ヤンキース田中将大、完璧な投球で5勝目!! 今季初めて100球を超える

夏の雲イメージ
ヤンキース田中将大、8回途中2安打2失点で今季5勝目。初の100球超えも!!

アメリカ大リーグ、ニューヨーク・ヤンキースに所属する田中将大投手が、現地時間の7月9日（日本時間7月10日）に本拠地ヤンキースタジアムで行われたアスレチックス戦に先発。今季最長の7回途中まで投げて2安打2失点6奪三振1四球の好投で5勝目（3敗）をあげた。

「マー君炎上!! 自己ワーストの3被弾で3敗目」

2回に不運な出塁なども絡んで2点を失った田中だが、それ以降は調子を上げて、3回から8回途中まで出したランナーは振り逃げの一人というほぼ完璧な投球を披露。投球数も今季初めて100球を超える114球を投げ、前半戦最後の登板となったこの日を最高の形で締めくくった。

この快投によって開幕当初から続く怪我への懸念を完全に払しょくしたとは言い難いが、プレーオフ進出に向けて首位を走るヤンキースにとっても田中の復調が好材料となることは間違いないだろう。

「ヤンキース田中将大復の復活したのか? 不調は続くのか? フォームの比較で検証する」

今日の相手はア・リーグ西地区に所属するアスレチックス。
今季は最下位に低迷しているものの、左打者を多く並べた打線は粘り強いく手強い。昨シーズン、ダルビッシュを大いに苦しめたしつこさは依然として健在といえるだろう。

1. 先制を許すものの、今日の田中は調子がいいぞ
2. 調子を上げて相手打線を翻弄する田中マー君。真骨頂を見せつける!!
3. 今季初めて100球を超えても球威の落ちないフォーシーム。気持ちいいくらいの快投
4. オールスターブレイクでしっかり休んで、夏場に調子を上げてもらいたい

先制を許すものの、今日の田中は調子がいいぞ

初回。
先頭バーンズを初球レフトフライに打ち取る。
続く2番ボートへの2球目。外角への93マイルのフォーシームがうなりをあげてキャッチャーミットに吸い込まれる。うん、ボールにはなったがなかなかの力強さだ。ベース板の上での伸びを感じる。
3球目の88マイルスプリットでボートを内野ゴロに打ち取る田中。スプリットのキレもなかなかいい。

続く3番ゾブリストへの初球、92マイルのフォーシームがストライク。お、これもいい。今日の田中のフォーシームには力強さがある。
2球目は内側へのツーシーム。通称フロントドアだ。ゾブリストがバットを出すが、力のない打球がフラフラと上がり内野フライ。
初回を7球で終えた田中。うん。今日の立ち上がりはいい。最高の入りだ。

2回。
先頭は4番レディック。
2-0からの3球目。93マイルのフォーシームをファールした際、レディックのバットがキャッチャーミットに当たってしまう。打撃妨害で出塁。おや、珍しい。

5番バトラー。この試合初めての右打者である。
初球、外角の91マイルツーシームでワンストライクをとった後の2球目。胸元を狙ったツーシームがやや真ん中高めに入る。
「あ、甘い!!」
そう思った瞬間、バトラーが腰を鋭く回転させて振り抜く!!
打球は詰まりながらもレフト線を転々とする。その間に一塁ランナーが一気にホームを駆け抜ける。アスレチックスがあっさりと1点を先制。
完全な失投だった。仕方がない。ここは切り替えていこう。

続く打者は5番の左打者デービス。
初球、2球目と投じたスプリットがいずれもベースの手前でバウンドする。セットポジションになったところで微妙にコントロールを乱す田中。結局2-2から投げたスライダー、3-2から投げたツーシームが外れてフォアボールを出してしまう。

ノーアウト1、2塁で迎えるバッターは7番ローリー。
1-2と追い込んでからの4球目。87マイルのスプリット。ボテボテのゴロがショートへ。ゲッツー!! よし! これはナイスピッチングだ。

