青木真也vsジェームズ・ナカシマ感想。すげえな青木。僕が知る中でのベストバウトかもしれん。でもUFCに行くのは違う気がするぞ【2021.1.22】

青木真也vsジェームズ・ナカシマ感想。すげえな青木。僕が知る中でのベストバウトかもしれん。でもUFCに行くのは違う気がするぞ【2021.1.22】

2020年1月22日、シンガポール・インドアスタジアムで行われたONEチャンピオンシップ:ONE UNBREAKABLE大会。
元ライト級王者青木真也が戦績12勝1敗の強豪ジェームズ・ナカシマと対戦し、裸絞めで1R2分42秒一本勝ち。不利予想を覆す快勝で約1年3カ月ぶりのONE本戦参戦を飾った。


まず最初に申し上げておくと、僕は普段ONE Championshipをあまり観ない。
それどころかMMA自体、RIZINとUFCをちょろっとかじる程度で、出場選手や勢力図等にも詳しくない。
 
あるべき場所に戻ってきた堀口恭司。朝倉海を1RTKOに沈めて王座奪還。やっぱりRIZINの現地観戦はサイコーだなw
 
今回のシンガポール大会も青木真也の試合以外は未視聴で、相手のジェームズ・ナカシマについても事前知識はまったくのゼロだったことを報告しておく。
 
なので、だいぶ的外れなことも言うと思うが、それを踏まえた上でお付き合いいただければ幸いである。
 
 
とまあ、たっぷりと予防線を張ったところで試合の感想を述べてみたいと思う。
 
ONE165現地観戦感想。イベントとして楽しかった。人気の秋山成勲、感極まる青木真也。“知らん人同士のゴロゴロ”もちゃんとおもしろい
 

青木真也ナイスファイト。僕が知る中でもベストバウトに近い試合運びだった

まず今回の試合、青木真也は文句なしに素晴らしかった。
対戦相手のジェームズ・ナカシマは戦績12勝1敗の選手で、北米の格闘技団体LFAの元王者でもある強豪。聞くところによると、前評判では青木の不利予想が多かったとか。
 
実際にケージで対峙した両者を観ても、元ウェルター級のジェームズ・ナカシマは青木よりも一回り大きい。組み合った際の力感も青木を上回っているように感じた。
 
だが、試合が始まるとまったくそんなことはなく。
中間距離で右フックをヒットするなど、この日の青木はスタンドでも打ち負けない。
 
打撃を意識させておいて頭を下げて組みつき、脇に両腕をねじ込みケージに押し付けスルスルっとバックに回る。
そこから足を絡ませじっくりと相手の動きを封じ、最後はスタンドでのバックチョークでタップを呼び込む一本勝ち。
 
文句なしの勝利というか、パーフェクトとしか言いようがない試合運びでの完勝。勝利の瞬間は夜中にも関わらず大声を出してしまったほどww

僕の中での青木真也はグラップリングに特化したクネクネマンという印象で、今回のようなスタンドでの打撃はあまり観た記憶がない。
 
相手にあそこまで打撃を意識させることができれば、得意のグラップリングもさらに活きる。僕の知る青木真也の試合の中でもベストバウトに近い一戦だったのではないか。
 

37歳でこのクオリティを維持しているのはすごいよね。いまだに対抗できる日本人がいないというのも理解できる

しかし、37歳という年齢でこのクオリティを維持しているのはやはりすごい。
その上、今回はこれまでよりも進化した打撃も見せてくれた。
 
個人的に青木真也のことは好きでも嫌いでもないが、いまだにこの選手を脅かす日本人がいないというのも今回のパフォーマンスを見せられれば納得である。
 
本人はあまり興味がないらしいが、相手次第ではライト級王者返り咲きも十分あり得る。
 
 
2020年9月のこの試合とか、戦慄が走りましたからねww

1発のパンチも出さずにタックルを決めてあっさりバックに移行。そこからは「あんた、明らかに遊んでたでしょ」というか、いつでも終わらせられるところをあえて長引かせての判定勝ち。
 
このレベルの相手ではまるでお話にならないことを証明しただけの試合である。
 
 
試合後のコメントを聞いて「ひょっとしてRIZINに出たいの?」とも思ったが、実際には自分の力が発揮できる場所に呼ばれないことへの不満を吐露しただけだったという。


 

