ドラゴンボールが神格化された過大評価作品である理由。話題のドラゴンボールハラスメント()炎上とやらに便乗してみようか【長文】
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ここ数日、「ドラゴンボールハラスメント」なる言葉が散見され、ネットが炎上しているとのこと。
ことの発端は下記の記事↓
【新着記事】
『ドラゴンボール』を読んだことのない僕が、先輩に反論するために全巻読了した結果https://t.co/oTkCdbD1Wcアシスタントエディターの八が、先輩に反論するため、26歳にして初めて『ドラゴンボール』を読み、当時ヒットした理由やゆとり世代の自分がハマらなかった理由を考えました。 pic.twitter.com/1Ql4dUUnJs
— 株式会社LIG公式アカウント (@LIG_J) 2018年10月14日
「株式会社LIG」のブログ内で「アシスタントエディター」という方が書いた記事が原因らしい。
26歳の彼はこれまでの人生で「ドラゴンボール」を読んだことがなく、先輩社員に「コンテンツ制作に携わっているのにドラゴンボールを読んだことがないのはあり得ない」と言われた。
「ドラゴンボール」の作品名はもちろん知っているが、20年以上前に流行った作品を今読むことにどれほどの意味があるのか。読んでいないことがそんなに大きな問題なのか。
そこに疑問を感じ「よし、じゃあ全巻読んで反論でもしてやろうか」と思って読んだところ、「ややおもしろくない」という感想に至ったとのこと。
ドラゴンボールにいまいち乗れなかった要因としては、「いきあたりばったりなストーリー」「荒唐無稽な世界観」「作画や物語の既視感」などが挙げられている。
「映画「アイアムアヒーロー」の進撃の巨人感w 説明不足が却ってミステリアスな恐怖を生む。不条理のゾンビ大量破裂」
これに対する原作ファンの反応はさまざまで、中でも「エディターと名乗る人間がドラゴンボールほどの有名作品を読んで、この程度の感想しか言えないのはヤバい」といった指摘は多く聞かれる。
また「個人のブログなら構わないが、会社名を背負って書く内容ではない」「批判前提で読んでおもしろいと感じるわけがない」という意見もあり、改めて「ドラゴンボール」のネームバリューの大きさやファンの熱さを証明した事例でもある。
一連の炎上の感想? 「うわぁ……」かな。ムキになって怒るようなことじゃないと思ったけど
まず一連の炎上についてだが、率直に言って「うわぁ……」という感想しかない。
僕は主にTwitterでの炎上を目にしたのだが、「自分がおもしろいと思っているもの、好きなものを『おもしろくない』と言われたことにイライラしている」人が非常に多いように感じた。
記事に登場する先輩社員とやらもそうかもしれないが、実際「自分がおもしろい、好きだ」と感じているものを誰かに「おもしろくない、嫌い、興味ない」と言われて逆上する人はかなり多い(気がする)。
本来、人それぞれ感じ方や意見は違うのは当たり前なのだが、感情の部分でなかなかそうはならない。
極端な話、自分が「いい」と思っているものを「よくない」と言われると、人格が否定されたと感じる人もいるのでは? というくらい。特に今回のように文字情報のみの場合はダイレクトに突き刺さるので、余計にそう感じる人は多いのかもしれない。
「映画「ドゥ・ザ・ライト・シング」。人種問題に切り込んだ? 違うね。他人の考えを許容できない器の小さいバカ」
「エディターなのに」云々についても同じ。「うわぁ……」としか言いようがない。
「ドラゴンボールがこれだけの化け物作品になったかを理解できない、しようとしないのはダメ」「エディターとしてはセンスがない」「無能」「薄っぺらい」等々の意見が散見されたが、え? それマジで言ってんの?
「アシスタントエディター」と名乗る人間が書いた1記事だけを読んで、その人の才能や資質をすべて見抜けるもんなの?
というか、26歳の人間の資質とやらをあっさり断言できるほど、世の中って有能揃いなの?
僕自身、とてもじゃないがそんなことはできないし、仮にそうだとしたらマジですごいと思うのだが。
「「ドラゴンボール超 ブロリー」感想。過去最高にブロリーがカッコいい。小物感満載のフリーザがボコられる」
「会社の名前を背負って~」については、もはや「別にええんちゃう?」レベルの話。
だって会社名義のブログでしょ?
そこに掲載されたということは、当然責任者が「問題なし」と判断したわけで。
公式Twitterや公式Facebookが刹那的にやらかすのとはわけが違うし、第三者がとやかく言う必要はないんじゃないの?
