バランチェクvsセペダ感想。バランチェクってこんなに荒っぽい選手だったんだな。ホセ・セペダはちょっとアドニス・スティーブンソンっぽく感じた【結果・感想】
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
2020年10月3日(日本時間4日)、米・ネバダ州ラスベガスで行われたWBC世界S・ライト級挑戦者決定戦。前同級IBF世界王者イバン・バランチェクとWBC2位のホセ・セペダが対戦し、激しい打撃戦の末に5R2分50秒でセペダが勝利。両者ともに4度ずつのダウンを奪い合う壮絶な倒し合いを制した一戦である。
元IBF王者イバン・バランチェクと、2019年9月に元2階級制覇王者ホセ・ペドラサに勝利したホセ・セペダの挑戦者決定戦。
試合は開始直後から積極的に前に出て腕を振るバランチェクに対し、セペダは後退しながらもカウンターで応戦する。だが1R目にいきなり2度のダウンを奪われるなど、バランチェクの圧力を抑えきれず。
ところが2Rに入ると打ち終わりを狙うセペダのカウンターが機能し、バランチェクから2度のダウンを奪い返す。と思ったのもつかの間、ラウンド中盤には再びバランチェクのカウンターを被弾したセペダがダ ウンを喫する。
その後も両者がダウンを奪い合う一進一退の展開のまま迎えた5R。
ロープ際でバランチェクの突進に巻き込まれたセペダがこの日4度目のダウンを喫するものの、再開直後に左のカウンターをバランチェクの顎にヒット。
仰向けに激しく倒れたバランチェクはそのまま動けず、カウントの最中にレフェリーが試合を止める。
その瞬間にホセ・セペダの勝利が決定。壮絶な打撃戦に決着をつけた。
カシメロvsミカー、ローマンvsパヤノ、フィゲロアvsバスケス、テイラーvsコーンソーン振り返り。いい試合が多かったですね。え? チャーロに弟なんていたの?
バランチェクってこんなにバランスの悪いマン振りマンだっけ? と思ってWBSSの試合を観直したら納得した
イバン・バランチェクとホセ・セペダによるWBC世界S・ライト級挑戦者決定戦。
元IBF王者イバン・バランチェクはWBSSトーナメントの準決勝でジョシュ・テイラーに敗れたものの、それまでは全勝をキープしていた強豪。対するホセ・セペダも元2階級制覇王者ホセ・ペドラサに勝利し、現WBC/WBO王者ホセ・カルロス・ラミレス相手に判定まで粘った実績を持つ。
日本では決して知名度が高いとは言えない両者だが、いずれも文句なしの実力者である。
僕もこの試合は地味ながらもいい組み合わせだと思っていて、特にWBSSでのパフォーマンスを観て気に入っていたイバン・バランチェクには期待していた。
のですが……。
試合開始後すぐに思ったのが「あれ? バランチェクってこんなにバランスの悪い大振りマンだったっけ?」。
前に出る圧力と躊躇のないスイングがこの選手の持ち味ではあるが、僕の中ではもう少しコンパクトな連打を打つイメージだったのだが……。
1Rから立て続けにダウンを奪ったものの、打ち終わりをセペダに狙われるシーンも目立つ。
サイドに動かれるたびに大きくバランスを崩し、テンプルにカウンターを被弾。上半身と下半身の連動もクソもない。
その上、相手がサウスポーだろうが関係なく真正面に立ち、戦術はとにかく前に出て腕を振るのみという。
おおう……。
こんな感じだったのねイバン・バランチェクって。
ここまで荒っぽいファイトスタイルだと、さすがに長持ちはしないんじゃないか?
