最強巨神兵コバレフの攻略法判明? チレンベ(チレンバ)の大健闘で大差判定ながら不安を残す。これでウォードに勝てるのか?【結果】
2016年7月11日(日本時間12日)にロシア・エカテリンブルクで行われたL・ヘビー級タイトルマッチ。
IBF、WBO世界L・ヘビー級、WBA世界同級スーパー王者であるセルゲイ・コバレフがWBA12位、WBO11位につけるイサック・チレンベ(チレンバ)と対戦し、3-0(117-110、116-111、118-109)の判定で王座防衛に成功した。
2016年11月に米・ラスベガスで行われる予定のアンドレ・ウォード戦に向けての前哨戦として位置づけられたこの試合。7Rにダウンを奪うなど豪快なKO勝ちが期待されたコバレフだが、深追いせずに最後は無難にポイントアウトを選択する。
「最強のクソ試合製造機アンドレ・ウォードさんが本日も安定の完封。ブランドを寄せつけず」
結果的には大差判定での勝利を飾ったコバレフではあるが、距離をとってカウンターを狙うチレンベを攻めあぐねるシーンが目立ち、アンドレ・ウォードとの大一番に不安を残す内容となった。
おもしろい試合だった。チレンベのがんばりが予想以上にいい試合を生んだ
コバレフ大差判定勝利!!
今回の試合、評価としてはどんな感じなのだろうか。個人的には非常に楽しめた試合だったのだが。
「左だけ? 違うわ! スティーブンソンがウィリアムスを4RKOで下す!! L・ヘビー級たまらんな」
チレンベが予想以上にがんばったことと、思った以上にコバレフがチレンベを攻めあぐねたこと。これらがうまく絡みあって、想像していたよりもはるかにおもしろい試合になったと思う。
僕は以前の予想記事で「試合中盤でのコバレフのKO勝ち」と申し上げているのだが、見事に外れてしまった。
コバレフの調子があまりよくなかったのもあると思うが、正直チレンベがここまで健闘するとは思っていなかった。
「俺的PFPのNo.1コバレフ登場!! イサック・チレンベに勝ってウォード戦へ進めるか?」
チレンベには何とか一矢報いてもらいたい。11月のウォード戦に向けてどうにか可能性を見せてくれればと思っていたが、実際にはかなり難しいだろうと考えていた。
恐らくチレンベはコバレフの圧力に耐えられない。次第に手が出せなくなって無慈悲にKO負けを喫するだろう。そんな感じでコバレフが圧倒すると予想していた次第である。
「コバレフがシャブランスキーを倒しまくり再起戦に勝利。かっこええわ~コバレフ。やっぱり破壊神が王座にいないとね」
だが、結果的には、
「コバレフ攻略の糸口を示した上で負ける」
という理想的なかませ犬役を完遂してくれた。
いや、この選手はかませ犬と呼んでいいような選手ではない。コバレフの地元凱旋に値する文句なしの実力者だった。
完全に侮っていました。申し訳ないww
というか、イサック・チレンベ(29)なのか!!