ドラゴンボール好きな僕が断言する。この作品は過大評価であると。過度に神格化され、バイアスがかかっていると
とまあ、今回の「ドラハラ炎上」についてはこんな感じなのだが、ここから先は記事についての感想を。
とりあえずの大前提として、僕はドラゴンボールが大好きである。
ことあるごとにドラゴンボールを引き合いに出してあれこれ語っているし、過去「ドラゴンボールベストバウトTOP10」なる記事も書いたこともある。
「好きなマンガは?」と聞かれて最初にドラゴンボールが浮かぶ程度には、この作品のファンだと言える。別にマニアでもないけど。
「俺的ドラゴンボールの名勝負ベスト10。歴代ベストバウトはどの勝負? 1位は当然あの試合だよな?」
それを踏まえた上で、今回の記事に対する感想なのだが、「わかるぞ」と。
マジな話、初見の人がドラゴンボールを「おもしろくない」と感じる気持ちはすげえわかる。
表題の通りなのだが、ぶっちゃけこの作品は過大評価。熱烈なファンによって神格化され過ぎたものだと思っている。
記事を書いた方が「批判前提で読んだ」ことによるバイアスはあるとは思うが、それと同じくらい「鳥山明の大人気作品」というバイアスもかかっているのではないか。
同時期の少年ジャンプ作品で言えば、僕の中では「ダイの大冒険」の方が断然上。というか、これほど過小評価された作品も珍しいというくらい、僕は「ダイの大冒険」を名作認定している。
「ダイの大冒険かっちょいい技ランキングTOP10。野郎の夢を全部叶えたろうマンガ。最強の剣で世界を守りたい」
また、どつき合いマンガのくくりを外せば、初見の人にとっては「スラムダンク」の方がドラゴンボールよりもハマる確率ははるかに高い気がする。
もっと言うと、アラバスタ編や空島編あたりまでなら「ONE PIECE」の熱量には遠く及ばない。
「現代のマンガ作品の礎を築いた」「世界中で大人気の化け物作品」という意見には大いに賛同するが、作品単体のおもしろさだけならドラゴンボール以上のものは普通にある(と思う)。新しい古いではなく。
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引き際を誤ったよね。最終回を迎えるチャンスはいくらでもあったのに
具体的には「引き際を誤りまくった作品」というのが一番かなと。
終わるチャンスを何度も逃し、そのつど蛇足な展開を重ねてきたのがドラゴンボール。
「ここで最終回を迎えておけば!!」というタイミングで引き伸ばしを続けた結果、記事内で言及されている「ストーリーのいきあたりばったり感」が強まってしまった。
「サザンオールスターズ年代別好きな曲(独りよがり)ベストを発表する。ベスト10が選べないから年代別にしてみた」
画力やキャラの魅力は問答無用にすばらしいが、ストーリーに奥行きがなくて没頭できない。
作品全体を通して、荒唐無稽な設定を抑え込むほどの説得力がない。
これが、僕がドラゴンボールを過大評価だと感じる要因である。
「「僕だけがいない街」感想。こんなマンガがあったことにビックリ。読み終わった瞬間、すぐに最初から読み直したのは初めて」
終わるタイミングはこれだけあった。ドラゴンボールは最終回のタイミングを都合6回逃している
コミックスを読み直すとわかるが、この作品には最終回のタイミングが少なくとも6回はある。
1回目は2巻。
主人公の孫悟空がブルマやウーロン、ヤムチャと出会い、ドラゴンボール探しの旅に出るパート。
ウーロンが神龍にギャルのパンティをもらったことで、願いを叶えたドラゴンボールがバラバラに。
大猿化した悟空がピラフ大王の城を壊し、ピンチを脱する。そこでドラゴンボール集めが終了し、パーティが解散するまでのストーリー。
マンガ作品としてはやや短いが、終わり方としては至極真っ当だと言える。
2回目は9巻。
桃白白に殺されたウパの父親を生きかえらせるためにカリン塔に登って修行したり、レッドリボン軍の基地に1人で乗りこんだり。悟空が獅子奮迅の活躍を見せるパート。
占いババの館で、1日だけあの世から舞い戻った祖父の孫悟飯と再会し、悟空が号泣。
再びピラフ一味との激戦を制し、ウパの父親がよみがえるまでのストーリーである。
いわゆる「レッドリボン軍編」と呼ばれ、アドベンチャー&バトル&感動が盛りだくさんの人気パートでもある。
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3回目は14巻。
「ピッコロ大魔王編」と呼ばれるパートで、親友であるクリリン、師匠の亀仙人など大切な仲間が次々に殺され、怒りに震えた悟空が悪の権化であるピッコロ大魔王との一騎打ちに臨む。そして、大苦戦の末にギリギリで勝利するという流れ。
ギャグを織り交ぜたこれまでの軽いノリが、一気にシリアスに傾倒したパートでもある。
