無策の亀田和毅、マクドネルとの再戦に完敗。ダウンも奪われ王座奪取ならず【WBA世界バンタム級タイトルマッチ結果】

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夕日イメージ
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マクドネル対策なしの亀田和毅、ダウンも奪われ大差判定負け。

2015年9月6日(日本時間7日)にアメリカ・テキサス州コーパスクリスティで行われたWBA世界バンダム級タイトルマッチ。挑戦者の亀田和毅がチャンピオンのジェイミー・マクドネルに12ラウンド3-0(116-111、115-112、117-110)の大差で判定負けを喫し、王座奪取に失敗した。

「モデルボクサー高野人母美KO負け!! 今後のボクシング界のために高野人母美の後継者を大至急探すんだ!!」

前回、WBOの王座を返上してマクドネルに挑んだ和毅だったが、1-2の僅差判定で敗れて王座奪取に失敗。今回は異例の連戦で実現したダイレクトリマッチだった。
 
「聖地後楽園ホールに亀田和毅登場!! 強豪マイク・タワッチャイを相手に日本復帰戦。タワッチャイをパワーで圧倒しろ亀田」
 

タイトル奪取に燃える亀田和毅、まさかの無策でマクドネルに挑戦

率直な感想を申し上げると、「リマッチに無策で挑んでどうする亀田和毅」といったところであろうか。
 
「何かつまんねえな井上vsマクドネル。計量の話題ばっかりじゃんか。せっかくのお祭りなのにマクドネル全力応援かな」
 
先日の記事でも申し上げたが、前回の試合でマクドネルは亀田のスピードと距離感を完璧に掴んでいた。なので、2戦目もスピード勝負を仕掛けるようなことがあれば相当厳しいだろうと予想していた。

「亀田和毅vsマクドネルの再戦迫る!! 勝敗予想は?」

しかし、そこは策略家の亀田家のことである。きっと万全の対策を練った上でリングに上がるだろうと思っていた。それがまさかの無策とは。
いや、むしろ前回よりも距離をとっての防御に傾向した戦い方だった。
 
「井上尚弥がマクドネル兄と交渉中だってさ。いいんじゃないの? これに圧勝しちゃうと英国でも道が閉ざされるけどね」
 
「和毅、もっと動けもっと動け!!」
「近い!! 和毅距離近い!!」

セコンドの亀田父の叫びが、今回の作戦を何よりも雄弁に語っていた。

何やってんだ?!

僕は今まで、亀田家のすごさは卓越した分析力にあると思っていた。冷静に自分を客観視して相手との力量を比較し、どの分野で勝負すれば勝利する確率が最も高いか。それを判断する能力にかけては群を抜いていると評価していた。

だが、それはどうやら買いかぶりだったようである。

「亀田兄弟の今後が見えた? これが亀田の進む道。日本ボクシング界の常識をひっくり返せ」

1戦目の内容を受けて導き出した答えが今回の作戦だったとしたら、完全に目が曇っているとしか思えない。
5R以降、あれだけマクドネルのジャブをいいようにもらっておいて。なおかつリーチ差をうまく使われて出鼻を挫かれて。それでも距離をとって戦う作戦を選んだのだとしたら、もはや愚の骨頂としか言いようがない。
恐らく今のままでは何度再戦してもマクドネルには勝てないだろう。

「村田諒太ラスベガスデビュー戦を予想!! ガナー・ジャクソンに勝利して来年末の世界戦につなげることができるか?」

まさかと思うが、この4ヶ月の伸びしろに期待したとでも言うのか。いやいや、さすがにそんなはずはないだろう。あれだけ慎重なマッチメイクをする陣営が今回だけロマンチストに変貌するわけがない。

「山中vsモレノ戦予想!! 山中慎介は最強の挑戦者アンセルモ・モレノを退けられるか?」

もしかしたら亀田和毅本人の考えだったのかもしれない。前回以上の練習をすれば必ずマクドネルから逃げ切れるという自信があったということか。
ただ、残念なことにそれは間違いだ。和毅程度のフットワークと見切りではマクドネルのリーチから逃げ切ることは不可能である。

「亀田和毅日本復帰!! また亀田の試合が観られるぞ。協栄ジム所属でライセンス申請」

亀田和毅はフットワークがいいわけじゃないからね

ひょっとして和毅は自分の持ち味を勘違いしているのではないだろうか。自分のフットワークと見切りを過信してやしないだろうか。
前にも言ったが和毅の持ち味はハンドスピードと位置取りのうまさだ。コンビネーションのスピード、そしてパンチ自体のスピードだ。あくまで速いのはパンチのスピードであって、決してフットワークがいいというわけではない。

「亀田兄弟がおもしろいこと始めたぞ!! JBCに6億6000万訴訟?」

加えて、見切り自体も悪いとは思わないが、特別いいというわけでもない。持ち味はあくまでも、相手の嫌がる位置に身体を持っていく足の運び、相手のパンチが当たらない位置にスッと身体を入れるスムーズさだ。

どうも本人がその辺りを勘違いして、自分はフットワークの得意なスピードスターだと思い込んでいるように見えるのだ。
 
「無敗対決レイ・バルガスvsギャビン・マクドネル予想。かなり興味深い試合です。長谷川穂積の後がまに座るのはどっちだ?」
 
そしてもう一つ。
これは本当にもったいないと思うのだが、亀田和毅は自分のボディブローのよさに気づいてないような気がする。
今回の試合でも、明らかにマクドネルは亀田との接近戦を嫌がっていた。なのに顔面ばかりに集中して、反撃のチャンスをみすみす逃していた場面が見られた。もっと執拗にボディを叩けば流れを変えられたはずなのである。

