長谷川穂積は引退するべきか? 現役続行するべきか? カルロス・ルイス戦での辛勝を受けて考えてみる

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長谷川穂積は引退すべきか? 現役を続行するべきか?

先日行われたカルロス・ルイスとのノンタイトル10回戦。
僅差で判定勝利を収めた長谷川穂積だったが、ダウンを2度奪われるなど内容的には終始不安定な試合だったことは否めない。

これに対し、世間では「もう引退した方がいい」という声も多く聞かれる。さらに長谷川の父親が「即引退して欲しい」とのコメントを残すなど、無視できないレベルで引退を勧める声は大きくなってきている。

そこで今回は「長谷川穂積は引退するべきか? 現役続行するべきか? カルロス・ルイス戦での辛勝を受けて考えてみる」と題して、長谷川穂積が引退するべきか、現役続行かを僕なりに考えてみたい。

衰えとかダメージとかではなく、単純に試合間隔が開きすぎじゃないの?

引退するべきか現役続行かなど、本来は周りが言うべきことではないのだが、それを踏まえた上で言うのであれば、今の本人のメンタルではちょっと厳しいと思う。

おいおい、前回の記事ではまだできると言っていたばかりではないかと言われそうだが、まあ聞いて欲しい。そういうことではないのだ。

「長谷川穂積辛勝!! カルロス・ルイスに2度のダウンを奪われながら僅差判定勝ち」

ダメージの蓄積や身体の反応の低下。スポーツ選手に引退を勧める理由はそれぞれ違うものの、一貫してはっきりしているのはやはり「肉体的な衰え」だろう。
さらに言うと、肉体的な衰えの先にあると思われる「健康を損なう恐れ」。ボクシングという競技の特性上、どうしても身体に残るダメージは現役を続ける上で考慮せざるを得ない事象の一つであることは間違いない。
それらを総合的に判断した上で、周りの人間は引退か現役続行かの判断を迫るのである。もちろん最終的に決めるのは本人なのだが。

「木村悠が1ヶ月休職の覚悟で挑んだ世界戦で逆転勝利!! ゲバラに判定勝ちで世界王座奪取!!」

ただ、僕の意見はちょっと違う。
もったいぶった割にご大層なことを言うつもりはないのだが、単純に今の長谷川は試合間隔を開け過ぎだと思う。

2014年4月にキコ・マルチネスに敗れて以来、オラシオ・ガルシア戦で再起するまでに1年以上の期間が開いている。さらに今回のカルロス・ルイス戦までに半年以上である。
もっと言うと、キコ・マルチネス戦の前の試合は2013年8月だ。実に8ヶ月以上も期間を開けての試合である。
その前にも、2011年にジョニー・ゴンサレスに敗れてから再起戦までに約1年の時間を要している。

日本のエースと呼ばれた長谷川穂積も今月末には35歳。
確かに若い頃と同じようなペースで試合をするのは精神的にも肉体的にも厳しいのだろう。

だが、ここのところの長谷川穂積の試合のペースはさすがに遅すぎる。

試合→ある程度満足→長期休養→再起決意→試合→ある程度満足→長期休養

特にここ2年ほどの長谷川はこのループを繰り返しながら、常に現役続行と引退の狭間で揺れているのだ。

「八重樫がハビエル・メンドサに勝てる気がまったくしないんだが」

悩んでいる期間にどの程度の強度でトレーニングをしているのかはわからないが、さすがに世界戦を目指すようなモチベーションでルーティンをこなしているわけではないだろう。

「やっとか! 和氣慎吾。ジョナサン・グスマンとの世界王座決定戦を予想する」

ベテランの長期休養は逆効果?

よく一流選手が、オリンピックなどの大きな大会を一つの区切りとして長期休養に入るパターンがある。その時点では現役続行か引退かの答えは出さずに、しばらく競技から離れて精神の充電期間を設けるのである。

「長谷川穂積のベストバウトはあの試合だろ? 壮絶な打撃戦の最中に長谷川を覚醒させ、その後の道すじを決定した7R」

これを言うと猛烈な反対意見にさらされるのかもしれないが、充電期間を経て復帰した選手で休養前以上に成功した選手を僕は見たことがない。

水泳の北島康介然り、陸上の末續慎吾然り、柔道の野村忠宏然り。
全員が全員そうだとは言わないが、どの選手も休養前の輝きを取り戻すことができずに成績を落としている。

「山中vsソリス予想!! 10度目の防衛で日本歴代3位タイの記録なるか?」

最近ではフィギュアスケートの浅田真央や、リオ五輪後に微妙な年齢にさしかかる吉田沙保里あたりがそのグループに入りそうな気がしている。

確かに何年間もぶっ続けで競技に没頭するというのは精神的に相当キツいのだろう。一区切りしたところで休養期間を設けることは気持ちの面では大いにプラスになるはずである。

