バランスのいいジャロン・エニスと器用なホセ・ペドラサ、五輪連覇のロベイシ・ラミレス。平岡アンディはこんなヤツらを相手にせないかんのか…
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2020年9月19日(日本時間20日)、米国でトップランク、PBC主催の興行が行われたわけだが、個人的にはそこまでそそられる試合はなく。
なので、何となく印象に残った3試合に絞って感想を述べていきたいと思う。
もしかしたら「この試合があったじゃねえか!!」という意見もあるのかもしれないが、そこは気にせずということで。
○ロベイシ・ラミレスvsフェリックス・カラバロ×
最初はこの試合。
ロベイシ・ラミレスvsフェリックス・カラバロのフェザー級8回戦。3-0(80-72、80-72、79-73)の大差判定でラミレスが勝利した一戦である。
ロベイシ・ラミレスはロンドン五輪、リオ五輪で金メダルを獲得したトッププロスペクト。デビュー戦でアダン・ゴンサレスにまさかの判定負けを喫したものの、そこからは4連勝と順調に勝ち星を重ねている。
と言いつつ、僕はこれまでこのロベイシ・ラミレスの試合を観たことがない。
五輪2連覇の実績を引っ提げて鳴り物入りでプロ入りしたはいいが、デビュー戦でいきなりコケたという話は聞いていたが、なぜかこれまで食指が伸びることはなく。今回、初めて観てみた次第である。
感想としては「へえ、そうなんだ」。
恐らくこれは僕が観る試合を間違えているのだと思うが、正直今のところピンとくるものがない。
コンビネーションの正確さとスピードを両立できるサウスポーというのは理解できたが、「これは!!」と思うようなインパクトはなかった。
恐らくこの選手は中間距離での差し合いが得意なタイプなのだと思う。
相手のフェリックス・カラバロがいくら打たれても前に出続けるスタイルだったせいで、まだまだ本来の動きが出せていないのかもしれない。
また、もしかしたらフェザー級ではなくS・バンタム級に下げた方がいい気もする。この階級だと若干小柄でパワーも足りていないような……。
何とも言えないところだが、今回に関しては強化版ジェシー・マグダレノかなぁという感想である。風貌も含めてね。
てか、フェリックス・カラバロって前回シャクール・スティーブンソンと対戦したヤツか!!
なるほど、あの試合もがんばってたからな。
前回は試合が決まったのも直前だったらしいが、一定の働きを見せたおかげで再びチャンスが巡ってきたわけか。
デービスの一点突破の野獣性。サンタ・クルスをアッパーで失神KO。左のブローナーは穴も多いけど、負ける姿が想像つかんよね
ああいう愚直に前に出続けるスタイルは確かに好感度高いよねww
僕もこの選手は嫌いじゃないので、またがんばってほしい。
○ホセ・ペドラサvsハビエル・モリナ×
続いてはコレ。
元2階級制覇王者ホセ・ペドラサvsハビエル・モリナのS・ライト級10回戦。結果は3-0(99-91、99-91、98-92)の判定でペドラサが勝利したわけだが……。
ハビエル・モリナは身長178cmと上背がある選手で、2019年11月に日本の岡田博喜を1RKO、2020年2月にはアミール・イマムに判定勝利を挙げた強豪である。
だが、結果はベドラサの文句なしの判定勝利。中間距離での差し合いを制したペドラサが終始優位に進め、近場での連打と出入りでモリナを翻弄、ほぼすべての局面で上回ってみせた。
前回も申し上げたが、ホセ・ペドラサという選手は本当に器用である。
流れの中でスルスルとスイッチするし、遠い位置でもインファイトでも高いクオリティを維持できる。
右を大きく振ったあとに勢い余って右足が前に出ることもあるが、そこで動きを止めずにそのままスイッチして攻撃を継続することも可能。
ナバレッテ2階級制覇!! って言うほど勝ってるか? これ。ルーベン・ビラの五十嵐俊幸っぽさ。持たざる者の辛さというか
もともとS・フェザー級の王者だったこともあってフィジカル面は心もとないが、中間距離での差し合いでこの選手を上回るのは至難の技に思える。
結構ナルシストだしね()
ハビエル・モリナもL字気味の構えからのカウンター狙いで対抗しようと試みていたが、ペドラサのハンドスピードにまったくついていけず。連打がそのままプレッシャーになるペドラサの圧力に後退させられ、手を出せばカウンターが飛んでくる悪循環。で、フリーパスで懐に入られ、インファイトでちょこまか動かれるパティーン。
そう考えると、連打に耐えながらじっくりカウンターを返したジャーボンティ・デービスや中間距離での差し合いで上回ったワシル・ロマチェンコはマジですごかったんだなと。
しかもアレだ。
このペドラサでも、ホセ・カルロス・ラミレスやジョシュ・テイラーには一歩及ばないイメージ。
S・ライト級の頂が霞んで見えるのは決して気のせいじゃないww
○ジャロン・エニスvsファン・カルロス・アブレイユ×
そしてラストはこの試合。
ウェルター級のプロスペクト、ジャロン・エニスがファン・カルロス・アブレイユとウェルター級10回戦で対戦し、6RKO勝利を挙げた一戦。