「長谷川穂積、カルロス・ルイスを迎えての再起2戦目をクリアできるか?」

そういった意味も含めて接近戦に活路を見出すべきだと申し上げたのだが、なかなか予想通りにはいかないものだ。
はっきり言って、亀田和毅の出来自体は悪くなかった。動きは前回と同等かそれ以上のものを出していたと思う。だが、いかんせん作戦が大失敗だった。
本人がマクドネルと正面衝突したら敵わないと踏んだのか、新トレーナーの意向だったのかはわからないが、あまりに工夫がなさ過ぎる試合であった。

マクドネルはしてやったり。勝つべくして勝った試合だった

マクドネルに関しては作戦通りというか、「いつも通りやって、いつも通り勝ちました」といったところだろう。

序盤2Rは、お互いにジャブを出しながらの激しいペースの取り合いをしていたように見えた。めまぐるしいつばぜり合いの中、ペースを掴んだのは亀田だったように見えた

「いいじゃん亀田和毅。そうそう、これをやって欲しかったんだよね。エドガー・マルティネスを1RKO」

だが、残念ながらこれは違う。
マクドネルは、4ヶ月間ぶりに対峙した亀田和毅を分析していたのだ。
前回の亀田和毅と現在の亀田和毅。何が違って何が違わないのか。前回の試合で面食らった亀田のスピード、ジャブのキレ、その他。この4ヶ月でどの程度成長したのか、はたまたそうでもないのか。
マクドネルは、記憶の中にある亀田和毅とのギャップを埋める作業を2Rかけて行っていたのである。

そして、2Rを終えてこう思ったはずだ。
「普通にやれば勝てる」

パンチにスピード差があるといっても、マクドネルのジャブはガードを前に出した状態から肩の回転とスナップだけで出す打ち方だ。対して亀田は、やや身体の外側を旋回するフック気味のパンチが多い。速度自体は劣っていても、相手に到達する時間にそこまでの違いはない。リーチ差がある分、自分の方が有利だと考えたに違いない。

「亀田和毅は日本ランカーと試合しなさい。協栄ジムで練習しなさい。いやいや、なぜそんなことが言えるの?」

前進してプレッシャーをかけながら左ジャブで亀田のガードの間を割り、出足を挫く。亀田が飛び込んできたらバックステップで距離をとる。サイドステップでいなす。リーチ差を活かせばそれほどスピードはいらない。
亀田の射程距離に近づき過ぎなければ、強いパンチをもらうことはない。慎重に距離を計っていれば亀田のパンチは届かず自分のパンチだけが届く。安全圏から左を出し続けていれば、そのうち亀田の足も止まる。自然とポイントもこちらに流れるはず。

要するに、前回の5R以降の動きを実践すれば勝てると判断したのである。
そして距離をとる作戦を選択した亀田にとって、その判断は至極正しかった。事実、後半8R以降、亀田は明らかに手が出せなくなっていた。正味の話、マクドネルが明確に失ったといえるラウンドは1、2Rと5Rくらいではないだろうか。

亀田家の基本はインファイト。今回こそが、それを証明する絶好の舞台だった

完全にたらればなのだが、やはり今回は思い切ってインファイトでいって欲しかった。

いくら和毅にハンドスピードがある、センスがあるといってもそれはあくまで副産物である。亀田家の真骨頂はガードを上げてにじり寄る亀スタイルだ。幼い頃から亀田父に叩き込まれた秘伝の接近戦スタイルなのだ。

ボディは鍛え上げれば多少叩かれても耐えられる。ガードを高く上げて急所である顔全体を隠し、じわじわとにじり寄って相手をコーナーに追いつめる。そこから持ち前のハンドスピードを活かした高速のコンビネーションにつなげる。これが3兄弟が幼い頃から叩き込まれてきたスタイルだ。

どれだけテクニックを上乗せしても、根本にあるのはそのスタイルなのだ。
そして、今回こそがそのスタイルを見せつける絶好のタイミングだったのである。

実際、マクドネルは亀田の接近を嫌がっていたし、打ち合いで亀田が優位に立つ場面も何度か見られた。
試合のすう勢が決まりかけていた10R以降、開き直った亀田が近づいて打ち合いを挑むと、実際に流れは変わりかけたのだ。特に最終12R、ダウンを取られてからの思い切った前進は、マクドネルにとって十分な脅威であったはずだ。
あの時間帯からあれだけの突進ができる体力があるのだから、もっと早い段階でインファイトを仕掛けてもらいたかった。この辺は本当に悔やまれる。言ってもしょうがないのだが。

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今後、亀田和毅はどうするのだろう。
今回の連敗で、アメリカでの商品価値はだいぶ下がってしまったことは間違いない。本人にもう一度、ゼロから再起するだけの強い心と辛抱はあるのだろうか。同日に次男の大毅も敗戦し、奇しくも長男の興毅の双肩に亀田家の今後がかかる状況となったわけだが。

亀田和毅はまだ24歳だ。まだまだがんばってもらいたいものである。

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