ツーアウト3塁となり打席には8番カンハ。
初球はフォーシームが低めに外れて1-0。だが、球速はこの日ここまでで最速の94マイル。
2球目は88マイルのスプリット。かなり甘く入ったが、カンハの打ち損じでファール。
カウント1-1となって投じた3球目。92マイルツーシームがまたしても真ん中に!!
「やばい!!」
カンハが鋭くバットを振り抜く!!
やや詰まりながらも打球はライト前へ。三塁ランナーが生還して2点目。
うわぁ、2球とも完全に失投だ。いい球を投げているだけにこの2球は悔やまれる。

2アウトでランナー2塁とピンチは続く。
打席にはラストバッターのセミエン。
フルカウントからスライダーで内野ゴロに打ち取りスリーアウト。この回2本の長打を許して2点を失った田中だが、ここでピンチを切り抜ける。

2点は失ったものの、調子自体は悪くないと思う。
フォーシームは走っているし、スプリットもなかなかいい。前の試合までのスプリットは88、9マイル前後とスピードはあったがキレが悪く、痛打される場面が観られた。しかし、今日のスプリットの落ちは鋭い。スピードは86～88マイル前後とわずかに下がっているが、加速するように落ちる軌道は相手打者にとって脅威だろう。多少制球しきれていない部分はあるが、思い切り腕を振って投げているからか、去年のいいときに戻っているように思える。調子が悪いときに依存しがちだったカットボールをここまでほとんど投げていないところからも好調さがうかがえる。それだけにツーシーム2球の失投が本当に残念だ。

調子を上げて相手打線を翻弄する田中マー君。真骨頂を見せつける!!

3回。
この回、1番から始まるアスレチックスの上位打線3人をいずれも内野ゴロで片づけた田中。
特に3番のゾブリストへの投球はよかった。3球目の87マイルスプリットで空振りをとった後、4球目に投げた94マイルのフォーシーム。ゾブリストは完全に振り遅れのファール。スプリットの鋭さ、フォーシームの威力があるからこそできる組み立てだ。そうそう、これこそ田中マー君の真骨頂ですよ。

今さらだが、田中の強みは左打者の外角にスプリットとツーシーム、そして外から入るスライダーなどを自由自在に使えることだ。そのため、対左をまったく苦しない投球ができるのである。スライダーとフォーシームのごり押しスタイルで、粘られると辛抱しきれなくなるダルビッシュとはこの辺りが一味違う。

4回。
さらに調子を上げる田中。
先ほどツーベースを打たれたバトラーへの投球もすばらしい。
外角への76マイルのカーブ、83マイルのスライダーと徐々にスピードを上げ、93マイルのフォーシームで勝負。低めに外れた次の球はスライダーでのフロントドア。ラストは外角へのスプリットで空振り三振。
振り逃げで出塁を許すものの、まともなスイングをさせない組み立てはさすがのひと言だ。これぞキリキリ舞いというヤツである。

ただ、時折スプリットをゆうゆうと見逃される場面があるのが気にはなるところではある。やはり多く投げるせいで、徐々に軌道が読まれているのかもしれない。まあ、それでも今日に関していえば、まず問題はなさそうだが。

ヤンキースが4-2と逆転して迎えた5回。
田中が内野ゴロ2つと外野フライの計8球でこの回を終わらせる。点を取った次の回をあっさり抑える。野球の定石どおりのピッチングだ。

特にラストバッターセミエンへの投球はよかった。
打ち気がないとみると初球、2球と真ん中付近にスライダーを投げてあっさり追い込む。多少スピードを上げたスライダーを内側から曲げてファール。1球外側のスプリットを見せてカウント1-2。最後は同じコースから外に逃げるスライダーを引っかけさせてショートゴロ。
気持ちいいくらいに計算通りの組み立てだ。キャッチャーもリードしていて楽しいのではないか。

