ダニー・ガルシアvsポール・マリナッジ!! ウェルター級戦線に殴り込みのガルシアはマリナッジという壁を突破できるか
ダニー・ガルシアvsポール・マリナッジ。
2015年8月1日(日本時間2日)、アメリカ・ニューヨーク・ブルックリンにあるバークレイズ・センターでボクシング元WBC世界スーパーライト級王者のダニー・ガルシアvs元WBA世界ウェルター級王者で2階級制覇王者のポール・マリナッジの一戦が行われた。
スーパーライト級から階級を上げた無敗のガルシア。地元ブルックリン出身のベテランテクニシャンを相手にどのような試合を見せるか。そして今後のウェルター級で輝くのはどちらか。注目の一戦である。
手数と激しい出入りでポイントを稼ぐスタイルのマリナッジ。このボクサーは、ガルシアがウェルター級で名前を売るのにはちょうどいい高さの壁ではないだろうか。ここをクリアすればガルシアの名がウェルター級で注目されることは間違いないし、逆に敗れれば一気に自分の商品価値を下げる結果が待っている。ハイリスク・ハイリターン。大激戦区のウェルター級での試金石とできるだろうか。
ちなみに個人的な予想はガルシアの僅差判定勝ちだ。
「ミゲール・コットがダニエル・ギールを4R TKOで撃破!!」
ダニー・ガルシア
30戦30勝 (17KO)
ポール・マリナッジ
39戦33勝(7KO)6敗
半身の構えで出入りを繰り返すマリナッジ。やはりガルシアの攻撃力を警戒か
リング中央で対峙する両者。
体格的にはガルシアの方が一回り大きい印象か。身体の厚みは逆にややマリナッジの方が上だろうか。ウェルター級歴が長いマリナッジ。意地を見せたいところではある。
試合開始のゴングが鳴る。
スタンスを広げて前後にステップを繰り返すマリナッジ。ガルシアに対して完全に半身の状態で、腕を交差して構える。やはりガルシアの長いパンチを警戒して距離をとる作戦か。
踏み込んで左を出すガルシア。長い!!
しかし、マリナッジがガルシアの踏み込みの分だけバックステップする。ガルシアのパンチは鼻先をかすめるだけで当たらない。
左の戻りに合わせて前に出るマリナッジ。懐に飛び込んで数発パンチを出し、すぐに離れる。
離れ際のマリナッジに対してガルシアが大振りのフック!! しかし空振り!!
タイミング的には悪くない。このフックはそのうち当たるかもしれない。
「ダニー・ガルシアがロバート・ゲレロに完勝して2階級制覇達成!! ウェルター級のガルシアはホントに強いわ」
2Rに入ると、マリナッジが左回りにサークリングを始める。2人の距離もやや近づく。
この距離はなかかなの緊張感だ。お互いの射程のわずかに外側。マリナッジが細かい連打を当てるには踏み込みが必要だし、ガルシアが思い切り腕を振り回すにはやや遠過ぎる。
対峙した2人の空気が張りつめる。パンチのないマリナッジは細かく当ててポイントを稼ぐ必要があるが、ガルシアは一発当てるだけで終わらせることができる。精神的にはややガルシア有利だろうか。
ただ、序盤のペースはマリナッジが掴んでいる。
細かいパンチをボディに当ててすぐにバックステップ。ガルシアの左右フックを頭を下げてかわし、すぐに組み付いてスペースを潰す。ガルシアが長い腕を思い切り振り回す隙を与えない。
とにかく低く低く。ここまではマリナッジの作戦がうまくいっているようだ。
打ち下ろすというよりも、薙ぎ払うような軌道で真横に飛んでくるガルシアのフックに対し、ダッキングで頭を下げて当たるポイントを殺すディフェンスのマリナッジ。この対戦に向けてよく研究してきているようだ。
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マリナッジがガルシアのパンチをよけた後に頭を下げて前に出るので、どうしてもガルシアが頭を抑える形になる。このままいくと、もしかしたら中盤以降ガルシアの減点があるかもしれない。
だが、このままマリナッジのペースで試合が進むとは思えない。
追い足のないガルシアだが、最大の持ち味は距離感とタイミングを掴む対応力だ。ここから先、マリナッジのフットワークに対応したときが勝負所になるだろう。
間合いを掴んだガルシア。こうなるとマリナッジは苦しい
4Rに入ると、さらに二人の距離が縮まる。
ガルシアのいきなりの右がマリナッジの頬を軽く捉える。長い。
この距離はガルシアのパンチの射程圏内だ。前のラウンドまででほぼガルシアの間合い調整は終わったと思われる。
ガルシアの左フックを飛び退くように避けるマリナッジ。かなり距離が近い。このままマリナッジが逃げ切るのは不可能だろう。
