リスキーなリングに立った井岡一翔に最大限のリスペクトを。田中恒成の狙い撃ち策略の果てに…【感想】

リスキーなリングに立った井岡一翔に最大限のリスペクトを。田中恒成の狙い撃ち策略の果てに…【感想】

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2020年12月31日、東京・大田区総合体育館で行われたWBO世界S・フライ級タイトルマッチ。同級王者井岡一翔にランキング1位田中恒成が挑戦した一戦である。
 
井岡一翔vs田中恒成。井岡の重ねてきたものの重さが桁違い。ホントに勝ってよかった。黙して語らぬ視聴率大正義時代の最後の生き残り
 
挑戦者の田中恒成はかねてより井岡一翔戦を熱望しており、2020年2月に満を辞してフライ級王座を返上。WBOの指名挑戦者となることでこの試合に現実味を持たせた経緯がある。
 
一方の井岡はWBA王者ローマン・ゴンサレスやWBC王者ファン・フランシスコ・エストラーダら他団体王者との統一戦を望むも、プロモーターや放送局の絡みで実現が難しい状況に。
 
さらに新型コロナウイルスの影響で海外への渡航、外国人選手の招聘が困難となり、必然的に国内屈指の好カードが現実味を帯びていく。
 
 
負ければ苦労して獲得した王座を失い海外挑戦の夢も遠のく井岡一翔と、最速3階級制覇の勢いのままにすべてを奪いにきた田中恒成。
2019年大晦日以来、ちょうど1年ぶりのリングとなった両者が赤と青のコーナーに分かれてゴングを聞いた……。
 
田中恒成の井岡戦振り返りYouTubeがおもしろかった。本人が試合を振り返るのはいいよね。でもごちゃごちゃと言い訳する選手も嫌いじゃない
 

井岡一翔vs田中恒成戦にボクシング界は大盛り上がり。畑山隆則vs坂本博之戦を超えるほどの注目試合?

井岡一翔vs田中恒成。
 
歴代最高の日本人対決と銘打たれた一戦で、これだけの実績と実力を兼ね備えた両者が絶頂の時期に対峙することは本当に珍しい。2000年10月の畑山隆則vs坂本博之戦にも匹敵する、もしくは超えるほどの注目試合と言える。
 
この試合が正式発表されて以降、元選手や解説者等、多くの方が試合展開や勝敗予想をするなど世紀の対決に向けてボクシング界全体が盛り上がっていた。
 

僕はこの試合にまったく乗れず。戦力の拮抗具合に比べて井岡側のリスクが大きく、田中陣営の計算高さも好きじゃない

ただ、僕自身はこの試合にはまったく乗れず。
理由は以前から何度か申し上げているように、井岡側にリスクが大き過ぎるから
 
井岡一翔「自分にとってメリットを感じる戦いではありません」。田中恒成「ノンタイトル戦は何度挟んでもいい」。テンション違い過ぎてゾッとするわw
 
現在25歳で上り調子の田中はここからまだまだ身体も大きくなる上に、たとえ負けても巻き返すチャンスは十分残されている。“世界最速”の称号にこだわらなければ4階級制覇はまったく夢ではない。
 
一方の井岡一翔は現在31歳とベテランの域に入っており、本人も言っているようにあと何戦できるかわからない。
またS・フライ級はスペック的にやや適性を超えている感もあり、実際王座獲得にも一度失敗している。成長途中の田中と違い、この先の伸び代はあまり残されていないように思える。
 
 
その井岡に田中陣営が早い段階から狙いを定めていたことは明らかで、フライ級王座返上のタイミングからもそれははっきりしている。
 
井岡が希望する他団体王者との統一戦がプロモーターや放送局の関係で実現しにくいことを見越して王座を返上、指名挑戦者となることで身動きを取れなくする。
 
田中が井岡に挑戦するとなればファンの注目度が上がることは間違いないので、WBOとしても田中を1位にランキングすることに異論があるわけもない。
 
仮に井岡が王座を返上して田中戦を回避すれば、心ないファンから「井岡は逃げた」と罵倒されるだろうことも計算済みだったのかもしれない。
 
井岡一翔vs田中恒成合意!? やっぱりやっちゃうのか…。予想は田中だけど応援は井岡。経緯があんまり好きじゃないから
 
そんな感じで、何から何まで田中陣営の思惑通りにことが運んでいく状況が僕にはどうにも受け入れられない。
田中恒成という選手は好きだが、外堀を徐々に埋めていく今回のやり方はマジで嫌い。
 