6回、7回と無難にアウトの山を築く田中。
2回に痛打されたバトラーへの対策はほぼ完ぺきといっていい。
スイング軌道的に外側に落ちる変化球が打てないバトラー。外に落ちるスライダー2球で追い込み、1球高めに速い球を見せてから、最後は外角低めへのスライダー。やや甘く入ったが、その前のフォーシームが効いているのでミスショットを誘う。
そう、このフォーシームを見せ球に使う投球。僕が再三言っいる組み立てだ。威力のあるスピードボールを高めに見せて同じ位置から低めに落とす。高低差をうまく使った投球をすれば、今よりも絶対楽になるはずなのだ。

「田中マー君、右肘の不安一蹴!! 圧巻の7回無失点8Kでレイズを支配」

また、今日は左打者が多いアスレチックス打線に対して、外側からストライクになるスライダーがうまく使えている。スプリット、ツーシームと逃げていく系の球との組み合わせによって、より効果を増しているように思える。先ほども言ったが田中とダルビッシュとの決定的な違いはこの引き出しの多さである。
制球もかなり安定しているし、投げミスにさえ気をつければそうそう崩れることはなさそうだ。

今季初めて100球を超えても球威の落ちないフォーシーム。気持ちいいくらいの快投

そして8回。
7回までに99球を投じている田中だが、この回もマウンドに上がる。オールスターブレイクも入るし、何より今日の調子ならある程度の球数を投げても問題ないと判断されただろうか。

先頭バッター、8番カンハへの初球は93マイルのフォーシーム。これが今日の100球目だ。ボールにはなったが球威の衰えはまだ感じない。今季は80球を超えたあたりから球威が落ちる傾向が見られたのだが、今日に関してはそれもなさそうである。

スライダーとスプリットのコンビネーションでカンハを三振に打ち取りワンアウト。もう1球高めにフォーシームを見せられればもっと楽に打ち取れる気はするが、まあそれはいい。

続く9番セミエン。
初球は外を狙ったスライダーが内側に抜ける。
2球目。これまた外を狙ったフォーシームが内側に抜ける。ファール。
お、ちょっとおかしいか?

そして、スプリットとスライダーの連投で攻める田中。打たれる可能性の少ない球を優先的に投げるのはわかるが、やはり若干偏り過ぎている気もする。案の定、抜け気味のスプリットを2球ファールされる。
フルカウントから投じた本日114球目。スライダーが高めに抜ける。
やばい!!
だがセミエンはバットを出さない。ストライク!! 三振!!
おお～、助かった。今のは助かった。完全なホームランボールだった。

ここで監督のジョー・ジラルディがマウンドへ向かい、田中の交代を告げる。
7回2/3、114球2安打2失点。スタンディングオベーションが沸き起こる中、ベンチに引き揚げる田中。最後の8回はやや疲れが見えたが、文句なしのナイスピッチングだった。

オールスターブレイクでしっかり休んで、夏場に調子を上げてもらいたい

試合はその裏に追加点を挙げたヤンキースがアスレチックスを6-2と突き放し、田中に今季5勝目（3敗）が記録された。

今日のピッチングは文句なしといってもいいと思う。
2回はやや変化球に頼り過ぎて制球を乱したことに加え、ツーシームの致命的な失投があったが、それ以外はほぼパーフェクトなピッチングだった。
疲弊気味のブルペンを助けられたのも大きいし、初めて100球を超えて投げられたことも収穫だろう。
今後中四日の登板があるのかはわからないが、前半戦をいい形で締めくくれたのはよかった。オールスターブレイクを挟んで後半戦。夏場の勝負どころでの活躍に期待できる内容だったのではないか。

「ヤンキース田中将大後半戦好発進!! 7回3失点のQSで今季6勝目」

試合ごと、イニングごとに好不調の波が激しい今季の田中だが、今後も今日のような安定したピッチングを見せてくれることを願う。そしてシーズン最後まで健康を保って欲しいと切に願う次第である。