風貌からイサック・チレンベ(35)くらいかと勝手に思っていた。実はコバレフよりだいぶ年下だったんだな。いや、こりゃまたすまんチレンベww
「コバレフvsウォード感想。コバレフ敗れる!! ウォードが3-0の判定で王座奪還!! 神の子がクラッシャーに鼻差で勝利」
コバレフ攻略法は「自分から手を出さない」。負けないけど勝てない方法
今回の試合でチレンベが実行したコバレフの攻略法は、
・自分からは手を出さない
・絶対打ち合わない
・大きく距離をとってコバレフに踏み込ませる
といったところだろうか。
「スティーブンソンがフォンファラを2RKO!! 顔面かち上げたろか? と言わんばかりの自慢の左が炸裂」
大きく距離をとり、コバレフの射程のさらに外側にポジショニングする。自分からは手を出さず、必ずコバレフに先に攻めさせる。
ジャブが少なく、いきなり長いパンチを打つことが多いコバレフの踏み込みに合わせて小さくバックステップ、同時にコンパクトな左で顔面を弾くように軽くヒットする。
モーションとモーションの間にわずかにタイムラグがあるコバレフの打ち終わりにパンチをヒットし、素早くガードを戻す。コバレフの動き出しを狙って小さく踏み込み、軽い左をヒットする。
「ワイルダーがアレオーラを下してV4!! 圧勝? 意外と危なかったぞこの試合」
とにかくガードの低いコバレフのモーションの間を狙うこと。そして常にコバレフの射程の外で対峙し、絶対に打ち合わないこと。
自分から動いて攻めにいったせいでパワーにはね返されたパスカルとは一味違う冷静さ。そしてコバレフの豪打に自ら飛び込む勇気。
チレンベのような防御勘のいい選手がこれを徹底すれば、少なくとも無残に倒されることはない。そして、思った以上にイサック・チレンベという選手が勇敢でタフだったということでもある。
「コバレフ圧勝!! パスカルはなすすべなく敗れてキャリア4敗目」
ただ、今回の作戦は倒される危険が少ない反面、明確にポイントがとれないという欠点もある。
射程の外で対峙するといっても、36分間その距離を保っておくことなど不可能。ボクシングがコンタクトスポーツである限り、必ず両者が交錯する瞬間はおとずれる。
今回もあれだけ距離を意識していながら、チレンベはコバレフのパンチをたびたび被弾していたし、どちらにポイントが流れていたのかも判定結果を見れば明白である。
「ホプキンス引退!! ジョー・スミスにリングアウト負けで伝説に終止符。出がらし状態の51歳がラストマッチで豪快に散る」
意を決して前に出たチレンベの勇敢さにちょっと感動してしまいました
そして、チレンベが自らアクションを起こしたのが5R。
恐らくこのままでは勝てないことを感じていたのだと思う。コバレフの圧力にも慣れてきたし、ここが勝負どころだと考えたのではないか。
スタンスをやや狭めて距離を詰め、コバレフの豪打に回転力で対抗しようと前に出る。
結果的には距離を詰めたことでKO寸前まで追い詰められてしまったが、僕自身はあのラウンドのチレンベには少し感動してしまった。
相手の地元で圧倒的不利なアンダードッグという立場。しかも最強王者セルゲイ・コバレフ。
本来であれば「倒されないこと」だけに集中したくなるところだが、その局面でもあくまで勝ちにいく勇敢さ。今回のチレンベの姿勢は間違いなく称賛に値すると思うし、実際すばらしかったと思う。
「グヴォジクすっげえわコイツ。クレイグ・ベイカーを6RTKO。何? この内山と井岡とリー・セルビーのいいとこ取りしたようなヤツ」
終盤10~12Rは両者ともヘロヘロでだいぶグダったものの、ここでもポイントをとったのは恐らくコバレフである。多少ホームタウンデシジョンがあったとは思うが、判定結果に文句をつける部分は見当たらない。
ダメージが蓄積してフラフラのチレンベと腕を振り回し過ぎて疲れきったコバレフ。まさしく激闘。両者ナイスファイトである。観客が満足できた試合だったかどうかは別にして。
「タドニッパ(タドーニッパー)は強いのか? 村田諒太の11戦目を予想する」
そして、もちろんチレンベの作戦にうまく対応してポイントを奪取したコバレフの冷静さもさすがだった。
いろいろな意味で本当に興味深い試合だったと思う。
「正気か? ケル・ブルックがゴロフキンに挑戦? しかもミドル級正規のウェイトで?」
アンドレ・ウォードならコバレフを攻略できるかも? ってか、できるでしょ?
