平良達郎vsカンデラリオ、渡辺華奈vsキールホルツ、MVPvsストーリー。先週末MMA振り返り。何でもできる平良達郎と尖ったパラメータの渡辺華奈、攻略されたMVP【2022.5.13、14感想】
少々時間が経ってしまったのだが、先週末に行われたMMAの試合について。
日本人選手が出場した大会で個人的に注目していた。
で、ようやく一通り観終わったので今回はその感想を言っていきたいと思う。
具体的には、
・平良達郎vsカーロス・カンデラリオ(UFC vegas 54)
・渡辺華奈vsデニス・キールホルツ(Bellator 281)
・マイケル・“ヴェノム”・ペイジvsローガン・ストーリー(Bellator 281)
の3試合。
どの試合も見どころ満載なのはもちろん、先日のBellator 279で堀口恭司がパトリック・ミックスに敗れたことに「ああ……」となっていたので、落ちたテンションをもう一度上げてくれることも期待して。
堀口恭司vsパトリック・ミックス感想。ミックスの作戦勝ちだろうな。やっぱり堀口の距離が近くなってるし、適性がフライ級なんてのは今さら過ぎるわな
○平良達郎vsカーロス・カンデラリオ×(判定3-0 ※30-26、30-27、20-27)
まずは2022年5月14日(日本時間15日)に米・カリフォルニア州で行われた平良達郎vsカーロス・カンデラリオ戦。UFCデビュー戦を迎えた日本の平良達郎が同じくUFC初参戦のカーロス・カンデラリオに3-0の判定勝利を挙げた試合である。
平良達郎に関しては以前から「強い」と聞いており、一部からはRIZIN等で実績を重ねて満を持して~などの段階を踏むより直でUFCに行った方がいいといった声も挙がっていた。
僕もYouTubeで公開されている試合をいくつか漁ってみたのだが、なるほど確かに。
詳しいことはわからないがとにかくスケール感が違う(気がする)。
実際の試合についてだが、マジで素晴らしかった。
この選手は身長170cm、リーチ178cmとフライ級としては大柄で身長に比べてリーチが長い。
基本はグラップラーなのだと思うが、キックボクシング経験者なこともあってかスタンドの打撃でも十分渡り合える。
僕はMMAにおける理想的な体型は“長くて動ける人”だと思っていて、その頂点に位置するのがジョン・ジョーンズ。他にもイズラエル・アデサニアやカマル・ウスマンなどのバネと柔軟性を兼ね備えたオールラウンダーが席巻している印象である。
カマル・ウスマンvsコルビー・コヴィントン、ジャスティン・ゲイジーvsマイケル・チャンドラー。UFC268感想。コヴィントンの追い上げに感動。チャンドラーは前半型過ぎて…
なので、背が高くリーチも長い、いわゆる“打撃ができるグラップラー”タイプの平良達郎には期待が持てる。
それこそグラップラーながらもストライカーに打ち負けない打撃を持ち合わせるチャールズ・オリベイラみたいな。
対戦相手のカンデラリオも日本ではめったに出会えない強さだったと思うが、その相手を全局面で上回ったのは大きい。
よく言う“事故的な1発”だったり「打撃はダメダメだけど捕まえされすれば何とかなる」といった偏ったスペックではなく、高次元ですべてを兼ね備えているという意味で。
スタンドでゴリゴリこられた際にどうなるか? というのはあるが、それ以外はマジで文句がつけようがない。UFCデビュー戦としては満点の試合だった。
○渡辺華奈vsデニス・キールホルツ×(2R3分3秒三角締め)
続いては2022年5月13日(日本時間14日)に英・ロンドンで行われた渡辺華奈vsデニス・キールホルツ戦(Bellator 281)。ベラトール4戦目を迎えた日本の渡辺華奈がランキング2位のデニス・キールホルツに2R3分3秒で一本勝ちを収めた試合である。
前回のリズ・カムーシュ戦での秒殺TKO負けから約11か月ぶりの復帰戦となった渡辺華奈。
対戦相手のキールホルツはボクシングやキックボクシングの経験を持つオールラウンダーで、スタンドに弱点があると言われる渡辺華奈にとっては前戦に続いての強敵となる。
僕もこの相手は結構難しいと思っていて、リズ・カムーシュほどではないにしろ苦戦も十分あり得る気がしていた。
案の定、開始直後に右を被弾→空中で動きが止まり「あ、これは!!」と。
それ以降もグランドでサクッと腕を取られる→肘を伸ばされないように粘る流れが続く。