「モデルボクサー高野人母美KO負け!! 今後のボクシング界のために高野人母美の後継者を大至急探すんだ!!」

だが、肉体的な部分ではまったくの別問題だ。
「休養」と称してトレーニングを止めてしまうより、現役でいるのであればトレーニングは継続した方がいいに決まっている。
しかも年齢が上がれば上がるほど、休養期間で落ちた体力や技術レベルを元の状態に戻すには時間がかかる。現役続行か引退かで揺れるというのはつまり、年齢的にはベテランの域に達している場合がほとんどだ。なおさらトレーニングを止めていた期間が長いほど身体の劣化は加速する。当たり前の話である。

「ウォータースがソーサにまさかのドロー!! S・フェザー級転向初戦で連勝ストップ」

しかも現役続行と引退を迷うということは、何らかの気持ちが現役に残っているという証拠に他ならない。
いったん精神をリセットする時間が大事だというが、そこから勝負モードに切り替えるにはかなりのエネルギーが必要なのではないだろうか。
ずっと気持ちを張り続けた状態でいるのと、一度すべてをストップした状態からもう一度元に戻す作業。ぶっちゃけどちらが楽なのだろうか。

現在の長谷川穂積はまさにこの状況で、現役続行を決意するたびにコンディションを作り直すという大変な作業に追われているのである。

「レイ・バルガスが日本に来るぞ?! カボレに圧勝判定で挑戦者決定戦を制す」

「進化した」は実は気のせい?

今回の試合前、長谷川は「新しいトレーニングを取り入れて進化している自分に気づいた。強くなれることがわかっているのに辞めたらもったいない」旨のコメントを残していた。
だがベテラン選手がこのセリフを吐く場合、たいてい進化していないことが多い。

「レイ・バルガスやべえww強いww こいつは絶対覚えておいた方がいい」

恐らくトレーニングの効果で劣化の速度が緩やかになり、そのせいで「進化した」と感じているだけだと思う。劣化が止まったか、もしくはその速度が緩やかになっただけで、残念ながら進化しているわけではないように思える。

悩んでいる場合じゃないぞ長谷川穂積。世界王者奪取を目指すしかない

これらを鑑みるに、長谷川穂積が今後も現役を続けるのであれば絶対に試合間隔を縮めるべきだろう。世界タイトル獲得を目論んでいるのであればなおさらだ。

ましてや、反射速度と身体のバネを活かしたスタイルが持ち味のボクサーである。試合間隔が開けば開くほど動きは錆ついていくし、元に戻すのにも時間がかかる。内山や三浦のようなファイタータイプとは劣化の速度が段違いなはずだ。

「ブラッドリーがブランドン・リオスにTKO勝ち!! スピードと手数でリオスを圧倒!! インファイターのリオスに何もさせず」

「どう終わるか」の答えを見つけるために試合をするのではなく、「もう一度世界をとるための踏み台」というモチベーションで試合をするのである。そして、常に緊張感のある中でトレーニングを継続するのだ。

気持ちさえ充実していれば勝てるなどと言う気はないが、もう一度世界タイトルを奪い取るという気持ちでやらなくてはプラスアルファのパワーは出ない。
ベテラン選手にとっては非常に厳しい状況ではあるが、若い力に対抗するにはそれくらいやってちょうどいいのだ。

そして、それができないのであれば潔く引退するのも一つの選択肢である。
ボロボロになるまでやりきれと言っているのではなく、この年齢になると一度切れてしまったらおしまいですよと言っているのだ。

「メイウェザーはボクシングを終わらせた?」

引退しろとは思わないが、現役を続けるのであれば長谷川穂積史上最高の覚悟が必要になるのではないですか? という意味である。

ただ、前回も言ったように、ボクシングのレベルという意味では長谷川穂積はまだまだ終わってはいないと思う。ここからもう一度這い上がるのは十分可能というのが僕の意見だ。

「ウーゴ・ルイスに挑戦! 長谷川穂積最終章開幕。ラストファイトか? 大阪で引退をかけて3階級制覇へ」

さんざん上から目線で偉そうに語ったが、最終的にはこの言葉が言いたかっただけである。
がんばれ長谷川穂積

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