と思っていると、案の定ガラ空きの顔面にセペダのフックを浴びてダウンを喫し、ダメージを蓄積させていく流れに。
あれれ? バランチェクってマジでこんな選手だったっけ? と思い、WBSSでのvsアンソニー・イギット戦を観直してみたところ……。
~
「WBSS Season 2 Quarter-Finals – New Orleans – Prograis vs Flanagan & Baranchyk v Yigit」
ああ、なるほど。
距離を外されるとバタバタするけど、自分から前に出てくる相手とはめちゃくちゃ噛み合うってことか。
同じサウスポーと言ってもアンソニー・イギットは基本的に中間距離からやや近い位置での打ち合いを得意とする。なおかつ今回のホセ・セペダほどサイドへの動きを意識しているわけでもない。
バランチェクの前進を真正面から受け止め続けたせいで試合後に左目がボッコリ腫れていたが、バランチェクもイギットがあの間合いで打ち合ってくれたおかげでバランスの悪さが顕在化することはなく。
で、準決勝のジョシュ・テイラー戦ではテイラーの足に追いつけず、そもそもの手数が減ってしまったと。
自分の距離では躊躇のない連打と剛腕、前に出る圧力を両立できるバランチェクだが、得意な間合いを外されるとあっという間に大振り+バランスの悪さが顔を出す。
今回はサイドに動きながらカウンターを狙うホセ・セペダとの距離が合わずに大振りになったものの、セペダにジョシュ・テイラーほどのフットワークがないせいで置いてきぼりを食うまでには至らなかった感じか。
ジョシュ・テイラーvsホセ・カルロス・ラミレスの統一戦は絶対に実現しろよな。グダグダのヘビー級とは違うところを見せろやw
ホセ・セペダいい選手!! ペドラサの器用さを突き抜ける馬力とポジション取り、何度倒されても立ち上がるタフネス
一方、勝利したホセ・セペダだが、いや~いい選手だなコイツ。
ホセ・ペドラサの器用さを突き抜けるほどの馬力とポジション取り? のうまさがあり、バランチェクの剛腕で何度なぎ倒されても立ち上がるタフさも兼ね備える。
あれだけゴンゴン前に出て腕を振りまくる相手にカウンターを合わせるのは相当勇気がいると思うが、それでも2Rの後半にはしっかりとタイミングを掴んでいた。
特別スピードがあるわけでもなく、一見器用そうな感じもしない。その上、顔面がチャベスJr.に少し似ているという史上最低のプロフィールの持ち主なのだが、動き自体は割と緻密でパンチをピンポイントで身体の内側に効かせる印象。
バランチェクはどちらかと言えば上半身と腕力の強さを活かして外側をぶっ壊すイメージだが、セペダのパンチは芯にダメージが残るというか。ミドル級のチャーロ兄とゲンナジー・ゴロフキンのパンチの違いがこの両者にも共通している気がする。
ナバレッテ2階級制覇!! って言うほど勝ってるか? これ。ルーベン・ビラの五十嵐俊幸っぽさ。持たざる者の辛さというか
試合を決めた5RのKOパンチとか、ゾッとする倒れ方でしたからね。
「グシャッ」という音が聞こえてきそうな、試合後の安否が心配になるほどの倒れ方。それこそ2009年5月のマニー・パッキャオvsリッキー・ハットン戦のKOパンチを思い出したのだが、どうだろうか。
Arguably the craziest thing you will see in 2020.
(And that says everything)@ChonZepeda | #ZepedaBaranchyk pic.twitter.com/8x1ldLv4qr
— Top Rank Boxing (@trboxing) October 4, 2020
2014年9月のオルランド・サリドvsターサク・ゴーキャットジムを上回る倒し合いの末、パッキャオvsハットン戦並の結末とか、どれだけ欲張れば気が済むんじゃ? という話で。
王者ホセ・カルロス・ラミレスにも勝てる可能性? 少しアドニス・スティーブンソンっぽさがあるんだよなコイツ
なお、これで王座への挑戦資格を得たホセ・セペダは順調にいけばホセ・カルロス・ラミレスとの再戦が実現するわけだが……。
はっきり言って勝利の可能性はあると思う。
前戦もジャッジ1人が114-114をつけた上での判定2-0という結果で、ラミレスにとっても決して楽な試合だったわけではない。それこそ先日のビクトル・ポストル戦よりも競っていたのでは? というくらい、ホセ・セペダは健闘していた(と思う)。
僕のポストル…。ホセ・カルロス・ラミレスは強化版ルーカス・マティセだったな。統一戦が実現しないならvsパッキャオが観たい
巧みなポジション取りと多彩な右で相手を誘い出し、ガードの真ん中から左の1発を通す。
改めて観ると、ややアドニス・スティーブンソンっぽさのある選手。それこそ1発で倒せる左の威力さえあれば、ホセ・カルロス・ラミレスにも負けなかったのではないか。
再戦したとしても間違いなく厳しい試合になるとは思うが、3-7くらいの割合でホセ・セペダにもチャンスはある気がする。前半のどこかで1度ダウンを奪った上で2-1の判定とか、そんな感じで。
まあ、現実的にはラミレスはジョシュ・テイラーとの統一戦が忙しくてセペダの相手をしている暇はなさそうだが。
そもそもセペダとは二度とやりたがらない気もする。
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
【個人出版支援のFrentopia オンライン書店】送料無料で絶賛営業中!!