井上尚弥のファンになろうと思って試してみた話。WBSSの3試合をもう一度観てみた結果…
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最初に申し上げておくと、僕は井上尚弥という選手が好きではない。
いや、好きではないというより正確にはファンではない。
他の日本人選手と同様、試合をすれば観るし、人間離れしたパフォーマンスには毎回度肝を抜かれている。
2019年11月のWBSSバンタム級決勝戦、ノニト・ドネアとの激闘は文句なしに感動させていただいたし、全米ボクシング記者協会による年間最高試合に選ばれたのも「そりゃそうだろ」という思いしかない。
ただ、この選手のファンかと聞かれればまったくそんなことはなく。
2019年末のテレビ番組にも山ほど出ていたらしいが、誇張でも何でもなく1秒も観ていない。
もともとスポーツ選手の人間性とやらに興味がない人間なので、いくら「品格がある」「謙虚」といった賞賛を聞いてもまったくピンとこない。それどころか井上アゲが多すぎるせいでウンザリしているくらい。
すごいことは重々わかっているのだが、あまりの「井上すごい」連呼によって逆に気持ちが離れていくという。我ながら捻くれていると思うのだが。
で、それじゃアカンということで今回、井上尚弥のWBSSでの3試合を観直してみた次第である。
名付けて「井上尚弥のファンになるためにWBSSの3試合を観てみよう」企画。
思いっきりそのままなのだが、ファン・カルロス・パヤノ戦、エマヌエル・ロドリゲス戦、ノニト・ドネア戦を改めて観た感想を申し上げていこうと思う。
全盛期のドネアやっばww ノニト・ドネアvsフェルナンド・モンティエル感想。これは井上尚弥にも勝てるかも?
○井上尚弥vsファン・カルロス・パヤノ×
2018年10月7日、神奈川県・横浜アリーナで行われた一戦。井上尚弥がランキング4位のファン・カルロス・パヤノと対戦し、1R1分10秒でKOで勝利した試合である。
この試合に関しては最初から「井上圧勝しろ」「完膚なきまでに叩きのめせ」などと喚き散らし、実際その通りの結果が出たわけだが……。
まあ、すごかった。
過去の試合を観る限りパヤノは全盛期からはやや下降気味で、特に下半身の衰えが目立っていた。
近場での粘りや持ち前の低い姿勢をキープできなくなりつつあり、正直これは井上の相手ではない、十中八九井上の勝ちは動かないと思っていた。
そんな感じで観始めたのだが、結果は予想をはるかに上回るもの。
前手のフェイントの掛け合いから、一瞬で内側に切り込み左をヒット。
そこから限界まで反動をつけ、逆回転に腰をひねって右をズドン。
あの1発をモロに被弾したパヤノが立てるはずもなく。
静から動への緩急に一瞬遅れて湧き上がる会場。わずか1分ちょいの短い攻防だったが、目を疑うような光景に興奮が止まらない。
うん、やっぱりとんでもねえわ井上尚弥。
あの試合までは「井上は試されていない」「弱い相手ばかり」と散々言われていたが、この勝利で一気に評価を逆転させた感じ。
すでに1年以上前の試合だが、改めて観ても興奮するほどの衝撃的なKO。
ボクシング漫画「リクドウ」がこの試合を作品のクライマックスに持ってきたのも十分理解できる。
「「リクドウ」が井上尚弥vsパヤノ戦にそっくりだったと聞いて。マジか。はじめの一歩だけじゃなく、ここにもアカンことが…」
○井上尚弥vsエマヌエル・ロドリゲス×
2019年5月18日(日本時間19日)、英・グラスゴーで行われた一戦。WBA王者井上尚弥がIBF王者エマヌエル・ロドリゲスと対戦し、2R1分19秒TKOで勝利した試合である。
トーナメント最強の相手と言われていたエマヌエル・ロドリゲスと井上の一騎打ち。
当初から井上自身がもっとも戦いたい相手として名前を挙げており、ファンの間でもロドリゲス有利の声が少なからず聞こえていた。
実際の試合も立ち上がりから緊迫感溢れる駆け引きが展開され、井上が左で刺し負けるシーンすらも。見ようによっては1R目はロドリゲスだったのでは? というくらい拮抗した立ち上がりだった。
さらに印象的だったのが、井上がめちゃくちゃ楽しそうだったこと。
常々「勝つか負けるかわからない相手とギリギリの試合がしたい」と言い続け、世界タイトルマッチ後のインタビューで「全然物足りないです」とコメントするなど、強敵との対戦を求めていた井上。
恐らく中間距離であそこまで肉薄する相手はロドリゲスが初めてだったはずで、高次元の駆け引きを目いっぱい楽しんでいたように思える。
だが、2Rから足を踏ん張り1発に力を込めて打つスタイルに変えて以降はロドリゲスを圧倒。3度マットに這わせるなど、格の違いを見せつけてのTKO勝利。
「緊張感あふれるハイレベルな攻防→リング中央でのカウンター合戦→悶絶ボディで終了」
