日本で中・重量級に人材が集まらない理由? 逆に何でメキシコでは人材が集まるの? アンディ・ルイスのヘビー級初戴冠を受けて【長文】
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2019年6月1日(日本時間2日)に米・ニューヨーク州で行われた世界ヘビー級統一タイトルマッチ。
この試合で同級3団体王者アンソニー・ジョシュアがアンディ・ルイスJr.に敗れるという波乱が起きたわけだが、あれから約1週間が過ぎようとしているにもかかわらず、いまだに興奮が収まらない。
正直、僕はアンソニー・ジョシュアが圧勝すると思っていたし、フェイスオフでの身長差を見た時点でアンディ・ルイスJr.への興味を失っていた。
「ああ、動けるデブなのね」
「はいはい、がんばって」
「たぶん無理だと思うけど」
失礼極まりないのだが、マジでこんなテンションだったことを報告する。
で、まさかの事態に顎が外れるほど驚いたという流れ。
「ルイスがジョシュアに勝利! 動けるデブが動ける2mに勝利! 19年ぶりの何してくれてんねん案件やな」
そして、下記の数値を見て「メキシコ初のヘビー級王者誕生」は想像よりもはるかに凄まじい快挙なのではないかと思い始めている。
男性平均身長
アメリカ:175.7cm
イギリス:175.3cm
日本:170.7cm
メキシコ:167.0cm
と同時に、日本人選手にも十分可能性があるんじゃねえか? とも思った次第である。
日本人よりも体格的に劣るメキシコからヘビー級王者が誕生したのだから、日本人がなれないわけがない。
僕は以前から「日本人は体格的に重量級では難しい」といった定説は間違いなんじゃねえか? と言い続けている。そして、競技の活性化のためには藤本京太郎を応援すべきだし、石井慧をもっと評価すべきだと喚いているのだが、それを今回のアンディ・ルイスが証明してくれた気がする。
ただ、現状は日本人選手がヘビー級王者になる気配はまったくない。頼みの藤本京太郎も2018年9月以降音沙汰がない状況。
身体の大きなフィジカルエリートをボクシングに引き込むには現役選手が活躍するのが一番なのだが、なかなかうまくいかないものだなと。
「ウシクvsスポーン予想。元K-1戦士タイロン・スポーンか。適度に見栄えもよくていいんじゃないでしょうか」
というわけで、今回はアンディ・ルイスJr.の出身国であるメキシコと日本の事情を比較しつつ、なぜ日本人よりも身体の小さなメキシコ出身の選手が中量級以上で活躍できるのかを考えてみたい。SNS上でもこの話題をちょろっと見かけた覚えがあるので。
なお、私見が多分に含まれる内容になることは間違いないです。それに加えて、提示する数値は僕が手作業で集計したもので、正確性には疑問符がつくことをお伝えしておく。
日本とメキシコの現役選手と歴代王者の人数を比較する
まず最初に。
両国の男子の平均身長に近いと思われる階級(バンタム~ライト級前後)からヘビー級までの現役選手と歴代世界王者の人数を比較してみる。
現役選手の人数はBoxrecから僕が手作業で拾ったもの。
歴代世界王者の人数については下記のサイトを参考にさせていただいた。
→「日本の世界王者」
→「メキシコの世界王者」
残念ながら2014年で更新が止まっているのだが、おおよその目安ということで。
結果は下記である↓
現役選手の人数
日本:825人
メキシコ:2133人
歴代王者の数
日本:49人
メキシコ:155人
両国の総人口が
日本:1億2,680万人
メキシコ:1億2,920万人
と、そこそこ似通っているのに対し、現役選手、歴代王者はともに約3倍程度の差がある。
しかも、日本でもっとも人数が多いのはS・バンタム級の143人だが、メキシコは3階級上のライト級を頂点にフェザー級からウェルター級までまんべんなく分布していることがわかる。
平均身長は日本人が上回っているのに、ボクシングに限って言えば身体が大きい選手の割合はメキシコの方が多い事実。
「応援しない理由が見当たらん中谷正義vsテオフィモ・ロペス。勝てばvsリチャード・コミー? 通過点の試合を無傷で乗り切れ」
これはやはり、両国での人気の差が影響しているのだろうか。
日本ではボクシングよりもサッカーや野球、バスケの方が人気もあるし稼げることは周知の事実。また、個人競技をやりたければ柔道やレスリングなどでオリンピックを目指した方が近道とも言える。
そう考えると、身体の大きなフィジカルエリートがそちらに流れやすくなるのは仕方ないのかもしれない。
待てよ? メキシコでボクシングってそんなに人気スポーツなの? むしろ人材が流れているのはメキシコの方なんじゃ…
と思ったのだが、いやちょっと待てよと。
日本ではボクシングよりもサッカー、野球、バスケの方が人気があり、年俸もいい。また、個人競技であれば柔道やレスリングなどでオリンピックを目指した方がお得感が高く、わざわざ身体の大きなフィジカルエリートがボクシングを選ぶ意義は薄い。
それに対し、メキシコではボクシングの人気が高いため、必然的に人材も集まりやすくなる。
って、ホントに?
ボクシングってメキシコでそんなに人気なの?
行ったこともないので何とも言えないのだが、正直そこまでボクシングがメジャースポーツとは言えない気が……。むしろルチャリブレ(プロレス)の方がはるかにポピュラーな印象が強いのだが。
また、日本は人気スポーツに人材が流れていると言うが、実際メキシコも似たようなもんなんじゃないの?
だってアレだろ?
メキシコってかなりのサッカー大国じゃなかったっけ?