ファン・カルロス・アブレイユはエギディウス・カバロウスカスやアレクサンデル・ベスプーチンなどとも対戦経験のある強豪で、これまで5敗を喫しているがKO負けは一度もない。
ところが。
前日計量でウェルター級リミット147ポンドを大幅に超える150ポンドという確信的な体重超過をやらかした上でリングに上がる暴挙に。
開始直後にリング上で対峙した両者を観ると、案の定アブレイユは明らかに一回り大きい。
その体格差を活かしてグイグイ前に出るのだが……。
いや、さすがでしたねジャロン・エニス。
鋭いジャブでアブレイユの前進を止め、アクロバティックな動きから多彩なパンチを打ち込んでいく。
スピード、正確性、パンチの角度その他。身体の大きさ以外に上回る部分がないアブレイユは遠い位置で釘付けにされてしまう。
このジャロン・エニスという選手は何と言ってもバランスがいい。
どんな状況でも体勢を崩すことなく、あらゆる角度から強いパンチが打てる。
その上、避け勘も抜群で一瞬のスピードもある。ロイ・ジョーンズ2世と呼ばれているらしいが、マジでそんな感じ。
少なくとも「グラップラー刃牙」のバランスのいい山本選手よりもはるかにバランスはいいと断言できる。
5Rにダウンを奪った凄まじいアッパーもそうだが、ジャロン・エニスの右はちょっとヤバい。
右のタイミングだけなら現時点でもロイ・ジョーンズを超えている気がする。
線の細さが気になるところだが、S・ライト級に落とすことも可能とのことなので、それもアリなのかなと。
最強PFPロイ・ジョーンズのベストバウト。悶絶ボディKOのヴァージル・ヒル戦は候補の一つだと思うの。衰えてから14年も現役にしがみついた姿も人間味があっていい
だが、4Rあたりからアブレイユが圧力を強めると、両者がロープ際でもみ合うシーンが増える。
たびたびローブローの注意が入るなど、ラフな試合展開にお互いがヒートアップする一幕も。
そうそう、これ系の選手を何とかするにはこういう喧嘩ファイトも一つの手だよね。
だって、そのために豪快に体重超過したんだろ?
まあ、どこからどう見てもわざととしか思えないローブローや、ダウン後にすぐに立ち上がってイキり倒す様子など、この選手が計算してアレをやっているようには見えない。単純にイタいヤツなだけなのだと思うが。
S・ライト級の平岡アンディに期待している。期待してはいるけど、こんなヤツらを相手に勝ち進まなきゃいかんのか…
以前にもちょろっと申し上げたが、僕は中量級の日本人選手では平岡アンディに期待している。
戦績が15戦全勝10KOで、2019年12月にはトップランク興行での米デビューも果たした選手である。
僕が平岡アンディジャスティスに期待する3つの理由。ロヘリオ・カサレスに2RTKO勝利で米国デビューを飾る
しかも1996年生まれで現在24歳。
平岡アンディの試合をいくつか観たが、恐らく現段階では世界どうこうという感じではない。
だが、中量級でミゲール・コットとのタイトルマッチまで進んだ亀海喜寛が初めて米国のリングに上がったのが20代後半だったことを考えると、平岡アンディにはまだまだ多くの時間が残されている。
この試合なんか、すげえ荒削りですからね。
荒削りだけど、世界戦も経験した近藤明広に勝っちゃいましたからね。
“素材のまま”でもここまでやれるのだから、今の時期から米国のリングで経験を積めばさらに伸びるんちゃうの? みたいな。
岡田博喜、小原圭太、中谷正義など。これまで海外のリングに上がった選手はいわゆる“完成品”としてのお買い上げだったわけだが、平岡アンディの場合はちょっと違う。将来を見据えた先物買いの思惑が強い。
僕が井上尚弥vsジョン・リエル・カシメロ戦が流れて一番残念だったのは、アンダーカードに内定していた平岡アンディの試合が飛んだこと。
なので、井上尚弥vsジェイソン・モロニー戦のアンダーカードにはぜひともこの選手を起用していただきたいと思っている。
フェリックス・カラバロとかいう突然不相応なチャンスを得て強豪サウスポーの当て馬にされまくった男。倉庫でのフルタイムの仕事からわずか4週間でシャクールに挑んだけど…
そして、それらを踏まえた上で。
S・ライト級の頂の高さには改めて震えてしまう。
岡田博喜が1Rでぶっ倒されたハビエル・モリナがまったく歯が立たないホセ・ペドラサも王者ホセ・カルロス・ラミレスやジョシュ・テイラーには勝てる気がしない。
さらに岡田博喜はホセ・ペドラサに敗れたレイムンド・ベルトランにもKO負けを喫しており、そのベルトランはリチャード・コミーにKO負け。リチャード・コミーは中谷正義を下したテオフィモ・ロペスに2RでKOされてしまった。
その上、トッププロスペクトのジャロン・エニスもS・ライト級を見据えているとか。
ボクシングに三段論法は通用しないというのはその通りだが、現状、この階級は“完成品”の日本人選手では攻略が難しいのではないか。
そういう意味でも“素材”である平岡アンディには大きく期待しているわけだが……。
それでも、こんなヤツらを相手に勝ち上がっていかないといけないのかと。
ぶっちゃけ、井上尚弥が目指す場所よりもはるかに高い場所に見えるのだが……。
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