世の中には二種類のボクサーがいる。ワイルダーとそれ以外である。天才ワイルダーがオルティスとの再戦を右1発で制する【結果・感想】

世の中には二種類のボクサーがいる。ワイルダーとそれ以外である。天才ワイルダーがオルティスとの再戦を右1発で制する【結果・感想】

ネバダ州イメージ
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2019年11月23日(日本時間24日)、米・ラスベガスで行われたWBC世界ヘビー級タイトルマッチ。同級王者デオンティ・ワイルダーvsランキング3位で元WBA世界同級暫定王者ルイス・オルティスの一戦は、7R2分51秒KOでワイルダーの勝利。見事再戦を制するとともに10度目の防衛に成功した試合である。
 
 
2018年3月以来の再戦となった今回。
前戦同様、サウスポーの特性を活かした慎重な試合運びのオルティスに対し、ワイルダーは得意の右を狙うもなかなか突破口を掴めず。序盤から中盤にかけてオルティスのペースで試合が進む。
 
7Rに入ると、左右の連打でオルティスを攻めるワイルダー。
対するオルティスもワイルダーの打ち終わりを狙い、これまでよりも踏み込みを強めて左のヒットを重ねる。
そのままオルティスの流れでラウンドが終わるかと思われたが、終了間際にワイルダーの右がガードの間からオルティスの顔面を捉える。
 
この右にまったく反応できずに被弾を許したオルティスはそのまま仰向けにダウン。何とか立ち上がったものの、ダメージを確認したレフェリーが試合をストップする。
 
それまでの劣勢を自慢の1発でひっくり返したワイルダー。
内定しているタイソン・フューリーとの再戦、そしてアンソニー・ジョシュアとの頂上決戦に向けて弾みをつける見事なKO勝利となった。
 
「ワイルダーvsオルティス再戦予想。7-3くらいでワイルダー有利かなぁ。オルティスがワイルダーの強打を12R避けきるのは困難?」
 

ワイルダーがまたやってくれました。K-1の武尊vs村越優汰戦もおもしろかったよね

約1年半ぶりの再戦となった今回。
前戦はワイルダーの衝撃的なKO劇で幕を閉じたわけだが、この試合もまた……。
 
もはや「驚愕の」「衝撃的な」といった枕詞が陳腐に感じるほどの凄まじいKO。以前から「ヘビー級だけは漫画でいい」などと申し上げているが、まさに漫画のような結末に顎が外れるほど驚いた次第である。
 
「タイソン・フューリー完全に戻してきやがったなw トム・シュワルツを2RボコしてKO勝利。ヘビー級だけはマンガでいいんだよ」
 
なお、僕はこの日は朝から外出しており、帰宅したのが夜。
クタクタの状態でAbemaTVのK-1中継を観ると、ちょうどセミファイナルの武尊vs村越優汰戦が始まるところ。
 
天邪鬼な僕は断然村越を応援していたのだが、まあ残念だった。
 
「村越の勝利だった」という意見も多数あるようだが、僕の中では延長or1ポイント差で武尊勝利かなぁというイメージ。村越は間違いなく健闘したし武尊攻略の糸口も見せてくれたが、やはりK-1の舞台で武尊に判定勝ちするのはいろいろな意味で困難なのかなと。
 
ただ、ビッグマッチを期待される那須川天心にとっても、いい参考材料が手に入ったのではないか。


試合の実現性については何とも言えないが、同じサウスポーの那須川天心にとってこの試合はありがたいネタになるかもしれない。
 
ワイルダー、ジョシュア、フューリー、クリチコ。2010年代後半ヘビー級名勝負振り返り。コイツらの直接対決はさぞかし盛り上がったんだろうなぁ()
 

試合の流れは前回と同じ。オルティスがワイルダーを翻弄し、ペースアップしたところで返り討ちに合う

そして本題のワイルダーvsオルティスについて。
 
まず試合の流れとしては、基本的には前回と同じ。
 
ワイルダーの左をオルティスが前手の右で封じ、ワイルダーに得意の右を打つタイミングを与えない。内側、外側と踏み出す位置を変えながら距離を詰め、一瞬の隙をついて左を当てていく。
 
対するワイルダーは打ち終わりを狙われていることに気づいているためなかなか手を出せない。前手の差し合いで上回られ、間合いを支配されてまっすぐ後退させられる。
 
そして、中盤にオルティスがペースアップし勝負をかけると、ワイルダーがそれに応戦。
再三オルティスの左を被弾しながらもうまく距離を取り、凄まじいタイミングで右の1発をねじ込みジ・エンド。
 
「序盤からオルティスがペースを掴む→勝負どころでペースアップ→ワイルダーに返り討ちに合う」お決まり? の流れ。
 
「オルティスはあの局面での深入りをもう少し我慢すれば!!」と思いつつも、「でも、ワイルダーと対峙したら行かざるを得ない何かがあるんだろうな」と考え直すパティーンも前回と同じ。
 
