ベルデホ堕ちる…。ロサダに10RTKO負け。復帰戦で番狂わせ、キャリア初黒星を喫する。観てるだけで息切れが止まらん【結果・感想】
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
2018年3月17日(日本時間18日)、米・ニューヨークで行われたライト級10回戦。
元WBO世界ライト級1位のフェリックス・ベルデホがアントニオ・ロサダJr.と対戦。10R2分37秒でTKO負けを喫する番狂わせが起きた。
約1年ぶりの復帰戦を迎えたベルデホ。
長身のロサダを相手に、序盤から軽快なステップで得意のカウンターを放っていく。
対するロサダも、ベルデホの強振に怯まず打ち下ろし気味の左を中心に前に出続ける。
両者決め手を欠き、ベルデホがやや有利を保ったまま試合は進む。
ところが、ベルデホに疲労が見え始めた後半、ロサダの左が徐々にベルデホの顔面をとらえるシーンが目立つ。
そして10R。
ロープ際でロサダの左を被弾したベルデホが崩れ落ちるようにダウン。
何とか立ち上がるが、疲労とダメージで足元がおぼつかない。
一気に攻勢を強めるロサダに対し、防戦一方のベルデホ。
最後はコーナーでワンツーを被弾し、頭を下げて後退する姿を見てリングドクターがストップをかける。
10R2分37秒、アントニオ・ロサダJr.の勝利が決定した。
中谷正義復帰!? フェリックス・ベルデホとサバイバルマッチ!? そりゃすげえ。中谷勝利は確定しているけど、お互いに容易い試合じゃなさそうだよね
ベルデホの負け方としては「しゃーない」けど、ロサダは負けちゃいけない相手だった
しかし、これは……。
何とも言えないというか、コメントしにくい試合だなぁと。
交通事故や相手選手の怪我など。不運が重なりキャリアが停滞していたフェリックス・ベルデホの久しぶりの試合ということで、個人的にも注目していたのだが。
ベルデホらしい試合だったと言えばその通りだが、この負け方はちょっと……。
「まさか負けるとは」
「でも、この負け方はしゃーないかな」
両方の感情が入り混じる妙な試合だった。
「決まっちゃったよw ロマチェンコvsリナレス。相性は悪くないけど、実際は難しいかな。階級の壁を見たいよね」
相手のアントニオ・ロサダJr.については、ぶっちゃけそこまでの選手じゃない。
長身で腕も長く戦績もいい。
いい選手には違いないが、それでも同じ長身のロバート・イースターJr.への挑戦を目論んでいたベルデホが負けていい相手ではない。
実を言うと、僕はこの選手の過去の試合をちょろっと観て「これならベルデホが勝つだろ」と決めつけていた。
それがまさかの結果。
繰り返しになるが、今回はベルデホらしい負け方だったと同時に、絶対に負けてはいけない相手だった。
キレッキレのカウンターとインサイドでのグダグダさ。左リードが皆無な鮮烈ボクシング
僕が思うフェリックス・ベルデホの特徴としては、
・パンチのキレとカウンターのセンスは凄まじい
・足も速く、左右への動きとそれを継続するスタミナもある
・リードの左があまりに少なく、相手の前進を止める術がない
・接近戦が苦手で、懐に入られるとできることがなくなる
・結果的にカウンターの1発に依存せざるを得ない
・持って生まれた華やかさ、スターの資質は十分
という感じだろうか。
身体能力は高くセンスも抜群。得意のカウンターのキレは凄まじい。
ただ基本的にはそれだけで、自分の得意技を活かすためのプロセスは皆無。
鮮烈なカウンターと全身から放つ主人公感には目を奪われるが、反面、才能に依存したボクシングで穴や脆さも目立つ。
スーパースターの要素をこれだけ持ち合わせているのに、本当に惜しいなという印象の選手である。
やれることを愚直にやり続けるアントニオ・ロサダはよかった。ちょっと江藤光喜とイメージが被るかな
そして今回の対戦相手のアントニオ・ロサダJr.だが、ぼちぼちよかったのではないか。
左右に動く相手の正面に回り込み、左を出しながら前進を続ける。
長身を活かした打ち下ろしにボディを織り交ぜ、ベルデホのスタミナを徐々に削っていく。
「そこまでの選手じゃない」「ベルデホは絶対に負けてはいけない相手」などと言っておいてアレだが、試合内容はすばらしかった。
センスがあるタイプには見えない。
足の運びもバタバタとしていて、フィジカル面も心もとない。
恐らく持って生まれた才能だけなら、ベルデホとは雲泥の差があるのだと思う。
それでも、自分ができることを根気よくやり通すメンタルは普通にすばらしい。