満身創痍の悟空が「オラのすべてをこの拳にかける!!!!」と右手1本でピッコロ大魔王に勝利したシーンは、ドラゴンボール屈指の名場面と言えるのではないだろうか。
4回目は16巻。
ピッコロ大魔王との戦いから3年後に開かれた天下一武道会。
ピッコロの分身であるマジュニアをラスボスに配置し、大人になった悟空が修行の成果を如何なく発揮するパート。
牛魔王の娘チチと結婚したり、いつの間にか神様を超える強さを身につけていたりと悟空の身辺にも大きな変化が訪れる。
ピッコロ(マジュニア)を撃退した悟空が「私の代わりに神になってくれぬか」という神様からの依頼を断り、チチを連れて筋斗雲で飛び去るラスト。あそこは最終回を迎えるには絶好のタイミングだった。
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5回目は21巻。
「サイヤ人襲来編」と呼ばれ、「レッドリボン軍編」と双璧をなす人気パート。
圧倒的な強さを誇るサイヤ人を前に仲間は次々と倒れ、ピッコロ大魔王でさえ「勝つ自信はない」と言い切ってしまうほどの絶望感を味わうZ戦士たち。
必殺の界王拳や元気球も通じず、大猿化したベジータに悟空は全身の骨を折られてしまう。あとから駆けつけたクリリン、悟飯、ヤジロベーとともに何とかベジータを追い返し、地球防衛に成功するまでのストーリーである。
戦いの最中、ピッコロが悟飯をかばって命を落とすシーンは、当時の読者に大きな驚きと感動を与えている。
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6回目は28巻。
サイヤ人に殺された仲間を生きかえらせるためにナメック星を訪れた悟空たちが、ベジータやフリーザ一味と壮絶なドラゴンボール争奪戦を繰り広げるパート。
クリリンを殺された怒りで伝説の超サイヤ人となった悟空が、悪の帝王フリーザを倒すまでが描かれている。
また強さを数値化する装置「スカウター」が大活躍するパートでもあり、それぞれの戦闘力が明記されたことでキャラの格付けが進んだのも大きな特徴である。
フリーザが発した「私の戦闘力は53万です」という言葉は、我々オーディエンスを奈落の底に突き落とすには十分な破壊力を秘めていた。
え? 2、3万の戦闘力でしのぎを削っていたアレは何だったの? みたいな。
鳥山明は長編を描いたらダメな作者だった。「Dr.スランプ」くらいの長さの作品がちょうどいい
何度も物語を締めるチャンスがありながら、そのつど逃してきたドラゴンボール。
人気作品ゆえの引き伸ばしか、作者の意向かは不明だが、とにかくこれはキツい。
改めて見返すと、初見の人がストーリーに奥行きを感じず設定を受け入れられなかったことにも大いに納得がいく。
「さくらももこ訃報ってマジか。漫画家というよりエッセイストかな。「もものかんづめ」の衝撃とその思い出」
実際、2巻の終了間際に作者が「今までご愛読ありが……いやいや」と言っているし、16巻の巻末では「もう少しだけ続くんじゃ」とも言っている。
また「サイヤ人襲来編」ではベジータが「俺は宇宙一強いんだ」と憤るシーンがあったり。
「フリーザ以上の悪人は思いつかない」という作者の嘆きをどこかで見た記憶もある。
毎回、これ以上ないくらいの全力で敵役を構築し、後先考えずにフルスロットルで突き進む。その結果、「いきあたりばったり」なストーリーができ上がってしまったというヤツ。
はっきり言って、フリーザ編以降のセル編や魔人ブウ編は蛇足以外の何物でもない。
界王様の上に大界王様がいて、さらにその上に界王神がいる。
で、界王神と対になる存在としての破壊神は、自らの意志で「破壊」を許されたデンジャラスな神様。
世の中には宇宙が計12個あり、各宇宙にそれぞれ界王神と破壊神が存在する。
それらの神を統べる存在として全王様がいるのだが、なぜか悟空と仲がいい。
もう、えーかげんにせいであるww
後付けもここまでいくと清々しいww
ドラゴンボール好きなエピソード(編)ベスト3。懐古厨と言われるかもしれないけど、やっぱり僕は…。鳥山明はキャラのポイ捨てがうまいんだよな
そう考えると、やはりドラゴンボールは「神格化された過大評価作品」だと言わざるを得ない。
恐らくだが、鳥山明はドラゴンボールのような長編には向いていない作者なのだと思う(今さら?)。
理想は「Dr.スランプ」くらいの長さ。
全18巻くらいでサクッと終わらせれば、前後の破たんも少なく情熱も継続できる。
ストーリー構成や辻褄、伏線など。記憶力を擁するややこしい作品を描いてはいけない作者なんだと、強く思った次第である(今さら?)。
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