グラップリングに特化したことが長持ちの要因? 試合はなるべく短く、倒れるときはあっさり倒れてダメージは最小限に

何となくだが、青木真也はグラップリングに特化したことがこの年齢までコンディションを維持できている大きな要因なのでは? 思わされる。
 
現在の戦績が47勝9敗1無効試合。47勝のうち、実に29勝を1Rで決めている。
試合運びもなるべく相手の打撃に付き合わずに早々に組みに持ち込み、長い手足を活かしてスルスルと絡みついて極めきるスタイル。
 
極力スタンドでの打ち合いを避けることでダメージの蓄積を防ぎ、短い時間で試合を切り上げるので疲労も少なくて済む。
 
また、負けた試合は9敗中7敗が打撃によるTKO負け。1発効かされるとガクッと膝を落とすシーンが多く、無駄に耐えない分ダメージを引きずらない負け方なのだろうと。
 
山崎秀晃vs安保瑠輝也感想。敗戦を糧に覚悟を持って挑んだ山崎が怒りの鉄拳で安保をKO。ああいう“怒り”ってマジでバカにならないんだよな
 
相手の打撃が当たる前に得意のグラップリングに持ち込みさっさと試合を終わらせるのが信条。その反面、打たれ弱いので負けるときは1発もらってガクッといかれるのがお決まりのパターン。
 
現在のMMAは打投極すべてを高次元(平均80点以上)で極めた上で、どの部分で90点を取るか、いかに相手の80点以下の部分で勝負できるかというスポーツライクな舞台になっている(と思う)。
初期のMMAのように、立ち技出身の選手が引退後の小遣い稼ぎに入ってくる余地はどこにも残っていない。
 
だが、高度に競技化したその舞台において、青木真也のようにグラップリングに特化したオールドスクールな選手が生き残っているというのはなかなか興味深いものがある。
 

UFC行きはどうなんだろうな。ちょっと厳しいと思うけど。青木は今のままが一番いいような気が…

なお今回の勝利を受けて「青木がUFCで戦う姿が観たい」という声がいくつか聞こえてきたが、正直それはちょっと……と思っている。
 
確かに青木真也はグラップリングの達人+ライト級日本人のトップクラスに違いないが、UFCで通用するかと言ったら……。
 
申し上げたように青木はこれまで喫した9つの敗戦のうち7つが打撃によるTKO負け。スタンドでの打ち合いに付き合わないと言っても、相手のスケールが一定以上になると抑えきれなくなるのは明らかである。
 
 
仮にUFCに行っても組み合わせ次第では何勝かはできるかもしれないが、決して大活躍とまではいかないのではないか。
 
しかも、それは本人のスタンスを考えるとあまり得策とは思えない。負け方によってはここまで慎重に築き上げてきた“青木ブランド”が崩壊する可能性すらもあるわけで。
 
そもそも論として、得意のグラップリングにおいてもダスティン・ポイエーやチャールズ・オリヴェイラの方が一段上のように感じるのだが……。

 

技術的なことは全然わからないが、自分の得意分野で手も足も出ずに負けてしまった場合、ご意見番としての今後にも影響が出てしまうという噂もあったり、なかったり。
 
 
また、これもたまに聞こえてくるのだが、「RIZINで日本人最強を証明する」というのも微妙な気がしている。
 
恐らく青木の持ち味がもっとも活きるのはケージ。金網をうまく使って相手の動きを封じるシーンが多く、舞台がリングになるとそれが半減してしまうのではないか。
 
2019年5月のクリスチャン・リー戦でも「ブレイク→リング中央での再開」という流れがあったが、もしあの試合がケージであれば、あのまま極めきっていた可能性もあったと思う。

たとえリングでも矢地祐介、上迫博仁あたりには普通に勝ちそうだが、トフィック・ムサエフやピットブル兄といったトップクラスを抑え切るのは難しいように思う。
 
もちろんタラレバの話なのでいくらでもケチをつけることは可能だが。
 
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だからアレだ。
青木は今後もこのままでいい
 
プロレスに比重を置きつつ年に2、3試合をこなし、その合間に国内の格闘技団体に外から茶茶を入れるご意見番。
無理に挑戦などはせず、自身のブランドを守りながら“生き生きしてる俺”を見せて最強幻想を振りまいているのが最適解なのだろうと。
 

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