さらに今年上旬からの新型コロナウイルス感染拡大によっていよいよ井岡はがんじがらめとなり、田中陣営の希望がほぼ満点の形で実現する流れに。
 
もちろん注目試合が決まったことは喜ぶべきなのだろうが、こういう決まり方は本当に好きじゃない。
 
現状、井岡にとってのベストが田中戦であるとか、指名挑戦者との防衛戦は王者の義務であるとか、そういう話をしているわけではない。
 
正しいか正しくないかではなく、好きじゃない
 
戦力の拮抗具合に比べて井岡の失うものが大き過ぎる上に、試合が決まるまでの経緯がまったく好みじゃない。そのせいで個人的にちっとも乗れないと申し上げている。
 

あまりにしょーもないことが起きすぎて、相対的に井岡vs田中戦を受け入れておりましたw

だが、そこから僕の心境に少し変化があったことも確かである。
 
11月初旬に予定されていたWBA世界L・フライ級タイトルマッチ、京口紘人vsタノンサック・シムシー戦が京口のコロナ陽性によって中止になったり、WBO世界フライ級王座決定戦、中谷潤人と対戦したジーメル・マグラモが来日後に2週間の隔離生活を強いられたり。
 
京口試合前日にコロナ陽性で全試合中止←センスのかけらも感じないぞ。タノンサックが気の毒過ぎるし…。つまりダナ・ホワイトは神
 
またタイトルマッチが決まっていたWBC世界L・フライ級王者寺地拳四朗が、酩酊+器物損壊の事件を起こしてライセンス停止+制裁金の処分を課されたり。
 
ラスベガスで行われた井上尚弥vsジェイソン・モロニー戦以降、視聴意欲を削がれる出来事ばかりが続いたせいで、日本人絡みの世界戦に対する興味がガチで失せていたところ。
 
 
そういった諸々に比べれば、井岡一翔vs田中恒成戦は十分健全な部類。
田中陣営の計算高さはどうしても好きになれないが、相対的には全然マシでしょということで、まあまあ受け入れることができた次第である。


 

リスキーな舞台に立った井岡に最大限のリスペクトを。今日の井岡一翔は間違いなく勇敢なる戦士だった

というより、リスキーなこの舞台に立った井岡一翔にはリスペクトしかない。
 
一度目の引退後に米国で復帰を果たし、2018年末にドニー・ニエテスに敗れるも再びリングに戻り苦労の末に王座を獲得。
指名挑戦者との防衛戦もこなし、いよいよ他団体王者とのビッグマッチを!! というタイミングでの今回の田中恒成戦である。
 
井岡vsシントロン感想。たくましさ、荒々しさの増した井岡が長身サウスポーに完勝。僕はこっちの井岡の方が好きかな
 
恐らく本人にとって田中は望んだ相手ではなく、このマッチメークに100%納得していないことはコメントの端々からも感じ取れる。

僕の中ではビッグマッチでも、注目カードでもない

本質的に持っているものが違う。レベル、格の違いを見せる

それでも王者の義務を果たすため、また長年大晦日の主役を務めてきた強烈な自負により、田中の挑戦を受け入れた。この姿勢は問答無用で賞賛に値するし、僕が井岡に絶対に負けて欲しくないと思った一番の要因である。
 
 
正直、この試合の本当の勝者がどちらだったかは僕には何とも言えない。勝敗結果は示されたが、それが正解かどうかもわからない。
 
ただ、すべてを失うリスクを覚悟でこの舞台に立った井岡一翔は間違いなく勇敢なる戦士だった。そこだけははっきりと断言できる。
 
 
そして一番の問題は、僕がこの試合を観ていないことである。
 
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