「野獣ワイルダーがオルティスを豪快KO!! やべえ、おもしろかったww オルティスは勝たなきゃダメな試合だったな」
 
それまでの塩試合から一転してドラマチックな結末を迎える。まさにヘビー級ならではの一戦と言える。
 

今回はオルティスがワイルダーの間合いを支配していた。そのおかげで結末が3R早まった

あえて前戦と異なる部分を挙げるとすれば、今回は最初からオルティスが距離感を掴んでいたことか。
 
前回はワイルダーの間合いに入るまでに3、4Rを要したが、この試合では1R目から左のクリーンヒットを重ねていた。また、前回はワイルダーをダウン寸前まで追い詰めたのが7Rだったが、今回は4Rに一度ペースアップしワイルダーをロープ際まで後退させている。
 
KOラウンドに関しても、前回は10Rだったのが今回は7R。
オルティスが最初からワイルダーの間合い、パンチのタイミングを把握していた分、試合展開がちょうど3R前倒しになったということか。
 
「ワイルダー陥落! フューリーがヘビー級史上最強でいいよな。オラが町のごんたくれは“パーフェクトな2秒”を与えられず」
 

ワイルダーの右すげえww 最後のノーモーションの右はどうにもならんわw

そして、改めてワイルダーの右はすげえなと。
 
決着のついた7Rを観直してみると、序盤からワイルダーがこれまでよりも左右のパンチを強振していることがわかる。前のラウンドからオルティスが踏み込みを強めていたので、恐らくそれに対抗するために腕を強く振っていったのだと思う。
 
で、結果としてはこれが裏目に出てしまう。
腕を強く振る分打ち終わりに身体が流れ、ガードを戻すまでに若干のタイムラグができる。
そのタイミングでオルティスにより深く踏み込まれ、さらに被弾を重ねる。
 
ワイルダーの左をガードし、同時に踏み込むオルティス。
カウンターの右を被せ、すぐさまスルッとサイドに回る。
さらにワイルダーの右をバックステップでよけ、右のトリプルでワイルダーをまっすぐ下がらせる。
左ボディをガードし、ドンピシャのタイミングで左ストレートを合わせてワイルダーを大きくのけ反らせる。
 
流れを変えるために積極的に腕を振ったワイルダーだが、逆にオルティスの術中にハマった感じ。
 
と、思っていたら。
ロープ際で身体を入れ替えたワイルダーがノーモーションの右を打ち込み、これでオルティスが豪快にダウン!!
ドッサリと仰向けに倒れてそのまましばらく動けず。
 
何とか立ち上がろうとするものの、レフェリーが腕を交差して試合をストップ!!
7R2分51秒、ワイルダーのKO勝利!!
 
突然訪れた結末に、観客は総立ちで大歓声を送る。
 
いや、マジかww
これはマジかww
 
またやりやがったわコイツ。
 
ロープ際で身体を入れ替え、左をチョンチョンと出して間合いを測る。
そして、ガードの間からまったく力みのない右を通す。
 
それまでの2分半、あれだけ汗だくで力みまくって腕を振っていたのに。
突然憑き物が取れたように肩から力が抜け、スムーズなフォームで最短距離をスパッと切り裂く。
 
まるで漫画「はじめの一歩」の沢村竜平が間柴了をダウンさせた最後のカウンターのような右。
 
「はじめの一歩ベストバウトランキング7選。やる意味ないと思ったけど、やっちゃいます」
 
ワイルダーが強振→オルティスが踏み込みを強めるという伏線はあったものの、まさに「1発で勝負を決めるパンチ」というヤツ。
 
てか、誰だよ?
「強振が裏目に出た」などとほざいたヤツは()
 

ワイルダーとかいう天才。世の中には二種類のボクサーがいる。ワイルダーとそれ以外である

今さらではあるが、ワイルダーはやはり天才なのだと思う。
 
僕は以前、“ボンバーレフト”の異名をとった日本の三浦隆司のことを天才と呼んでいたが、ワイルダーもそれと同種の天才と断言していい。
 
ディフェンスはザル。
センスを感じさせる動きもない。
試合運びのうまさ、駆け引きができるタイプでもない。
 
ただ、なぜか右(左)だけは当たる。
 
どれだけ逆境に追い込まれようと、フィニッシュの1発さえ当てればすべての局面を打破することが可能。そして、その1発を当てるための常人にはない感覚を持ち合わせる。
 
天才ゆえのムラっ気やスロースターターという欠点を丸ごと補う謎の1発。
それが三浦隆司やデオンティ・ワイルダーという選手なんだろうなと。
 
三浦隆司はやっぱり天才だよな。理解不能なボンバーレフトと圧倒的な詰めの甘さが激闘を演出する
 
一応言っておくと、三浦隆司は文句なしの天才ですからね。
本人の雰囲気や口調から“無骨な昭和の漢”というイメージが強いかもしれないが、実際はあり余る才能で相手をなぎ倒してきた超攻撃型のサウスポーですよ。
 
過去の試合を観れば一目瞭然で、その才能にビックリしますよ。ええ。
 
そして、ワイルダーには三浦にはないサイズとスピードがある。
普通にリーチと上背を活かしての打ち下ろしをやっているだけでも勝てるのに、そこにバスケ選手並みのバネ、アジリティがプラスされるチート野郎。
 
つまり表題の件。
世の中には二種類のボクサーが存在する。ワイルダーとそれ以外である。
 
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