パリ・サンジェルマンのエリック・グティエレスとか、ウルヴァーハンプトンのラウル・ヒメネスとか。クソニワカww な僕でも知っているような有名選手もいるし、普通に強豪国と認識していたのだが。
そう思ってためしに調べてみると、
「FIFA.com/MEN’S RANKING」
2019年4月のFIFAランキングでは、
日本:26位
メキシコ:18位
ガッツリ日本よりも上じゃねえかww
さらにバスケのFIBAランキングが下記↓
「Ranking men after FIBA Basketball World Cup 2019 Qualifiers Window 6」
2019年4月時点で
日本:48位
メキシコ:14位
だよなぁ。
そうだと思ったんだよ。
さすがに野球では日本が上回っているが、
「WBSC WORLD RNKINGS/Men’s」
サッカー、バスケに関しては間違いなくメキシコの方が上。
人気スポーツに人材が流れるという意味では、むしろ日本よりも顕著なのではないか。
「完敗の伊藤雅雪。ヘリングに最後まで追いつけず…。これ系の相手はどうしても鬼門になるよな」
ミドル級、S・ミドル級に相当する人材をごっそりサッカーに持っていかれている
また、下記は「2018年ロシアW杯でのチーム平均身長と平均体重の順位」である(JリーグのHPから引用)。
●出場全32チーム
・平均身長
日本:178.8cm(30位)
メキシコ:179.2cm(28位)
・平均体重
日本:71.9kg(32位)
メキシコ:73.8kg(29位)
ミドル級(69.853kg〜72.575kg)の村田諒太の身長が182cmで、S・ミドル級(72.575〜76.204kg)のビリー・ジョー・サンダースの身長が180cm。これを鑑みるに、両国ともちょうどミドル~S・ミドル級あたりの人材をごっそりサッカーに持っていかれていると言えそうである。
「いやだから! ブリージールがワイルダーに勝てるわけねえから。って、ブロンズ・ボンバアアアァァァ…!!」
てか、こうして見ると日本のサッカーってやっぱりひ弱過ぎるよな。
歴代監督が口々に「フィジカルの強化」を連呼するのを耳にしてきたが、結局そういうことなんだろうと。
前回のW杯でも、中盤でボールを持った選手がコカされるシーンがめちゃくちゃ多かった記憶がある。
そもそも論として、サッカーは長距離走の側面も強い競技なので、そこまでバキバキな肉体になる必要はない(と思う)。むしろ日本人に向いているスポーツじゃないの? とすら思えるのだが。
「ゴロフキンがロールズに圧勝!! 膝がキテるなぁ。やっぱり下半身にくるよな。2016年の試合との違いが歴然過ぎて」
「チャンスの多さ」が一番の要因じゃないか? 本場で成功するという明確な目標があるおかげで人が集まる
日本はボクシング人気が低いので人材が集まらない
→メキシコもボクシング人気は高くない
日本はサッカー、野球、バスケに人材が流れやすい
→メキシコの方が顕著
でも、日本に比べてメキシコの方が現役選手や歴代王者の人数ははるかに多い(約3倍)。
何で?
これ、僕なりの結論としては「チャンスの多さ」にあるのではないかと思っている。
ボクシングにおいて、中量級以上のメインは間違いなく米国。
最近は英国の台頭が著しいとは言え、何だかんだで「ボクシングの本場」と言えば米国を意味する(今のところ)。
その点において、米国と地続きのメキシコは日本に比べてめちゃくちゃ有利と言える。
日本から米国に行くには飛行機で海を渡る必要があるが、その気になれば移住も可能なほどの気軽さで往来できるのがメキシコと米国の位置関係である。
なので、順調にステップアップすれば、アメリカンドリームを掴む確率も日本人選手よりもはるかに高い。
「井上尚弥WBSS準決勝平均視聴率10.3%は高い? 低い? 格闘技ファンは全盛期に比べて減っているのか」
帝拳ジムのHPから主要4団体で15位以内にランキングされているメキシコ出身の選手をピックアップしてみたところ、
自国デビュー→米国の流れでキャリアを送っている選手は、
・ルイス・ネリ
・モイセス・フローレス
・エドゥアルド・ラミレス
・サウル・アルバレス
・カルロス・クアドラス
・ミゲル・ベルチェルト
・フランシスコ・バルガス
・ミゲル・ローマン
・ジョニー・ゴンサレス
・レイ・バルガス
・フリオ・セハ
・セサール・フアレス
・アントニオ・ロサダ
・リカルド・エスピノサ・フランコ
・エマヌエル・ナバレッテ
・アントニオ・モラン
・ハイメ・ムンギア
・ヒルベルト・ラミレス
また、デビューからずっと米国のリングに上がっているのが、
・ディエゴ・デラホーヤ
・レオ・サンタ・クルス
・アブネル・マレス
・アンディ・ルイス(3戦目までメキシコ)
・ロベルト・ガルシア(2戦目までメキシコ)
・レイ・ベルトラン
・オスカル・バルデス(1戦目までメキシコ)
という結果になった。
逆にほとんど(すべて)のキャリアを自国で送っている選手は、
・ラモン・アルバレス
・アーロン・アラメダ
・イサック・クルス・ゴンサレス
・カルロス・オカンポ
・トマス・ロハス
・アンドレス・グティエレス
の6人だけ。
要はそういうことなんだろうと。
「アメリカンドリームを掴む」という明確な目標が見えることが、ボクシングに人材が集まる理由。
つまり「近さこそが大正義」というヤツ。
これが僕の中でのファイナルアンサーである(マジか)。
あくまでいろいろな要素が絡み合った中での結果というのは大前提で。
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