Bellator 255でのアレハンドラ・ララ戦でも思ったのだが、どうやら渡辺華奈は「寝かせれば何とかなる」と断言できるほどのグランドマスターではなさそう。柔道ベースのグラップラーには違いないが、ベラトールの舞台では飛び抜けた存在とまでは言えない気がする。
ただ、それでも今回に関してはどこかで脱出できるだろうという安心感もあり、比較的落ち着いて観ていられた。実際にラウンド後半にパワーボムで引っぺがしてみせた(腰イワしそうで毎回おっかない……)しね。
そして隙を見てヌルヌルとバックに回り、ケージ際でパウンドを落としたところで1R終了。
2Rに入ると早々にバックを取る→ブレーク後にタックル→グランドに引き込み三角締めであっという間に一本勝ちしてしまった。
打撃の危なっかしさは相変わらずだが、どうにかしてコカせば確実に自分の展開に持ち込める。オールラウンダータイプの平良達郎とは真逆の偏ったスペックだが、何だかんだで結果を出しているのは素晴らしい。
てか、以前にも申し上げたように女子はトップレベルにも通用しますよね。
男子は北米基準からはだいぶ水を開けられちゃったけど。
ピットブルに勝てるのは朝倉未来みたいな奴? サンチェスにギロチンで失神KO。渡辺華奈もデビュー戦勝利。女子はそこそこ通用するよな
これは恐らく
・女子MMAのレベルが発展途上
・選手層が薄い
ことに加え、日本がレスリング大国、柔道大国なのが大きいのだろうと。
男子に比べて未成熟な分、トップレベルのレスラー、柔道家の技術がそのまま(と言ったら言い過ぎか?)応用できるというか。
でもリズ・カムーシュは何度やっても厳しいかなぁ……。
渡辺華奈vsイリマレイ・マクファーレン。判定は…わからんな。グランドで優位に立ったと思ったけど。打撃を芯でもらいまくるのは相変わらずだった
×マイケル・“ヴェノム”・ペイジvsローガン・ストーリー○(判定1-2 ※48-47、47-48、46-49)
最後は渡辺華奈vsデニス・キールホルツ戦の同日メインで行われたBellator暫定世界ウェルター級王座決定戦について。MVPことマイケル・“ヴェノム”・ペイジとローガン・ストーリーが対戦し、2-1の判定でストーリーが勝利した一戦である。
僕自身、ローガン・ストーリーという選手をまったく知らず、このマッチメークを聞いた際は「まあMVPが勝つだろ」と勝手に思っていたところ。
MVPは現地観戦した2019年末のベラトールジャパンの中ではもっともインパクトがあった選手で、それ以降も継続して応援している。
高い身体能力を活かした遠間からの打撃とド派手なパフォーマンスは文句なしに凄まじい。
ただその反面、グランドの技術はいまいち。
自分からタックルにいくことはまずないし、寝かされた場合の対応は基本的に“耐えるだけ”。その状態から展開を作ることはほぼ不可能。
要するにスタンドで作った貯金をグランドの局面で切り崩すスタイルというか。
距離の遠さや激しい出入りからの1発、その他もろもろ。日本の堀口恭司と少し被る選手である。
マイケル・“ヴェノム”・ペイジ(MVP)の塩&塩な判定勝利。カウンター狙いのヒューストンを攻めあぐねてブーイングまみれに
そして、今回の試合もまさにそんな感じ。
遠い間合いで対峙し、常に先に手を出させるストーリー。
打撃をかいくぐって組み付き、強引にMVPをケージに押し付けて動きを封じる。
正直、ストーリーのアレはケージに押さえつけているだけでグランドを支配していたとまでは言えないが、MVPの長所を発揮させない作戦自体は成功していた。
で、2R目は無理に組みにいかずにスタンド中心で勝負。
致命打だけに注意しつつ適度に休んで体力を回復させる。
何となくだが、ストーリー陣営は堀口恭司戦でのパトリック・ミックス同様、奇数ラウンドをがんばる→偶数ラウンドを休んだ末の僅差逃げ切りを狙っていた気がする。
実際のポイントは微妙に違ったものの、ラウンドごとにメリハリをつけるやり方は堀口恭司vsパトリック・ミックス戦と同じ。もしかしたらこの手のタイプを攻略するには一番いい方法なのかもしれない。
決しておもしろい試合ではなかったが、「勝利」のみを優先する徹底っぷりはありっちゃああり。全神経を使って相手のよさを消す戦術はそれなりに見応えがあった。
MVPが負けちゃったのは残念だけど。