前田健太、抜群の適応力でノーノー未遂!! やべえ、本物だわ。これはすごいことになるぞ(調子を維持できれば……)
MLBロサンゼルス・ドジャースに所属する前田健太投手が2016年4月23日(日本時間24日)、敵地クアーズ・フィールドで行われたロッキーズ戦に先発。6回1/3を投げて3安打無失点で3勝目を挙げた。
これで日米通算100勝を達成した前田だが、メジャー移籍後の失点はいまだ17日のジャイアンツ戦で喫したホームランの1点のみ。防御率は圧巻の0.36となっており、リーグトップを独走中である。
マエケン恐るべし。打者天国クアーズ・フィールドでまさかのノーノー未遂
ドジャースのマエケンがすごい。
ここまでソロホームランによる1失点のみというのもすごいが、打者天国と言われる高地クアーズ・フィールド(標高1600m)で5回までノーヒットピッチングを披露したというのも驚きだ。
クアーズ・フィールドといえば、20年前に当時ドジャースに在籍していた野茂秀雄投手が達成した伝説のノーヒット・ノーランを覚えている方も多いと思う。
今回のマエケンのピッチングが当時を想起させたのか、現地の実況が幾度となく「ヒデオ・ノモ」の名前を口にするのが印象的だった。
20年ぶりの奇跡が起きるかと球場がざわつき始めた6回1死。9番ラメーヒューにセンター前ヒットを打たれて快挙とはいかなかったものの、マエケンは堂々の94球でマウンドを後にした。
圧巻のピッチングを披露したマエケンに対し、ロッキーズのウォルト・ワイス監督も「流れをまったく掴むことができなかった」と脱帽。この日のマエケンのピッチングは敵将にも白旗を上げさせるほど見事なものであった。
「田中マー君覚醒!! スライダーの高速化、スラッター化でレベルアップ」
高度にマニュアル化されたピッチング。再現性が高く、絶対に大崩れしない
マエケンすばらしい。
ガチですばらしい。
僕も試合の中継を観ていたが、感心することしきりである。
以前の記事でも申し上げたが、マエケンのピッチングはかなりパターン化されている。
「前田健太のピッチングスタイルが見えた? これならMLBでもなんとかやれるんじゃないか?」
右打者への攻めはストレートとスライダーを外角へ。内角へ食い込むツーシームを見せつつ、自分の有利なカウントに持ち込む。外側からのツーシームをバックドアで見せつつ、ラストはもう1球外角へのスライダー。もしファールされた場合は、同じコースからさらに曲がりの大きなスライダーを引っかけさせる。
左打者へは基本的に外角へ逃げるツーシームとストレートで攻める。膝もとへのスライダーやストレートを見せ球にしつつ、時おり外側からバックドアでのスライダーも織り交ぜる。そして最後は外側に落ちるツーシームで打ち取るというパターンである。
さらに、左右関係なく初球、2球目の浅いカウントで投げるカーブも効果的だ。相手の意表をついてスッとストライクを奪い、自分に有利なカウントを作るのが抜群に上手いのである。これは田中マー君にも共通することなのだが、速球のタイミングで待っている打者の裏をかいてストライクをとる技術が日本人投手は本当に突出していると思う。
チェンジアップの精度がもう少し上がればさらによくなると申し上げたと思うが、今回の試合ではそのチェンジアップがキレキレだった。球の軌道自体がそこまで突出しているとは思わないが、あのくらいの球を低めに投げることができれば左打者対策としては十分な効果を発揮する。
チェンジアップの精度が上がったことで、左打者への勝負球がツーシームとチェンジアップの2種類に増え、ピッチングの幅はさらに広がる。加えて、落ちる軌道を意識させることで高めへのストレートで高低の揺さぶりも使えるようになるのである。
そして、何よりすべての球の再現性が高い。
左右問わず、ミスなく外へ落ちる球を投げ続けることができるので連打をされにくい。打たれたとしても基本はシングル。長打になりにくく、立て続けに外野手の頭を越される確率を極力低くできるのである。
「2軍調整の松坂大輔、1軍登板までの険しい道のり。手術後の回復具合は何合目」
野球というのは、基本的にランナーなしから得点するには2本の長打が必要になる。
だが、マエケンのピッチングはこの連続長打を許す確率を限りなく低くするのに最適なスタイルだといえると思う。
どんな状況においても傷口を最小限にとどめ、絶対に大けがをしない。マニュアル通りに投げていれば自然とQSを記録できる。目先を変えつつ、とにかく外に沈ませておけばいい。はっきり言ってしまえば、ピッチングという「作業」である。
「2016年広島カープ優勝確実か? オールスター直前で2位に9ゲーム差をつけての首位」
これまでの境遇、ドジャースというチーム。環境が前田に味方する?
いや、さすがマエケンだ。
投球のテンポもいいし、観れば観るほど感心させられる。
初登板を観て「これは当初の予想よりもずっとやるんじゃないか?」と思ったが、ここまではそのとおりの結果が出ている。
今の球威、今のボールのキレを維持できればシーズントータルでもかなりいい数字が期待できるだろう。
今の状態を維持できれば。
何度も申し上げているように、マエケンが成功するかは結局どれだけいい状態をキープできるかにかかっている。
瞬間最大風速はメジャーの舞台においてもトップクラスだということはわかった。後はこの状態をいかに長く保てるかである。
2014年の田中マー君は初黒星が9試合目、2012年のダルビッシュは6試合目である。ここまでは順調なマエケンだが、そろそろ歪みが出てきても不思議ではない時期である。メジャーの登板間隔にうまく適応できずに後半成績を落とすパターンに陥らなければいいのだが。
ただ、好材料もある。
長年広島カープで援護なしのピッチングを続け、勝負どころでは中4日、中5日での登板もいとわず。何より低迷するチームのエースとして年間約200イニング、防御率2点台前半を7年間も続けた選手である。
そしてドジャースには野茂や黒田、石井など多数の日本人選手が在籍した過去もある。
穏やかな気候のロサンゼルスで投手有利の球場を本拠地にできるのも大きい。灼熱地獄と化す真夏のマツダスタジアムに比べればこれは雲泥の差だろう。しかも、ここまでは1試合100球を超えないよう徹底した球数管理もされている。
さらに、メジャーで7年間ローテーションを守った黒田博樹と1年間一緒にプレーできたこともプラスに働くはずである。
さまざまな要因を重ね合わせると、これまでメジャーに移籍した日本人投手の中でも抜群の好条件ではないだろうか(契約内容は別だけどww)。
いずれ調子を落とすときはくるはずだが、その時期をかなり遅らせることができるような気がする。
シーズン前の予想では「12勝9敗 3.40 175回2/3」としたが、もう少し上方修正してもいいのかと思い始めている。
「マエケンのメジャー成績予想。前田健太(ドジャース)はMLB1年目でどこまでできるのか?」
たとえばだが、
14勝8敗 3.40 187回1/3
このくらいではどうだろうか。
根拠は勘です。
ちなみに次回登板は4月28日(日本時間29日)のマイアミ・マーリンズ戦。メジャーを代表する投手であるホセ・フェルナンデスとのマッチアップだ。イチローとの対戦を含め、これまた楽しみな一戦である。
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