一つ突き抜けたものがあれば覚醒するのではないか? という印象の選手だった。
 

五十嵐俊幸とイメージが被る。ルーベン・ビラ同様、テクニシャンタイプのサウスポーだけど、木村翔の一点突破に屈した

何となくだが、ルーベン・ビラを観ていると元WBC世界フライ級王者五十嵐俊幸とイメージが重なる。
 
五十嵐俊幸も元トップアマでプロ戦績が23勝3敗3分12KOという技巧派のサウスポー。
2017年12月の木村翔戦が最後の試合となったわけだが、あの試合も序盤はサイドへのフットワークとカウンターを駆使して優位に進めたものの、中盤から木村のフルスイングに捕まり9RTKOに敗れている。
 
アマチュアの3Rであれば間違いなく五十嵐の勝利だったが、躊躇のないフルスイングと相手を追いかけ回す根気、12Rを全力で動けるスタミナを兼ね備えた木村翔の叩き上げっぷりに飲み込まれてしまった。
 
足を使ってヒットを重ねる技巧派だが、12Rにわたって逃げ切れるほどではない。
当て勘もよく右リードも多彩だが、1発で相手をビビらせるほどの脅威はない。
 
すべてがハイレベルでまとまった選手ではあるが、どこか突き抜けたものがない。木村翔のような一点突破のタイプを12R抑え込むことは難しく、最後の最後でねじ伏せられてしまう。
 
今回のルーベン・ビラ同様、1発の威力や当たり負けしないフィジカルがあれば……という選手だったなぁと。
 
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