・自分からは攻めずに必ずコバレフに手を出させる
・モーションの大きいコバレフの動き出し、打ち終わりの間を狙う
・コバレフの射程圏の外で対峙し、絶対に打ち合わない
これが今回の試合でイサック・チレンベが示したコバレフの攻略法である。
チレンベのような防御勘のいい選手がカウンターボクシングに徹すれば、これまでの挑戦者のように無慈悲に倒されることはない。それを見事に証明してみせた試合である。
ただ、残念ながらチレンベではコバレフに勝つことはできなかった。健闘はしたと思うが、結果的にはコバレフのワンサイドゲーム。コンディション的に絶好調とはいえないコバレフにチレンベはまったく歯が立たなかった。それも動かしようのない事実である。
これはもう作戦どうこうではなく、単純なスペックの違い。両者の個体能力の違いではないだろうか。
コバレフの方がチレンベよりも戦闘力が高かった。持って生まれたフィジカルが上回っていた。マジでそういう結論だった気がする。
「ビボルvsチレンバ感想。おいおい、チレンバ次は勝てるんじゃないか? いい試合だったな。ビボル勝利は文句ないけど」
だが、アンドレ・ウォードなら話は別。
あの選手の読みやスピード、防御勘があればコバレフをさばききることは可能ではないだろうか。
これまではどちらが勝つかまったくわからなかったが、今回のチレンベ戦を受けてウォード有利と感じた方は多いと思う。
「コバレフvsウォード予想!! PFP最強を賭けた2016年最大のメガマッチ!!」
もともとウォード自身にもある程度勝算があった上でのコバレフ戦なのだろう。前哨戦にコバレフとは似ても似つかないアレクサンデル・ブランドをチョイスしたのもわかる気がする。
バーナード・ホプキンスとアンドレ・ウォードの中間のようなタイプであるチレンベを選び、仮想ウォードとして万全の準備で大一番に臨むコバレフとは大違いである。
「え、コイツと? アンドレ・ウォードがアレクサンデル・ブランドと激突」
そして、今回のコバレフvsチレンベ戦を見てウォードはさらに自信を深めたはずである。
「ああ、これなら何とかなる。問題なく完封できるぞ」と。
「サンタクルス初黒星!! ジャッカル・フランプトンに判定で敗れる!!」
コバレフがウォード戦に向けてどんな対策をしてくるのかが楽しみで仕方がない
逆に言うと、今回の苦戦(と言っていいのかはわからないが)をコバレフがウォード戦にどう活かすかにも注目している。
以前にも申し上げた通り、コバレフのスタイルは2014年のバーナード・ホプキンス戦である程度攻略されている。だが、自分から打ち込んで返り討ちにあったホプキンスと違い、ここまではっきりと攻略法を示したのは今回のチレンベが初めてではないかと思う。
「ホプキンス引退!! ジョー・スミスにリングアウト負けで伝説に終止符。出がらし状態の51歳がラストマッチで豪快に散る」
ただ、コバレフ自身がこの試合を仮想ウォード戦と位置づけていた(と思う)手前、自分の欠点が晒されることも想定していたはず。
当然ウォードがそこを狙ってくることは予想されるわけで、最強王者コバレフが露呈した欠点をどのように修正してくるか。これがまた楽しみでしょうがない。
これまでのスタイルを捨ててジャブを多めに打ちこむのか。でもそれをやると、腕力で圧倒する力強さが失われる可能性がある……。
もしくはジワジワと圧力をかけるのではなく一気に距離を詰める作戦を選択するのか。それともまさかのカウンター狙い?
というより、そもそも論として33歳の無敗の統一王者がスタイル変更に踏み切るようなことがあるのか。
とにかく、考えれば考えるほど興味が尽きない。
「L・ヘビー級アツ過ぎもっと盛り上がって(^○^) バレラがスミスに大差判定勝利。神々の階級」
とりあえず、次は8月のアンドレ・ウォードvsアレクサンデル・ブランドである。L・ヘビー級へのチューンアップや仮想コバレフという調整を捨ててブランドを選んだことがどう影響するか。こちらはこちらで楽しみが尽きない。
「アンドレ・ウォード降臨!! サリバン・バレラを大差判定で下してL・ヘビー級のテストマッチを楽々クリア」
個人的にはフィジカルで勝る相手をウォードが超絶テクニックで上回るという構図が観てみたいのだが。
そして、この試合の勝者にはアルツール・ベテルビエフとの統一戦に進んでもらいたいのだが。
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