ラウンド終了間際、ガルシアの左右フックがマリナッジの側頭部をかすめる。わずかに足取りが乱れるマリナッジ。これはちょっとやばいか。
5Rに入ると、ガルシアの踏み込みに一切の迷いがなくなる。思い切り踏み込んでマリナッジのボディに長いパンチを伸ばす。距離感を掴んだことに加え、マリナッジのパンチを受けてもある程度問題ないと判断したのもあるだろう。
右に身体を倒してパンチをよけるマリナッジ。これに対して左フックを出すガルシア。このタイミングも危険だ。
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対するマリナッジとしては、ガルシアの打ち終わりや拳の戻り際を狙いたいところなのだが、ガルシアがリードジャブをボディめがけて打ってくるのでなかなかカウンターを合わせられない状況が続いている。しかもマリナッジがボディを嫌がっていることにガルシアは気づいてしまっている。
マリナッジ苦しい。
7R。
ガルシアの出足がやや鈍くなる。マリナッジがサークリングから左のパンチを細かくヒットさせる。懐に飛び込み数発ガルシアの頬をヒットし、バックステップで飛び退る。ガルシアが大振りのフックとボディで応戦するが、激しい出入りでヒットを許さない。
終止ヒット・アンド・アウェイのマリナッジ。このラウンドはマリナッジ。
畳み掛けるガルシア。プレッシャーを受け続けるマリナッジは耐えられるか
8R中盤、ガルシアの左フックが立て続けにマリナッジを捉える。
かなり危険なタイミングだ。ここまで執拗にボディを叩き続けてきた効果か、やや顔面への注意が散漫になったところへのビッグパンチ。
ガルシアの踏み込みがさらに大きくなる。マリナッジ苦しい。本当に苦しい。
ガルシアの右ストレートをマリナッジがダッキングでかわしたところでゴング。今のラウンドは完全にガルシア。先ほど傾きかけた流れを完全に取り戻したガルシア。さすがだ。
9R。
流れを変えようと前後のステップを繰り返し、細かいパンチを出すマリナッジ。だがガルシアは意に返さない。気にせず前に出て左ジャブから危険な角度でロングストレートを振るう。
徐々にプレッシャーに押され、ロープに詰まるマリナッジ。
サークリングで逃げようとするが、ガルシアが逃がさない。最短距離で歩を進め、コーナーに追いつめる。
ボディからフック、思い切り踏み込んでのストレート。身体を寄せてくるマリナッジを無理矢理引きはがして左右フック。長い腕を斧のように振り回し、マリナッジの側頭部に立て続けに叩き付ける。
そして残り20秒。
全体重を乗せたガルシアのフックにマリナッジがよろける。ロープ際で亀になったマリナッジに襲いかかるガルシア。ここで2人の間にレフェリーが割って入る!!
ストップ!!
TKOで試合終了。
ダニー・ガルシアの9R2分40秒TKO勝ち。
快勝だ。文句なしにガルシアの快勝だ。
今日のガルシアは強かった。かつての思い切りのよさ、迫力が戻っていた。
ナイスTKO勝利だ。
ウェルター級のトップ戦線に躍り出ることができるか。今後に注目のガルシア
もう一度言うが、今日のガルシアはよかった。ここ最近の中ではダントツの出来だろう。
ガルシアのよさは躊躇なく振り回す左右フック、そして相手との距離感とタイミングを微調整する対応力だ。
スピードのある相手でも徐々に相手との間合いを計り、中盤あたりで自分の距離とタイミングを見つけるのだ。長い腕を思い切り振り回せるポジションを見つけるのが本当に上手なのだ。例え序盤にペースを掴まれていても、いつのまにか自分の間合いに持っていく。その対応力が抜群なのである。
ただ、ここ数試合のガルシアは非常に煮え切らない試合が続いていた。レイモント・ピーターソン戦は負けと判断されてもおかしくない内容だった。
このままだと出入りのスピードの激しいマリナッジに空回りさせられてしまうのではないか。それを踏まえて僅差判定勝利を予想したわけだが、今日のガルシアにその心配は必要なかった。
これなら今後、ウェルター級で試合を重ねて身体を強くしていけば十分トップ戦線でやれるのではないだろうか。層が厚いウェルター級なので難しい挑戦であることに変わりはないのだが。
とはいえダニー・ガルシアvsポール・マリナッジ。おもしろい試合だった。
できればテレンス・クロフォードとやってからウェルター級に上げて欲しいところだったが、今後も注目である。
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