わずか259秒の短い試合だったが、観客を喜ばせる要素が山ほど詰まった一戦だったのではないか。
なお後日、ボクシング漫画「はじめの一歩」がこの試合を何のアレンジも加えずそのまんまトレースしやがったおかげで、僕が「はじめの一歩」を完全に見限るというもう一つの結末があったわけですが。
「「はじめの一歩」が酷すぎる。マンガ史に残る汚点。まさか井上尚弥の試合を丸パクリするとは…」
○井上尚弥vsノニト・ドネア×
2019年11月7日、さいたまスーパーアリーナで行われた一戦。WBA・IBF王者井上尚弥がWBAスーパー王者ノニト・ドネアと対戦し、3-0(116-111、114-113、117-109)の判定で勝利した試合である。
この試合はもう、説明不要というか、久しぶりに格闘技観戦で心から感動させてもらった。
(僕を含めた)大方の予想を裏切り、ドネアが大健闘。時おり全盛期を彷彿とさせる輝きを見せて井上に肉薄し、一進一退の大激闘を演じてみせる。
2R終盤に伝家の宝刀の左フックで井上の距離感を狂わせ、9Rには強烈な右ストレートでグラつかせる場面も。
キャリアで初めて明確に効いた姿を見せた井上のクリンチを振りほどき、連打を浴びせるドネアに会場は凄まじい興奮に包まれ“まさか”の結末すらも想像させた。
また11Rにボディを抉られた際はスルスルとレフェリーの後ろに隠れ、わざと時間を稼ぐ老獪さも。僕にはローブローのアピールも織り交ぜていたように見えたが、実際どうだったのかはわからない。
中間距離での左の差し合いで打ち負けず、パンチをもらっても怯まず前に出て打ち返す。
正面衝突で井上に当たり負けしなかったことが最大の要因だと思うが、とにかくすごい試合だった(語彙力)。
「信じる心が拳に宿る。ドネアが井上尚弥に敗れるも、12Rの大激闘。敗者なきリングに感動しました」
なお、リアルタイムで観ていた際は井上があえて足を使わず真正面から打ち合ったと思っていたが、改めて観るとちょっと違うような気もする。
むしろ2Rのフックで右目がぶっ壊れて距離感を失ったおかげで、中間距離での打ち合い以外にやれることがなかったのではないか。
あのラウンドは「井上がドネアを舐めたせいで左フックをもらった」的な話も聞こえてきたが、僕にはそうは思えない。どちらかと言えば井上のパンチに臆さず踏み込んだドネアがすごかったというのが正解に思える。
まあ、何はともあれ両者ともにナイスファイト。
この試合は「ドネアから井上へバトンを渡すための世代交代マッチ」などと言われていたが、そんな必要はまったくない。今後もドネアはボクシング軽量級の主人公でいればいいし、機会があればまた日本で試合をしてもらいたい。
久しぶりに12R通して観たが、改めて感動的な一戦だった。
やっぱり井上尚弥はすごい。そして、それだけだった…
長々と井上尚弥の試合について語ってきたが、やはりこの選手はすごい。
1RのワンパンKOで終わらせたパヤノ戦。
ハイレベルな駆け引きから一転、カウンターと悶絶ボディで仕留めたロドリゲス戦。
明確に効かされながらもレジェンドとの真っ向勝負に打ち勝ったドネア戦。
すべての試合が見どころ満載で、なおかつ同じパターンが一つもない。
ここまでエキサイティングさと強さを両立すれば注目されるのも当たり前。まさに“モンスター”の通り名がぴったりの選手である。
「井上尚弥vsカシメロ予想。遠い位置からすっ飛んでくる右フックが井上に通用するかかな」
そして、それだけ。
うん、まあ……。
何つーか、アレだ。
改めて観直してみても、別に僕が井上ファンになるということはなかった。
何度も申し上げているように井上がすごいことはわかりきっているが、だからと言ってのめり込むようなこともなく。年間最高試合に選ばれたノニト・ドネア戦も、結果がわかっていてもやっぱりドネアを応援してしまうww
過剰な井上アゲにウンザリするのもこれまで通り。
スポーツ選手の人間性には相変わらず興味がなく、品格やら謙虚さといった話もどうでもいい。バラエティ番組の扱いにリスペクトが足りないと怒っていた方を見かけたりもしたが、まあええんちゃいますか? と。
そもそも番組自体を観てないので何とも言えないのですが。
つまり、井上尚弥のすごさにはめちゃくちゃ同意するが、別にファンではない。無理やりファンになろうとしても不可能。
ごく当たり前の結論にたどり着いたというお話でございます。
てか、井上って実は短いラウンドが得意なタイプですよね。
ここ最近、僕がおもしろいと思っている5Rボクシングなら史上最強になれるんちゃいます?
「KODトーナメントをBOXING RAISEで視聴したので感想を。洗練されてない雑多な手探り感が最高におもしろかった」
さすがにやるとは思えないけど。
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