個人的に「長身のがんばり屋さん」でパッと思い浮かぶのは日本の江藤光喜なのだが、今回のロサダはちょっとイメージが被る気がする。
実はベルデホが一番遭遇してはいけないタイプだったかな。というか、これまでのマッチメークが緩過ぎたか
特に今回のロサダは、前進しながら左リードを連打できるのがよかったと思う。
申し上げたように、ベルデホはリードをほとんど打たないカウンター一辺倒の選手。
ロサダの1発目の左に渾身のカウンターを合わせ、前進を止めにかかる。
だが、ロサダはそこからさらに踏み込み、もう1発追撃のパンチを出すことができる。
これをやられると、ベルデホは一気に苦しくなる。
マン振りのカウンターが抑止力にならず、インサイドでの対応力が皆無なために横に逃げる以外に方法がない。
「野獣ワイルダーがオルティスを豪快KO!! やべえ、おもしろかったww オルティスは勝たなきゃダメな試合だったな」
ロサダが前進し続け、ベルデホが左右に逃げ続ける。
足を踏ん張って全力で腕を振り、すぐさまサイドに動く。
正面に立たないように足を動かし続け、空振り覚悟のフルスイング。
こんなことを続けていればスタミナ切れを起こすのは当たり前だし、むしろよく10Rまで持ちこたえたくらい。
マジな話、ロサダがベルデホのフルスイングに怯むそぶりすら見せなかったのは何か理由があるのだろうか。
早い段階でタイミングを把握したのか、それとも単純に勇気を持って踏み込んだのか。
とにかく得意のカウンターが抑止力にならなかったことで、ベルデホは強制的に持久走を強いられる展開に追い込まれてしまった。
・自分よりも上背があり、
・動きながら左の連打が出る
・フルスイングのカウンターに怯まない
これまで「突進力がなく自分よりも小さい」相手をカウンターで葬ってきたベルデホにとって、恐らくロサダは一番当たってはいけないタイプ。
というより、相手を厳選し過ぎていたせいで、弱点が表面化しなかったと言った方が正解か。
ダニー・ガルシアを目指すしかない? のか? それでも、左リードの少なさは致命的だけど
まさかのKO負けを喫したベルデホだが、割とガチで今後はどうすればいいのか。
とりあえず、パッと思いつくのはダニー・ガルシアを目指すことか。
切れ味十分のカウンターとよく動く足があれば、覚醒すればダニー・ガルシアの上位互換になれる(気がする)。
ただ、どちらにしてもこの左の少なさは致命的ではある。
得意のカウンターを打つにしても、フリーパスで間合いを潰される今の状況はかなりキツい。
スペースを確保するためにひたすら左右に動き回り、スタミナ切れを起こしたところで打ち下ろしをドカン。
相手の強度が上がるにつれ、左リードの少なさがますます影響している。
ベルデホ復活? 無敗のマデラを豪快1RKOに下す。華と才能はホントにすげえ。ボクシング界の主人公にまで駆け上がれ
ちなみにだが、日本の井上尚弥は、
・ダビド・カルモナに猪突猛進ゴリ押しファイトを封じられ、
・ペッチバンボーン戦で接近戦が苦手なことを露呈し、
・それと引き換えに、強烈な左で相手を突き離すスタイルを見つけ、
・河野公平戦で「左でスペースを確保」→「下がりながらのカウンター」というパターンを確立した。
マッチメークのヌルさを批判されることもあるが、何だかんだで課題を克服していることがわかる。
まあ、その後の3戦はカウンターを出すまでもなく、ほとんど左だけでねじ伏せてしまったのだが。
それに対し、ベルデホは得意のカウンターを活かす術を得ないままここまできてしまった。
これがいわゆる過保護マッチメークの弊害というヤツか。
それとも、この挫折をきっかけに一気に爆発するのか。
何とも言えないところである。
何度も言うが、この選手の全身から発せられる華やかさはマジですごい。
ボクシング界のスター候補として、何とかがんばってもらいたい気はする。
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
【個人出版支援のFrentopia オンライン書店】送料無料で絶賛営業中!!
-
前の記事
K-1は最強です。もう「新生」はいりません。武尊(たける)サイコーじゃ。S・フェザー級トーナメントで優勝、3階級制覇を達成【2018年3月・感想】 2018.03.22
-
次の記事
期待のライアン・ガルシアを観たのでその印象を。キラキラ七三プロスペクトはデラホーヤさんの大のお気に入り? 2018.03.24