ジャーマル・チャーロがキャンプフォートを圧倒敵な強さで下して防衛に成功!! いや、こりゃすげえ。もうS・ウェルター級でやることがなくなるんじゃないの?

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海辺と鳥イメージ
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2015年11月28日(日本時間29日)に米ダラスのボンブ・ファクトリーでIBF世界S・ウェルター級タイトルマッチが行われた。
王者のジャーマル・チャーロが同級14位の挑戦者ウィルキー・キャンプフォートを4R1分16秒でTKOに沈め、初防衛を果たした。

2015年9月にコーネリアス・バンドレイジを圧倒的な強さで下し、IBF王座を奪還したジャーマル・チャーロ。約2ヶ月という短いスパンでの防衛戦をものともせずに難敵キャンプフォートを退けた。

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チャーロ兄弟の兄として、スター候補の一人に数えられるパワフルなファイターであるジャーマル。2016年の快進撃が期待されるボクサーである。

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始まった瞬間わかる。ジャーマル・チャーロの勝ちだ

まず最初に申し上げておくと、開始20秒でこの試合の結果はわかると思う。
ジャーマル・チャーロの勝ちだ。

圧力が違う。
距離が違う。
パワーが違う。
パンチ力が違う。
身体の大きさが違う。

そして、レベルが違う。

キャンプフォートはチャーロの圧力に気圧されてまったく手が出ない。
リーチの差を埋めるためにスピードと出入りでかく乱しなくてはいけないのに、チャーロの静かなプレッシャーに身体が硬直して動けないのだ。

手を出すとカウンターで迎撃されそうな雰囲気をビンビン感じているのだろう。しかもパンチをもらえば、自分があっという間に倒れてしまうこともわかっている。ガードを下げることもできず前に出ることもできない。まるで蛇に睨まれた蛙である。

軽いパンチの交換のみで終わった1R。
ほとんど動きらしい動きは見られなかったが、両者の実力差は歴然だ。

2R開始直後、チャーロが数発矢のような左を放つ。
キャンプフォートはしっかりとガードをしているが、あまりの威力に身体が流される。
苦し紛れのワンツーを返すキャンプフォート。だが踏み込みが甘いためにまったく届かない。

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そして1分20秒過ぎ。
チャーロの重く速い左がキャンプフォートのガードを突き抜けて顔面にヒット!! 返しの右を打ち込む必要もなくキャンプフォートが吹き飛ばされて尻餅をつく。

すぐに立ち上がるキャンプフォートだが、表情は虚ろだ。
パンチが効いたというより、強すぎて手に負えないと言わんばかりの表情である。

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虫の息状態のキャンプフォートを落ち着いてボコるチャーロ

3R。
余裕のチャーロに対し、すでに息も絶え絶えのキャンプフォート。
パンチの交換自体はそこまで多くはない。だが、キャンプフォートにしてみればリング上で対峙しているだけで体力を奪われていくような感覚なのだろう。頭を振ったり踏み込んでジャブを打ち込んだりと、いろいろ試そうとしているのはわかるのだが、すでに相手を呑んでしまっているチャーロにはまったく通じない。まるで練習をするようなリラックスした表情で重いパンチを打ち返す。

「ワイルダーvsスピルカ予想!! スピードのあるスピルカを迎えうつワイルダー」

チャーロが打つ瞬間に合わせて一歩前に出るキャンプフォート。
だが、チャーロの腕が伸びきる前にブロックしたにもかかわらず、キャンプフォートが身体ごと吹き飛ばされる。
ベストのタイミングではないパンチで相手を身体ごと弾き返すパワフルさを見せつけるチャーロ。なすすべのないキャンフォートはロープを背負ったままガードを固めることしかできない。一方的という言葉だけでは言い表せないほど一方的な試合である。

結局、2、3、4Rにそれぞれ一度ずつ。都合3度のダウンを奪いキャンフォートをギブアップに追い込んだジャーマル・チャーロ。4R1分16秒でTKOに下し、初防衛に成功した。
柔らかい動きとシャープなパンチが持ち味の(はずだった)挑戦者に実力差をまざまざと見せつけての勝利である。

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パワー抜群の横綱相撲。圧倒的という言葉はこの男のためにある

右を顎の前に置き、左をややリラックスさせた構えから鉛のような重たいジャブを打ち込む。フリッカー気味に打ち込む左の威力は抜群で、相手をガードごと吹き飛ばす破壊力を持つ。対戦相手からはチャーロの拳が突然大きくなるように見えるのではないだろうか。

重い左で相手をたじろがせ、リーチを活かした右を叩き込む。
丸太のような腕を躊躇なく振り下ろす様は、まさしく叩き込むといった表現がピッタリである。

チャーロのパンチはゴロフキンのように相手の芯に響くパンチではなく、どちらかといえば外側から全体を破壊するようなイメージである。どちらがいいというわけでもないが、強打者であっても拳を傷めにくいタイプの選手ではないかと予想する。

スピードもパワーも申し分ないのだが、フィジカルに頼って強引に押し込むようなことはしない。左のジャブで徐々に弱らせ、玉砕覚悟の相手を軽々と弾き返し、ロープを背負わせたところでボディから顔面へのコンビネーションを叩き込む。
真綿を締めるように相手を袋小路へ追い込み、完膚なきまでに叩き潰すのだ。

今回のキャンプフォートなど、左のパワーだけでひん死の状態に追い込むほどの実力差である。それでも一気に押し切ることはせず、しっかりとロープを背負わせた状態から連打を打ち込むという周到さ。
タイトルマッチで挑戦者を練習台にしつつ、お客をしっかり楽しませる。25歳という若さで、横綱相撲と呼ぶにふさわしい試合運びである。

さらなる強敵との対戦を見据えているのだと想像するが、一つ一つ階段を上がる勤勉さも持ち合わせた選手なのだろう。

この階級でまだやることあるか? エリスランディ・ララとミゲール・コットをぶっ飛ばせ

いや、ジャーマル・チャーロすげえ。
こりゃあとんでもない。

攻撃力だけで見れば、もうすでにこの階級でやることはないのではないかとすら思える。
リーチも長いし、上背もある。果たしてこのチャーロにまともに打ち込むことができるボクサーが現在のS・ウェルター級にいるのだろうか。
リアム・スミスなどでは相手にならないだろうし、後はエリスランディ・ララのようなタイプを相手にしたときにどうなるかといったところだろうか。

左のガードがやや低いので、思いきって外側からオーバーハンドの右を打ち込まれた場合にどうなるか。
事実、タイトルを奪取した前回の試合でバンドレイジのパンチがかすめるシーンもあったので、チャーロ攻略の狙い目はそこではないかと思う。
問題はチャーロのプレッシャーに負けずに前に出る勇気と思いきりのよさがあるかどうかだが。

まあ、アルバレスのプレッシャーにも屈しなかったエリスランディ・ララならリーチの差も感じさせないだろうし、かなりいい勝負になるのではないだろうか。
試合巧者のララに翻弄されてしまうのか。それとも自慢のパワーで捻り潰すのか。リーチ差というアドバンテージを失ったチャーロがどのような対応力を見せるかにも大いに注目である。

そして、エリスランディ・ララに勝ちさえすれば、チャーロには何のためらいもなくミドル級に殴り込んでもらいたい。

この選手のポテンシャルから考えても今回のキャンプフォート戦のような試合などは1試合で十分だ。何の証明にもならない防衛戦を何度繰り返したところで無駄に時間を浪費するだけである。
一刻も早くエリスランディ・ララとの統一戦、そしてミドル級転級を決断するべきだろう。

チャーロ自身、ここ数年で肩周りを中心にだいぶ身体が大きくなっている。いずれS・ウェルター級にとどまるのも厳しくなってくるものと思われる。
恐らくこの体格であればミドル級でも十分やっていけるだろうし、ミドル級でこの選手のパワーがどれほど通用するのかにも興味がある。

転級前の最終試験としてミゲール・コットとキャッチウェイトで激突するというのもいい。チャーロがコットのディフェンスとステップを攻略できるのか。それとも翻弄されてしまうのか。これまた注目のビッグカードである。
そしてこのビッグマッチに勝利すれば、もはやチャーロのミドル級参戦に文句をつける人間は誰もいなくなるだろう。

ジャーマル・チャーロによるミドル級席巻計画

ミドル級では手始めにブライアン・ローズあたりをボコって名前を売る。
次にクィリンやクリス・ユーバンクJr.に圧勝し、ジェイコブスかビリー・ジョー・サンダースから王座を奪うのだ。
そして仕上げはアルバレスvsゴロフキンの勝者との激突である。

さすがにゴロフキンやアルバレスに勝つのは厳しいかもしれないが、ビリー・ジョー・サンダースに勝ってミドル級のタイトルを奪還するくらいならチャーロのポテンシャルがあれば十分可能ではないだろうか。
しかも、そこまでいく頃には十分にスターの仲間入りを果たしているはずである。仮にゴロフキンやアルバレスに勝てないまま、さらに上のS・ミドルに挑戦したとしても、批判を受けることはないだろう。

「“カネロ”・アルバレス、コットに大差判定勝ち!! 最高峰の技術戦に完勝し、王座獲得!! ボクシング界の主役が今日も輝く」

S・ミドル級ではアブラハムをパワーで押し切り、バドゥ・ジャックやジェームズ・デゲールのテクニックをもパワーでねじ伏せて欲しい。
それほどの活躍を見せることができれば、チャーロ自身のキャリアは大成功と言っていいはずである。

「アブラハム、マーティン・マレーに判定勝利で防衛成功!!」

まあ、さすがにそこまで順調には進むことはないだろうが、いずれはもっと重いクラスでの活躍を見てみたい。

逆に階級を下げて激戦区のウェルター級に挑戦するというのもおもしろいが、さすがにあの体格でウェルター級は厳しいように思える。

果たしてジャーマル・チャーロはどこまで行けるのか。まさしく2016年の躍進に期待するボクサーの一人である。

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